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【人】 征伐者 ヴィルヘルム[ ────祝賀に飲み交わす兵達の宴から抜け出して、 砦の暖かな寝室に戻る。 従者に火を焚かせ、灯りを付け、机に向かう。 ] [ “もう下がって良い”と告げれば、 目的のものを執筆する為に羽根ペンへと手を伸ばす。 相続に関しての取り決め、領主の割り当て、 功績を立てた者への褒賞、戦死者の弔い、 やるべき事は山ほどある。そして…… 真実を知らぬ息子に宛て、最期の言葉をしたためようと。 ] ( 何も浮かばないのは 疲労の仕業であって欲しい。 ) (86) 2020/12/03(Thu) 13:08:50 |
【人】 征伐者 ヴィルヘルム[ 考える内に時間は徒らに過ぎ、 窓の外を見遣れば宴の気配も殆ど消えていた。 秋の終わりの長い雨は月の見えぬ晩を一層冷たく、 憂鬱なものに変える。 ] [ 黄金のゴブレットに葡萄酒を注ぐ。 遺書の為にも多少は“馬鹿”になった方が良いだろうと。 薬は既に不要であるから、 代わりにシナモンを加えて温める。 甘く芳醇な味わいが喉を満たした。 ] [ 再び筆を手にしては溜息を吐いた。 背凭れに頭を預け、時折寝室の天井を仰ぐ。 揺れる髪には古びた紙紐。誰かが遺した依代。 彼女の生存を知らせた最も古い手紙の代わり。 ]* (87) 2020/12/03(Thu) 13:09:11 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[一番の仇の骸が崩れ落ちた時、 浮かんだのは怨恨でもなければ歓喜でもない。 苦労せずに潰せたという……なんとも無感動な感想だった。 城内の人々がどうなろうと、 此方に武器を向け罵倒を浴びせてこようとどうだってよかった。 人の不幸で飯を食うような下卑た連中は、さっさとくたばってしまえばいいのだ。 寧ろ、まだ息があるのだという主張をするから都合がいいとさえ思っていた。 それ程までに、死というものに抱くものが少なくなった。 本能のままに躊躇いも無く葬る獣に近づいてゆく。 「安心しろ。お前の同胞も直ぐに其方に送ってやる」と、引き金を引く度に吐き捨てた言葉は存外、淡々としすぎる程に淡白になった。 心底、所詮有象無象の末路なんてどうでも良かったのだろう。] (88) 2020/12/03(Thu) 19:31:03 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[城中にまで響きそうな悲鳴は、まるで狂った猿のような煩さだった。 絶叫をあげ、惨めに這い蹲る無力な家臣に追加の銃弾を放ち、 倒れた腕迄踏みつけながら、冷えた息を零すこともあった。 (微かに、感覚麻痺した筈の胸が軋む。 非道な迫害に憤りさえした保健室補佐が 今の私を見たらどう思うだろう……そんな戯言。) ふとうすぼんやりとした思考回路の中で過ぎったが、下らないと首を振る。 捨てた想いを振り返ったところで、無駄なことでしかなかった。 ( 人を嫌っている癖に、 人と寄り添いたかった自己矛盾は、 見ない振りをし追いやってしまおう。 自分は最早人とは呼べぬことを重ねた。 自分の道を確固たるものにするために、 家族の記憶も、同胞の命も 唯一無二の全てをこの手で捨ててきた癖に “後戻りする選択肢なんて存在しない”。 そういう事にしておいた。 ) 満月が昇ってしまえば、微かに残った邪念でさえも消え果てる。最早ひとの姿も保たなくなった怪物が全てを掌握し、その果てに示された結末は───ご覧の通りの有様だ。] (89) 2020/12/03(Thu) 19:31:29 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[この色を、この光景を、この寒さを、知っている。 ────……初めてのことではなかった。 横たわる少年の髪が土に汚れ、鮮血が血を舐めた追憶の中、 その頭を、獣の毛皮を梳くように撫でていたのを思い出す。] ……ビビ。 私、ずっと君と生きていたかった。 君のためならなんだってしてきたし、 君のことをずっと思ってきて────…… [「君を苦しめる奴らはみんな、居なくなったぞ。」 「……なあ、これからどうすればいい?」 「私はどこへ行けばいいんだ?」 白く輝く太陽に手を伸ばしても、遥か遠い。……返事が帰ってくることもない。] (毒を飲ませたもうひとりの戦友が言った 代弁者であるかのような言葉だけが、脳裏に響いた。) (90) 2020/12/03(Thu) 19:32:31 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ( 「 ────“死ぬなよ” 」 ) (互いに安らかな死さえも許されない癖に。) [静寂を割く翼の音に、意識が引き戻される。 秋も半ばの冷ややかな朝の光を遮るのは、受胎告知の天使には程遠い───いつかの遣い鴉。] (まるで呼び声に応じたかのようだった。 引き合うように窓辺に静かに留まるのは、 難解ではない達筆な文章が示す送り主は、 最後に柄でもない約束を交わした相手は、 喰らったあの子ではないと分かっている癖に。) …………… 臆。 (92) 2020/12/03(Thu) 19:33:29 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[文句を言う癖に口調が少し弾んでいるのは、 無事を安堵した安らぎ故か───それとも。 生者の息せぬ変わらぬ城内を再び走る靴音は、しっかりと意思のある重みを帯びていた。 朝を迎えてもあまりにも静かな城内は、罪なき平民の不安をいずれは煽ってしまう。その中から異形の怪物の姿や“ある意味有名な”己の姿が出てきたのだとしたら……尚更。 向かった先は密かに建設された馬小屋だ。 学び舎を巣立った時にも世話になった、相変わらず骨ばった黒い不気味な馬たちの特異性は、隠れて国を抜け出すには随分と都合が良かった。] [小屋の奥で縮こまった、随分と鞭傷の激しい個体を選んで引き出したのは───縛られて息苦しそうな場所から自由にしてやりたいという気持ちの表れか。] [乗馬の知識はなかったけれども、 そのセストラルは心が通じたようにおとなしかった。 脆い背中にまたがって、合図するように腹を蹴れば 黒き翼が鈍色の空に大きく羽ばたき飛び立った───] (94) 2020/12/03(Thu) 19:35:23 |
【人】 平民の日記今日の朝、 いくら待ってもお城の鐘が聞こえなかったわ。 朝になればいつも大きな音が響いてくるのに。 お陰でいつもその時間に 病死した母さんに祈りを捧げる習慣だったのに 少し遅れちゃったの。ごめんね母さん。 ……あ、でも今日、変なものを見たの。 お城から真っ黒で不気味な馬が飛んでいったわ。 そのまんまお空の向こうへ消えて行っちゃったの。 あれ、なんだったのかしら? (95) 2020/12/03(Thu) 19:36:18 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[黒い天馬に任せた責務は、国の境界を跨ぐまで。 さんざ重荷を押し付けられた国家の動物に、これ以上の負担を背負わせることなどできなかった。 するりと背中から降り立ち地を踏めば、轡を外してやる。 硬い鬣をゆっくりと一撫でしてやれば、一歩下がって指笛を吹いた。 甲高い嘶きと共に、再び青空へと舞い上がる。 もう二度とその背に誰かを乗せることはない。 解放された自由な世界で逞しく生きてほしい。 心からそう願ってしまった。 姿が見えなくなるまで見送って、軍服のポケットから小型の薬品ケースを取り出した。 赤色の錠剤をひとつ摘み取り、口に含んで噛み砕く。 酷く酸っぱい味わいと、激しく揺らぐ視界に一瞬ふらつき反動に耐える。] (96) 2020/12/03(Thu) 19:36:44 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[ 「獣化解放薬」 抑える薬があれば、促進させる薬も存在している。 寧ろ戦争国家であれば其方の方が都合が良かった。 遺伝子を活性化させ、満月無しにその身を変えさせる。人外並の力も手軽に引き出すことが可能であった。 その効力も些か完璧とは言えず、飢えが湧き出る程に悪化もしなければ自我も落とされることはない。 殺戮に戸惑いが生じることは国としては都合が悪いが──速度だけ欲しい彼女にとっては都合がいい。 無理やり身体の組織を捻じ曲げる副作用は酷いもので、倦怠感、頭痛──その他数多のダメージは避けられないが、背に腹は変えられない。] [残された時間なんて限られているから、辿り着くまで薬を重ねて誤魔化して──その後のことは考えない。 口内に残る酸味と共に、鱗に覆われる身体の変化が終わりきるよりも先に足を踏み出しかけ出した。] (97) 2020/12/03(Thu) 19:37:14 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[野を越えた。 山を越えた。 川を越えた。 数多の障害を経る。 計り知れない苦痛を更に酸味を飲み込むことで相殺し、悲鳴をあげる四肢を絶え間なく働かせる。 どんな苦痛よりも、降り頻る雨が寒かった。 鱗に注いだ水滴は乾くことを知らず、 空気の冷気に冷やされ、体温を下げていく。 ───何れ見えた砦の軍幕に見覚えがあれば、ラストスパートのように速度が上がった。 誰彼の視線も気にすることなく、巨体を外壁へ凭れかけ、鉤爪をめりこませ、荒い呼吸に合わせるように攀じ登る。] (ひとつの賭けのようなものだ。 「待っている」とは言ったものの、 どこに居るかがわからない。 権力者様なら高いところにいるのだろうと 捻くれた偏見は───どうやら当たっていたらしい。) (98) 2020/12/03(Thu) 19:39:17 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[濁った赤目が窓を隔ててひとつひとつ、砦の内部を覗き込む。 その中に───身知った 赤 を見つけた気がした。][かん ッ と、尾を硝子が割れない程度に強く叩きつける。 応じて窓が開けられるのなら、倒れ込むように開けた相手を押し倒していたかもしれない。] ………………………… 無事 か。 [薬の効果が切れかけてしまえば、重ねた苦痛が一気に押し寄せて仕方がないから。 アイスブルーを取り戻せない濁った赤目が、魂が抜けかけたように揺れていた。 脇腹を抉った傷口は未だに癒えず、清めもしなかった身体からは死臭と鉄臭さが消えてくれない。 ……屍のように凍えていた。 不意に感じた温もりに、縋り付くように抱きしめて。 ────鉤爪で傷つけない程度にその背を撫でたりしたかもしれない。]* (99) 2020/12/03(Thu) 19:39:54 |
【人】 転入生 二河 空澄── 朝:校門前 ── [学校が始まる一時間前には 校門の前に着いていた。 転入生が珍しいのか それとも、もう既にニノマエ家の跡取りに 楯突いたことが耳に入っているのか 登校して来た子らの視線が痛い。] おはよー! って、またか…… [それを跳ね返すくらい大きな声で挨拶すると 視線を逸して そそくさと門の間を抜けていく。 完全にアウェイ。 昨日のこの時間には、まだ この全員と友達になれたらイイな、って おめでたいことを考えていた自分。 たった一日で、驚くほど世界は変ってしまった。] (100) 2020/12/03(Thu) 21:39:07 |
【人】 転入生 二河 空澄[彼の姿を確認した時には 飼い主を見つけたワンコのように駆け寄った。] 真昼くん、おはよっ うん、だいじょーぶ! お風呂の後にもっかい貼ったからね。 [背がぐんと伸びたとしても しばらくは着れそうな 大きめのトレーナーの裾をぺろっと捲って 貼ってもらった時と同じ位置の湿布を見せる。 心配させたくないから 痛むことはナイショにして、にこっと笑った。] (102) 2020/12/03(Thu) 21:41:19 |
【人】 転入生 二河 空澄[共に歩き出しながら それよりさ、と 少し神妙な顔つきに戻して話し掛ける。] オレね。 真昼くんが来てくれるまで 心配で、心配でしょうがなかったんだ。 だから明日は 家までお迎え行っていい? [断られたとしても こっそり木の陰とかから 見守ろうって考えるくらいには 自分の知らないところで 何の手立ても講じることが出来ないまま 彼が傷つくのだけは、どうしても嫌だったから。]* (103) 2020/12/03(Thu) 21:43:38 |
【人】 転入生 二河 空澄── 5分休み ── [向こう見ずな態度を取ってしまったから また鋭い蹴りが来るんじゃないか、と 内心 身構えた。 けど、返ってきたのは 解決の糸口を掴ませることのない 端的で横暴な答えだけだった。>>30] なッ……、 [どう切り返せばいいのか分からずに 絶句して突っ立っていると、あっちへ行けと仕草で示された。 頭の悪い仔犬が 吠えかかってきて面倒くさい、といった扱い。 悔しいけど、 何も思いつかないまま挑んだって 敵わない相手なことは明白で 大ボスが戻る前に 真昼くんの元に辿り着くのが先決だ、と 追い払われるままに、教室へ戻った。] (104) 2020/12/03(Thu) 22:06:32 |
【人】 征伐者 ヴィルヘルム( 冷たい戦乱が心さえ凍らせていたかのように、 凝り固まった情緒は言葉として表すことが出来ない。 揺れる暖炉の炎にもう一つ薪を加えて、 再び机に向かおうとした時だった。 ) [ ────使い鳥の嘴とするには大きい、 硬質的な音色が部屋に反響した。>>99 天候が雹に変わった様子でもない。 敵襲など有り得ない立地と高さだ。 加えて周囲は砦に収容し切れない人員が 軍幕を張っているものだから。 思い当たる前にナイトガウンの裾を翻し、 窓辺へ駆け寄った。 見れば薄闇の中に濡羽色の魚鱗めいたものが光っている。 思わず框に手をかけて、一息に頂点まで押し上げた。 ] (105) 2020/12/03(Thu) 22:07:18 |
【人】 征伐者 ヴィルヘルム[ すると破れた布切れと不規則な黒鱗に覆われた脚が、 それに続いてヒトの輪郭を保った顔が視界に現れる。 血溜まりの如く濁った 瞳 であっても、一度目の当たりにした其の姿を忘れる筈もなく。 吹き込む風に混じる死の匂いは、 彼女が長い長い闘争に身を置いていた事を悟らせた。 ] リヴァイ、お前…… 今晩はまだ三日月の筈──── [ 言い切る前に其れは窓の下枠に脚を掛け、 濡れそぼつ身のまま飛び込んで来た。 寛いだ衣装では一人分の質量以外に抗うものはなく、 衝突した威力に押されるままに後ろ向きに倒れ込んだ。 古びた絨毯から鈍い音が鳴る。 ] (106) 2020/12/03(Thu) 22:08:08 |
【人】 征伐者 ヴィルヘルム[ 振動と共に全身へ打ち広がる様な鈍痛。 痛みには慣れてきたが、頭の中が揺れたまま治まらない。 深い瞬きを繰り返して定まらない視界を確かめるが、 一向に効果は出ない。 言うべき事も、迎える言葉も、募る話も、 沢山あった筈なのに。 瞼の裏に文字通り星が散る有り様では、 “ああ”と短く肯定を返すのが精一杯だった。 ] [ その実、狭義的な“無事”とは言い難く。 命を酷使したお陰で身体は重い上に、 受けた矢傷は今も包帯の内側で疼いている。 取引の『刻限』が迫る身体は、 不可逆で緩やかな衰弱の途中に在る。 ] [ 分厚い生地に冷たい雫が染み渡る。 背へ控えめに回る腕があれば体温は尚更混ざり合い、 腕を広げて迎え入れようとした中途半端な格好のまま 疲労困憊への追い打ちとなった眩暈と戦っていた。 ]* (108) 2020/12/03(Thu) 22:09:53 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[平民なら兎も角、兵士相手ならば斬り捨てられてもおかしくはない。 さんざ人を喰らった獣の見た目は禍々しいものだったからこそ───元からあった銃痕以外、此処に無傷で辿り着けたのは奇跡に近いのではないか。] [自身が経てきた時間は彼と比較すると激動と言うには程遠いのかもしれない。 大半を診療所で過ごしてきた。 勝負に出たのは最後の一年間のみだというのに 祖国を崩壊させた人生は、屍の数が多すぎる。 酩酊したかのように揺れる意識を支えるように抱えれば、 彼に初めてこの姿を曝け出した時のように倒れ込む。 見た目の変化こそあれど、相変わらず打たれ弱い身体だと思った。] ……喧しい。 月に頼らずお前の元に辿り着く等酷にも程があるわ。 一定時間だけ力を解放しただけだ……直に戻る。 [軋む絨毯に唸り声をあげ、手を床につき、軽く上半身を起こそうとする。 濡れた髪を鬱陶しそうに揺らし乍ら不機嫌そうな声を返した。>>106] (109) 2020/12/04(Fri) 0:01:15 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[瞼が下りそうな怠惰感が全身を襲っているのに、開きっぱなしの窓から吹く風は刺すように冷たく、湿った鱗に叩きつけてくる。 「寒い」と抗議の声を漏らせば相手を片手で抱えたまんまよろよろと立ち上がり、雑な動作で再度閉め下ろす。 温もりを探すように雫を落とし、無抵抗のまま目眩と戦う相手を半ば引きずるようにして彷徨い───寝台を視界に入れればそのまま放り投げた。] ………………怪我は。 (あの子はいつも傷だらけだったから。) [相手に息があったのはひとつめの幸運。 命こそ存在されど、受けた傷の程度をこの目で確認しなければ満足できなかった。 ナイトガウンを邪魔臭そうにはだけさせれば、器用とはいえない鉤爪さばきで相手の身体を暴こうとする。 彼女に下心は皆無ではあれど───側から見れば夜這いと勘違いされていてもおかしくはない。 具合を直接見えなくとも、証明のように包帯が巻かれているのを見ることが出来たならば、そのかんばせは酷く歪んだに違いない。] (110) 2020/12/04(Fri) 0:01:47 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ(なんだこの怪我は。 お前は私の獲物だと前にも言った筈ではないか。 文句は決壊したダムのように溢れて止まらない癖に 久しぶりに得た人肌の温もりが酷く身に沁みる。 ……何れはそれも反応が涎を垂らす一因にもなる癖に。 もう与えられる資格などないに等しいはずなのに。) …… 良かった …… [枯れきって流さない涙の代わりに、雨粒が髪を、鱗を伝って滴り落ちる。 文句の代わりに安堵の四文字を並べたのは、隠された本心が漏れ出たもの。最後に残ったたったひとつが失われていないことがただただ嬉しかった。] (111) 2020/12/04(Fri) 0:02:24 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ[ぐうらぐうら。 何重もの副作用が襲う頭はまともな思考回路を保ってくれない。 中途半端に暴きかけた据え膳のような状態のまま、力尽きたように倒れ込み、そのまま抱え込んで胸に顔を埋めてしまった。 幼児のように擦り寄れば、大きく息を吸う。 混ざり合った体温がいつも以上に心地が良い。 触れても触れても命なき冷たさばかりに触れていれば そこに燃えている熱に縋ってしまうのは当然のこと。 「……ん、」と小さく声を漏らせば、密着するように身体を文字通り重ねようとした。 変化時に衣服が破れてしまえば、鱗に覆われていれど裸体同然の姿なのだが麻痺した頭は碌に気にもしないまま。 足りない熱を補うことだけに意識を向けて、まだ薬の効果が残り続ける長い尾までもを巻きつけた。] (112) 2020/12/04(Fri) 0:02:52 |
【人】 終焉の獣 リヴァイ(相手のことを異性としてみたこともなければ 下心さえも存在していない故───── これは一種の気の迷い。 彼女自身も深く考えちゃいない、熱を求めるが故の行為。 冷えた身体は通常の人肌の温度では足りなくて、 更に温もりを享受したいと本能が叫ぶ。 自我も忘れてそれに従ってしまうのならば…… 今、満月は昇ってこそいないが、 今夜だけは───欲張りな獣に成り果ててしまおう。)* (113) 2020/12/04(Fri) 0:03:35 |
【人】 征伐者 ヴィルヘルム『他の国家の如何なる法もこの地では無効。 敵意を持たない対象への攻撃は許可しない』 [ いつか戦争が始まる前に敷いた則。 其れは実質的には彼女を保護する為の決まり事で。 獅子の御旗は定めた獲物以外には靡かない。 ────たとえ国際的な指名手配であったとしても。 ] [ どれ程冷たく過酷な闘争であったとしても、 生命の証明は、体温と鼓動は変わりなく其処にある。 本来なら死に至る運命を幾度となく捻じ曲げ、 “違和感の無い程度”に書き換えられた筋書きは 何もかもが悪魔の筋書き通りであるが、 同時に約束を確実に守る動因となった。 床に落ちた黒髪を受けたばかりの雨粒が伝う。 揺れる度に張り付いては触れたものを しっとりと濡らして行くのが擽ったい。>>109 ] (114) 2020/12/04(Fri) 2:14:03 |
【人】 征伐者 ヴィルヘルム[ 碌に身動きの取れないまま放り出されれば、 自ずと暖炉の火に近づく事になる。>>110 気付けば窓はいつの間に閉められていて、 寝室は暖かな空気と橙色の光に満たされつつあった。 ] 四年闘って無傷で済む戦士が居ると思うのか……? だとしたら其奴の度胸を疑った方が良かろうに。 [ 結局、再会して初めてのまともな返答は いつかの日にも似た憎まれ口になってしまう。 回り始めた思考は傷の手当だとか、祝杯だとか、 先程浴びた湯を従者に沸かし直させる事だとか、 ────考えたその全ては再び何処かへ葬られた。 ] [ 漸く平常に戻りつつある視野が最初に捉えたのは 揺れる火に照らされ浮かび上がる女の肢体。 末梢や頬、背と尾を除いてヒトの形を既に取り戻し、 この身を覆い隠す形で寝台に膝を乗り上げていた。 ] (115) 2020/12/04(Fri) 2:14:44 |
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