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【人】 神立[────鳥居を潜って直ぐの所。 白い仔犬の首を掴み上げる男が居た。 狐面の目の部分はくり抜かれておらず。 然しその目の辺りで犬の顔を覗き込んでいた。] ……なあんだぁ、お前。迷子? ふうん。コマっていうのかい、そうかい 俺もヒト探しをしてる所でさァ 一緒に来なあ? [直に始まった祭り。 人混みの中、男の背は頭ひとつ高く。 肩に載せた犬もまた目立っていた。**] (2) 2024/04/04(Thu) 0:29:40 |
【人】 神立[ゆるりと振り向く。 少し間延びした、 ゆったりとした話し方が男のそれだった。] おぉん? ──……なァんだ、其処に居たか 然しまァ、何だってそんなのしてやがるんだい? [声が聴こえていなかった訳でも 理解ができなかった訳でもない。 興味はすっかり女、特に其の顔へと移っており 犬の件はどうでも良いこととして聞き流した。 立てた人差し指が天を指す。] (10) 2024/04/04(Thu) 17:49:40 |
【人】 神立[刹那、天と男とを繋ぐように稲妻が走る。 一瞬遅れて、ドオオオオン……と轟音が響いた。 後付けのように晴れていた空を黒々とした雲が覆い 盥を返したような強い雨が地を叩く。 人見知りなどと言っていられなくなった犬は 肩を降り一目散に慣れた寝床を目指し 祭りの参加者は屋根の下を探し奪い合う。 誰も彼もが濡れないことに夢中で 残る二人には目もくれない。] (11) 2024/04/04(Thu) 17:50:08 |
【人】 神立[空からの水は粧を剥がすか。 ザアザアと地を打つ音は男の声を遮らない。 当然のように片手が腰を抱き片手が顎を持ち上げる。] ああ、矢張り間違ってなかったなあ 思っていた通り、 ……否、想像以上に良い貌だねい 迎えに来たぜ [連れて行くことはとうに決まっていた。 君が何も憶えていなくとも。*] (12) 2024/04/04(Thu) 17:50:40 |
【人】 神立── 神社の境内 ── [女を覗き込む口許が笑みの形を作った。] おん。いい。実にいいねえ。かーわいい [話し掛けてきた時の真面目そうな様子も 小さく聞こえた悲鳴の高めな声も 見目にそぐわぬ男のような口調も 何れも好ましかったが……、特にその表情だ。 まるで己に愛でられるために存在するようであり 此方には応じる心算しかない。] (20) 2024/04/05(Fri) 16:28:56 |
【人】 神立[ひょいと横抱きにする。 最早この場所には──現世には、用はない。 二歩、三歩と歩みを進めながら 思い出したように名を名乗った。] おっと、きかれてたっけ 俺ぁ神立ってんだ [夜をも引き裂く光だ。] (21) 2024/04/05(Fri) 16:29:51 |
【人】 神立他はまあ、追々で良いだろお それよかさあ、そのままじゃあ 風邪ぇ 引いちまうぜ? [誰が降らした雨かはさて置き。 勝手に話を切り上げた。 五歩も歩けば、風景が様変わりする。 滴る水がぽたぽたと床を濡らす。 二人は立派な建物の中に移っていた。 先程までの村には見られない、 都でも滅多に無い広い廊下と高い天井。] (22) 2024/04/05(Fri) 16:33:04 |
【人】 神立[ドタバタと此方に向かってくる足音が幾つか有り。 女を抱く腕にぎゅっと力を籠め、 顔をかたい胸板に押し付けさせた。 頬の花を見られるのは得策ではない。 従業員ならまだしも、他の客と会う事もある。] 此処は隠世にある湯宿でなあ 少しの間静かに良い子にしてなあ? [言いつけは守れるだろうか。 小さな口を塞ぐのは余りに容易だが 手荒にしたくないと考えてはおり。] (23) 2024/04/05(Fri) 16:34:38 |
【人】 神立[気弱な亭主と勝気な女将 凸凹な夫妻とそんなやり取りをしつつ。 因みに夫妻は一つ目とろくろ首だ。 人間には見慣れぬものなので驚かせまいと 顔を背けさせたのもあったが 彼らを見ようとしても別段咎めたりしない。 案内してくれた亭主をてきとーに労って追い出すと 部屋の半ばで女をそっと降ろした。 正面、開け放たれた障子の先に大きな露天風呂が覗く。] さ、着いたぜえ ……なあ。そのままだと寒いだろ 入ってきていいぜ? [口許ははっきり、ニヤニヤと笑っている。 下心だ。*] (24) 2024/04/05(Fri) 16:55:43 |
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