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【人】 天野 時雨[ 二泊三日の船旅を終え下船した途端、 過度のアルコール摂取と睡眠不足がたたり 完全に体調を崩して寝込むこと数日。 大袈裟に言って浦島太郎のような感触で仕事に戻ったのは、 船を降りてから1週間ほども経ってからだった。 オーナーは、己が欠勤の謝罪をするより早く。 顔を見るなり爆笑して肩に手を回してはボスボスと叩く。] 『…なによ、えらいいい顔になっちまってよ。 戦場でも見てきたか。』 [ 腹を抱えて笑うオーナーをギロリと一瞥して、 そーっすねお陰様で、と返した。] (36) 2020/07/20(Mon) 10:37:56 |
【人】 天野 時雨[ 三カ月ほど経ったある日。 ようやく身体が元の生活に馴染んできた頃。 まだ早い時間帯。 一人店に来た女性客。 いらっしゃいませの挨拶は最初の一音で途切れ、 息を呑んで思わず天を仰いだ。] ぅ… [ あの日、己がしでかした非道の数々を 頭から消し去ることはどうしても出来ずにいて、 それでいて時折夢にまで見ては酒に逃げて。 もう彼女は店には来ないと、そう勝手に思っていた。 ……なのに。] (37) 2020/07/20(Mon) 10:41:02 |
【人】 天野 時雨[ カウンターに座る彼女は何も話さず、ただ酒を飲む。 形の良い口が動けばなにか食べ物をつまむだけ。 こちらも何かを話さねばと言葉を探せど、 何をどう話しかけていいものかと途方に暮れるのみ。 あの日と変わらず可憐な彼女には、他の客が ちょいちょいと話しかけていたけれど、 冷たくあしらうわけでもなく、 ちょっと申し訳無さそうに全ての誘いを断っていた。 そんな感じで小一時間。 あっという間に真っ赤になった彼女を見て、 これはそろそろ諫めようと重たい口を開きかけた その時、 (38) 2020/07/20(Mon) 10:43:09 |
【人】 天野 時雨…吹雪ちゃん。 飲み過ぎ。 今日はそれくらいにしときなよ。 [ ようやく口から出たのは、あの日の謝罪でも、 近況伺いでも、今日来てくれた感謝でもない、 そんなつまらない、ありきたりの言葉で。 それでも何も言わず、こちらの助言にも 譲る様子も見えない彼女に小さく息を吐きながら、 渋々オーダーに応えて、差し出せば。 突き返される、グラス。 驚いて、それを見て。 オーダーされたカクテルに改めて気づけばはっとして、 吹雪に視線を移す。 …あの日と同じように煌く瞳が、そこにはあって。] (39) 2020/07/20(Mon) 10:45:44 |
【人】 天野 時雨[ そっと受け取り、一気に飲み干して。 立ち上がろうとする彼女の手を、思わず掴んだ。] …吹雪ちゃん。 あの、俺。 [ そのまま、軽くその手を引いて。 もう一度腰をかけてもらえるように。 再度向かい合えたなら、彼女が酔い潰れる前にと、 手早く身体を動かす。] あと一杯だけ、付き合って。 奢るから。 [ ブランデーはほんの少しにして、 オレンジキュラソーとオレンジジュース。 シェイクして、差し出して。] (40) 2020/07/20(Mon) 10:48:27 |
【人】 天野 時雨これさ、オリンピック、って言う カクテルなんだけど。 [ 彼女の顔を、瞳を、見た。 どうか自分の勝手な解釈ではないように、と祈りながら。] カクテル言葉が、 【待ち焦がれた再会】…って。* (41) 2020/07/20(Mon) 10:50:28 |
【人】 天野 時雨[ 彼女の瞳は水を湛えて、薄暗い店内の照明が 反射しては煌く。 いつかのように、やっぱり綺麗だなぁと思った。 カクテルグラスに触れた己の手に 彼女の掌がふわり重なれば告げられる、 オーダーの意味。] …あぁ。うん。 [ 知ってる、と頷けば、少しだけ彼女の顔が近付いて。 キラキラと光る瞳から、今にも滴が溢れ落ちそうで あの日拭えなかった涙を思い出した。] …うん。 まじか。 あー、えっと、 (63) 2020/07/21(Tue) 11:38:29 |
【人】 天野 時雨[ 聞こえた告白に予想はしていたけれど やはり改めて驚いて、心臓が小さく跳ねる。 馬鹿みたいな返ししか出来ずに苦笑いが漏れた。] …びっくりした。 もう会いたくないだろうなって思ってたし。 いや、むちゃくちゃ嬉しいんですが。 [ わざと茶化して言えば、泣きそうな顔が見えて、 それは本当に綺麗で。 やっぱり彼女は、強くて、可憐で。 あぁもうどうしたって敵わないと笑った。] …あの船でさ。 俺… [ 言いかけて、やめた。 代わりに、白くて細い指を絡めとるように 両手で包んで。] (64) 2020/07/21(Tue) 11:43:02 |
【人】 天野 時雨[ 彼女がもし知りたいと言うなら、 あの船旅の全てを正直に話す覚悟は出来ていて。 それでも尚、己を選んでくれるというのなら 治りかけた指の咬み傷が例えば新しく増えたとて、 それが今度は幸せの証になるのかもしれないと 思えば胸の奥がギュッとなった。] オーナー! ちょっと俺抜けますんで あとよろしくお願いしまーす! [ カウンターの端っこでニヤニヤしていたオーナーに ダスターをぽいと投げて、するりと彼女に近づいて。] 送るよ。 [ と。 手を握ったまま、店を出ようか。 ひとつだけ。 もしも彼女が望んだとしても、 …あの時、ドSなマダムに嬲られまくった話だけは 伏せておこう、と思いながら。]* (65) 2020/07/21(Tue) 11:48:20 |
【人】 天野 時雨[ 目を閉じて、完璧な角度で上を向く彼女の仕草、 …それは反則です…と心の中で唸る。 自分も身体を傾けて、唇が触れる直前で止めた。 愛しくて、嬉しくて、あふれ出る笑みが止まらなくて、 笑ったまま一瞬だけ口付けて。 そのまま彼女をふわりと抱き上げた。] ありがとね、吹雪ちゃん。 俺も、好きだよ。 [ 下から彼女を見上げて。 ぎゅうと抱きしめて、また口付けを送る。] (77) 2020/07/21(Tue) 22:56:57 |
【人】 天野 時雨…今度はさ、二人だけで、 いちからやり直そうか。 [ 耳元で囁いた。 彼女はどんな表情をしていただろうか。 とりあえずオーナーには、 今日はこのまま早退しまーす、 とメッセージを送ろう、と決めた。]** (78) 2020/07/21(Tue) 23:00:41 |
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