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【人】 ろぼ先生 夏越 清正[かたん、と電車が揺れた途端、 所在なく投げ出されていた男の手に 確かに、温もりが重なった。 窓の外に広がる景色にはしゃいでいた男は 思わぬ偶然にはたと清華と視線を交し それからまたふにゃりと顔を綻ばせた。] え、あ、いや、全然、気にしないで。 [違う、そういうのじゃなくて。 手を握るのも、触れるのも、嫌じゃないから もう少し、手を重ねていたいのだ、と。 引き止め損なった手をわきわきさせながら 男はもごもごと口ごもる。 言っても、嫌じゃないかな。 怯えたりされないかな。 少し迷っていたら、清華の方から 男へと小さな「お願い」が向けられた。] やじゃ、ない! [照れと嬉しさを顔の上に同居させて 男は今度はしっかり頷くと、 清華の手を絡めて男の膝の上に導いた。] (8) 2021/11/01(Mon) 22:24:22 |
【人】 ろぼ先生 夏越 清正[そんな甘い雰囲気の中、新幹線は 目的の弘前駅へと滑り込む。 電車から外に出た瞬間肌を切るような寒風に 亀のように首をすくめながらも、 すう、と息を吸ってから] りんごの匂いはしないね。 [ハワイは空港からココナッツぽい匂いがすると 山梨で教え子だった健太は言ってたけれど。 そう、男はくすくすと笑うと 清華の手を繋いで、自分のコートの ポケットの中へと招き入れる。 男には鼓動はないが、しっかりと体温はある。 これでもう、繋いだ手だけは寒くない。] (9) 2021/11/01(Mon) 22:24:52 |
【人】 ろぼ先生 夏越 清正[さて、弘前駅に着いた頃にはもうそろそろお昼時。 もやしを食べに行くのは夜でいいとして] 色々面白そうなところはあるけれど ねぶた村、行ってみたい。 [駅から少し歩いたところに ねぶたを展示しているところがあるらしい。 桜の盛の時期に美しい弘前城を横目に眺めつつ そちらにタクシーを走らせようか。] (10) 2021/11/01(Mon) 22:38:24 |
【人】 ろぼ先生 夏越 清正[男はねぶたに興味があるわけじゃない。 青森というところはねぶたが有名、ということだけは しっかり頭に刻まれているのだが 実物を見るのはこれが初めてなのだった。 どこかの遊園地のパレードみたいなものかな、という 朧気な記憶のまま施設に入ると、どどん、と 蔵みたいな大きさの山車が出迎えてくれて 男は思わず言葉を失う。] …………でっ…………っか、 [結局そんな小学生みたいな感想が出てしまい 歴史教師らしからぬ言葉に、男は自分で照れくさくなる。 こほん、と咳払いひとつ。] (11) 2021/11/01(Mon) 22:46:59 |
【人】 ろぼ先生 夏越 清正元々、ねぶたは「眠た」が訛ったもの、 睡魔を払うためのお祭りだった、っていうけれど これは本当に、目が覚めちゃうね。 [繋いだ手は、睡魔がみせた都合のいい幻覚じゃなく 確かに、ポケットの中にある。 それが嬉しくて、指の腹でそっと手の甲の輪郭を撫で 巨大な山車を見上げているだろう清華へ視線を向けた。] 七夕の日に厄災を払うための灯篭流しと 気分転換のお祭りを兼ねて、って感じかな。 [ちょっと蘊蓄を垂れてみせたところで 鼻先を何だか食堂のいい匂いがくすぐった。] 先に食べてから行こうよ。 [なんて、展示の前に食堂へ誘う。 歴史を感じさせる竈のご飯と地域食、 中でも人魚のブラみたいな大ぶりのホタテがいを そのまま七輪で焼いて卵を落とし込む、 海の幸豊富な北国の料理には目を丸くして。] (12) 2021/11/01(Mon) 23:06:45 |
【人】 ろぼ先生 夏越 清正[そうしてちゃんと展示が見れるお腹になったら 清華にひとつお願いしよう。] ねね、清華が写真、撮って。 [山車の前で、くわっと目を見開いて あたかも山車に描かれた英雄を気取ってみせて。 そういえば、オリジナルの部屋には ]オリジナルが写った写真は少なかったなって。 なんとなくそう思って。 (13) 2021/11/01(Mon) 23:10:28 |
【人】 なごっち 夏越 清正[でも、もしいいよ、と言ってくれるのなら しっかりしたカメラじゃなくたっていい、 清華と二人で写真を撮りたい。 そう密かに願っている。]* (14) 2021/11/01(Mon) 23:15:58 |
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