【人】 女子大生 マユミ[ 火事以降、暫くこのアカウントは放置状態だったから、 単純にその間にフォロワーが減っている というのも勿論ある。 それでも、私がこのアカウントを引き継いで 定期的に投稿をしても、 フォロワー数やファボの数は緩やかに減少していった。 それが全てではないと分かっていても、 それこそが真と亜の力量の差なのだと、 突きつけられているようで……。 付け焼刃の努力など、しょせんこんなもの。 ] (56) 2022/06/12(Sun) 19:22:38 |
【人】 女子大生 マユミ[ きらきらした、幸せな、 ちゃんとした人生を引き継いだはずだった。 "船越真結実"は、今もこの世界に生きている。 私がその名を引き継ぐことで、 一縷の希望を現実に結び付けたつもりだった。 ……厚顔無恥にもほどがある。 この体たらくはなんだ? SNS上ですら、きらきら女子大生を維持できていない。 ] (57) 2022/06/12(Sun) 19:23:14 |
【人】 女子大生 マユミ[ 法学部のイケメン彼氏の存在、 私だって羨ましいと思わなかった訳ではない。 "亜結実"であったときは、口をきいたこともなかったが、 二人の仲睦まじい様子は、何度も目にしてきた。 彼は顔だけが良い男ではなく、 人柄も信用に足る人物だと、実際接してみてよく分かった。 辛い思いをしたからと、煮え切らない態度の私に対して、 不満を露わにすることなんて一度もなかった。 「いずれ迷いもきっと晴れるから、 それまでずっと傍にいる」 そう言って私の心を支えようとしてくれた。 ……恋人に成りすます詐欺師相手に。 ] (59) 2022/06/12(Sun) 19:25:08 |
【人】 女子大生 マユミ[ 抱きしめられれば、体は震え。 唇を寄せられれば、涙が滲んだ。 そんなに近づかれたら―――…… 見破られてしまう! ] (61) 2022/06/12(Sun) 19:26:04 |
【人】 女子大生 マユミ[ 何度もエデンにアップロードされた、 真結実の幸福体験を味わった。 本当に、本当に幸せで。 羨ましかった、 妬ましい程に。 ] (62) 2022/06/12(Sun) 19:26:45 |
【人】 女子大生 マユミ[ けれど実際同じ幸せを現実で喰んでみれば、 同じものであることを疑ってしまう程、 味わいが異なる。 だって、現実で幸せを享受するには、 その幸せを掴み取れるだけの"価値"がなくてはいけない。 イケメンの彼氏に見合う、イイ女でなければいけない。 皆に慕われるほどの、徳がなければいけない。 それを持たない人間が手にすれば、 分不相応な幸福は 薬 から毒 に変わる。見限られ失う怖さだけが、舌に残った。 ] (63) 2022/06/12(Sun) 19:28:05 |
【人】 女子大生 マユミ[ 私は一度も幸福体験を、 エデンにアップロードしたことがない。 真結実は生きていた頃、定期的に投稿していたのに。 それは、"今の真結実"が幸せでない何よりの証拠。 ] (64) 2022/06/12(Sun) 19:28:43 |
【人】 女子大生 マユミ[ 毒 を食らわば皿まで。You might as well be hung for a sheep as for a lamb. ] (66) 2022/06/12(Sun) 19:29:50 |
【人】 女子大生 マユミ[ 現実と仮想の境目が曖昧になるほど、私は過食を続けた。 幸せになる事って、 実はそんなに難しい事ではないのでは? ただ耳から流れ込む多幸感の海に、耽溺するだけでいい。 現実で幸せを掴もうとするより、 ずっとずっと確実で効率がいい。 私にだって、簡単に出来てしまうじゃない! ] (67) 2022/06/12(Sun) 19:30:39 |
【人】 女子大生 マユミ[ 寝食を忘れて、ただただ耳だけを傾けた。 邪魔をされるしうるさいから、 スマホの通知機能をオフにした。 もう私には不都合は見えない。 ] (68) 2022/06/12(Sun) 19:31:12 |
【人】 女子大生 マユミ[ とは言え、今の私は実家で生活している身。 家族が当然その異変に気付いた。 ろくに食事もしなければ、自室から出てくることも 少なくなった娘からスマホを取り上げて、 「兎に角、病院に行きなさい!」と母が一喝。 口答えするのも億劫で、適当な服に着替えた。 意識はしていなかったけど、 真結実なら絶対に選ばない暗い色の服ばかり。 本当はメイクも面倒だったのだけれど、 流石にすっぴんでの外出は躊躇われた。 ファンデーションにフェイスパウダーを重ね、 雑にチークをはたいて色付きのリップを塗った。 目の下のクマもコンシーラーなど使う事無く放置。 先生に貰ったペアチケット、そのままだったな……。 そう思って、チケットをバッグの中に忍ばせた。 私は使わないから、返した方がいいかもしれない。 ] (69) 2022/06/12(Sun) 19:32:12 |
【人】 女子大生 マユミ[ 受付では、一瞬びっくりされたようだった。 それが、死んだ姉の様だったからなのか、 生き残った妹らしくなかったからなのかは分からない。 診察を待つ間、 ついバッグの中にスマホを探してしまうけれど、 スマホは取り上げられたままだった。 ……落ち着かない。 玩具を取り上げられた子供のように、母を疎んだ。 やがて名前が呼ばれれば、診察室へ。 ] ―――――……。 [ 濁ったように虚ろな瞳が捉えた相手に、 かける言葉を今の私は持たなかった。 ]** (70) 2022/06/12(Sun) 19:33:07 |
(a3) 2022/06/13(Mon) 18:37:13 |
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