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【人】 焦爛 フジノ今日も、静かに座っていた。 動き回らず、ただ静かに。 そうしないとお腹が、空いてしまいそうだったから。 雨戸の向こうから聞こえる音は、まだまだ止みそうにない。 (1) 2021/07/04(Sun) 22:38:34 |
フジノは、目覚めると同時に干されたタオルを見た。不法侵入されてる………… (a1) 2021/07/05(Mon) 12:32:14 |
フジノは、扉を二度開けた。風の吹き込む音が、二度した。 (a3) 2021/07/05(Mon) 23:52:53 |
【人】 焦爛 フジノ>>23 >>31 ミロク 「……教師。 ミロクさんは、いろんな事、知ってるし。 優しいから……きっといい先生に、なれただろうな」 本心だ。貴方が自分達を見つめる優しい目を、覚えている。 そして貴方の語りの後、フジノもぽつぽつと語る。 顔も知らない祖父は南へ出兵して、終ぞ帰ってこなかった。 半年前に祖母が亡くなるまで欠かさず線香が立てられていた仏壇には、今も空っぽの桐の箱が置かれている。 母の顔も知らない。否、覚えていない。物心ついた頃には祖母と父しかいなかった。 母はフジノが大やけどをした後――祖母曰く、目を離していた間に囲炉裏に落ちたらしい――姿を消したという。 残されたフジノに、この見た目では嫁に行くのは大変だろうと、亡くなるまで祖母は案じ嘆いていた。 村の人々は歪な跡を晒すフジノを遠巻きに眺め、大人達の反応を見て子供達もそれを真似た。 色眼鏡無く接してのは、アユミを始めとする余裕のある大人。 ……そしてここに偶然にも集まった、少し変わった人々ぐらいだ。 そんな風に育ったものだから、ミロクのような『夢』や『目標』はなかったのだと、ぽつりと零した。 応えようと思う周囲の期待も、助けたいと思う誰かもいなかった。 貴方に話した『取引』の内容が。フジノが初めて抱えた意志だった。 (32) 2021/07/07(Wed) 1:08:36 |
【人】 焦爛 フジノ>>24 >>26 【肉】 「 ……猿? 」絵本ぐらいでしか見た事のない生き物の名に、つい疑問符の混じった呟きが漏れる。 ……それでも、医者であるセナハラが用意したものだ。 メイジに促されるままに部屋へ入り、取り分けられた肉を、見つめる。 食わなければならない。 これが何の肉であったとして、腹を満たしてくれる事は確かだ。 なら、食べなければならない。 フジノはそうしなければならない。 いただきますと、小さな声で告げて。 小さく切り分けられた肉を、口の中へ入れる。 味の感想は特に告げず、水で流し込んだ。 部屋に充満するこの匂いは、祖母を火葬した時に嗅いだ匂いに似ているなと、ぼんやり思った。 (33) 2021/07/07(Wed) 1:21:56 |
【人】 焦爛 フジノ>>37 ミロク 「そう、なんだ。 ……いいな。ここじゃ、人と変わってるととても、目立つから……」 首元の歪な跡を触る。夏でも首巻きをつけてて大丈夫だろうかと、考えた。お洒落でなにかを巻くという発想がないのだ。 「……そうかな」 子供だって大人に負けず劣らず、残酷だ。 無邪気故の行動もあれば、大人を欺く事が上手な子もいる。 ……けれど、それをわざわざ伝える必要もないだろう。 貴方は大人達との交流ですっかり疲弊してしまったようにも見えた。 「い、いいよそんな事。そんな物好きな人いないって、わかってる、し……そう言ってもらえるほど優しくも、ない、から」 腹を擦り、ぼそぼそと恥じらうようにそう答えて。 やり取りを終えれば、去っていく貴方へ別れを告げただろう。 『また、明日』。会えると信じていた。 (39) 2021/07/07(Wed) 20:25:20 |
フジノは、調理室で"肉"を食べ、飲み下した。味なんてどうでもよかった。腹をみたせるのなら、それで。 (a16) 2021/07/07(Wed) 20:33:37 |
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