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【人】 会社員 雷恩[毎日公園で一日を過ごさざるを得ない少女が 動物園に行ったことがないことを、 テレビや図鑑でライオンを見たことがないということを 少年は考えもしなかった。 多くの人にとって「らいおん」は「ライオン」であり、 「らいおん」が「雷恩」であると素直に 受け容れられたのはもしかすると初めてだったかもしれないのに。 もしそうだと知っていたなら、 彼女は自分にとってもっと「特別」だっただろうか。 ――過ぎてからのたらればに何も意味はないけれど。] (1) 2024/05/07(Tue) 10:39:46 |
【人】 会社員 雷恩[春を越え夏を走り秋を飛んで冬が終わるのを待ち、 公園で始まった友情を続けていくには 片方の気持ちだけでは弱すぎた。 公園以外の生活が違い過ぎた二人が「もっと大きくなるまで」 共にあれた方法は、実際に大人になった今考えても 思いつかないだろう。 少女が性を切り売りして生きて来た年月、 少年は大した苦労もしないまま育ち、 今も「夜営業メインのカフェ」の存在を知らない。 従業員のプロフィールが乗っているHPを探すのに どんな検索ワードを用いるのかすら。] (2) 2024/05/07(Tue) 10:40:22 |
【人】 会社員 雷恩なんだそれ。 釘刺してんの? [ストーカー被害は身近ではないが 目の前の彼女は可愛いから、そういうこともあるのだろうと 疑っていない。 彼女が食べきれたりんごの甘さが 10年以上身体を蝕んで煮詰まっていったことを知らず、 能天気にも「偶然の再会」に少しドキドキしたりなんかもして。] (3) 2024/05/07(Tue) 10:40:57 |
【人】 会社員 雷恩[手を引く彼女の足取りが、慣れない靴で転んで挫いたにしては 滑らかなことに引っかかりを覚えたのは一瞬。 追われる可哀想な子を護る役目に酔った愚かな男は 地上10階まで運ばれる。 男を溶かす角部屋は、どう見ても若い女の子の趣味を集めた色。] お構いなくって言いたいとこだけど、 飲み物ある方が話はしやすいか。 あ、保冷剤取ったからさ、プリンの箱だけ 冷蔵庫に預かって貰って良いかな。 [そこで勝手に冷蔵庫を開ける無礼さがあれば、 ピーコックブルーのビールがあることに気づいたかもしれない。 道中の話では、同じ銘柄を愛飲しているという反応が なかったものが。] (4) 2024/05/07(Tue) 10:41:25 |
【人】 会社員 雷恩今更だけど、俺らって何歳差なんだっけ? 最初に会った時はルミは小学生じゃなかったよな? あの頃は同じ小学校に通えるんだと思ってたけど。 [入学しても3年生まで通えなかったことを聞く機会は 当時は既になかった。 家庭環境が良くないだろうということは薄々感じていたから 私立の小学校を受験したのではないだろうとは思うが、 若くしてこんなに良い部屋に住めるのだから、 もしかして金だけはある実家なのかもしれない。 自分はあまりにルミのことを知らない。 昔は無知故に疑問を持たず、今は彼女の生い立ちについて 無遠慮に聞くのは憚られて。 道中でも聞けなかったことに、どこまで踏み込んで良いのか。 2人きりの空間に少し緊張しながら口を開いた。 緊張で乾いた喉は既にコーヒーを欲している。*] (5) 2024/05/07(Tue) 10:42:14 |
【人】 会社員 雷恩いや、家にお邪魔するなら保冷剤あったとしても 冷蔵庫借りた方が安心だから。 てか足には当てなくて大丈夫か? 転んで土ついてるかもだし、 先にあー、具合確認してくる? [洗って、と言いかけて辞めた。 シャワーに誘導していると思われたくない、 ズレた危機管理。 足を気にする素振りは、部屋に入ってから一度も 確認できていないのに。] (12) 2024/05/07(Tue) 17:33:59 |
【人】 会社員 雷恩[熱すぎるのは苦手だから、もしあれば牛乳か豆乳で割ってほしい。 いっそブラックを所望するならば、何かを混ぜた痕跡を目視 できるかもしれないが、自ら罠に掛かっていく。] なに。ルミの方は俺の歳知ってたんだ? 俺言ったっけな? ごめんなー、俺は覚えてなくて。 [自分の年齢を知られているのは恐らく自分が言ったからだろう。 記憶が薄い分、解釈の幅を広げて。] (13) 2024/05/07(Tue) 17:34:34 |
【人】 会社員 雷恩すげーな。 頑張ったんだな。 ルミが大きくなった姿に会えたの、 奇跡なんじゃないかって思うよ。 [親のすね齧りで大学まで行った自分が恥ずかしいが その自虐は口にすると却ってルミの「そんなことないよ」待ちに なる気がして、それこそ恥ずかしいから言わない。 ルミの頑張りがどのような手段で行われたものであっても、 頑張った事実自体を賞賛して、コーヒーに口をつけた。] (15) 2024/05/07(Tue) 17:35:49 |
【人】 会社員 雷恩[ルミにずっと寄り添えなかったことに対する罪悪感はあれど、 明確に「逃げた」つもりはなく、単なる成長に伴う フェードアウト感覚の男には、そこまでの執着心が理解できない。] で、学費まで稼げるくらい頑張り屋のルミが 「心細く」なることって、何があったんだ? [コーヒーに何か入れられたことには気づかないまま、 アイスではないからすぐに飲み干せはしないが 確実に体内に取り込んでいく。 室内に置いてある高そうなアレソレの入手方法は 恰好や部屋のグレードからも推測できる。 その金の出所ではなく、大して金も持っていそうにない 普通の男に出来ることは、話を聞くことぐらいかもしれない。 座ったソファは柔らかいのに、 まるで喰われそうな感覚になるから、 話を一通り聞いたら暇を申し出る心算ではあるけれど。*] (16) 2024/05/07(Tue) 17:36:38 |
【人】 会社員 雷恩[季節は夏に差し掛かり、部屋のエアコンは稼働していない。 なのにどこか冷える心地がする。 心が鳴らす警鐘を、罪悪感が打ち消そうとする。] ……悪いな。 手当の間くらいは待てるけど、 俺が帰った後の方がゆっくり確認できるか。 [ありがと、と受け取ったコーヒーは白を混ぜた薄茶色。 マーブルを作る要素に、頼んだミルク以外が入っているなんて 見た目からはわからない。] (24) 2024/05/07(Tue) 21:34:12 |
【人】 会社員 雷恩ごめんごめん。 てかあんなにちっちゃかったのに覚えてるルミが すげーんだって。 [それだけ彼女にとって当時交わした会話は少なかったのだと 学校でも家でも会話の絶えない生活をして個々の会話を 忘却の海に流す男は想像できない。 ルミの記憶力が良いと感心して謝った。] 許して!このとーり! な? [他の誰かにもやっているから身についたままの謝罪。 合わせた手よりも頭を低く下げて、ちらりと上目で伺う。 それを懐かしんでくれると期待する程度には 無神経な男だ。 いっそそこで失望してくれた方が双方にとって思い出を 綺麗なままで残せたかもしれない。] (25) 2024/05/07(Tue) 21:34:44 |
【人】 会社員 雷恩ルミ………… [少女の瞳が昏く曇った気がした。 実家を出て、仕事を得て、金に困っていなくても 彼女の心はまだあの公園で無償の愛を求めているのかもしれない。 学校は卒業する日が来るし、親はふつう自分より先に死ぬ。 どんな相手だって、四六時中そばにいることなんて出来ない。 それを普通に育った人間は肌で覚えることができるけれど、 「かわいそう」フィルターのかからない目で寄り添われた経験に 乏しい故に、恐らくルミはその「ありえない」愛を求めているのだ。 役目のある間だけ近寄る相手を拒否する彼女に そういうものだと諭すのは不可能だ。 せめてこれからの人生で、彼女を満たすものに出逢えたら良いのだけれど。 それを探す為に、通信制高校を自費で卒業するだけの 頑張りを続けられたのだったら良いのに。] (26) 2024/05/07(Tue) 21:35:12 |
【人】 会社員 雷恩……うん、うん、そっか。 「そのひとじゃなきゃ」って人がいて、 半年前まで恋人がってことは、今はいないんだろ? まず関わりを作って意識してもらうのとかは? [「半年前」のキーワードにも反応せず、 意味のないアドバイスをする。 関りのない相手に恋をしたことがないので 薄っぺらいだろうなとは思っていても、 こういう「相談」に単なる共感ではなく「解決策」を 示したがるのが生物学上の男の生態らしい。] (28) 2024/05/07(Tue) 21:37:12 |
【人】 会社員 雷恩? は? 「聞いてきた」? え、好きな人って俺の知り合い、 qわせdrftgyふじこ?! [何が起こったかわからなかった。 「効いて」が「聞いて」だと思う鈍感さを後悔する間もなく。] (29) 2024/05/07(Tue) 21:38:16 |
【人】 会社員 雷恩[たとえばここで彼女の機嫌を損ねたとして、 普段関りのない、連絡先も知らない者同士、 子どもの頃の友情に終止符を打って帰れば終わる関係だ、 許しを乞う必要はない。 なのに手を合わせたのは、赦してくれるという甘え。 彼女の甘えを受け止めることなく大人になったのに、 誰かに甘えることを覚えている男は罪深くも 同じ所作をして。] あー良かった。 他にも忘れてそうだけど、話してたら思い出すって こともあるかも。 [そうしてまた許せと言わんばかりに予防線を張って。] (34) 2024/05/07(Tue) 23:15:41 |
【人】 会社員 雷恩[恋をしていると打ち明けた顔は確かに 歳相応のはにかんだ少女のものだったのに、 その相手と関わりを持てば良いというアドバイスを 一蹴する表情は酷く大人びて見えた。 単に恋に臆病になっているとかそんなレベルではない諦念。 相手は死んでしまったのかとか見当違いの予想を立てて、 またどう言葉にしようか迷った隙に倒された。] (35) 2024/05/07(Tue) 23:16:23 |
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