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【人】 商人 J[ 女の書いた額はブローチを落札するには恐らく十分すぎるものだった。] これだけあれば大丈夫でしょう。 他のものに手を出さなければ。 [ このオークションでは幾らで落札できるかは定かではない。 即決額が決められていないため、言わば青天井なのだ。] というよりも。 これほどの額をかけるほどの物なのですか? [ その額にしたってブローチそのものに何かの思い入れがなければ高すぎるほどなのだ。 母親の形見、それにしたってそこまで賭けるものか。 金だけではない、まるで自分の人生すらも賭けているかのように。] (18) 2022/03/17(Thu) 18:17:12 |
【人】 商人 J[ 会話を続けているうちにオークションは始まった。 最初は取るに足らないような出品物。 どこかの貴族が持っていた骨董品だとか、或いは歴史のある武具だったり、どこからか流れてきた土地の権利書などもあった。] 表では裁けない物ばかりですよ。 どこから手に入れたのか聞かれて困るような。 そういう意味では貴方の探し物もそうだ。 [ 落札される商品は、通常よりも高い額で落とされていく。 手放したい者、手に入れたい者、様々な思惑が重なっているのだ。] (19) 2022/03/17(Thu) 18:17:20 |
【人】 商人 J[ そうして8番目の出品となった。 それは檻に入れられた愛らしい小さな犬のような動物だった。] 『サーバルウルフの当歳オスです。 言わずもがな、禁猟対象の希少な獣です。』 [ 説明によれば北西にある深い森で親とはぐれたところを捕獲したらしい。 まさか、それを信じる客などはこの場には一人もいないのだが。] ここではこういうもの≠燻謔闊オわれるのです。 [ 物だけでなく、動物も、そして────]* (20) 2022/03/17(Thu) 18:17:28 |
【人】 商人 J[ 感傷的と男は女の反応を腹の中で笑う。 希少動物の取引は闇取引の中でも割と多い方で、決して珍しいものではなかった。] まさか繁殖用、ではないでしょうね。 可愛がって貰える≠アとを祈るしかありません。 [ 飼う目的とは限らない。 皮を剥ぎ、あるいは肉を取ることもあるし、剥製にしてかざることだってある。そもそも禁猟対象を大っぴらに飼うことは考えにくい。] ………… [ 続く呟きには無言で応えた。 その意味を女はすぐに知ることになる。] (28) 2022/03/17(Thu) 23:22:42 |
【人】 商人 J[ いくつかの出品の後、オークショニアは目玉商品のひとつだと紹介した。 それはやはり檻に入れられていた。 一糸纏わぬ姿には手枷をかけられ、脚には重りをつけられていて、首にかけれた首輪には鎖が繋がれていた。 まだ年若い女。 借金にかたに売られたか、それとも捕獲されたのか。] これが、裏社会の闇市です。 [ 男の声は冷たかった。 商品として紹介された女は薬か或いは魔法によって意識が朦朧としている様だった。] (29) 2022/03/17(Thu) 23:22:59 |
【人】 商人 J[ そして、商品の顔にジャンヌには見覚えがあるはずだった。 かつて、アンペール家に使用人として仕えていた女。 彼女は悲劇の夜にたまたま所用を言いつけられ、所領を離れていたおかげで難を逃れたはずだった。 それを見つけ出しこの場に引き立てたのは、無論ケリオス商会であり、即ちジュダスの仕業であった。] ここでは何でも¥、品になる。 [ 競り合いが始まれば、ジャンヌに下卑た視線を向けていた者たちがこぞって値をつりあげていた。] (30) 2022/03/17(Thu) 23:24:07 |
【人】 商人 J彼女は……さっきの狼よりも不幸になるでしょう。 大金を払って女を買う様な者たちです。 少なくとも幸せな未来は待っていない。 [ 性奴として扱われるか、或いはもっと悍ましい行為に晒されるのか。まさか養女や使用人として扱うために大金を払う者などここにはにいないのだから。]* (31) 2022/03/17(Thu) 23:24:33 |
【人】 商人 J[ 少しだけ驚いた。 助けようとする、それを想像しなかったわけではなかった。だが、どんな反応を示すのか、それを試すつもりだったのに、本当に助けると言ったのだ。] いいのですか? [ 値を吊り上げる。 この瞬間にも落札されてしまわぬように。] あれ≠競り落として。 そのあとどうするおつもりで? [ 男の一言ごとに競り上がる。 囚われた女の身柄を、今ここで救い出したとしてその後は?] (35) 2022/03/18(Fri) 13:59:18 |
【人】 商人 Jいいのですね? [ 吊り上げた値は一気に倍近くまで。 決して降りない≠ニいう意思を示すやりかた。] 『落札はJ様です!』 [ ハンマーが振り下ろされ、落札を告げる。 主取りではあるがそれ自体はアナウンスされることはない。 領地も家も失って、それでもかつての使用人を手に入れて、一体どうしようというのだろうか。] (36) 2022/03/18(Fri) 13:59:32 |
【人】 商人 J[ 檻ごと舞台奥へと商品が引っ込んでいく。] おぉ怖い怖い。 ご覧なさい。 ブルーノがこちらを睨んでおりますよ。 [ あの虜囚がそれほど欲しかったわけではないだろう。 ただ、自分が目をつけたものを横取りされた気分なのだ。 オークションでヒートアップした客にはよくあること。特にあのような成金の男には特に。]* (37) 2022/03/18(Fri) 14:00:03 |
【人】 商人 J[ 思わず笑いが込み上げた。 オークションで売り買いされる様な女を金も地位もあるような男が妻に娶るなど何の冗談だろうか。] それはいい、あの男に教えてやろうか。 [ 競りに負けただけでなく、そのようなことを言われれば虚仮にされたと腹を立てるのが関の山。いくらジャンヌに小馬鹿にするつもりがなくても。それはそれで見物かもしれないが。] (46) 2022/03/18(Fri) 19:49:52 |
【人】 商人 J[ 女が係を呼んでに告げた言葉を視線だけで肯定してみせる。 『彼女の言うとおりにしろ、と。] 怖がらせる?……まさか。 それに貴方は怖がらない、そうでしょう? [ たとえブルーノが暴力に訴えたとしても、この女は怖がるようなことはしないのではないだろうか。] 貴方があまりにも人の敵意に無頓着なもので。 あのような事は貴方の目的には決してプラスにはならない。 [ 狙ったものを横から取られ面子を潰され虚仮にされた。 間違いなくあの男は女の本命に対して仕返しを考えているはずだ。そうなるよう誘導したのはこの男だが。] (47) 2022/03/18(Fri) 19:51:48 |
【人】 商人 J[ 女が席を立つと同時に、係のものがジュダスへと視線を送る。監視したほうがいいか、と。] 構わない。 自分が馬鹿であるというこがわからないほど、 愚かではないということだ。 [ どうせ何処にも行くところなどない。 そして何もできはしない。] もう……お前は檻の中だ。 [ グラスに残ったスパークリングを喉に流すと、クツクツと可笑しそうに嗤った。]* (48) 2022/03/18(Fri) 19:52:34 |
【人】 商人 J[ ──── 少し怖い。 自分は今もしかして高揚しているのだろうか。 付けた仮面が剥がれそうになるほどに?] ……この私が? [ 浮かべた薄笑みが色濃くなっていく。 小娘ひとり罠にかけることがそれほどまでに楽しみだというのか。] そうかも……知れないな。 [ アンペールの魔女。 どうしてやろうか、今から楽しみで仕方ない。] (54) 2022/03/19(Sat) 8:51:53 |
【人】 商人 J[ 女が戻る。 男はそれを静かに迎える。 女が口にした『ごめんなさい』の意味はわからなかったが、特に興味もなかった。] そろそろですよ。 [ ステージの上に運ばれてきたのは小汚い胸像。 まるでミイラのように干からびた、まさしくそれはミイラなのだ。 その胸には翼に抱かれた青の宝石が輝いている。] 『本日最後の商品でございます。』 [ 提示された最低価格は市場価値のおよそ倍以上。 だが、一声目で例のブルーノはその価格をさらに倍に引き上げた。] (55) 2022/03/19(Sat) 8:52:04 |
【人】 商人 J……嫌がらせ。 と言うより意地でしょうね。 彼に宝石を見せて貰ったのは間違いだったかもしれません。 [ ブルーノは先ほど目当ての品で競り負けたことで、こちらの目当てに対しても競りかけてきたのだった。先日ブルーノに宝石を見せて貰ったことで、こちらが何を探しているのか把握されている。] 負けるつもりはありませんが。 ……いいのですね? [ それは、先ほどマリエル≠落札したときと同じ問い掛けだった。]* (56) 2022/03/19(Sat) 8:52:21 |
【人】 商人 J[ 隣に座る女の気配が変わる。 まるで殺し合いの場にでもいるかのように剣呑な空気。 ドレスの裾を握る女の手に男はそっと手を重ねた。] 仰せのままに。 [ 値が吊り上がる。 既に想定していた値を超えている。 男はさらに値を上げていく、某もまた対抗してくる。] ( そういうことか ) [ これは対価。 あの様な男でも女に虚仮にされれば噛みつきもする。] (61) 2022/03/19(Sat) 11:08:56 |
【人】 商人 J[ 激しい競り合いもゴールが近づくにつれて落ち着きを取り戻す。 そしてしばしの静寂の後、木槌が振り下ろされた。] ……いやらしい男だ。 [ だが思うままに、それ以上に動いてくれた。 落札価格は想定の最低落札額の2倍にちょうどマリエルの落札額を足した額。] だが、手にした。 [ 重ねた手をぎゅっと強く握った。]*] (62) 2022/03/19(Sat) 11:09:06 |
【人】 商人 J[ 握っていた手をそっと放した。 今やこの女は魂までもがこの手にある。] ええ……では、商品を受け取りにいきましょう。 [ 男は立ち上がる。 が、そこに影を差す人物がいた。] (65) 2022/03/19(Sat) 13:34:52 |
【人】 商人 J何でしょうか、ブルーノ様 [ 屈強そうな護衛を二人連れた小太りの男。 ニタニタと気味悪い笑顔を浮かべたまま、男ではなく女の方を見下ろしている。] 『 やってくれたな。 さっきの女を寄越せ、金は払ってやる 』 [ その要求に男は思わず笑いだした。 『妻に迎えることを望んでいるというなら』そう言った女の言葉を思い出したからだった。] お引き取りをブルーノ様。 オークションはすでに終わりました。 [ 女に意志を確かめるまでもない。 それに、競り負けた方が落札した人間を脅して品を横取りするなど、オークションの主催者として看過することはできない。] (66) 2022/03/19(Sat) 13:35:00 |
【人】 商人 J[ 小太りの男は何やら喚きたてていて、次から次へと罵倒の言葉を浴びせかけているが、ジュダスはどこ吹く風。] 『 代わりにその娘でもいいぞ ケリオス商会のジュダス。』 [ だが、その次の瞬間にジュダスの気配が変わる。] 帰れと言っているんですよ、豚野郎さま。 [ その一言で場の空気は一気に凍り付いた。 ブルーノは傍目にも怒りを通り越した顔をしているし、護衛の二人も主のそれを察して前に出る。 一発触発とはまさにこの状況であった。]* (67) 2022/03/19(Sat) 13:36:03 |
【人】 商人 J[ 一体この女は何をしようというのか。 話し方こそ慇懃だが、その内容は脅しそのものである。 割って入った女にブルーノはその怒りを燃え上がらせようとしていたが、主催者に見つかる前にと、そう言われてその動きを止めた。 そして笑った。] 『 次のオークションを楽しみにしている 』 [ そう言い残して、彼は去った。] (73) 2022/03/19(Sat) 18:13:15 |
【人】 商人 J[ 続いてジュダスもた笑った。 去っていく男の背には目もくれず、ただ笑った。] 勇敢な方だ。 [ だが、愚かな女だ。 盲目で、何も知らぬ、知ろうとしない。] でも、行きましょう。 [ 場に静寂が戻ると男は女を先導するように、卓を離れた。 薄暗い会場を歩き慣れた足取りで。 ──── 日付は今まさに替わろうとしていた。] (74) 2022/03/19(Sat) 18:13:31 |
【人】 商人 J[ 案内されたのは執務室の様な場所だった。 男は机に座る。窓から差し込む月明かりを背に。] では、商品の受け渡しといきましょう。 ジャンヌ・アンペール。 [ 部屋の隅にはもうひとり居た。 それは二歩前に出ると灯りがその顔を照らす。] 貴方が落札したマリーだ。 いや……マリエル……だったか。 [ 檻に囚われていたときとは違い、意識もはっきりしているし、マリエルは強い視線で女を見ていた。 その服装はオークション会場の係の者と似ていた。]* (75) 2022/03/19(Sat) 18:14:04 |
【人】 商人 J[ 女の言葉にマリエルは首を横に振る。 それを可笑そうに男は笑う、喉を鳴らしてクツクツと。] それでは、 商品の引渡しの前に精算と行きましょう。 [ 男は紙切れ一枚を取り出すと、マリエルがそれを受け取って女へとある渡す。そこには宝石を手に入れるまでにかかった費用が記されていた。 この町のあらゆる富豪への調査の費用、それから実際にハズレ≠買い入れた費用、それらが相場の3倍から5倍の値段で記されていた。 それは女が1年折っていた時に使った費用からみてもかなりの高額とわかるほどだった。] 費用については依頼者の負担とする。 契約書に記された内容です。 [ さらには落札価格の2割。高騰したそれは2割といえどもかなりの額だ。それらを合わせれば女の残された資金では到底間に合わないことは明白だった。] (81) 2022/03/19(Sat) 21:33:39 |
【人】 商人 J[ 男は調子を変えずに女に問う。] 一応確認しますが。 支払いは可能ですか? [ 今すぐそれが不可能であることはわかっている。 そして、女がどれだけ金をかき集めても届かないことも。 件の元婚約者とやらがアンペールの所領や資産を彼女に返せばそれも可能かもしれないが、それは現実的ではないだろう。] もちろん今すぐでなくても構いません。 ただし、私は商人です。 当然ですが利息は取らせてもらう。 [ つまり、時間が経てば経つほど借金≠ヘ膨らんでいくということ。] (82) 2022/03/19(Sat) 21:33:54 |
【人】 商人 J『お嬢様、ケリオス商会の利息は十日で1割です。』 [ 男ではなくマリエルが静かに告げる。 それに男はゆっくりと首を縦に振って追認する。] 私は聞きましたよ。 いいのですか?と。 [ 男は薄笑みを浮かべたまま問う、払えるのか?と。]* (83) 2022/03/19(Sat) 21:34:08 |
【人】 商人 J[ 契約とは誓約であり、制約である。 互いに血を以て交わしたそれは呪いの如く魂を縛り付ける。 それが、──── ギアス。] 待て。 勝手に出ていくことは許さない=B [ 否、それは確かに呪いなのだ。 古代魔法によるギアススクロール。期限は7日間。契約を破った者に服従を強いる呪いの契約書。女は確かにそれに血を吸わせた。 男がパチンと指を鳴らす。 その瞬間に、まるで無数の針が体中を貫き通したような激しい痛みが女を襲う。傷はない、失血もない、ただただ紛らわすことさえできない激しい痛みだけがそこにあった。] (93) 2022/03/20(Sun) 7:23:30 |
【人】 商人 J[ 女という生き物は痛みに強いという。 耐えることは不可能ではない、傷ができるわけではない、身体能力も損なわれない。だが、この呪いに抗えた者など男は知らない。] もう貴方は私のものなのです。 契約が破られたその瞬間から。 貴方は既に依頼者でもなければ客でもない。 私の、──── 大事な商品だ。 [ 月を背に男は嗤う。 馬鹿な女を、その心を踏み躙り嗤う。] (94) 2022/03/20(Sun) 7:23:53 |
【人】 商人 J[ 可笑そうに嗤う男は確かに女の知る男そのものだった。 もしも、女の目に違う様に写ったのなら、変わったのは男ではなく女の方だろう。] 悲観的になることはない。 貴方を買う人間が、 貴方を大層気に入って、 妻に迎えることを望むかもしれません。 [ クツクツと喉を鳴らして男は嗤う。 そんなことはあり得ない、世界はそんなに優しくはできていない。 嗤いながら、男はもう一度パチンと指を鳴らした。]* (95) 2022/03/20(Sun) 7:24:47 |
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