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【置】 夏の雪 ユメカワ夢川深雪は死んだ人間だ。 二人がすれ違い始めたあの日から、少し経ったいつかの日。 離れる一方の距離が修正不可能なものになってしまう前に、せめて。 訣別を告げられてもいい。ただ、君の口から答えを聞きたくて。 やり直せる最後の機会さえ手放してしまいたくはなくて、やり直したくて。 ──思えばいつも、君の手を取るのは自分の役だった。 だから意を決して、自分から。あの日をやり直そうとしたはずなのに。 何処までも唐突に、理由も無く、理不尽に。その前に全てが終わってしまった。 あの道の先には、やり直せる未来があったはずなのに。 最後にもう一度、ちゃんと話がしたくて。君の家へと向かっていた。 その途中、君の家から目と鼻の先の場所で。 事故に遭って、あっけなく帰らぬ人となってしまった。 今年の夏休みが始まる少し前の事だった。 学生は頭を強く打ち即死だったと── (L0) 2022/07/14(Thu) 21:06:07 公開: 2022/07/14(Thu) 21:10:00 |
【置】 夏の雪 ユメカワただ互いにすれ違ってしまっただけなら、やり直せるはずで。 離れ離れになるにしたって、もっと良い形があったはずで。 わからなかった事が、聞きたかった事があって。 せめて、綻びが修正不可能なものになってしまう前に。 やり直そうとしたはずなのに、その前に全てが終わってしまった。 そんな最期の日をもう一度だけ、── ちゃんと、やり直せたよ。見ててくれたかな。 みんなが、先生が、夏彦が、俺にやり直す機会をくれたんだ。 随分遠回りをしてしまったけれど、何度も失敗だってしたけれど すべてすべては、高望みだったけれど。 それでも今、確かに大切なものがこの手の中にある。 あの日終わってしまった夢を繋いで、 立ち止まってしまったあの場所から再び歩き出して、 その先に今、やっと辿り着く事ができそうだ。 ありがとう、大好きだよ、ずっとずっと────だから、 。 (L1) 2022/07/14(Thu) 21:06:41 公開: 2022/07/14(Thu) 21:10:00 |
【人】 傷弓之鳥 マユミ「裏道!裏道どこにいるのです!」 流石に喉が渇いてきた。 持ってきていたスポーツドリンクは少し前に飲み干して、それでもお構いなしに声を張り上げる。 自分の足元、すぐ近く。それよりもずっとずっと、うんと遠い未来の距離。 そこにあるものは未だ何も見出せていないけれど、目の前のものははっきり見える。 兎にも角にも、ビビりで優しい彼と合流して休ませなければ。 眼前の目標だけを見据えて、校内を歩き回って。 だから── (0) 2022/07/14(Thu) 21:34:43 |
マユミは、…… (a0) 2022/07/14(Thu) 21:35:33 |
マユミは、"彼の欠片"を見た。見てしまった。 (a1) 2022/07/14(Thu) 21:35:56 |
【人】 傷弓之鳥 マユミ割れた窓。散らばるガラス。その中にぽつんと残された見覚えのある帽子。 メッセージで何度読んでも反応がないと思っていたけれど、奔放な彼だから探索に夢中になっているのだと考えて。 「くり、す……?」 その場に残された物を拾い集めて、繋げて出来上がった推測と向き合って。 軽い音を撒き散らしながらガラスを踏み砕き、弾かれたように窓へ駆け寄った。 嘘だ。まさか。そんな筈は。 ああでも、それなら何故返事がない?どうして彼の声が欠片も聞こえてこない? 窓の隙間に腕を差し込んで、懐中電灯で地面を照らす。 探している姿が無い。 無い、無い。 無い。 彼たらしめるものがどこにも見当たらない。 床に落ちている帽子以外、どこにも。何にも。 それは、確かな事実として突きつけられる死よりも、 なんて、寒々しいのだろう。 (1) 2022/07/14(Thu) 21:37:30 |
【墓】 チャラ男 ウラミチ──男はカナイの遺体の傍に胸を抑えるようにして縮こまった体勢で横たわっている。 男の腕の中には大事そうに抱えられた誰かの忘れ物。 泣きつかれて眠ってしまったようにも見えるがその心臓はもう動いていない。 (+0) 2022/07/14(Thu) 21:48:13 |
【人】 傷弓之鳥 マユミ「裏道!栗栖!何処にいるのですか!」 叫んだ拍子に唾液が気管に入って思わず咳き込んだ。 体をくの字に折り曲げて、暫く咽せる。 縋るように時折スマートフォンを目にしても、既読の数が増えやしない。そもそも、来た頃と比べたらすっかり減ってしまった。 窓を割って怪我をしていたらどうするんだ。首根っこを掴んで明日香の前に突き出してやる。 あの子は自分に比べたらひょろくて腕っぷしも強くない。 それに、窓から落ちていたのだとしたら。タダじゃ済まない筈だろう。 裏道も裏道だ。悲鳴はあんなに大きかった筈なのに、どうして肝心な時に泣き声一つあげてくれないんだ。 ちゃんと聞くから、聞いているから。ここに居るって教えてほしい。 言いたいことは山ほどある。 ある、けど。 「怒りません、怒りませんから……殴ったりもしません。 しませんから……出てきてくださいよ、二人とも……」 (2) 2022/07/14(Thu) 21:49:43 |
マユミは、昇降口の隣の空き教室。 (a2) 2022/07/14(Thu) 21:52:56 |
マユミは、そこに鳥飼も司馬もいたから、もしかしたらと思って。 (a3) 2022/07/14(Thu) 21:53:21 |
マユミは、いなくなった人は皆、そこに集められているのだろうと思って。 (a4) 2022/07/14(Thu) 21:54:40 |
【人】 友達 ネコジマ『さっき音楽室にいましたよ』 グループメッセージにそう送ろうとして、はたと止まった。 帽子は……どうだっけ。被ってい た なかったような気がする。「んん……?」 「うん」 「いいや」 (3) 2022/07/14(Thu) 21:54:47 |
マユミは、扉に手をかけた。 (a5) 2022/07/14(Thu) 21:54:57 |
ネコジマは、「いいや」 よくないから繰り返した、あまのじゃく。 (a6) 2022/07/14(Thu) 21:55:31 |
ネコジマは、結局既読を付けただけだった。 (a7) 2022/07/14(Thu) 21:57:10 |
ミナイは、声の聞こえる場所へ、なんだここに落ちていたのかキミは。ようし、掴まえた、あとは。 (a8) 2022/07/14(Thu) 22:03:39 |
ネコジマは、誰かの自転車の籠からマッチ箱を拾った。 (a9) 2022/07/14(Thu) 22:08:44 |
【人】 不知 ミナイにゃあ。と一鳴き。 廊下を一人で歩いて耳を済ます。 たくさんの声が聞こえるけどどれも冷めたものばかり。 帽子をみなかった? どこにあるか教えてくれないかな、おやありがとう。 彼らはどこにいったの? 内緒なんていけずだね。 あのこはまだぶじかい? なんだよ、対価なんてやらないよ。 キミからなにももらえないからね 「……さて、ここか。 やっぱりキミの気配は黒くない、ははっ」 栗栖の帽子を掬って、大事に抱き締める。 カメラと、夢と、そしてこの帽子と。 まだ足りない、 まだ返してない。 欲しいな、もっと欲しい。 「 逃がさないからね 」 (4) 2022/07/14(Thu) 22:12:43 |
マユミは、手短に明日香に帽子の場所を伝えた。 (a10) 2022/07/14(Thu) 22:13:22 |
ミナイは、栗栖の帽子を被りながら、気分良さそうに人を探している。 (a11) 2022/07/14(Thu) 22:13:27 |
マユミは、教室に眠っている彼の姿を見た。 (a12) 2022/07/14(Thu) 22:14:14 |
ミナイは、マユミのメッセージに新着。『栗栖くん、まだ生きてるよ』 (a13) 2022/07/14(Thu) 22:15:17 |
マユミは、ミナイのメッセージに新着。『こちらは、裏道を見つけました』。 (a14) 2022/07/14(Thu) 22:16:10 |
マユミは、さらに続けて。『鹿乃とずっと一緒です』。それだけ。 (a15) 2022/07/14(Thu) 22:16:34 |
【人】 友達 ネコジマ【倉庫】 「あった」 校舎の外の倉庫。見つけたのは手押し車。 一輪の、いわゆるねこぐるま。 「んー……まぁ、ないよりはマシでしょう」 車輪が大きいから、空の状態なら階段の上り下りが 普通の台車よりは楽かも。なんて考えたりして。 まあそうやって持っていきはしないかもしれないけれど。 気持ち程度にネジを締めたり、車輪をからから回したり。 「うん、使えそう」 そうして、通り過ぎてきた場所に戻るのだった。 (5) 2022/07/14(Thu) 22:17:48 |
ネコジマは、思い出したように、花火も籠から拾って行った。 (a16) 2022/07/14(Thu) 22:18:20 |
【人】 傷弓之鳥 マユミ生きてる。 届いたメッセージを見た瞬間、何かが溶け出して。 「………………くすん」 一度だけ、静まり返った教室に小さな音が響いた。 (6) 2022/07/14(Thu) 22:20:33 |
友達 ネコジマは、メモを貼った。 (a17) 2022/07/14(Thu) 22:22:06 |
マユミは、眠る裏道に何かを囁いて、そっと静かに教室を出た。 (a18) 2022/07/14(Thu) 22:24:40 |
【置】 陽炎 シロマ空襲警報が解除されて、十数分後のことだった。 プロペラの音が青空を裂き、再び警報が鳴り響く。 下校を再開していた子供達が、一斉に近くの防空壕へ駆け出した。 ……とはいえ。幼い子供の全速力など、高が知れている。 避難は間に合わず、焼夷弾の降り注ぐ中を走ることになった。 運動が苦手な一年生が、一人転んだ。 道を戻り、その子の手を引いて再び走り出す。 ──ふと。 握っていた小さな手の感覚が無くなって。 あ、と思った瞬間。 服が、皮膚が、髪が────体が、燃え上がった。 ……自分一人で逃げていれば、この場は助かっただろう。 しかし。 教師を目指す人間が、幼い児童を置いて逃げるなど、できる筈が無かった。 (L2) 2022/07/14(Thu) 22:27:27 公開: 2022/07/14(Thu) 22:30:00 |
【置】 陽炎 シロマ──だったら、私達がそんな先生になろう。 約束は、互いに果たせなかった。 彼は遠い戦地で死んだ。骨さえ帰って来なかった。 私だけが律儀に約束を守る必要など無いけれど。 あの指切りを、無かったことにしたくなかったから。 ──待ってるから。絶対、返って来てね。 あの日から。 ずっと、 焼けた肉の臭いがする (L3) 2022/07/14(Thu) 22:28:26 公開: 2022/07/14(Thu) 22:30:00 |
【置】 不知 ミナイ人が死ぬと何もなくなる。 それはほんとうであって、違うと言える。 生きて居る人は、死んでいる人を認識できなくなる。 別の世界に彼らはいってしまった、と感じてしまうだけなのだ。 だけど、ボクは違う。 薬袋明日香は彼らが見えた。 終わった、彼らが残した者が彼らがいた証が見えた。 黒い靄のようにみえるそれは、人に見えて、動物に見えて、 悲しそうで、辛そうで、ずっと停滞していた。 それは幽霊とよばれるようなものだったのかもしれない。 もしかしたら魂といわれるものだったのかもしれない。 非現実的で、見えることは少数で、誰しもが出来るわけじゃなくて。 間違いなのは、ボクで。皆が正しくて? 死んだ人がいる世界が間違いで、生きてる人がいる世界が正しい? わからないよ、ただ生きてるだけなんだから。 (L4) 2022/07/14(Thu) 22:29:43 公開: 2022/07/14(Thu) 22:30:00 |
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