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【人】 誰も殺さなくていい レヴィア>>21 ストレガ 猫が好きだった。 死を悟り、誰もいない場所に消えるその生き物が好きだった。 死を見るのが嫌いだった。 どうしようもなく悲しくて、泣きそうになってしまうから。 だから、猫が好きだった。 猫のようになりたい、と誰かに言った。 死んだ時、どこへでも消えて、無くなって。 誰も悲しませないように、そんな生き物になりたかった。 女は、店の中にて。 2匹の猫を抱いたままの体勢で、そこに居た。 猫になれなかったのか、ならなかったのか。 烏はまだ来てないのか、置いてあるだけか。 何もかもわかることはないけれど、ただ。 女がそこに居る事だけが、確かだった。 店は散々な状況だった。 撃ち抜かれて止まる時計、割れたランプ。 壁も窓も、扉だって傷だらけ。 激しい戦闘が行われたのだろうことが分かる。 女は、無防備に眠るような顔で。 横たわっている。 (22) 2022/08/26(Fri) 17:38:52 |
【人】 誰も殺さなくていい レヴィア (25) 2022/08/26(Fri) 19:16:26 |
【人】 誰も殺さなくていい レヴィア>>24 ストレガ そんな声が聞こえてくるわけもない。 死体は何の音も立てない。 もう口から冷たい言葉を吐くことも。 細い指先がグラスを撫でる事もない。 何もかもが終わってしまった、ただの肉の塊。 もう少しすれば死の匂いが強くなり、やがて腐り。 きっと見るに耐えない姿になっていく。 黒猫を、胸に近い側に。 白猫を、その一つ外側に。 そうやって抱きかかえていたから、死後に固まる腕の中、 黒猫の方は随分ぎゅぅ、と抱きしめられていた。 まるで離さないとでもいうような、いいやきっと、 それはただの現象でしかなく、そこに意味などないのだけれど。 それでも何となくそう思えるような、抱きしめ方で。 白猫は、すんなりと取れる。 黒いリボンが一つ増えている。 女の頭のリボンが一つ減っているのも、貴方にはきっとすぐわかる。 足の付け根には拙い刺繍。 L..v...と、少しぐちゃっとした文字のようなもの。 殺すだけの女の手では、針子の才能はなかったようで。 手袋の取れた指、何度か針の刺さったような傷がその証拠。 背中にも、目立たない縫い目がある。 中に何かを入れて、また閉じたのか。 やはり拙いそれは、糸を切ればすぐに開いてしまうような 縫合だったけれど。 (26) 2022/08/26(Fri) 19:24:18 |
【人】 誰も殺さなくていい レヴィア>>27 ストレガ 教えてやる、と言われて返す言葉は、きっと決まってる。 いつもと同じ温度で、同じ抑揚で、きっと頭の中に響く。 猫の胸の辺り、心臓の代わりに入っていたのは、 小さな紙きれ。 少し丸い文字が並んでいる。口語体の文章。 『貴女がこれを読んでいるなら、きっと私は死んだのね。 そして貴女は生きている。そういう事だと思うわ。』 『件の抗争は決着がついてるかしら。 ついてたらいいわ。そうしたら、死から少し遠くなる。 怪我はしてないかしら。治さなきゃだめよ。 貴女、ただでさえ目立つって自分で言ってたもの。』 『貴女が今どんな感情でいるか、なんて知らないけれど。』 『私、濡れるのは嫌いなの。』 『貴女の雨で濡らさないで頂戴ね。』 『手紙なんて、書いたことがないから、 何を書けばいいのか分からないわ。 何事もなく終わって、ずっと後にこれが見つかったら、 どんな顔をすればいいのかしら。』 『そうね。』 『伝えたい事があるの。それを書いて終わるわ。』 (28) 2022/08/26(Fri) 20:41:18 |
【人】 誰も殺さなくていい レヴィア>>27 ストレガ 『私、誰でも殺せる女なの。』 『敵も、味方も。殺せと言われたら殺せるわ。』 『つい最近も、ノッテの人を殺したもの。』 『誰を殺せと命令されても、その通りにしてきたわ。』 『でも最近、命令をされるのが怖かったの。』 『あなたのせいよ。』 『貴女が懲りずに話に来て、律儀に飲みものを用意して』 『贈り物なんて考えて、いってらっしゃいなんて告げて』 『怖がりもせずに、当たり前のように接してくるから。』 『怖かったわ。』 『怖かったのよ。』 『───命令で貴女の名を呼ばれる事が、怖かった。』 『だって、私、そうなったら。』 『きっと』 『きっと、命令に添えなかったもの。』 『私、貴女だけは殺せそうにないわ。』 『あなたのせいよ。』 『馬鹿。』 ▼ (29) 2022/08/26(Fri) 20:49:50 |
【人】 誰も殺さなくていい レヴィア>>27 ストレガ 『……それだけよ。』 『ねぇ、これを読んでるのが、殺せない貴女なら。』 『どうか、祝福してくださらない?』 『貴女を殺さずにすんだ、殺すしか能のない女の事を。』 『祝ってほしいの。』 『文字を書くというのは疲れるわね。』 『ここまでにしておくわ。』 『じゃあね、唯一人の貴女。』 『Arrivederci.』 『PS:』 『リボンは貴女がつけなさい。』 『嫌そうな顔をしないの。』 『その方が』 『目立って見つけやすいかもしれないじゃない。』 そんな拙い文章の手紙が数枚、 ぬいぐるみの心臓部に入っていた事だろう。 (30) 2022/08/26(Fri) 20:55:52 |
【人】 貴女の友達 レヴィア>>33 ストレガ 結局、一つだって約束を守ってくれない貴女。 それでも女が怒ることは、きっとない。 たとえ頬を突かれたって、怒ったりしなかったのだから。 だから、女は。 もうあなたに見える事も、触れる事も出来ない、 曖昧な存在のまま、 雨が降るのをただ見ていた。 まさか見られてる、なんて貴女は思わないだろう。 貴女もそんな顔するのね、なんて言葉も、届かないだろう。 「友達、そう。」 「………馬鹿ね、人を見る目もないなんて。」 「リボン、やっぱり似合わないわね。」 「見つけやすくて助かるわ。」 伝わらずとも、そんな事を呟いて。 ぬいぐるみに刻まれる名前も、閉じられていく傷も見届けて。 全部、全部、全部。 その最後まで、見届けて。 額にキスされたのを見れば、そっと、顔を寄せて。 ぐっと背伸びして、同じようにして。 きっと貴女の額には、届かなくて、それより下になったけど。 「Anche io.」 そんな言葉を、呟いて。 (34) 2022/08/26(Fri) 22:24:37 |
【人】 必ずまた会いに行く レヴィア>>33 ストレガ 最後に黒のぬいぐるみを傍に置かれて、 立ち去っていく貴女を、その背中を眺める。 「……必ず、見つけに行くわ。」 「だって私、暗殺屋だもの。」 「必ず、必ずよ。」 だからそれまで、待っていてちょうだい。 次に会った時、それが貴女とは違う姿形で、 私も違う姿形だったとしても。 絶対に見つけて、また、同じように。 貴女に同じ言葉を言わせるわ。 だって、私は暗殺屋。 暗殺屋は、狙った標的を絶対に逃がさない。 レヴィアが狙う、最後で、最初の標的は──── (35) 2022/08/26(Fri) 22:32:59 |
レヴィアは、指鉄砲を、貴女の胸に突き付けて。 (a2) 2022/08/26(Fri) 22:34:23 |
レヴィアは、くすり、年相応に、楽しげに笑って。 (a3) 2022/08/26(Fri) 22:34:52 |
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