……病院だろ、ここ。


[そんな苦笑を漏らしながらも。

でも、やっぱり、

皆が俺を心配してくれていた事が、
何よりも嬉しくて。

生きてた方が幸せだ、なんて
柄にもなく思ったりもして。]

　……あぁ、ほら、手で擦んなって。


[こうして、すぐ傍でなずなの涙を拭いてやれる今が。

きっと、何より幸せなんだって。]

　
　

　　　

[


こうして、なずなが今、
俺の上に跨って抱きついてくる痛みには、
再会の喜びとは違う涙が流れたけれど、

まぁ、それでも。

あの空間で、一人寂しく本を読むよりかは、
きっと、こちらの方が幸せなんだって。

…そう、思った。]*

[────それから数ヶ月後。

あの不思議な喫茶店で読んだ本を
ゆっくりだけれど、集め始めた。

戻った時に、既に百巻近く出ていると聞いた時は
一瞬目を丸くしたけれど。

きっと、ゆっくり前に進め、
なんていうあの店員の意図を感じられなくもなくもなくて、

疲れたら、ほんの少し休憩すればいい。
本を読んで、本の世界へ入り込めばいい。

…とかいう想いも感じなくもなくもなくて。

今は漸く、
あの日に読んだ十一巻までを集め終わったとなろだ。]
　　　

[あの場所で感じた気持ちは、
決して悪いものじゃなかったから。

だから、これからも気長に集めていこうと思う。

きっと、これを全部集め終わる頃には
なずなは俺が傍にいなくても
大丈夫な年になってるんだろう。

……もしそうなったら、
もう少し他の本にも手を出してみるのも
ありかもしれない。

…なんて未来図を描きながら。]

　おはよう、なずな。
　今日は晴れだから、水色の靴、履いてこうか。


[今日も、まだまだ手のかかるこの子の傍にいるのだ。]


　って、
　

　
　


[──こんな、何気ない日常の幸せを噛み締めながら、な。]**