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【人】 お菓子の国のプリンセス ベニエ だってあんた、お菓子になりたくないでしょう? 手袋越しだって、みんな、あたしを怖がるもの。 こちらが手を差し出した途端、 びくりと手を引っ込められるのはもう懲り懲りなの。 ちろりと睨め付けてやったけど、男からは穏やかな微笑みが返ってくるだけ。 どうやら他意無く本気でエスコートするつもりだったらしいこの男に、あたしは深く深く溜息を吐いた。 お人好しのこのひょろ長い男に、だから少しくらいはあたしの話をしてやってもいい。興が乗れば、あたしのたった一つの願い事も口にする事もあるかもしれない。 「これは、秘密よ」 誰にも言っては駄目なのよ。 彼を見上げ、屈むようにせがんだら、あたしは耳元で囁くように告げるだろう。 あたしのたった一つの願い事。* (65) Valkyrie 2019/09/14(Sat) 22:15:12 |
【人】 お菓子の国のプリンセス ベニエ■ >>45 カグラへの返し 異国娘──名前を覚えた。カグラって言うんですって──といくらか仲良くなれたから、あたしは自分の城に招待したの。 ショートブレッドにスコンにクッキー、季節はずれのクリスマスプディングまで支度して。紅茶はたっぷり、セイロン、アッサム、ダージリンにキームン、お好みぜんぶを飲めるように。 カグラはすごいわすごいわ、って喜んでくれた。 あたしにとっては、当たり前の日常。 左手を使って手に入れた金貨がなんでも運んできてくれる日常。 ────羨ましいのは、あたしの方だわ。 そうして"自由"にふるまえるあんたが、羨ましい。 胸にもやんと広がる思いには蓋をして。 そうしてたくさんおしゃべりしたの。 (66) Valkyrie 2019/09/14(Sat) 22:16:02 |
【人】 お菓子の国のプリンセス ベニエ「────欲しいもの?」 それは無いの。あたしにも無いのよ。 要らないものがあるだけなの。 すぐさま言葉にしたかったけど、喉の奥につっかえて、なかなか声に出てくれない。 カグラの瞳はキラキラしてる。 言葉もぽんぽん、金平糖みたいに輝いて、転がって。 あたしの願いは、空を見上げて「叶えたいの!」と叫べるようなものじゃない。 王宮の中でなんか、ぜったいぜったい、口にはできない願い事。 ────でも。 "親友"って、言ってくれた。 彼女は、初めて出来た、あたしのお友達。 「あのね…………うん、帰り道で、話すわね」 夕陽が長く影を落とす林の中で。 あたしは小さく告げるのよ。 秘密の秘密の、願い事。* (67) Valkyrie 2019/09/14(Sat) 22:17:13 |
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