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【人】 緑山 美海これはこのキャンプ場で働く1人の従業員のお話だ。 朝早く出勤し、受付に行き、帳簿を確認する。それがその人のルーティーンであった。 その日の宿泊客の名前や人数を把握する、それは当たり前のこと。 受付の帳簿、普段は個人情報を守る為に閉じたままになっているそれが、珍しく開きっぱなしになっていた。 『誰かがそのままにしたのかな、後で注意しなきゃな』と思いつつ、視線をやれば。 ”緑山” の名前の横に チェックアウトを表すレ点が印されていた。 (236) 2023/03/14(Tue) 8:39:50 |
【人】 緑山 美海数日前に自身が受付を担当した、仲睦まじい夫婦。 その人たちの幸せそうな笑顔と左手の薬指に煌めく指輪が、何故か記憶に残っていた。 『楽しんで頂けたのだろうか』 受付をした時の光景を思い出しながら、そのことを考える。 あれだけの大荷物だ、きっと早くから準備をしていたに違いない。 お客さんの笑顔を見るのが好きなその人は、帰る時にも会話をしたかったな、と。 少し名残惜しい気持ちを抱いたが、人には人の都合があるし仕方がないと諦めた。 奥から同僚の1人が出てくれば、声を掛ける。 「あのご夫婦、もう帰ったんですね」 『あれ?今日は私が担当なんだけど、チェックアウトの受付なんてしたかな』『どのご夫婦ですか?』 「ほら、お揃いの赤い髪をしたご夫婦」 「紅葉みたいに綺麗な髪をしてたろ、目立つから記憶に残ってたんだよな」 同僚は不思議そうな顔で首を傾げ、口を開く。 (237) 2023/03/14(Tue) 8:43:16 |
【人】 緑山 美海『そんなお客さん来ましたっけ?』 「············え?」 ───受付の机上には、薄い茶封筒の中に入った宿泊費とホトケノザだけが残されていた。* (238) 2023/03/14(Tue) 8:45:06 |
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