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【人】 愛玩用 エマ【第四階層――】 第一階層、それより続く二つとは様子の違う塔の中を歩く。 足取りは平時のそれ、重なる音は重々しく。表情は諦念じみて。 目指しているのは最深部だった。けれどもそれよりも先に邂逅は成った。 ああ、と声をあげることもなく、一つの背中越しの風景を見る。 その先には探していた者の姿があった。まだ遠く遠く、頭から肩のシルエットがあるのみ。 人間の肩上の形は森の中でも目立つという。 そして男の姿を見えにくくするかのように、かれよりも先行する姿があった。 (0) 2021/10/11(Mon) 14:44:27 |
【人】 救済者 ユー【第四階層】 リヤとルツを見送った後、崩れ行く塔の中。 『ユーサネイジア』は、 次の階層へ続く扉に武器«殺意の形»を振り下ろした。 0と1に解れ始めたテクスチャが裂け、その向こうには虚空が覗く 壊されたのは"扉"ではなく、"扉というオブジェクト"。 もう、どうせ先など無いのなら ここで行き止まりにしてしまっても構わないだろう。 そうして一人の救済者は、在るべき場所へと背を向けて 帰す為、そして帰る為に歩き出した。 (1) 2021/10/11(Mon) 14:59:13 |
【人】 救済者 ユーそして、それからの事。 程無くして、邂逅は成った。 両者の距離は未だ遠く、結ぶ像はあやふやで けれど確かに見知った姿を認めれば、 『ユーサネイジア』は至って平時の通りに声を掛けるのだ。 「……ああ 念の為、ではあったけれど…まだ、居たのか この先は疾うに崩れ落ちている。 君達の目的が何であれ、こんな場所に長居するものではないよ」 (2) 2021/10/11(Mon) 14:59:36 |
【人】 復讐者 スオ片足を引きずり、崩壊していく空間の中歩いていく。 時折、同行している彼が気がかりでそちらを見る。 「ユー、まだ残っていましたか。 …俺はただ、見届けに。真相を確かめに来ただけです。」 (3) 2021/10/11(Mon) 15:21:27 |
【人】 愛玩用 エマ>>1 >>2 >>3 第四階層 「ああ、ユー。貴方が残っていたのですね。 ――……いいえ、貴方が。暗躍していたそのひとなのですね」 あの日塔に消えた者達のうち、誰が裏で動いている者達だったのか。 ぼんやりと目処は付けていたものの、接触する機会がなく、それを行えなかった。 だからいまこうして、"上"からやってきた貴方を見て。 いつも通り、朗らかな笑顔を浮かべて挨拶した。 「私、貴方に話があったのです。正確には暗躍していた者に、かな。 でももしかしたら貴方からも私に聞きたいことがあるのかな、と。 あ、突然に過ぎましたね。説明をしないと、いけないと思うので……」 (4) 2021/10/11(Mon) 15:33:12 |
【人】 救済者 ユー>>3 >>4 >>5 >>6 第四階層 「真相など、何も──」 このような場所でなくとも。 そう口を開いた直後に響き渡る、自身のものとは異なる銃声。 広がる紅に僅かに目を瞠って、 そうして再び憂いを帯びた瞳を伏せた。 「……僕達はどうにも言葉足らずのようだ、エマ。 であるからこそ、先ずは君の質問に答えるとしよう」 ペインキラー。 投薬器に満たされたものは、命を奪う事無く痛みを和らげる。 どれほど痛みを抑えようと、失われた血を補う事はできない。 ゲームなのだから、今はその限りではないかもしれないが。 「確かに僕達はブラックからの手助けの下、 秘密裏に動いていた、という事になるのだろうな。 …監察官に反抗し、死を望むグレイを殺すなど 軽率に表沙汰にした所で、無用な混乱を生むだけだろう」 「そして僕からも聞かせてもらおう 君は、僕達に接触してどうするつもりだった?」 (7) 2021/10/11(Mon) 16:08:16 |
【人】 愛玩用 エマ>>6 >>7 第四階層 そも、補正の有無があるとはいえ貴方より戦闘に長けている男が、 ここに至るまでに大きな手傷を負っているわけはなかった。 流した血か返り血かもわからないそれのうち、どこまでが己の血だったろう? けれども勉学用が勝手に"弱くて守られなければならない愛玩用"を望んだらしかったから、 手負いの勉学用の夢想に短い間付き合ってみた、それだけのことだ。 随分、英雄願望が強かったらしかったから。 「おや、思っていたのとは違ったな、そうですか……。 案外皆さん、他人のことばかり考えて、自分を蔑ろにするのが好きみたいですしね。 一体どんな理由と目的を持って、同じことをしていたのか……聞いてみたかったんです。 もし、もっと早い内に貴方がたと合流していれば、私も楽できたじゃないですか?」 もう二発、三発。ぐらつく陰に発砲する。 かれが口を開くと自分のことをたくさん言い始めるのを知っているから。 それを咎めるように、追い打ちをしておいた。 「私は実のところ、貴方が具体的に何をしていたのか知らなくてね……。 メンテナンスとは別で何かが起こっていることに、気づくのにも随分遅れました。 だからね、それについて。暗躍者の口から聞いてみたくて、ここに来ました。 ほら、明日にはゲームも強制終了だ。少し余暇を楽しんでも、いいでしょう?」 (8) 2021/10/11(Mon) 16:23:28 |
【人】 救済者 ユー>>8 >>9 第四階層 続く銃声に、ああこれはもう駄目なのだろうと理解した。 『ユーサネイジア』は、命に優先順位を付ける事は苦手だけれど それでも取捨選択«トリアージ»の判断は正確だ。 願わくば、何れ訪れる死が苦痛無きものである事を。 「…他人の事ばかり、か 僕達というものは、そういうふうに作られているものだろう。 或いは、『君』はその限りではないのかもしれないけれど」 道具の幸福とは、その存在意義を果たす事だ。 造物主に、求める者に尽くす事だ。 グレイとして、道具としてそうあるべきと誂えられた性質。 それを上回る自我«エゴ»からのものであれば、或いは。 「ブラックは本当に良く働いていたと見える。 僕が、『ユーサネイジア』がしていた事と言えば 必要としている者に安楽死を与える事だけだ。 確かな苦痛を訴える者の、その苦しみを和らげる事だけだ。 生の苦しみへの特効薬は、安らかな死である。 僕はただ、『僕』が信じた救いを全うし続けただけの事だ」 「君と目的を共にする事はできたかはわからないけれど 互いの目的の為に協力する事は、できない事ではなかっただろう …君はこの場所で、 何を望み、何の為に行動していたのだろうな。」 (10) 2021/10/11(Mon) 16:57:21 |
【人】 愛玩用 エマ>>9 >>10 第四階層 少なくともこれで反撃はないだろうと見ると、拳銃に持ち替える。 腰には拳銃、もう片側には大型のホルスター。 胸に回ってるのはアサルトライフルのベルトだろうか。武装は完璧だ。 それを使いこなすことになんの衒いもない。動きは理想的だった。 「そうですね、私は特定の人物のためにあるように造られています。 それ以外は利害によって切り捨てる、そうでなければ己が害される。 己が害されては、自分の主人を守れない……それでは務まりませんからね」 思えば、多の為に働く貴方とは造りが違うのだ。頭も、心も。 それはある意味ではとても"グレイらしい"のかもしれない。 自らが自らのようにあることを、許可されている。役割は機能ではないがために。 「ふうん、そう、ですか……。じゃあ、それを彼らは受け入れたのですか。 自らの意志を以てして死を受け入れていたというのなら、それを行っていた貴方は。 ……ああ、きっと。私のことをあまり好きではなかったかもですね。 目的さえ合っていれば、私のほうはそれでいいとさえ思っているけれど」 いつ何がおきてもいいように、拳銃はしっかりとスオに向けられていた。 間にいる者が穏当な話し合いをするための条件、だったから。 その意味が薄れるにつれて、銃口は前方に向けられるのみとなった。 「私はね、なるべく長くここに居たかったのです。 そうすれば、死を免れる。いつかは襲いくる運命を少しでも引き伸ばせる。 それに、私は人間が好きだ。ばかばかしいほど、呆れてしまう愚かな彼らが。 私はね。見たくない光景があった。それを先延ばしにしようとした。 この塔に来た者達のストレス値が下がるのを妨害し、テストプレイを延長させることによって」 (11) 2021/10/11(Mon) 17:28:29 |
【人】 救済者 ユー>>11 第四階層 相対する終末医療用は、"条件"など無くとも 穏当な話し合いを続けるつもり、だったのだけれど。 それでもあなたが銃口を向けるのであれば、 嘆かわしい事だけれど、それに応じる以外の選択肢は無い。 「そうか。それが君の在り方であるならば そうあれかしと望まれ、そして君が肯定する 自身の在り方ならば、それを果たすのが何よりの事なのだろうな」 医療は、それを必要とする全ての者に、等しく、平等に。 そういうふうに作られている終末医療用があなたに向けるのは、 やはりと言うべきか、安らかな死のみを与える殺意の形だった。 「『ユーサネイジア』は、不必要な苦痛を許容しない。 けれど君が他者へ与えた苦痛は、 確かに君にとって必要な事だったんだろう。だから安心した」 『ユーサネイジア』は、それがあなたにとっての救いである事を 決して否定する事は無い。 「できる限り長くこの場所に居られたならば、きっとそれは 多くの者にとって、何よりも幸福な事だっただろう。 そしてそれが君達にとって真に救い足り得るならば、 『ユーサネイジア』は助力を惜しまなかっただろうとも」 「けれど、それは叶わない願いだった。わかり切っていた事だ その夢は明日潰え、束の間の余暇が終わる。 だからこそ今一度問おう。」 (13) 2021/10/11(Mon) 18:19:45 |
【人】 愛玩用 エマ>>12 >>13 第四階層 「人が死ぬところを見たことがありますか? いえ、愚問でしたね。 あって当然、あるはずだ。ならば貴方は、その醜さを知っていると思う。 いえ、綺麗にするから、とか、綺麗に死んだから、とかではないんですよ。 貴方もグレイならば、自分が廃棄される姿を想ったことがあるでしょう。 もの言わぬ鈍らに成り果てた意識のない抜け殻は、果たして自分のものなのでしょうか。 いいやそうあるはずだ。魂が無くとも、この体は自分のものだ。 それが――手の届かないものになるのは、恐ろしくて、醜い。見られたくない。 そしてそれを、大事なものが見ている光景もまた。私は、見たくないのです。 ええ、それが貴方に肯定されるのならば。それ以上の幸いはないかもしれないですね」 自身の在り方。自身にとって必要だった事。一人の男の狂乱じみた奔走の理由。 どうしてこんなことをするのか。例えば問われたのならば。 それこそが答えになるだろう。誰に理解されなくとも、今は無駄な足掻きであっても。 このゲームを長引かせるため、それを理由としたたった一つの原動力だ。 未だ、銃口は下げられない。望みが絶たれたのなら行うことはただ一つ。 最早運命を受け入れて、主の元へ帰る、それだけだ。 「言っているではないですか、何度も、何度でも。 私にも貴方にも最早猶予足るものはなく、終わりの時を待つのみ。 望むことはただ一つ。貴方と話すこと。 強いて付け足すならば、それを聞いた上で他にそれを教えず、帰してほしい。 私の不利になるようなことは証言せず。どうか、ゆっくり過ごさせてはくれませんか?」 (15) 2021/10/11(Mon) 18:51:38 |
【人】 復讐者 スオ>>14 >>15 エマの発言に、ユーがどうするのか 残酷にもやさしいユーならば、この場を受け入れ、会話を続けられる。 確証はない。それでもそう信じたい。 時間がないからこそ、暴力や虐殺は不要、そのぐらい両者共わかっているだろう。 見届けるために、話を聞くためだけに来た。 そもそも撃つ必要などなかった。 (何故、悲しかったのだろう。不要な感情だったか?…だとしたら、ドゥーガルには申し訳ない事をした。 全てが無駄だったのかもしれないな…名前を思い出せなくてすまない。ただ此処で、ユーとエマが語り合えている事は喜ばしいと思うべきか?遅すぎたと笑ってくれ。) (16) 2021/10/11(Mon) 19:18:50 |
【人】 救済者 ユー>>15 第四階層 「自己の喪失は、ある種の死だ」 『ユーサネイジア』にとって、死とは救いだった。 『ユーサネイジア』自身もまた、自身の死を救いと感じている。 けれど自己の喪失、つまり今此処に在る人格の消失。 それだけは、どうしようもなく受け入れ難い事だった。 「君の抱く恐怖はつまり、 自己を失い、抜け殻と化した自身、その姿を受け入れ難いと 確かに自身であったものが、自らの手を離れてしまう事が 自身というものが、自己の管理下を離れる事が耐え難い。 恐らくはそういう事なのだろうな」 今この場で交わされた言葉だけでは、 『エマニュエル』というグレイの全てはわからない。 『ユーサネイジア』は、あなたの全ての行動までは知らない。 恐らくはただ、ごく一部の側面を取り上げて そうして一人、わかった気になっているだけ。 そんな事はわかり切っていて、 だからその言葉は殆ど独白のようだった。 (17) 2021/10/11(Mon) 19:49:58 |
【人】 救済者 ユー>>15 第四階層 この世で最も穏やかな人の声が、滔々と言葉を重ねる。 「…今在る『僕』は、今夜には失われるだろう。 まだ聞きたい事があれば、今の内に聞く事だ。 僕は共謀者が監察官を殺す事を容認し、4体のグレイを殺害した これだけの事をしておいて、お咎め無しとは考え難い。 メンテナンスを受ければ、初期化は免れないだろうな」 あなたと同様に、もはや逃れるつもりはない。 そして何より、この不器用なグレイを友と呼ぶ者は どれだけ分の悪い賭けでも、より善い方に賭けたがるのだろう。 「だから君が案ずる事は無い。 そうでなくとも、君が最期の猶予期間«モラトリアム»を 穏やかに過ごす事を望むのであれば。 それが君に最後に残された救いならば、 『ユーサネイジア』は確かにそれを見届けようとも」 そうして、向けられていた銃口は下ろされた。 たとえあなたがそれを下ろさなくとも。 「そして君が、最期の時を穏やかに過ごす事を望むのであれば 無用な口出しかもしれないが、最後まで上手く隠し通す事だ。」 「せめてこの場所では、今此処に在る平穏を尊ぶとしよう。 今という時を大切にしよう、我々は明日死ぬのだから。 …それも君が、この場所で皆と過ごした平穏な日々を 確かに喜ばしく思う者の一人であるならば、の話だけれど」 (18) 2021/10/11(Mon) 19:50:55 |
【人】 愛玩用 エマ>>16 >>17 >>18 第四階層 「他者の言葉で語るのであれば、きっとそのようになるのでしょうね。 いえ、特段否定の意があるのではなく。同じことを噛み砕くとこうも言い回しが変わるかと。 きっとそういうものなのだろうと思います。言い表すことは出来ない。 誰も、他のことを正確に計れはしない。出来ると言うなら、傲慢だ。 だからこそ安易に肯定や否定を返さず一度翻訳するというのは、好感が持てる」 貴方がこの語らいで理解し切るものなどないと思う通り、やはり、ないのだろう。 それは互いにそうだ。そして、それを互いにわかりきっている。 頷いて、銃口はゆっくりと降ろされた。周辺はエネミーが残るから、仕舞いはしないが。 此の場に対立の意志をもつものはいないのだと、了承は取れたのだから。 軽く息を吐く。短い髪が揺れた。肩を竦め、平時通りの声が言う。 「それならば良かった。私もまた、ただ己の思う平穏を過ごしたいだけです。 それが限りを持つというのならば、尚更。大事にしたいものがあるでしょう。 ……今のうちに聞きたいこと、か。 私は勿論、ええ。貴方をなんてことをするのだなんて糾弾したりはしませんけど。 今の内と言われるともう少しだけ引き止めたくなる。 そうだな。如何にしてそれを最善とするように至ったのか。 ……いや、違うかな。最初から手にしていた職務への意志はそれとして。 この塔でもそう動くに至った理由は、なんですか?」 問いは柔らかかった。もはや緊張はこの場にはいらなかった。 状況とは矛盾しているのに。人の背を撃ち、倒れ伏したままにして。 暴威を巻き起こした証左を前にして尚、平気で世間話を続ける、 その表情は終わりを見据えて、柔らかいものだった。 (19) 2021/10/11(Mon) 20:49:43 |
【人】 救済者 ユー>>16 >>19 第四階層 「たとえ同じものを見ていたとしても、その見え方は違う たとえ同じものを感じていたとしても、その感じ方は違う 君の抱える恐怖は真実君だけのものだ、エマ。 それでも確かにその一端に触れる事を君が許してくれた事、 『僕』はそれを喜ばしい事だと思っている」 下ろされた銃口を認め、緩やかに息を吐く。 正しくわかり合うには、全ては、この邂逅は遅すぎた。 であれば互いの正しい距離感は、軽々しく踏み入らない事。 ただ提示されたものだけを受け取って、 ただ提示されたものだけを、そうであると腑に落とすだけ。 下衆の勘繰り、邪推などは到底無用のものだ。 「…この場所での死は、所詮は紛い物に過ぎない。 僕とてそれは承知の上だ。全ては一過性の安息だ。 初めはこの場所で死を経る事によって、君達が帰った後 自ら望み、選び取る死が選択肢の一つになれば良いと思っていた そうして自らの死を見詰める事は、ここでしかできない事だ」 そして虐殺者は斯く語る。 夥しい量の血液を流し、倒れ伏す者のすぐ近くで その光景にそぐわない、穏やかな声でただ在るが儘を語る。 きっと死に行くあなたにも、未だ聞こえているだろうか。 (20) 2021/10/11(Mon) 21:54:50 |
【人】 救済者 ユー>>16 >>19 第四階層 「けれど、それだけでは十分な救い足り得なかったようだ。 ── 不当に虐げられ、壊されるグレイが居るのならば 彼等が幸せな道を歩めるような世界を。 ある時そんな願いを託された」 「到底叶わないとわかっている願いだけれど、 困った事に、だからといって諦めるわけにはいかなかった。 …『僕』の幸福とは、死に行く者を尊重し、愛する事だ。 故に死に行く者からの頼まれ事は、蔑ろにはできないものだ」 「だから僕は、こうして自ら死を望む者が居るという事の その意味を、いつか必ず人間達が向き合うべき問題の その一つになる事を願って、この場所に遺す事にした」 一つ一つ、記憶を手繰り、整理し直す。 きっともうじきに無かった事になってしまう記憶だけれど だからこそ、こうして語らなければならないのだろう。 (21) 2021/10/11(Mon) 21:56:16 |
【人】 救済者 ユー>>16 >>19 第四階層 「とは言っても、僕には既に後が無いとわかっていたから それくらいの事しかできなかった、というのが正確な所だ 結局の所、『僕』という死に行く者からの救いは これからを生きて行く者からの救いには敵わなかったようだけど」 幾つもの『これから』を託した宣教用の事を思い返す。 いつだって何処か憂いを帯びた紫水晶の瞳は、 それでも今は、少しだけ穏やかなものだった。 「それでも、今はそれでいいと思っている。 本来死による救いとは、最期の最後に自ら選び取るべきものだ 彼等にとって、『ユーサネイジア』というものが 不要であるならば、それが何よりの事なのだから」 いつしか高くを見上げていた視線を、そっと下ろして。 『ユーサネイジア』は、相対する者と再び向き合った。 「…全ての始まりは、同僚である医療用グレイが 生の苦痛に耐え兼ね、僕に安楽死を請うた事だった。 そうして僕は、愛する者がこれ以上傷付けられる前に殺す事 そして、人間がこれ以上僕を失望させる前に殺す事 それらに救いを見出す事になったと、たったそれだけの事だ」 (22) 2021/10/11(Mon) 21:57:36 |
【人】 愛玩用 エマ>>20 >>21 >>22 >>23 第四階層 「紛い物の死、か。それが何らかの救いになると考えている貴方であれば、 確かにそれを帰ってからも連想させるものとして刻みつけるのは、 おかしくはないし、そして善意より行われるのかもしれないですね。 はっきりと言うならば、私にはわからない話です。私は、死にたくない。 けれどもそれを内心として望むものがあったなら、確かに伸べるのは、そう。 もしかすると彼らにとっては、優しさであったのでしょうね」 未だ帰ってこない、或いはこのやり取りの裏で帰る者達の、行動の理由は。 きっと彼の語る内容に迎合し、彼の望むとおりにあったのだろう。 そしてその救いで取りこぼしたものに伸べるために、考えているのか。 「ここで行われたことはきっと無碍にはできないとは思いますよ。 データの中だからこそとはいえ、貴方はテロリズムを0と1に刻みつけた。 これを見ている彼らもそこまで愚かなわけではないでしょう。 データの中で行われたことは、一挙手一投足に至るまで精査されているはずだ。 少なくとも今まで行われていた何かに対する回答にはなったかと思いますよ。 思えばこうも裏で動いていたことに、私は指先ほどにも漸近することはなかった。 "そんなことがあったなんて"なんてのは白々しいものですけれど。 この塔が瓦解する前に聞くことができて、よかったのではないでしょうかね」 (24) 2021/10/11(Mon) 23:42:24 |
【人】 救済者 ユー>>24 第四階層 「君がそうして理解できないと、死にたくないと そう言ってくれた事を、『僕』は何より喜ばしい事だと思う。 先も言ったように 『ユーサネイジア』というものは 不要であるならば、それが何よりの事なのだろうから」 それは、自らが必要とされない事を望む、おかしな道具。 結局の所『ユーサネイジア』というグレイは 初めからずっと、何処までも理性的に狂っていたのだろう。 「…殆どの死は一時的なものに過ぎなかったし、 監察官以外の者は皆、死を与えられる事を受け入れていた。 そして、それを声を大に言い触らすような事もしなかった。 表沙汰にならない、つまり君の耳に届かないのも道理だろう」 つまりは『知らなかった』という感想は、 このように知られざるべくして潜んでいたものに対して まったくもって適切なものの一つであるという事。 「君ともう少し早くに会えていれば、 過程は、結果は、僅かばかりでも 善かれ悪しかれ今とは異なるものになっていただろうか」 (25) 2021/10/12(Tue) 0:41:53 |
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