曳山 雄吾は、メモを貼った。 (a6) 2020/07/12(Sun) 2:11:38 |
【人】 曳山 雄吾-船内通路- >>59>>60[数分も経つ内に、視線を合わせて会話を続けることが難しくなるのは雄吾と相対した女性には良くある事だったから、それを意に介さないのもまた彼には慣れた事であった。 口元へ添えられた彼女の左手>>59には煌めく環。 品良いその指環を仔細に眺めればさぞ高価な品であろうと思いつつ、対となるべき男の姿はやはり無い。 どのような立場の女性がどのような経緯で参加したかは詮索せぬまでも、閨で肌を晒す女の姿態を思い描かずにはいられなかった。 ぎょろりとした大きな眼がブラウスとロングスカートの下を見透かすように彼女を見つめた。] (66) 2020/07/12(Sun) 16:02:26 |
【人】 曳山 雄吾―ラウンジ "プレイアデス"― [ 梨花とクルーの青年と別れた後、 雄吾はしばし船内を散策していた。 バーカウンターに時雨や美奈川姉妹の姿は既にない。 きりりとベストを着こなした短髪の女性バーテンダーへ ジントニックを求めると、三口でそれを味わい終えた。 散策の間に見かけた乗客らはいずれもそわついた雰囲気で、 航海の間に行われる交わりへの熱を宿している様子。 今しも雄吾が目にしたのは、照明の落とされたラウンジと おぼしきエリアに男女二人連れが入っていく場面である。 大胆にスリットの入った赤いドレスを着た長身の女性と、 彼女に見あった背丈の初老の男性と。 ラウンジの入り口で目元を隠す仮面を受け取り、 暗がりの中へ姿を消していった。] (73) 2020/07/12(Sun) 17:50:33 |
【人】 曳山 雄吾……ほん。 彼女はどうしていることかな。 [ 入り口から少し離れてスマホを開き、水葉へ連絡する。] 「面白そうな場所を見つけた。 仮面舞踏会のような所だ。 ラウンジまで来ないか?」 [ そうメッセージを送り、しばらく待つことにした。]* (76) 2020/07/12(Sun) 17:53:14 |
曳山 雄吾は、メモを貼った。 (a23) 2020/07/12(Sun) 17:55:43 |
曳山 雄吾は、メモを貼った。 (a24) 2020/07/12(Sun) 17:56:26 |
【人】 曳山 雄吾―ラウンジへ― >>96はは。 これも演出の一つというやつだろう。 [ 行こうと言われれば否やはない。 狐面をした受付のクルーが示したのは、 孔雀や獅子、黒烏といった様々なモチーフの仮面。 雄吾はそれらの中から、オペラ座の怪人を模した仮面を受け取った。] 建前としては、これで誰だかわからないという事、だ。 誰が何を見聞きしようと、 こちらが誰かは知られない、という趣向かな。 さ、行こうか、何処かから来たお嬢さん。 [水葉が選んだのはどのような仮面だったろう。 雄吾は片膝を床に着かせて、 ラウンジ奥へ誘おうと左手を彼女に差しのべた。]* (98) 2020/07/12(Sun) 21:18:49 |
【人】 曳山 雄吾―ラウンジ内― >>102[ 水葉の手を取り、受付クルーの恭しい辞儀を受けて中へ進む。 夜の暗闇かと思うほどに沈んだ照明。 だが少し経てば目が慣れて、あちらこちらに カーテンで仕切られたブースがあると気づく。] ……先客もいるようだ。 [ 声を潜めて水葉へと。 くすくす笑う女の声、喉奥に返す男の含み笑い。 時には短くいなすような戯れの響きも聞こえたか。] ここは、空きのようだな。 入るぞ。 [重ねた手をきゅっと握り、とあるブースのカーテンを捲る。 中はL字型に配置された柔らかそうなソファ、 中央にはテーブルと、ワインボトルを納めたアイスペール。] (105) 2020/07/12(Sun) 22:26:09 |
【人】 曳山 雄吾[ ソファの一角へ水葉を伴い腰かける。 肩ではなくてその手にそっと、己の手を置こうとした。] ……名前も知らないお嬢さん、と。 言うことにしようか。 [ 目だけ隠した仮面の奥で男は笑う。 口元もその声に連れて、にこりと弧を描いた。] お嬢さんはどんな期待を抱いて、 この船に乗り込んだのかな? [ 仮面を着けた同士なら、相手が誰と知る由もない。 あくまで建前の趣向とはいえ、 この空間でそれは心の帳を開くことを容易にするものだったろう。]* (106) 2020/07/12(Sun) 22:30:10 |
【人】 曳山 雄吾―ラウンジ内― >>110[ 水葉の唇が紡ぎ出した言葉に、仮面の奥で男は軽く目を見開く。 そういった単語が連なるとまでは、思って居なかったのだ。 だが同時に、おそらく三度の巡り合わせが導いた この状況を半ば必然的なものとして感じていた。] どのように、してあげようか。 君が名も知らぬお嬢さんであるのと同じに、 俺は君がまだ何も知らない相手だ。 [ だが、語るまでもなく自明な事柄が、一つ。 体格――膂力の、圧倒的な格差。 水葉の左手首を掴み、身体を開く方向へと押しやった。 同時に、馬乗りになる形で彼女の身体を脚で跨ごうとする。] でしょうか、と。 疑問を抱いているなら、まずは試してみると良い。 [ 雄吾のその動作を、彼女が避わす事は出来るだろう。 けれども、水葉の言葉を聞き止めた彼には、 おそらく彼女はそうはするまいという確信があった。] (111) 2020/07/12(Sun) 23:32:40 |
【人】 曳山 雄吾[ 男の手が伸びる。 水葉の着けた黒鳥の仮面に触れた。] これはまだ、取らずにおこう。 代わりに君はさらけ出すんだ。 この服の奥。 その身体の奥。心の奥に、潜んでいる欲求をな。 [ 彼女の仮面から離れた男の手は、ボタンブラウスの胸元へと。 水葉が止めなければ一つまた一つと手は進み、やがて 最後まで外しきってしまうだろう。]* (112) 2020/07/12(Sun) 23:36:39 |
曳山 雄吾は、メモを貼った。 (a34) 2020/07/13(Mon) 3:19:12 |
【人】 曳山 雄吾─ 閑話 ─ >>0:44[ 『バーとは、 人生に疲れはてた者の最後の止まり木である。』 雄吾はまだ学生の頃、そんな一文を何かのエッセイで読んだと記憶している。それとも、もっと直截的に、『自殺志願者の』だったろうか。 彼自身は人生に疲れを覚えたことは無かったが、 それ以来、彼は一人で、あるいは友人と、 またあるいは恋人と、様々なバーを訪れた。 それらは、 蝶タイを締めたマスターが営む正統的なバーであったり、 学生の有志が立ち上げた気のおけないバーであったり、 水底のように幻想的な照明が揺れるバーであったり、 スポットライトの下、白と黒の駒が行き交うバーであったり、 した。] (126) 2020/07/13(Mon) 23:39:21 |
【人】 曳山 雄吾[ どれだけのバーの扉を開いたことだろう。 成人して父親の会社に就職し、 いずれはそれを継ぐべき立場を明確に意識した頃。 雄吾は、繁華街から少し離れた所にある、 とあるバー>>0:44の常連と言える客になっていた。 彼が30歳を少し超えた頃だから、 かれこれ5年は通っていることになる。 初めて訪れたその日はみぞれ混じりの寒い日で、 コートの襟を立てて訪れた。 冷たい雫がスラックスまで染み込んで、 ひどく不快な気分だったことを覚えている。 雄吾よりは幾らか年上のマスターが、 コートを脱いで掛ける様子に一声、掛けた。 「寒かったでしょう。何になさいますか。」 何でも。温かいやつを。とにかく、寒かった。 そう答えたことも覚えている。] (127) 2020/07/13(Mon) 23:39:31 |
【人】 曳山 雄吾[ スツールに腰掛けて、待つことほんの二分ほど。 カウンターに肘をつき両手を組んで待っていた雄吾の前に、 一杯のマグが差し出された。 カクテルを調製したのはマスターではなく、 まだ学生のようにさえ見える若い青年だった。 実際、その時かれはまだ21歳だったのだが。 マグから立ち上る、甘く温かい香りの湯気。 カフェオレ色をしたそれは、ホットのカルーアミルクだった。 熱せられたアルコールが鼻腔をくすぐり、 馥郁としたコーヒー香が疲れた心をなだめていく。 火傷しないようにずず、と啜ると、 リキュールとミルクの甘味は 身体を中から癒していくようだった。] (128) 2020/07/13(Mon) 23:40:00 |
【人】 曳山 雄吾……美味い。おかわり、貰えるか。 [ 熱さにはすぐ慣れて、ぐいと飲み干した。 マグを替えての二杯目は、先より少しぬるい温度。 気が利く青年だ、と思った。 そこでようやく、注文以外に口を開くゆとりが生まれたことを 雄吾は感じたのであった。] お兄さん、名前は? 今のの礼に、あんたと乾杯したい。 [ 酒はそうだな、とバックの棚を眺める。 少し眺めて、こわばった筋肉をほぐすように首を捻った。 テキーラのショットはどうだ、と尋ねて、 冷凍庫から取り出されたとろりとした蒸留酒で乾杯したものである。]* (129) 2020/07/13(Mon) 23:44:30 |
曳山 雄吾は、メモを貼った。 (a42) 2020/07/13(Mon) 23:50:55 |
曳山 雄吾は、メモを貼った。 (a43) 2020/07/14(Tue) 0:02:08 |
曳山 雄吾は、メモを貼った。 (a47) 2020/07/14(Tue) 2:27:01 |
曳山 雄吾は、メモを貼った。 (a48) 2020/07/14(Tue) 5:57:43 |
曳山 雄吾は、メモを貼った。 (a54) 2020/07/14(Tue) 8:58:56 |
曳山 雄吾は、メモを貼った。 (a55) 2020/07/14(Tue) 9:08:32 |
【人】 曳山 雄吾─過去の話・時雨のバーで─ >>138[ そう、寒い日だった。 初めてのバーを訪れる際の楽しみには、己の体格を目にした マスターやバーテンダーの反応を密かに眺めることもあったのだが、 そうさせようと思えない位に凍てつくような。 だから青年バーテンダーの動揺にも>>138気づかぬまま、 スツールに腰掛けた。 やがて供されたマグを手に包む。 その温かみに、こわばった口角がほんの少し弛んだ。 そうして同じものをもう一杯。 飲み終えた雄吾の質問に、名乗られた名前>>139を繰り返した。] 天野、時雨。時雨くんか。 風情のある良い名前だな。 今夜もそのくらいの雨なら、良かったんだが。 [ 丸い肩のボトルから、薫り高いテキーラが注がれる>>140。 右手にショットグラスをそっと持ち、 奥に佇むマスターと時雨とを、それぞれ見た。] (142) 2020/07/14(Tue) 12:40:08 |
【人】 曳山 雄吾曳山雄吾だ。よろしく。 [ グラスを掲げ、軽く打ち合わせた。 くいと口に含むと、熟成された味わいと華やかな香気が口中に広がる。 強いアルコールは喉を灼きつつするりと食道を滑っていった。ほどなくすると、胃の腑の底あたりに小さな太陽が昇り始めるかのような熱。] 最初から奢られるわけにも、いかないだろ。 俺からも、時雨くんに何か。 マスター、お願いできるかな。 [ と、マスターが肴に持ち出す時雨の話。>>141 長い間柄なのだろう、嫌みを感じさせない距離の近さだった。] それは尚更、飲まないとな。 俺も今夜は振られたところだ。 飲めるとこまで付き合わせて貰うとするかな。 [ もっとも、俺の方は仕事の客にだ。 そう笑って、時雨が注いだ酒を口へと運ぶのだった。]* (145) 2020/07/14(Tue) 12:55:53 |
【人】 曳山 雄吾[ 帳簿でも付けているのか、マスターの姿は見えなかった。 空いたグラスをそのままに、時雨へぽつりと声を投げる。] ……ひどい振られかたは、俺にもあるなあ。 とりあえずでも吐き出す方が、 少しは楽になるんじゃないか。 飲み過ぎた時とおんなじで。 [ そうして、バックの棚に視線を動かす。 居並ぶボトルを目で追って、時雨へ戻した。] 一杯、何でも付けてくれ。 初対面だから言えることも、あるだろう。 ……どんなひと、だった。 時雨くんの相手というのは。 [ 彼がグラスを下げたなら、 雄吾は静かな声で《ホワイト・レディ》と口にする。 それからは無言を保って、 ショートの筈のそのカクテルを僅かだけずつ飲み始めた。 もしも時雨が語るのであれば、 雄吾は沈黙したまま、頷きや表情と共に耳を傾けるだろう。]** (147) 2020/07/14(Tue) 15:21:52 |
曳山 雄吾は、メモを貼った。 (a58) 2020/07/14(Tue) 15:24:36 |
【人】 曳山 雄吾─過去の話・時雨のバーで─ [ 軽く時雨が返すのに>>152、苦笑交じりの一言。] 引きずってるのが、一人だけな。 [ だからこそ聞いてみたくなったのだ。 気遣いの行き届いたこの青年が『本気で惚れた』という相手。 それが何故、ひどい振られ方をするに至ってしまったのか。 シェイカーの中で三種の材料が カツカツと小気味良い音と共に撹拌されていく。 ジンとホワイトキュラソー、レモンジュース。 ベースとなる酒をブランデーからジンに変えれば、 琥珀色のサイドカーから白い貴婦人へと名前を変える。 三角形のグラスに注がれたカクテルをそっと引き寄せ、 静かに持ち上げた。] (154) 2020/07/14(Tue) 18:38:41 |
【人】 曳山 雄吾[ ぽつぽつと語られる言葉は>>153青年の 気の行き届いたさまに納得を与えた。 淡い白色のカクテルを少しずつ口に運んでは 静かに頷き、時雨が口を開く間を待った。 テキーラのグラスが何杯呷られた頃か、 語りはひとまずの終点を迎えたようだと知る。] ……彼女も、君に求められたかった という訳なのかな。 でも、本気で惚れたというからには。 時雨くんが求めた何かは、あったんだろう。 [ それは、どんなものだったろう。 手には入れられない何か。 それとも本当は既に得ていた何か。 憶測は口にすることなく、代わりに 残り少なくなったカクテルの最後の滴をくいと仰ぐ。 グラスをコースターの上に置き、 同じものを、と差し出した。]* (155) 2020/07/14(Tue) 18:38:59 |
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