人狼物語 三日月国


83 【R18】ラブリーナイト・りたーんず!【ペアRP】

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視点:人

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【人】 星条 一 → スタンリー

[初めての口づけの味。
 それは十の年齢差があっても変わらないものであったようだ。

 男は珠莉が浮かべた表情に頬をやわらげた。
 喜んでくれているのがとても分かるもので、
 一つ共通項を積み重ねたことにも嬉しさを覚えていた]



   気に入ってくれたなら嬉しいよ。
   ご飯は先に頼んでおこうか。


[口づけを重ねながらそうした会話を積み重ねることでキスすることが普通の間柄のように思えてくる。
 心の距離は実際の距離とも言われることもあり今のこの距離感は最も近しいものと言えるだろう。

 おねだりを聞くと男は頷いて見せ。
 受話器を取りルームサービスをコールして少し後の時間にと指定を入れた。
 お風呂からあがる頃には届くだろう遅めの夕ご飯は珠莉の好むものと男はサンドウィッチをはじめとした軽食を中心としたものとした]



   さて、と――珠莉。
   お風呂に行こうか……ところで。


[男は身体を起こして自然と珠莉の横に移動した。
 背と膝裏へと手を差し入れると横抱きのままお姫様抱っこをしてベッドの端まで移動してから立ち上がる]
(55) 2021/07/16(Fri) 0:29:12

【人】 星条 一 → スタンリー

   こうして運んでもらうのも、初めてか?


[どこまでが初めてなのだろうか。
 それは未だに分からないが男はそう尋ねながらお風呂場へと珠莉を連れていく。

 辿り着いたお風呂場はそれだけで並みの部屋一部屋分程度はあった。
 というより男の自室より広いかもしれない。
 壁際はガラス張りになっており外を一望できるようになっていた。
 恐らく外からは見え難いようになっているだろうが少しばかり落ち着かない。
 そこに露天風呂とでもいうように浴槽がありそこまた広かった]
(56) 2021/07/16(Fri) 0:29:27

【人】 星条 一 → スタンリー

   円形の風呂なんて初めてみたぞ。
   ジャグジーか、これ。


[浴槽の近くにはいくつかのボタンがあり、押すと泡の出るものもあるようである。

 一先ずはと男はシャワーを弱めに出し始めた。
 そのシャワーですら専用のもので天井に取り付けられている輪状の目から出てくるようである。
 いよいよわからんと男は首を傾げると風呂の床に腰掛けた。

 組んだ脚の合間に珠莉の尻を置いて座らせて、
 横抱きのままにぱらぱらと霧雨のように降る温かな湯を浴びる]



   これはあれだな。
   滝とかミストとかそういう。
   マイナスイオンがあるとかいうやつだ。


[あるかは知らないが男は考えることを止めた。
 豪奢すぎて理解度が追い付かないでいる。

 男は手を伸ばしボディソープを手に取ると手の中で泡立て始めた]
(57) 2021/07/16(Fri) 0:29:36

【人】 星条 一 → スタンリー

   珠莉はどこから洗うとか決めてるのか?
   特になければ――。


[男の手はその耳元へと伸び、耳の裏側に指を這うよう伸ばしているのは明白であった。
 隅々までと身体を洗ってしまおうと思うが男の手が集中する場所なぞ言わずもながであろう**]
(58) 2021/07/16(Fri) 0:29:43

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[「ちゆ」ってあの夜みたいに呼んで
 柔らかい髪を梳いてあげたら
 もっと喜んでくれたのかな。
 でも、ごめん。もう、そんな資格はない。

 抱いた体はどくどくと脈打ってて、
 確かな生命の匂いがした。
 それがまた、胸がぎゅうっと
 締め付けられるような心地になって
 また新しい涙が頬を伝っていく。

 辛かった。
 でもそれを泣くのが、自分で許せなくて。
 家も、絵美も壊して、梨花からママを奪って、
 それでどの面下げて泣くの?って。

 千由里の肩を濡らしても
 振り払われなかったのをいいことに
 今しばらくだけ、自分の心を解き放った。]
(59) 2021/07/16(Fri) 11:24:03

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[そうして話を聞いてもらえれば
 少しずつ落ち着きを取り戻していく。
 「話聞くだけ」って千由里は言うけれど
 聞いてくれるだけの魔法はすごい。
 ずっと俺のこと考えてくれてた、って
 今この状況になってそれほど嬉しい言葉はなくて
 つい、また嗚咽を漏らしてしまう。]


  保育園行ってみたら、同い年くらいの
  女の子達、結構凝った髪型しててね。
  「パパだから出来ない」って、
  思われたくないし、言いたくもないんだ。


[三つ編みを習いたい理由を打ち明ける時は
 やっぱりちょっと恥ずかしくて
 照れ笑いで誤魔化した。
 千由里が笑顔の奥に秘めた気持ちにまだ俺は届かない。
 隣にいる体温が、嬉しくて、つい
 ベンチの上でそっと指を絡める。]


  もうすぐ3歳。
  もう、ずっとずっとしゃべってるし、
  それ以上にずっと歌う子なんだ。


[絵美が遺していった、俺の子ども。
 今一番、守らねばならない存在。]
(60) 2021/07/16(Fri) 11:25:06

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  会ってみる?
  やんなっちゃうくらい俺に似てるよ。


[くすくす笑って、それからふとあの夜を思い出す。
 「ママになってよ」なんて
 責任を取る気もないのに吐き出した自分に
 今更、心底腹が立つ。

 怖いけど、千由里の方を向いたら
 どんな顔してただろう。
 瑣末事に溢れかえった脳みそで
 それでも千由里への気持ちを整理して……]


  ………………正直、ね。
  いろんな事があって、考える余裕も無かったけど
  この夜景を見て、ちゆ、のこと、思い出してた。
  あの時デートしたアクアリウムみたい、って。


[少しずつ、吐き出していく。]
(61) 2021/07/16(Fri) 11:29:03

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  全部人に押し付けて、逃げて
  そのくせ「愛してる」なんてよく言えたなって
  今となっては恥ずかしいけど……
  でも、ちゆが幸せでいてくれたら、って
  その気持ちは嘘じゃない。
  ずっと俺の事覚えてくれたのも、嬉しい。

  …………だから、もし良かったら、さ。
  またこうして、会って欲しいと思うんだ。


[あれだけキスして、獣みたいにセックスしたくせに
 今は手を繋ぐのが関の山。
 だけど、震える手で千由里の手を握って
 心の奥の寂しい部分を、晒け出す。]
(62) 2021/07/16(Fri) 11:29:26

【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里

[一番じゃなくてもいいやって、一度は確かに思ったの。
 だってちゆには届かないと思ったから
 彼には奥さんがいて、リカちゃんがいて、
 そこに入り込む隙間を見つけられなかったから。

 ――――だけど今は違う。
 目の前に彼がいて、彼の愛する奥さんはもういない。
 タイガさんをちゆだけのものにして
 ちゆがタイガさんだけのものになって、
 二人で「普通の」幸せな恋をするのに
 邪魔なのは小さなあの子だけ。

 期待しちゃうの、タイガさんのせいだよ。
 そうやってちゆの目の前で泣いて
 他の人に見せられないような弱いところを晒すから。

 手が届くような気がして、欲しがってしまうんだ。]
(63) 2021/07/16(Fri) 15:24:23

【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里



  ふぅん、そうなんだ。


[タイガさんがリカちゃんの話を始めたら
 鼻歌を歌うように暢気な声で相づちを打った。

 今が夜で良かった。外が暗くて良かった。
 目だけは笑えない、可愛くない笑みを浮かべてしまうのも
 本当はそんな話をすこしも楽しいと思えない本心も
 全部暗がりが隠してくれるから。]


  おしゃべり好きなんだ、可愛いね
  一人でお世話するのは大変だろうけど……


[遠くの景色を見つめたままで返事した。
 顔を見ない割に、絡めた指だけはぎゅっと握って。]
(64) 2021/07/16(Fri) 15:24:35

【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里

[ごめんね、ちゆはやっぱり子どもが好きじゃないみたい。
 彼が笑うのを聞けばつられて笑って、
 「タイガさんの子どもだもんね」なんて零して。

 
 知ってるよ。
 目のかたちも鼻筋も、
 笑い方もよく似てるって。
 それであなたに似てないところは
 奥さんの面影を残しているんでしょう?


 彼がちゆの方を向けば、笑ってみせる。
 あの日より静かな笑みを浮かべてみせる。]


  覚えてくれてたんだね、嬉しい。
  連絡先も交換してなかったから、
  もう忘れちゃって会えないと思ってた……


[ちゆはこっそり知ってたんだけどね。
 さっさと掛けちゃえば良かったな、電話。]
(65) 2021/07/16(Fri) 15:26:19

【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里

[そうして彼が一つ、また一つ語り出す。
 後悔だとか嘆きだとか、それと少しの愛だとか。
 繋いだ手はちゆより冷たくて震えてた。

 それでも熱は溶け合って、同じ温度に染まる。
 あの夜みたいに寂しさを分け合って――だけど、
 彼が知らない本心を伝えるつもりはなかった。

 
「愛」の形なんて知らない。
 リカちゃんがどんなに大切かなんて知りたくない。
 
 あの子がどんなに可愛くて
 無邪気でかけがえのない存在だとしても
 ちゆにとってはタイガさんと誰かの子どもで
 いらない存在でしかないの。


 ひどい?ひどいよね、分かってるよ。
 でも、だって、だってさ、]
(66) 2021/07/16(Fri) 15:26:39

【人】 大学生 廣岡 珠莉


[至近距離でゆらゆら見つめながら、
 また交わしたキスははじめての味。
 柔らかな微笑みを向けてくれるから、
 それが嬉しくて首をすこし傾けて、
 もう一度重ねて、ちゅ、と音を立てた。

 からん、と口の中で鳴った飴玉は甘くて、
 だけど少し喉に絡む。
 じわ、と口内をうるおす唾液を飲み込んで、
 その問いかけににっこり笑って頷く。
 
 忘れてしまいそうになる、この関係が
 今日、このとき限りであることを。
 男性にこんなふうに甘やかされることは、
 今までなくて。はじめての心地は、なんだか
 中毒性すらあるように感じた。]

 
(67) 2021/07/16(Fri) 19:47:39

【人】 大学生 廣岡 珠莉

[彼が、ルームサービスをコールしているその間
 一人、ベッドの上でその姿を見つめる。
 ずっとくっついていたから、なんだか
 一人でいることが、違和感で。すこし、寂しくて。
 はやく帰ってこないかなって思いながら
 体を包む薄い布の中で、ころころしていた。

 何が食べたい?と聞かれても、すぐには
 思い浮かばなくて、とりあえず、スムージーが
 飲みたいとお願いしただろう。
 あとは、彼が注文したサンドイッチに、
 わたしも、と同調して。

 やっとこちらに向いた視線に至極嬉しそうに
 微笑みかけて、頷く。
 すると、その腕が背中と膝裏に周り、
 ふわりと持ち上げられるから、
 首に腕を回して、引き寄せて頬にキスをひとつ。]


    んー……お父様に小さい頃、
    運んでもらったことはあるけれど……

   こんなふうにしてもらうのは、はじめて。


[と答えてもう一つ、今度は唇に、キスを。
 彼が歩むたびに少し揺れる体。
 そのリズムが心地よくて、自然と口元は綻んだ。]
(68) 2021/07/16(Fri) 19:48:05

【人】 大学生 廣岡 珠莉


 
[たどり着いた浴室は、自宅にあるものと
 似た作りになっていて、ふむ、と頷く。
 ガラス張りの壁の向こうは、夜景がよく見えた。
 けれど、彼の感想はどうやら違ったようで。
 困っている様子の彼を見ながら、
 楽しそうに笑っただろう。
 ぱらぱら降ってくる温かな霧雨。
 少し上を向いて、汗をかいていた額を流す。]


   ふふ、そうかも。
   なんか……体に良さそう……?


[くすくす笑いながらそんな返事をして、
 心地よさに目を細めた。
 清潔感のある花の香りが鼻腔をくすぐる。
 彼の問いかけに、「んー」と間延びした
 思考時間のあと ]


   とくには、ないです


[と答えると、その指が耳裏をなぞる。
 急な刺激にゾクゾク、としたものが
 駆け巡ってびくん、と体が震える。]
 
(69) 2021/07/16(Fri) 19:48:22

【人】 大学生 廣岡 珠莉





   くすぐ、ったい


[閉じかけていた目蓋を開いて
 見つめれば、目は合っただろうか。
 合ったならば、じぃ、と見つめよう。
 彼の手のひらが体を滑って
 洗ってくれるから、その度に微かに震えながら
 その瞳の奥を、覗き込むように。
 前面が洗えたのがわかれば体を捻り、
 首に腕を回して軽くその胸板に擦る。
 ぬる、とした石鹸で滑った素肌同士
 胸の蕾がひっかかって、その刺激に
 また主張を始めるのが自分でもわかった。]


   ……はじめさ、ん


[体を滑っていた指が敏感な箇所に触れるなら、
 びくん、っとまた跳ねて、同時に、
 見つめた瞳がとろりととろける。

 舌を差し出すようにして近づけば、
 それを吸ってキスしてくれないか、と。]*
(70) 2021/07/16(Fri) 19:48:43

【人】 星条 一 → スタンリー

[膝上の珠莉はこの浴室を見ても動じてはいなかった。
 男の反応を見て笑う姿に少しばかり唇をへの字にして見せたが別段腹を立てていたわけでもない。
 改めて感じるのは住む世界の違いというものだ。
 如何ほどにこの場で親しくなったとしても外に出てしまえば大学の講師と教え子という関係に戻ってしまう。

 見つめてくる視線はそれを見通すかのようで男は小さく笑みを浮かべて見せた。
 覗き込まれると弱ってしまう。
 齢を重ねれば自然と減ってくる真っすぐに見つめるという行為を自然と行えるのは羨ましくもあった]



   詮無い事か。


[男は小さく愚痴ると指先で珠莉の身体を愛でていった。
 細かな泡を身に纏わせ肌の上を指先でなぞりすべらせていた。
 掌で、指先で。
 触れる度に震える身体は男を求めてくれているようであり、
 狂おしい程に愛おしさを覚えてしまう。

 身体の前を洗い終わってもそれは乳房以外だけである。
 首筋に回る腕に、背に回している手を引き寄せると華奢な身体を抱き寄せた]
(71) 2021/07/16(Fri) 20:54:11

【人】 星条 一 → スタンリー

   珠莉――愛してあげるのは。
   まだ続いているからな。


["まだ"終わっていないと言として。
 男は蕩ける瞳を見つめながら差し出された舌に己の舌を絡めた。
 唇が触れ合う前の舌だけのキスは留めるものがない唾液を滴らせていった。
 濃厚に舌を絡め合うと漸くと唇を重ねあい、貪るようにその柔らかさを堪能していく。

 男の手もまた漸くと乳房に触れる。
 下乳のラインに手を這わせて弾ませるようにしながら汗をかきそうな場所を撫でていく。
 そうして胸板に感じたひっかかりへと指をかけると二本の指で交互に爪弾いていった]



   そう――教えることは山程あるんだ。
   教え終わるまでは、まだ、な。


["まだ"と"まだ"。
 時間の違いを掛け違えていきながら男は股間の盛り上がった熱を柔らかな尻肉に押し付けた]
(72) 2021/07/16(Fri) 20:54:19

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[話を聞いてくれるのが嬉しくて
 ついつい梨花のことばっかり話してしまって
 きっと俺が千由里の様子に気がつくのは
 ちらりと見た彼女の表情が
 思っていたより静かなのに気付く頃。]


  忘れたり、しないよ。


[なんだろ、女の子と会話してて
 他の女の子の話しちゃった時みたいな
 ぞわっとした感覚。

 でもちょっと、可愛いって思ってしまう。
 張り合わなくていいんだよ。]
(73) 2021/07/16(Fri) 21:01:48

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙

[問いかけには、じっと黙って言葉を探す。]


  俺にとってのちゆはね─────


[もちろん「一夜限りの相手」ではない。
 もちろん「ママ」でもない。
 「お嫁さん」なんて、望んでいいの?
 いろんな言葉に当てはめようにも
 上手く当てはまる言葉が浮かばなかった。]


  今一番、幸せでいて欲しい人、かな。


[近しい言葉が、それだった。]
(74) 2021/07/16(Fri) 21:04:03

【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙



  もしあの日、ちゆと一緒に駆け落ちして
  家から逃げ出しちゃったとしても、
  俺はまた結局ちゆからも逃げたと思う。
  子どもができても殺させて、
  そんでごちゃごちゃ言わなさそうな子を探す。
  それがどんなに酷いことかも知らないで。


[握った手は、まだそこに居てくれたかな。
 顔を上げたら、幻滅の顔があったりしないか。
 また視線をスニーカーに落として
 自分の心を吐き出していく。]
(75) 2021/07/16(Fri) 21:04:27

【人】 三月ウサギ



  …… 少し考えたのは、俺の家族だった人のこと。


  「そんなこと考えてなかったのよ、どうしよう?」


  ほわんとした笑顔で搾取する。
  そんな悪意は、俺が偽物だったからで。
  君が晒されることがないといい。
  心からの願いを浮かべて。
 
 
(76) 2021/07/16(Fri) 23:52:38

【人】 三月ウサギ



  微笑みを重ねて、別れの言葉を重ねて。
  さらに未練を断ち切るように。


  ─── なかったことにしていい。>>2:D18



  再度念を押そうとした言葉は、
  ふわりと香る甘い匂い。
  胸元を飾るリボンと共に
  流れるように美しい、洗練された所作に奪われた。
   
     
(77) 2021/07/16(Fri) 23:53:36

【人】 三月ウサギ



  ***

 
(78) 2021/07/16(Fri) 23:56:07

【人】 三月ウサギ



  そのあと、俺は両親と出会い。
  そのあと、俺は両親と別れた。


  「 品のない子ね。
    やはり育ちが卑しいとああなのかしら? 」

  「 あれなら、あの偽物の方がまだ ─── 」


  俺の前では穏やかに微笑んでいたけれど。
  陰でそんな話をしているのを聞いてしまえば、
  嫌でも気づく。
 
 
(79) 2021/07/16(Fri) 23:56:40

【人】 三月ウサギ



  そうか、俺には家族なんていなかったんだ


  気付いた瞬間、目の前が開けた。
  迷いはなかった。
  そのまま、あの大きくて息苦しい家を出た。
  名前はどちらでもよかったけれど
  下手に変えて詮索されるのも煩わしい。

  なので、一番最初にもらった。
  俺は俺の嫌いな、
俺の好きな女の子の
名前で生きていて。
 
  元々大学は奨学金で通っていた。
  再びキャンパスに戻ることも可能だっただろう。
  生活費もバイトして稼いでいた。
  家族を養う必要がない分、余裕ができたくらい。


  そうか、俺には家族なんていらなかったんだ
 

  気付いてしまった、幸せで不幸なこと。

 
(80) 2021/07/16(Fri) 23:57:14

【人】 三月ウサギ



  …………


  誰にも煩わされない幸せな日々。
  誰にも煩わされない不幸せな日々。

  世界は次第に、色を失い。
  今が夜なのか朝なのかもわからない。
 
 
(81) 2021/07/16(Fri) 23:57:30

【人】 三月ウサギ



  そんな日をどれだけ過ごしただろうか。
  アスファルトの地面を渡る風が、
  短く切り揃えた髪をさぁっと通り抜けた。

  一瞬、反射的に目を閉じて、
  パッと風の吹く方に目を遣ると、
  どこかで見たリボンが、ひらりと宙を舞っていた。
 
 
(82) 2021/07/16(Fri) 23:58:06

【人】 三月ウサギ



  1つのリボンへと伸ばされた2つの右手

  俺の方が僅かに早く、それを掴んだ。
  
 
(83) 2021/07/16(Fri) 23:58:16

【人】 三月ウサギ



  「 これ、─── 」


  リボンを掴もうとしていた手に、
  俺の手に収まったリボンを掴ませる。

  それから相手の顔に、大きく目を見開いて。
  思わず、その名を口にしようとして、噤む。
  
 
(84) 2021/07/16(Fri) 23:58:25