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【人】 世界の中心 アーサー[ 気がつくと、宙を見上げていた様な気がした。 いつのまにか近くにいた彼女に、 ( “いのちの危険”がないと、 白昼夢にも見ないから… ) いつのまにか手を取られていて、 そうして視界が回ったのだった。 宙を見て、絨毯を見て、 彼女の顔を見下ろしている。] (113) 2020/05/28(Thu) 21:53:19 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 良くもまあ腕だけでも付いたものだった。 彼女の薄い身体の上に、ぺしゃんと潰れようものなら 格好もつかないし直ぐにでも飛び退いている。 腕をついたから、止まった視界に思考も止まっていた。] (120) 2020/05/28(Thu) 22:15:30 |
【人】 世界の中心 アーサー……ふ、君は時々すごいことをするね。 そうだよ、僕は体幹がゆるふわなのさ… 僕の代わりに、君に踊ってもらおうかな。 [ 暫く驚きに瞳を見開いていたけれど、 言葉を聞き始めてから硬いかんばせが不意、解け 吹き出すわけじゃあなかったけれど、 ため息のよに息が漏れた。] (121) 2020/05/28(Thu) 22:16:15 |
【人】 世界の中心 アーサー…君の記憶にだって、この“アーサー”としてね。 君のことは、僕だけが覚えているっていうのも、 それはそれで良いかもしれないな。 [ 薔薇が香るかのようだ。 隠れていたものが、存在を示すよな 暴かれるよな、解けた声。] (123) 2020/05/28(Thu) 22:20:41 |
【人】 世界の中心 アーサーふふ、君が守ってくれるだろ。 ──僕は誰の顔も覚えているけれど、 先代の顔だけは覚えていないんだ。 あの人は、残したくない人だったのだろうね。 (190) 2020/05/29(Fri) 20:52:59 |
【人】 世界の中心 アーサー[ それでも、血脈だけは残したのだから、 今、“先代と同じ年”の男としては、 彼の方が進んでいる。女嫌いも拗らせたものだ。 母は、顔だけの存在だから、 …もしかしたら似たもの同士だったのかもしれない。] (191) 2020/05/29(Fri) 20:53:43 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 先代の亡き後、 ──彼は残さない人だったから、 残るものへの言葉も無く、 屋敷や、財産なんかもそりゃあ実子である己に 大半残されたとは言え、…色々あった。 何故か文章を偽証するものもいたし、 能力ももたないくせに後継ぎと言い出す者もいた。 結局、幾つかを虫食いされている。] (192) 2020/05/29(Fri) 20:54:21 |
【人】 世界の中心 アーサー[ そりゃあ そうだ。 そのときの“実子”は齢8つの子どもである。 すべてを理解し、すべてを手に残すなんて 抑考えていなかったのだ。 欲しい人がいるなら、あげればいい。 …どこまでも貴族の子であった。 それまでは唯純粋で純朴な、一貴族でしかなかった。] (193) 2020/05/29(Fri) 20:55:03 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 指先が、銀を攫った。 使い方になんか慣れていない、知らないものだ。 ──これからだって、使うことなど無いだろう。 それだから振り下ろされた銀色は、 広がる茶を1束切るようなもの。 絨毯に突き刺さっている。 …目測だけは正確だ。] (194) 2020/05/29(Fri) 20:57:19 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 切り落とした茶を片手で掬うと、 片手になったことが災いしたか、彼女の横に転がった。 どてん、と格好悪く。体幹がゆるふわなので仕方がない。 絨毯に2人並ぶ景色も珍しい。 久しぶりに天井を眺めている。] (196) 2020/05/29(Fri) 20:58:25 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 青薔薇のドレスが独り歩きをはじめたのは、 どれくらい未来の話だったか。 食事のマナーに、振る舞い方。 話し方は──少々難しかったとは言え、 すこぅし文章は読めるようになっていたかもしれない。 少なくとも文字については、 何処ぞの貴族が教師であった。 ダンスに関してはすっかり抜かれ、 この舞踏会だって本来、予定はなかったのである。] (238) 2020/05/29(Fri) 23:47:11 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 変わらず、まだ ゆめを見ているし、 手を汚さずに首を落とすよな生き方をしていた。 まあるい月夜のゆめでなくて良かったと思う。 ──きっと不機嫌なんかでは済まないから。] (240) 2020/05/29(Fri) 23:48:24 |
【人】 世界の中心 アーサー[ ──それだから男は、赤薔薇の意匠を身に纏っていた。 振り撒く香りも、薔薇の其れ。 百合をすっかり塗り替えた“リドル”の姿。 馬車はリドルの紋章を背負い、向かっている。] (241) 2020/05/29(Fri) 23:50:33 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 踏み込んだ赤薔薇は、一目小宮内を見廻した後、 何の躊躇いもなくど真ん中を横断した。 探している“色”など、たったひとつ。 黄でも白でもなく、青だ。 ──唯の青じゃあない。 男が唯一を選んだ、奇跡の“ロイヤルブルー”である。] (243) 2020/05/29(Fri) 23:51:36 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 物珍しげな若い貴族の視線も、 色付いたおんなの視線もすり抜け、 薔薇色の瞳は何にも興味を示していない。 唯一、気にしたものといえば、 大きなガラス窓の向こうの、薔薇園の彩のみだ。 嗚呼…何故夜に騒ぎ出すのだろう。 全てが黒薔薇に見えるのでは、勿体無いじゃないか。 若い奴らの頭の中は知れない。 もう先代の年を越えた男は、苦く表情を歪めていた。] (244) 2020/05/29(Fri) 23:52:07 |
【人】 世界の中心 アーサー──嗚呼、そんなところにいたのか。 [ 赤薔薇が気が付いたのは、下のヒールのためである。 木の上に揺れる、細い脚。 もう1人の姿は、今のところ気がついていないらしい。] (245) 2020/05/29(Fri) 23:52:50 |
【人】 世界の中心 アーサー[ …気がついていなかったから、 赤薔薇はきっと暴くよに香るし、 人前では見せないような、笑みではないかんばせがある。 ──改めて言ったところで、 意味のわからない一文だ。 全く説明が足りない!] (247) 2020/05/29(Fri) 23:53:59 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 嗚呼、そうだ、“ひどい”のだとも。 ひとのことなんか考えないし、 情緒不安定でおこりっぽい。 まともにダンスも踊らなければ、 人と会う体力さえもう尽きていて 小宮を突っ切るだけで肩で息するよな状態。 ──段々、体力の上限が下がって行く。 年齢にしてはおかしい程に。] (315) 2020/05/31(Sun) 12:59:19 |
【人】 世界の中心 アーサー[ こどもは、嫌いだ。 …きらいなものなら両の指に収まらないほどあるけれど、 その中でも左手の小指ぐらいに入る“きらいなもの”だ。 去りゆくこどもに嫉妬するなんて事はなくとも、 デートなどと聞くなら ──僕ともしたことがないのに? なんて態々聞き返した。 中庭などの屋敷の中でのふたりきりは、 デートには含まれないらしい。] (316) 2020/05/31(Sun) 13:02:04 |
【人】 世界の中心 アーサー[ 気取って受け止めては見たものの、 結局ダンスの話になれば言葉を濁してしまう。 体幹がゆるふわなので子どもだろうと木にも登れない。 青薔薇を見下ろす。 選び抜かれたロイヤルブルー、奇跡の青。 …見慣れないような気もする。 とくに、結われた髪と、薄い化粧が。 おんなは化けるなあ、などと。] (318) 2020/05/31(Sun) 13:03:19 |
【人】 世界の中心 アーサー…君が“青薔薇の君”でいたいのなら止めやしないさ。 馬に蹴られたいわけでもないし。 でも僕は、 君をリドル家として送り出しはしないからね? (319) 2020/05/31(Sun) 13:03:45 |
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