情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
【人】 患者 アンネロズ[ きっとそれは音にはならなかった。 最後に名前を呼ぶことさえかなわず。 苦しくて、目をつぶれば、脳裏に浮かぶのは貴方の顔。 会いたいな……。 それが叶わないとどこかで思ってしまったのは 死期を、悟ってしまったから。 自分の身体のことは自分が一番わかる。 そんな言葉の意味を死ぬ直前で知ることになるなんて。 私は薄れゆく意識の中で、 遅すぎる 後悔 をしていた。 貴方に病気のことを伝えればよかった。 貴方にもっと我儘を言えばよかった。 ] (86) 2022/02/15(Tue) 23:25:26 |
【人】 患者 アンネロズ[ 後悔なんてしてもすべてが遅い。 ねぇ、エド。 もし、私が秘密を抱えず、 全部貴方に打ち明けていたのなら。 何かが変わっていたのかしら。 私には、わからないの……。 ] (87) 2022/02/15(Tue) 23:27:48 |
【人】 患者 アンネロズ[ 私が意識を失った後も 医師は処置を続けてくれていたけれど。 貴方が病院にたどり着く前に 私の心臓は止まってしまった。 ] (88) 2022/02/15(Tue) 23:28:20 |
【人】 患者 アンネロズ *** [ 貴方が到着したとき。 私は病室のベッドの上で永遠の眠りに落ちていた。 何が起こったのか、空気でわかったかもしれない。 わかっていてもいなくても、 私の父が、震える声で娘の死を伝えたはず。 母はずっと泣いていた。 でも、貴方に気づいたなら ] 「 ごめんなさい…もっと早く、言えば…。 」 [ そんなことをずっと、繰り返したでしょう。 両親は私が貴方に病気のことを伝えていないと 知っていたし、伝えるべきか悩んでいた。 でも、娘の意思を尊重して、 自分の言葉で伝えるのを待っていたのだ、と。 そんな説明を聞いたら、貴方はどう思ったのかしら。 説明すら、聞く余裕もなかったかしら。 ] (90) 2022/02/15(Tue) 23:30:05 |
【人】 患者 アンネロズ[ 私の両親は娘を喪った悲しみに暮れながらも 貴方のことを、ずっと心配していたはずよ。 私の想い人だと、知っていて。 もう付き合っているとすら思っていたはずだから。 そして、どこかのタイミングで 貴方にこう告げるの。 ] 「 今まで沢山気にかけてくれてありがとう。 アンネのことは、もう忘れていいのよ。 」 [ それは、両親の気遣いだった。 でも……。それが貴方にとって 果たして、慰めになったのかしら、ね。 ]* (91) 2022/02/15(Tue) 23:32:36 |
【人】 ピアニスト イングラハム部屋を後にして数分。 誰もいない部屋の隅の棚 飾っていたピアノの写真が 棚から落ちて砕け散った。 砕け散るガラス片が何の予兆なのか 私は取り返しがつかなくなった頃に思い知る。 それが全ての終わり。 (92) 2022/02/16(Wed) 2:19:25 |
【人】 ピアニスト イングラハム*** 病院に辿り着けばもう一度アンネに連絡を送る。 この前は急で驚かせてしまったから 今度はそうならないようにと気をつけた結果だ。 しかし、送った連絡に返事が来ることはなく。 私は少しだけ心配になりながら院内へと その足を踏み入れることとなった。 (94) 2022/02/16(Wed) 2:21:01 |
【人】 ピアニスト イングラハムやけに重苦しい空気が満ちる。 汗を垂らし走り回る医者に まるでお通夜のように顔を淀ませる看護婦 穏やかな空気じゃないのは確かだ それはまるで、誰かが亡くなったかのようで。 けれどそれが誰なのか、私には見当もつかずに。 (95) 2022/02/16(Wed) 2:21:43 |
【人】 ピアニスト イングラハム「えっと、すみません。 アンネロズさんと面会を お願いしたいんですが......。」 そう受付の看護婦にいつものように声をかける。 けれど看護婦はいつものようには答えてくれず 何かを隠すように口ごもっていて。 その理由を知った時、私は息を飲んでしまった。 (96) 2022/02/16(Wed) 2:22:22 |
【人】 ピアニスト イングラハム本当の絶望を目の前にすると 人は怯えることすら出来ないのだと 私は最悪の形で学びを得る。 アンネの訃報の引き換えに得たのは 知りたくもない人間の真理と、消えない傷。 けれど、彼女はそんなこと一言も言ってなかった。 いつか自分が死ぬかもしれないなんて 彼女は一言だって言ってはいなかったはずなのに。 彼女はきっと、回復の途中だと思っていたのに。 (98) 2022/02/16(Wed) 2:23:48 |
【人】 ピアニスト イングラハム現実を受け入れられなくて怒るのでも 現実を受け入れて哀しむのでもなく まだこれが現実だという自覚すら持たず。 私はただ鉛のように重い身体を引きずって 彼女がいつも出迎えてくれた病室を目指した。 (100) 2022/02/16(Wed) 2:25:17 |
【人】 ピアニスト イングラハムくらりと意識が飛びそうになる。 血管が悲鳴をあげるように 血液までパニックを起こしかけた身体を 無理矢理奮い立たせると 病室にいた者たちの視線が私へと集まって 私に気づいた彼女の両親が その全てを、教えてくれた。>>90 こちらへ謝罪をする彼女の両親は 私よりも深く哀しむことになるのだろうに 最後まで他者を気遣うその心に 私は彼女の面影を辿らずにはいられない。 (102) 2022/02/16(Wed) 2:30:27 |
【人】 ピアニスト イングラハム今ここで泣き叫ぶことだって出来た。 それをしなかったのは 人徳者 の前で私がそんなことをするわけはいかないからで そんな私に追い討ちをかけるように 忘れていい。>>91 そんな言葉が心臓を抉る。彼女の両親の気遣いだということは 痛いほど伝わってきた。 それに憤る資格など私にはないということも 十分に分かっていた。 (103) 2022/02/16(Wed) 2:31:43 |
【人】 ピアニスト イングラハム「すみません。少しだけ... 彼女と二人にさせてもらえませんか。 彼女に...ちゃんと別れを、告げたいんです。」 (104) 2022/02/16(Wed) 2:32:18 |
【人】 ピアニスト イングラハム赤の他人の私が言えたことではない しかしこれまでの事を好意的に見てくれた 彼女の両親は私の願いを聞き入れてくれて 部屋に残ったのは 取り残されてしまった私と 逝ってしまったアンネの亡骸だけとなった。 (105) 2022/02/16(Wed) 2:32:54 |
【人】 イングラハム*** アンネに別れを告げて病室を出ると 外で待っていてくれた彼女の両親に 「ありがとうございました。 」 そう深々と礼をして私はその場を後にする。 向かう先は病院の玄関出口...ではなく 誰も通らないような外付けの非常階段で。 (106) 2022/02/16(Wed) 3:31:25 |
【人】 イングラハムアンネロズを失った痛みが魂を引き裂く。 壁へとぶつかる怒りの数だけ 引き裂かれた魂が更にバラバラに崩れていく。 粉々に砕け散る魂が今更どの面を下げて 彼女を愛しているなどと言えようものか。 (110) 2022/02/16(Wed) 3:38:25 |
【人】 イングラハムゴン、ゴン、と不細工な音を奏でる度に 耐えかねた拳からは流血が零れ落ちていく。 あぁ、痛くない。痛くないよ。 君が背負った痛みや、君を失った痛みに比べたら。 すると胸ポケットから何かが 血溜まりの上に落ちていった。 (111) 2022/02/16(Wed) 3:40:04 |
【人】 イングラハムそれはチョコレート。 アンネが私の為に用意してくれた 甘くて美味しい、私の一番好きな食べ物。 包みから落ちて血と砂で汚れたチョコレートを 拾い上げて、それを口へと放り込むと 甘くて蕩ける想い出の味を ざりざりとした鉄の味が邪魔をする。 (112) 2022/02/16(Wed) 3:41:58 |
(n5) 2022/02/16(Wed) 3:46:34 |