人狼物語 三日月国


137 【身内】No one knows【R18】

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【人】 旅人 J

 
[その街へ辿り着いた時
 もう、日は傾いていた。

 商いの盛んな、貿易都市。

 モノクロームの装いの女は、
 ペティコートで膨らませた裾と
 腰に携えた刺突剣を揺らし歩く。]
 
(2) 2022/03/13(Sun) 9:26:53

【人】 旅人 J

 
[母が用意してくれた衣装。
 父が与えてくれた武具。

 両親からの贈り物は、もう増えることがない。

 彼らの喜ぶ顔が見られないのだから、
 婚約者のところへ行くのはやめてしまった。

 どの道、こんな顔では
 歓迎されなかっただろうけれど。
 片側だけ伸ばした前髪の上、
 重苦しいスティールの眼帯が、鈍く光る。]
 
(3) 2022/03/13(Sun) 9:27:24

【人】 旅人 J

 
[────生家は、嫁入りを目前に襲われた。
 自由と平和を愛す祝日の夜。
 しかし神は、いなかった。

 高価なものは皆奪われた。
 物盗りの犯行だという。
 きっと、そうだった。
 人生で一番、情けなくて堪らないのが、
 対峙した相手の顔を憶えていないことだ。
 恐怖とやらが、記憶を混濁させてしまったらしい。
 父の教えてくれた剣で
 辛うじて自らの命は守れたけれど

 共に逝ってしまった方が
 一層、よかったのかも知れない……。]

 
(4) 2022/03/13(Sun) 9:28:20

【人】 旅人 J

 
[父が母へ贈り
 母から自分に受け継がれる予定だった
 
青い宝石
のブローチ。

 白銀の羽根が覆う意匠は
 世に一つしかないものだ。
 それだけは、奪還したい。

 家族が笑い合った証。
 指の間からこぼれ落ちていった日常が
 取り戻せるような気がするから。]
 
(5) 2022/03/13(Sun) 9:28:59

【人】 旅人 J

 
[物も人も情報も行き交う街。

 早速といきたいところだが、
 指先に震えを感知する。]


  ……。


[二日前に野生のベリーを齧ったのが
 最後の食事だった。
 否、三日前? ────どうでも良い。

 日に日に痩せて萎んでいく胸は
 寧ろ邪魔にならなくなって良かった。]
 
(6) 2022/03/13(Sun) 9:31:18

【人】 旅人 J

 
[補給を兼ねて市場へ向かう。
 ブーツの底で石畳みを叩く。

 嗚呼、人の身体って、面倒だわ。*]
 
(7) 2022/03/13(Sun) 9:31:32

【人】 旅人 J

 
[西端の領地を旅立ち、陸の上を進んできた。
 銀行においていた財産から召使い達に退職金を出し
 残ったぶんをすり減らしながら生きている。]
 
(12) 2022/03/13(Sun) 13:22:26

【人】 旅人 J

 
[────盗品を扱う者を教えて欲しい。
 そんな風、馬鹿正直に訊ねて叶うわけがないのは
 如何に世間を知らぬ女でも予想ができた。

 迂闊に手を伸ばせば警戒されるだろう。

 立ち寄る街では
 闇屋の方から近づいてくれるよう
 良い客、良い金蔓を演じるよう心掛けた。
 出処を問わず金に糸目を付けぬような客を。

 それで随分懐は軽くなったが
 狙いの品が流れ着いたかも知れないという
 雲を掴むような情報を得て此処に居る。

 資金が尽きる時が、この旅のタイムリミットだ。
 効率がいいのかわからない方法は、
 改めるべきなのかも知れない。]
 
(13) 2022/03/13(Sun) 13:23:07

【人】 旅人 J

 
[表通りの市場は
 都市の規模に相応しい賑わいを見せていた。
 明るく活気のある場所に身を置くと女は、
 自分だけが別の空間にいるような錯覚をおぼえる。
 見えているもの全て、作り物のように思えてならない。
 或いは自分だけが不出来な我楽多なのかと
 人形のように整った冷たい表情の裏で考える。]


  美しい装飾品を扱う店をご存じないかしら
  きれいなものには目がなくて
  ここには暫く留まるつもりだから
  良いお店を思い出した時は教えに来て頂戴


[紙袋に詰めて貰った果実への対価としては過剰な
 金貨を押し付けて品を受け取る。
 足掛かりの足掛かり。
 虱を潰す作業の一手目として。
 まるで蜘蛛の巣を張り巡らせるように
 真白な羽毛の髪の異邦人は彷徨きだした。*]
 
(14) 2022/03/13(Sun) 13:24:02

【人】 旅人 J

 
[独特の容貌は人々に印象を残し
 情報を届けさせるのに役立った。
 無論、その分危険も引き寄せるのだが。

 護身用に習った刺突剣の扱いはそれなりの
 自負があるが、それ以外は並だ。
 歌を歌ったり、楽器を奏でたり、チェスを指したりと
 身分に相応しい教育を受けた、ただの女。

 突然襲われないよう警戒はしているものの
 十分に距離を置かれ
 喧騒の中に気配を溶け込ませられたら>>20
 気付きようがない。

 態と通りの中心を歩き進めば、
 受ける目線は多く、殊更であった。]
 
(21) 2022/03/13(Sun) 19:16:04

【人】 旅人 J

 
[幾つかの些細な買い物をして
 その度金貨を見せつけて
 誰かに阻まれることがなければ
 そのまま宿屋の一つに堂々と入って行く。


  W装飾品を求める
   眼帯をした白い金持ちの女が
          泊まる宿だW


 人々にそんな印象がつくことを願い。
 小さめの宿屋は2階の部屋を全て貸切にする。
 自分に用のあるものがもしくれば
 2階奥の部屋に直接通すよう主人に言い付けて。
 十日分纏めて払えば決して悪い顔はされない。]
 
(22) 2022/03/13(Sun) 19:16:35

【人】 旅人 J

 

  ……ふぅ


[一体、何日でこの街の闇商人と接触が叶うだろう。
 何日で必要な情報を引き出せるだろう。
 此処がもしもダメなら次は北か南か。
 まさか海を渡って東か。
 自分が途轍もなく小さな存在だと実感する。
 そして問わずにいられない。
 無為に遺産を喰い潰す己につけられる価値はあるのか、と。
 散らす財は元は領民の血税だ。
 路銀は出来るだけ節約しているが、それでも。]
 
(23) 2022/03/13(Sun) 19:18:51

【人】 旅人 J

 
[そんなことを考えながら、身体を動かすために
 紙袋から出した果物を齧り咀嚼し嚥下する。
 部屋の中、ひとり。

 寝具と小さな机と椅子しかない部屋は
 些か、ほんの些か、落ち着きを得られた。
 補給を終えれば酒場のような場所へ
 向かうことになるが、気は重たかった。*]
 
(24) 2022/03/13(Sun) 19:20:49

【人】 旅人 J

 

  ……っ!


[響いたノック音に、ビクリと細い肩が震えた。>>25
 それと同時、傍にある刺突剣の柄を握った。

 単純に、驚いた。
 まだこの街に張り巡らせた糸は少ない。

 地道にコネクションを繋ぐ時間は惜しく
 他に思いつかないためにいまの手段を講じていて
 こんなにも早く手応えがあったのなら
 僥倖に他ならないが。

 音は再び、響いた。]
 
(28) 2022/03/13(Sun) 21:07:57

【人】 旅人 J

 
[不在と思われて立ち去られるのも
 部屋を荒らさんと扉を破られるのも嬉しくない。

 態と硬いブーツの底で木製の床の上
 足音を立てて扉の近くへと寄る。

 まだ開けぬまま。
 鍵もまだ、かけたまま。]
 
(29) 2022/03/13(Sun) 21:08:19

【人】 旅人 J

 

  ……どちら様かしら?


[女の声でそう訊ねた。
 ノック音だけでは何もわからない。
 ただ金を奪いにきた暴漢という可能性もある。
 周りに迷惑をかけたくなく話を聞かれたくもないから
 同階は貸し切っており、
 2階ならば窓から飛び降りて逃げる事も自分にはできる。*]
 
(30) 2022/03/13(Sun) 21:10:15

【人】 旅人 J

 
[日の当たる場所で育った自分に
 盗品を取り戻すすべを
 教えてくれる者はいなかった。
 然るべき届けは出したが待つ意義を感じなかった。

 時折、考え悩む。
 この方法で本当に届くのかと。]
 
(33) 2022/03/13(Sun) 22:33:51

【人】 旅人 J

 
[立ち去った気配はないが
 問いかけに返事がなかった。>>31

 隻眼を足下に向ける。
 扉の隙間から届く影を確認できない。
 目の前に人がいたらわかるように
 廊下の明かりを強めておくべきだった。
 普段ならそうした。
 今日は細工をする時間もなかったのだ。

 その事実とすぐに反応がないことに
 焦燥して喉が乾く。

 表通りの喧騒が嘘のように何の音もしなかった。
 喉を鳴らす音すら扉越しに聞こえてしまいそうで
 唾を飲み込むのを必死に耐えた。

 弱さを、取引相手になるならば見せてはならない。
 自分のような世間知らずは、
 あっという間もなく飲み込まれてしまう。
 どこまで隠し切れるかは謎であり、
 既に色々と掴まれていることは想像もしていない。]
 
(34) 2022/03/13(Sun) 22:36:16

【人】 旅人 J

 
[永遠に感じられる沈黙のあと
 一言だけの返事が返された。>>31
 男の、どこか余裕の感じられる声だった。

 ケリオス商会。
 覚えがない。
 尤も、覚えがないことだらけであるが……。

 相手には、底知らぬものを感じた。
 これまで対峙してきた者たちも
 生きる世界が違い、理解しあえぬと思ってきたが
 何であろう、それらとも次元の違いを感じる。
 扉越しに一言受けただけで、
 三日歩き倒したのと同じくらい
 疲労を感じていることがその証左だ。

 だがそれでも。
 必要な情報をもつものなら拒む理由はなく
 探し物を続ける資金だけが騙し取られてはならない。
 身を守るすべは剣だけだが
 肉体や命を軽んじていればこそ無謀なこともする。]
 
(35) 2022/03/13(Sun) 22:38:27

【人】 旅人 J

 
[刺突剣の柄から手を離し、
 鍵を開け、扉を開き、
 愛想のない顔を覗かせた。

 平均よりやや低い身長で見上げた
 灰色の髪、色の濃い眼鏡。
 口許は笑みの形を作っているようだが
 胡散臭さが感じられ、目が見えないのは不気味だ。]


  何か、売りに来てくれたのかしら
  お仕事の話なら、こちらへどうぞ
  ケリオス商会の────何さん?


[部屋の中に一つだけある椅子を薦め名を訊ねる。
 隣の部屋から椅子を運ぶ時間もなかったのだ。
 気丈に振る舞っているのが見抜かれぬとよいのだが。*]
 
(36) 2022/03/13(Sun) 22:41:25

【人】 旅人 J

 
[これまで、答えを出さずにきた問いがある。

 自分は、思い出のブローチが見つかったとして
 それで満足が出来るのか。
 売り付けた者が誰か、知ろうとするのではないか。
 決して簡単ではないだろうが知れたとして──、

 その者を*そうとするのではないか。

 確かな情報に手が届いた時考えようと
 先延ばしにしてきた。
 あの日から感情の起伏がなくなったかのようで
 私は、私自身の望みが、わからないの。]

 
(42) 2022/03/14(Mon) 9:37:56

【人】 旅人 J

 
[扉の向こうの男に敵意はないようだった。>>38
 身なりがよく、物腰は柔らかかった。
 だけど薦めた椅子はさらりと躱して
 窓際へと立ち、陽光を背負う。
 儘ならない人。
 光がその者の輪郭を際立たせる。
 薄暗い廊下ではわかりにくかったが
 頬はなだらかで、鼻梁は真っ直ぐに通り
 襟の詰まった衣服のせいか逞しく見える体躯は
 均整が取れている。
 ぞっとするような美しさがそこにはあり
 両目の隠された不気味さは
 神々しさへと換わってしまった。
 ……少し見惚れてしまってから、
 はっとして部屋の扉を閉め施錠した。]
 
(43) 2022/03/14(Mon) 9:38:40

【人】 旅人 J

 
[自分はいま、万全じゃない。
 都市間の移動の疲れが残っているし
 果実を二つばかり食べて
 手指が震えるほどの低血糖からは
 回復したばかり。
 人と会うのはもう少し休んでからにすべきだった。
 そんな言い訳じみたことを考えてしまうほど
 相手のペースに飲まれている自覚と焦燥だけがある。
 万全ならば大丈夫だったかときかれたら……、
 やっぱりそれも自信は、ないのだけれど。
 大陸を横断し裏の世界のことも
 少しは知ったつもりになっていたが
 ほんの浅瀬に過ぎず
 大きな事件に巻き込まれなかったことは
 ただただ幸運だったのだ。

 あたまがぐらぐらする。]
 
(44) 2022/03/14(Mon) 9:38:53

【人】 旅人 J

 
[男は、ジュダスと名乗った。>>39
 此処らでは意味が変わるかも知れないが
 自分のいた地域では、裏切りの響きを持つ。]


  ジュダス、さん
  身分証、は…………


[本名だろうか。
 否、区別がつきさえすれば良いと思い直す。
 商人の名の真贋など気にしてこなかったし
 己も、故郷を出てから本当の名を使っていない。
 どうして、気になってしまったのだろう。

 身分証、は公の機関が発行するものだ。
 女が欲するのは、そういったものを使わずに
 物と金のやり取りをする者たちだから、
 余り強く興味の引かれるものではないけれど
 それよりも、迂闊に男に近づいてよいものかを、迷った。]
 
(45) 2022/03/14(Mon) 9:40:02

【人】 旅人 J

 
[得体の知れない男は、
 光を背に、いまや天使か、神かのようにも見える。

 いないと思っていたのに。
 私の家族を、救ってくれなかったのに。

 そんな風に見えてしまうのは
 自分が弱っているせいなのか
 男の技術か、なにかによるものなのかわからない。
 わからないことは、恐ろしい。

 曖昧になっている自分という輪郭が
 彼に思うまま作り替えられてしまう気がしてならない。
 
そして、それを望んでいる自分も……いる。

 
(46) 2022/03/14(Mon) 9:40:45

【人】 旅人 J

 
[悩むそぶりを見せてしまったのち、男に歩み寄る。
 結局自分は、差し出されたものを
 近くで検めさせてもらうことにした。

 扉を開けて顔を合わせて話すし
 好意を極力無碍にしない。
 これまでもそうしてきた。
 品は、金で取り戻せるかも知れない。
 だけど売り付けた人物の情報はどうだろう。
 商人自身の信頼と今後の活動に影響するだろうものを
 易々と売ってくれるものか。
 自分がどうしたいかまだ決めていないが……、
 少しでも信用は得ておきたい。打算だ。

 足取りはすこしふらついたものになった。
 自分では真っ直ぐに歩いているつもりで、
 できない。ああ、情けない。]
 
(47) 2022/03/14(Mon) 9:41:56

【人】 旅人 J

 
[どうぞ、にはどうもで返し書類を受け取った。>>39
 栄養不良のか細い女のシルエットは、
 窓を背に立つ男の影にすっぽりと内包される。

 もちろん本物。>>40
 彼がそう言うのだから間違いないのだろう。
 仮令、偽造だとして、見抜く目などないが……、
 彼のペースに飲まれて、8割ほど、
 彼の言葉を鵜呑みにする土壌が出来てしまっている。
 気を張っていなければ、
 全てに「はい」と言ってしまいそうで怖い。

 それだけではない、とは何だ。
 あたまが鈍い、追いつけない。
 自分が立っている自信も、ない。
 隻眼で彼を見上げた。]
 
(48) 2022/03/14(Mon) 9:42:43

【人】 旅人 J

 

  ……!


[驚きに淡い桃色のくちびるが開き、閉じる。
 言葉を受けて、漸く理解した。>>41
 否、理解した気になった。
 私が彼の稼業を探るまでもなく、
 彼は私を掴んでおり、一手も二手も先にいた。]
 
(49) 2022/03/14(Mon) 9:43:11

【人】 旅人 J

 
[ドクドクと心臓が強く脈を打つ。
 求める前に与えられるのは
 神の愛めいている。

 何が正解なのかわからない。]


  ……はい。あります


[か細い声で答えた。]
 
(50) 2022/03/14(Mon) 9:43:47

【人】 旅人 J

 
[身分証を返却し、白皮の鎧、
 籠手とドレスの間から一枚の紙を取り出し
 彼の前に差し出す。
 家族の肖像画から写し取ったもの。
 片翼に抱かれるデザインの青い宝石。
 手に取るなら渡すだろう。]

  
  このブローチを探しています
  心当たりは……ありますか?


[盗まれたとは言わずに
 願いの品を打ち明け、唇を結んだ。
 群れから離れた羊のような心地。
 心許ない隻眼が彼を見上げ、返事を待つ。*]
 
(51) 2022/03/14(Mon) 9:46:34
 




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