【人】 Marguerite シャーリエ―― 空ラッコの白昼夢 ―― [いつからだったのかなんて、自分でもわからない。 庭に迎えたのだからお茶の相手は当然、 と何度も呼び出したせいか。 はたまた、断らずに現れる彼女に、 認められてると思い込んだのか。] おねーさまっ ピアノ聞いて! やっと弾けるようになったの [王国の友達が作ったというピアノ曲を練習して、 難しいと文句を言いながらも時間を作って、 お茶の時間が減ってしまったある日。 彼女を庭の見える部屋に呼び出した。 防音がされている部屋にグランドピアノが一台。 観客席も一席。 たった1人の観客に招いたのは お姉さまじゃなく彼女になっていた] (0) 2020/10/02(Fri) 8:06:44 |
【人】 Marguerite シャーリエ[ペダルを踏んでは離し離しては踏んで、 儚いメロディーを光に変えていく。 窓から差し込む夕日は私にぶつかって影を作り、 手元に夜を生み出していた。 そこに月の光を作った。 レモン色の響きは甘くて切なく、弾き手の心を揺さぶる。 弾き手の気持ちはピアノに変換されて音符になり、 空気を震わせて観客に届く] [9/8拍子、フラット5つの変ニ長調。 その中に転調と臨時記号を散りばめて編まれた甘い曲。 楽譜を読んでびっくりした。 こんな曲を書くなんて、あの人天才だ。 自分の心のままにテンポが揺らぎ、 恥ずかしいほどに私が暴き出される。 聞かせているのはただ1人。 最後の音をペダルで伸ばして、 告白した恥ずかしい高揚感に身をゆだねた。] ……どう、だったかな [借り物の言葉だけど、私の気持ちは届いたのかな**] (1) 2020/10/02(Fri) 8:07:23 |
Marguerite シャーリエは、メモを貼った。 (a1) 2020/10/02(Fri) 8:20:09 |
【人】 志隈[無遠慮に女性を眺めたが、 彼女の意識が此方に向く事はなかった。>>1:62 青年があれほど叫んでいるのだから、 通常であれば気付かないと言う話ではないだろう。 怪訝そうに守ってくれる相手を見る姿は、 気に留めないと言う雰囲気でもない。 観察が終われば青年へと視線を戻す。 動揺しないのは本来の性格と、場慣れと、 目的の為なら刃を突き付けてくる相手だと思っているから。 ]…あんたの名前は? 気付いたらここにいた。俺はここを知らない。 [“志隈”ではなく“シグマ” コードネームの様かもなとは説明を省き、 不審にも構わず名前を聞く。 質問は恐らく返らないだろうが。] (2) 2020/10/02(Fri) 8:24:00 |
【人】 志隈[“帰り方もわからないから別にいい。”>>1:63 口にする事はなかったが、 逃走する気も無く流れに身を任せようとした。 様子を窺うのが基本ではあるし、 此方を見れるのが眼の前の相手一人と仮定すれば、 幾らでも対処の仕様がある。 一度撃たれて怪我をするかどうか試してみるのもありかとまで、 考えてしまえるのは一般的ではなかったか。 夢と考えているから多少呑気で、 世界の質感が現実感を刺激してもあまり変わりはせず。 女性が何かを後ろで仕出して、 青年が飛び上がるのも無愛想に眺めた。>>1:64 どうやら実力行使に出たらしく、 言葉で忠告するより行動で先に制するタイプかと彼女を認識し。 青年に…あんた以外には見えてなさそうだと先に忠告すべきだったかと、今更至り。 何度も視線を往復する姿には、 若干生温い目を向けた。 大変だな、と他人事。 彼にはここでの感触があるらしい。 此方に気付ける理由はわからないが、夢だからで済む話か。 ぞんざいに扱われても変わらぬ従順さは 助けられた恩義があるからかと、 言葉を拾っては想像をしていく。 仔犬の様に吠える青年は見た事無い側面の筈だが、 面影もある様な気がして面白くも思え。] (3) 2020/10/02(Fri) 8:24:08 |
【人】 志隈[ブレない銃口は慣れを感じる。>>1:66 此方も同じ頃には既に銃に慣れていたから、 気にはならなかったが、 彼は何時の年頃から握ったのだろう。] …一般人だ。 彼女とは初対面だし、やられてもない。 [過去を鑑みて、 更に警戒を持たれる気がして軍人と紹介するのは止めておく、 平和な国なら一般人だろう。多分。 細かく説明する気もなければ、 誤解も解けないだろうなと考えながら、 当てられた銃口に従って外へと足を向けようとして、 一度止まり。] 彼女とあんたの関係は? 何時からこういう事してるんだ? [聞くだけ聞いておこうという精神。 正直不審者に話しかけられてペラペラ話すものではないし、 夢で、自分が作り出した物でしか無いのなら、 意味はないことだが。 当てられた感触は随分とリアルで、 齎される情報ももしも本当ならと興味深かった。] (4) 2020/10/02(Fri) 8:24:15 |
志隈は、メモを貼った。 (a2) 2020/10/02(Fri) 8:26:31 |
【人】 Cucciolo アジダル[ 歪な生い立ちや事情を抱えていた仲間とは違い、 眠れない夜を知らずに過ごしたと言えば嘘になる。 暗闇を拒んだ先人や静寂を呪った輩と同じように、 青年は理解しがたいものに臆する傾向があった。 漠然とした概念が怖いよりずっとましだろと虚勢を張れば そのたび生意気だとじゃれついた袋叩きを見舞われる。 怖いってこた生きたいってことだと言い張る彼らの所為で 暫くこれは克服できそうになかった。 だから、半歩引き摺った踵を誤魔化すように爪先を立てる。 だから、銃口のキスの感触に安堵して一歩足を踏み出せた。 湧きあがった勇気はそれだけで、 もう一度それが口を利こうもんならまた眉根を寄せる。 ] (6) 2020/10/02(Fri) 23:06:17 |
【人】 Cucciolo アジダルは? どうしてそんなこと教えなくちゃいけねェんだよ。 僕らの顔もわかんねえくらい無関係で、一般人を装うなら 最後まで花売りみたいに処女の顔し続けるんだね。 お喋りクソ野郎は口の穴が頭の裏に貫通して死ぬんだぜ。 [ 振り返る男に合わせて擽るように銃口を這わせ、 後頭部へぐり、と押し付け直しても 相変わらずの感情の希薄さが薄気味悪い。 思惑なら大根役者、好奇心なら大層な大物だ。>>4 威嚇する野良犬のような警戒心は振りまいたまま 背中を押すように進む。 けれどふと思い直せば、彼の後ろで ほんの少し得意げな声色で語った。 ] だが誰かは知っておいた方が良い。 あの女は一体を取り仕切るファミリーのトップで── (7) 2020/10/02(Fri) 23:06:32 |
【人】 アジダル……そんで、僕や家族の恩人だね。 [ 境界を跨いだ途端に先ず靴の爪先を眺めた。 異物を吐き出した扉は役割を終えたかのように光の粒に溶けて散り、霧立ち込める街のように白くけぶる空間を薄く照らしあげたようだ。 けれど早回しするように急激に萎びた体の感触と、ひっかき回す様に入れ替わった記憶の感覚にしゃがみこむ程の眩暈を覚えて、それに気付くことは無かった。 ] 懐かしいな。さっき……あれか。 寝る前に色々考えてたから思い出しでもしたのか? [ 途切れた記憶のさいごは布団に潜ったことにある。たったそれだけの事実で「これは夢だ」と判断し──あるいは思考を停止し──呟いた。 自問自答を終えてフード越しに頭を掻き、ばつが悪い顔を持ち上げる。 先ほど迄の記憶は問題なく残っている。その上で牙を剥いたことの詫びの一つでも言ってやろうかと思ったが。 なんつう目で見てやがるこいつ。苦笑。 ] (8) 2020/10/02(Fri) 23:06:43 |
【人】 アジダル[ いくらか見通しのよくなった空間の中、恩人、と口に出した瞬間新たな扉が横に現れた。薄く開いた扉の向こうでは先ほどひずんだ空間に浮いた昔の光景>>1:65が再上映されるかのように動いていた。 懐かしい母と妹の姿を眺め、情景に浸るよう目を細めたのも束の間。そのドアノブを掴んで静かに閉じる。 ] 親父がな、消えてるから。 僕が助けてやんなきゃって、正義のヒーロー気取ってたんだよ。 [ ぱっ、と消えた光の粒がまた空間を照らし、幾ら見渡しがよくなった遠くにまた別の扉がある事に気づいただろうか。 正義のヒーロー、という単語に関連して思い出した記憶がそこにあるのだろう。目が覚めるまで生い立ちをなぞり直すべきなのだろうか。 思い出したくない過去が山ほどある男にとってとんでもない悪夢だ。 ……よりにもよって彼もいっしょなのだから。 わざとらしく溜息を吐き、最悪だ、と呟いた。 早く朝よ来いと願うばかり。 ]* (9) 2020/10/02(Fri) 23:06:56 |
【人】 志隈[青い青年を脅かしてやろうなんて考え付きもしなかったが、 もう少し話を交わせば、人となりを少しは理解出来たか。 話す気があれば、だが。] あんたに似た男を知ってるから、気になった。 [理由は告げたものの、予想通り返らない答えには納得し、 否、想像より大分口は悪かったが。 最初に話を聞こうとした時も、 同じようなフレーズを言われたなと僅かな懐かしさ。 そういえば、何故か、国境を越えて言葉がわかるんだなと思ったが、 これも夢の力というものか。 その間に銃口を押し付け直されて、 大人しく従った振りして進む。 銃口を気にしてないのは滲んではいて、 キレやすい人間なら既に発砲しててもおかしくないが、 口に反して大人しい方なのだろうか。 一歩、二歩と緩く踏み歩けば、 少し得意げな声が聞こえる。 トップで、青年と青年の家族の恩人。 生い立ちなど知らないが、馳せて、反芻し。 視線を向けることなく、扉に手をかけて。] …なら、何故、あの女性の側から離れた? (10) 2020/10/03(Sat) 0:28:27 |
【人】 志隈[その問いかけが届く前に扉を潜っていたか。 後ろの扉がどうなったかを見る事はなく、 聞こえた呟く声は、寝る前に見たアジダルと同じ声色。 不審な目で見下ろして、視線を合わせる。 謝罪も何も無くとも気にしない、以前に 今のアジダルが先程の小屋の何処にいたかがわからず。 扉の中では姿が変わっていたとまでは思っていないのは、 銃を突きつけてお前誰だとデカデカ警戒が、 青年の顔に書いてあったのだし仕方ないだろう。] あんたの記憶に近い場所ではあるんだな。 “夢”であるなら、 互いが本物の様に見えるのが意味がわからないが。 [夢は一人で見るものだ。 それなら、この空間は何かと眉を顰めたが、 アジダルはそこまで気にしていないように見える。 構造を考えても無意味ではありそうだ。 一先ずは、何かを果たせば朝が来るのだろうと仮定し。] (11) 2020/10/03(Sat) 0:28:34 |
【人】 志隈[薄く開いた扉の先に広がっていたものは見えなかった。 静かに閉じる扉は開くべきでは無さそうだと、問わず。 幾つか現れる扉の先には、 アジダルの過去が広がっているのか、と辺りを見回す。] 正義のヒーロー? 家族や大切なものを守れる人間になる事は良いと思うが。 [不意に出た単語には瞬いて。 正義でなくても守れればいいと考えている方だから、 守る事に正義が必要なのかの答えは出ずに、 悪くはないだろうとは示しておく。 特撮に憧れる無邪気な子供でも、 見せて貰えるならそれはそれで興味深いし、 アジダルにとっての正義がどんなものか気にならないではない。] で、このままここにいても時間経過しなそうだが、 そっちの扉は入っていいのか? [遠くに見えるものを示して、問いかける。 アジダルには何が待ってるのか予想は付いてるのだろうか。 入るなと言われれば、無理には近付かないし、 乗り気でなくても入っていいと言われれば、 扉に手をかける事にしよう。]* (12) 2020/10/03(Sat) 0:28:41 |
志隈は、メモを貼った。 (a3) 2020/10/03(Sat) 1:05:37 |
Marguerite シャーリエは、メモを貼った。 (a4) 2020/10/03(Sat) 2:51:50 |
Marguerite シャーリエは、メモを貼った。 (a5) 2020/10/03(Sat) 2:52:15 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[誰でもいじめられる可能性はあるけど、いじめられやすい人はいる。 大人しくて、やり返さない優しい人。 運がいいことに、私はいじめられたことはない。 だけど、いじめそのものから逃れられなかった。 ── ありふれた事だから。] (13) 2020/10/03(Sat) 8:45:02 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[中学生のころ、少しトロい子がいた。 その子は、体育の時間、あらゆる場面で面白い動作をした。 「なにその動き! へんなのー!」 私はおかしくて、笑って真似した。他の子たちも寄ってきて、けらけらと盛り上がる。 傷つけてやろうなんて全く思っていなかった。じゃれることで距離を縮めたかった。 私自身、そうされることが楽しくて、「ひどーい」と笑って友達を作っていたから。 その子は真っ赤になって俯いて、その様子がまたおかしくて、体育の時間のちょっとした名物になった。 「でた! ──ちゃんの珍プレー!」「ナツキ、いつものやってよー!」「おっけー任せて!」 その日もそうやって遊んでいたら、その子はぽろぽろと泣き出してしまった。 「ナツキ、ひっどー」「──ちゃん、泣かせてやんのー」「──ちゃん、だいじょうぶー?」 私はひどく慌てて、何度も何度も謝って、二度と同じことはやらなかった。 けど、心の底は不満だった。] (14) 2020/10/03(Sat) 8:47:24 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月 なあに、あれぐらいで泣いたりして。 ちょっとじゃれただけじゃん。 美味しい役回りあげたのに、なんか嫌な感じ。 まるで私が悪者みたい。 私なんかもっとエグいいじり方されても、盛り上げられるのに。 空気を壊して泣くなんてこと、しなかったのに。 いいよね、──ちゃんは。可愛い女の子枠にいられてさ。 (15) 2020/10/03(Sat) 8:47:59 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[ふとした時、あの時のことが蘇って、胸がぎゅっと苦しくなる。 仲良くなろうとしたはずなのに、なんでああなっちゃったんだろう。 言い訳をたくさんしてしまう自分が嫌で、誰かに聞いてほしいけど、そんなこと聞かされたら盛り下がることなんてわかってて、だから私の中には汚いどろどろがいつまでも渦巻いていて、 こんな私のこと、ユウ君には絶対に知られたくない。 いじめは一対多数。 つい、自分がいじめられないかばっかり心配するけれど、 加害者になるほうが、ずっとありえるんだ。]* (16) 2020/10/03(Sat) 8:48:51 |
HNアキナ 本名は 早乙女 菜月は、メモを貼った。 (a6) 2020/10/03(Sat) 9:03:55 |
【置】 二年生 早乙女 菜月『 太郎は、外に出ましたけれど、往来にはちょうど、 だれも友だちが遊んでいませんでした。 みんな天気がよいので、遠くの方まで 遊びに行ったものとみえます。 もし、この近所であったら、 自分もいってみようと思って、 耳を澄ましてみましたけれど、 それらしい声などは聞こえてこなかったのであります。 一人しょんぼりして、 太郎は家の前に立っていましたが── ── 「金の輪」 』 (L0) 2020/10/03(Sat) 19:51:00 公開: 2020/10/03(Sat) 19:55:00 |
花の名 リフルは、メモを貼った。 (a7) 2020/10/03(Sat) 21:30:51 |
【置】 二年生 小林 友太郎はかなたの往来を見ますと、 少年が二つの輪をまわして、走ってきました。 その輪は金色に輝いて見えました。 少年はその往来を過ぎるときに、 こちらを向いて、昨日よりも いっそう懐かしげに、微笑んだのであります。 そして、なにかいいたげたようすをして ちょっとくびをかしげましたが、 ついそのままいってしまいました。 ─────『金の輪』 小川 未明 (L1) 2020/10/03(Sat) 23:04:24 公開: 2020/10/03(Sat) 23:05:00 |
【人】 アジダル[ 寝覚めが悪いのは常たるもので、明晰夢に出会うことだって少なくはなかった。 あれこれと自分の体を書き換えられていく感覚に晒されて同一の価値観を維持することが難しいこと、夢に浸る感覚と突然自我を取り戻すタイミングがあること、一見して普段通りを保てるこの場が基準だなど言い切れもしないこと。 油断しているのか現実よりも幾らか緩い口はすらすらと状況を吐き出した。意味の有無はともかく。 ] 少なくとも、さっきの場面はこっちの昔の思い出だからな。 僕自身もなんか……昔の姿だったし。 [ ぽす、ぽす、と腰のあたりを叩く。三度目の接触で、何もなかったはずの場所にさっきまで使っていたガンホルダーがあった。四度目の接触で再び消える。 ……融通は或る程度利くらしいな、と目を細めて。 ] だからお前も僕が頭で作ったシグマなんじゃないの? なんか僕の知らない事言ってみてよ。 まだ話したことないようなこと。 [ 体を離して寝たと言うのに行き着く先が同じというのもなんとも奇妙な話だが。>>11 どのみち不可思議な事象について熟考するよりも対面して応対する方が向いているのだ。選択を迫られる場面に何度も直面していれば自然とその思考時間は短くなる。 先ほどまではつるりとしていた、今はあちこちを駆け回って傷跡が残る手を、一見して迷いも何も無いように、パーカーのポケットに突っ込んだ。 ] (17) 2020/10/04(Sun) 8:17:12 |
【人】 アジダル[ 薄明りしかない空間は相変わらず見通しが悪く、軽佻な風に歩めば迷いこむような印象がある。視界から彼の姿を外さないよう気をつけながら壁を探るも、触れられるような感触は一帯には存在しない。 簡単に探索をしながら、投げられた言葉を今更のように捕らえて>>12まあそうなんだけどさ、と振り向きもせずに口を開いた。 ] そういうものに憧れてたんだよ。 葛藤も躊躇もなく、 正しく誰かを助けられるようなもんにね。 [ だが実際はそうはいかない。正しいことばかりを繰り返せば善人になれるわけでなく、手を汚さなければ守り切れないものは山ほどあった。 その様を今しがた目の当たりにした彼だって、これまで出会ってきた仲間と同じように嘲笑してきたって構わないと思ってはいた。けれど想像どおりに通り抜けた言葉にふっと笑みが零れた。 ] どうだろう。別に家族や仲間じゃなくとも 助けてやりたいとは何度も感じてたしな。 無謀すぎるでしょそんなの。 [ 呟けば、奥の扉が薄く開いた音がした。 語るか思い出すかすれば時間が動くような感触に、聊かうんざりしたような心地で溜息を吐く。 ] (18) 2020/10/04(Sun) 8:17:18 |
【人】 アジダル[ 誰だって見せたいもんや見せられるもの過去ばかりを生きてきたわけではないだろう。男にとって人生は取り繕えるほど安定したものではなかったし、秘密にしておくべきことは人より多く存在するはずだった。 彼が記憶を誘発することを言わなければ、そして己が思い出しさえしなければ、あらゆることを闇に葬っておけるだろうか。 忘れている記憶や忘れたいこと、蛆が湧いて今更どうすることもできない記憶どもにぶち当たりさえしなければいいが。] ……そうしなくちゃ覚めない夢なら 入るっきゃないか。 [ ブラックボックスを開くのを躊躇うように彼の背に近づく。とりあえず血の匂いはしない光景を見てとり、撃たれはしないだろうなとその後を追った─── ] (19) 2020/10/04(Sun) 8:17:23 |
【人】 Cucciolo アジダル[ ことを、けれど。次の瞬間すっかりと忘れている。 人の背中を追って飛び込んだ昼間の路地裏だというのに、 いつの間にか彼の視線の先に男はいた。 曲がり角の石壁に両手をひっかけ、 体を隠すようにしながら道の先を伺う様は、 拙さが無いことを除けば隠れん坊遊びをする子供のようにも 見えたことだろう。 錆びた剥き出しの配管の上には土埃が積り、 判を押したように並ぶ白抜きを追いかけていけば 先には肋の浮いた猫が欠伸をしている。 丸みを帯びだした煉瓦詰めの地面の随所には 清掃されても血のような染みがこびりついていて 人が一人横たわったような形をした日常風景を 誰も彼も今更気に留める様子もない。 ……だから正義など貫くのは馬鹿らしいことだと思い知る。 しょうもない遊びに興じていると呆れ顔をされたが 自己満足と言って認められるならそれでもいいと 思っていた、筈だった。 ───これは衝動の日。 ] (20) 2020/10/04(Sun) 8:18:18 |
【人】 Cucciolo アジダル[ 点々と道を作るように並べられたパンや果物を 今日は気に入ってくれるだろうか。 身の丈に合わない良物の腕時計を眺め、 そわそわと落ち着きなく様子を伺う。 同じ場所を使っているというのにごった返さないあたり あの子がこの施しを口外してはいないのだろう。 それでいい、自分の手の届く範囲だけ助けられれば。 自分にはには路地裏暮らしの経験はなく 一つの林檎を投げ込めば殺し合いが起こるほど 飢えたり追い詰められた世界の存在は 未だ納得することができない。 けれど改めるには力も金も足りないことをよく知っている。 定期的に行っていても酔狂と気紛れの域を出ない行為、 余った食材や用意した医療キットを浮浪児の為に置くことは それでもやめようとは思わなかった。 実際嬉しかったと言ってくれたし。 誰が、だったか。 ] (21) 2020/10/04(Sun) 8:18:41 |
【人】 Cucciolo アジダル[ 男は──少しばかり傷の青年は、 ふと背中越しに見えた影が道に伸びるのを見て振り返る。 そこに立っていた人物を、観測者を確かめれば 慌てて手を伸ばしたことだろう。 ] あー、待ってお兄さん、 今ちょっと取り込んでるからこの道行かないで! [ 焦燥を滲ませながら自分の後ろだか死角だかに導くように かくれてかくれて、と腕を引く。 彼が何かしゃべろうとすればその唇に立てた指を近づけ しぃっと沈黙を要求しよう。 風景に似つかわしくない素材の良いスーツの襟を開き、 肩を埃っぽい壁に押し付けるまでしている事態だというのに 妙に呑気な高揚を讃えた笑みは、 大人びた子供のようにも見えたことだろう。 実際ワクワクしている。 ] (22) 2020/10/04(Sun) 8:19:00 |
【人】 Cucciolo アジダル[ ほどなくして裸足の足音が聞こえてくる。 待ちかねたように道の方へ意識を向けると、 いつものように小さな人影が歩いてきていた。 手入れの施されていない襤褸切れのようなものを着た、 これまた手入れされていない長い髪の浮浪児だ。 金色の毛虫みたいに見える少年は周囲を気にしながら 並べられた物資に飛びつくように近づいていく。 土で汚れた手で拾ったピカピカの林檎に笑顔が映り、 それを大切そうに抱き締めてから 纏っていたぼろに包んで他のものも集めていった。 ] 可愛いでしょ。 他に人がいると警戒して持ってってくんないんだよね [ その様子を楽しそうに眺めていた青年は 乗り出しそうになるのを堪えるように 側頭部を石壁に押し付ける。 傾いた体の腰に吊るしていたガンホルダーが こつりと音を立ててぶつかった。 ] (23) 2020/10/04(Sun) 8:19:25 |
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