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【人】 水の魔騎士 ユスターシュ俺には記憶がない。 気が付いた時、目の前に揺らめく焔があった。 焔は女の吐息にかき消される。 彼女は誰だーー俺は、誰だ。 『やっぱり思い出せないのね。 余計な記憶を消しても貴方は、 一番大切な頃の記憶を 忘れてしまった。 ーーでも、イーリスの力を 借りればきっと、 思い出してくれるわよね? 貴方の姉の事を。』 何を話しているのだろう。 忘れている?何を? 『いいわ、協力して頂戴、 ユスターシュ。 あなたは精霊の力が使えるはず。 その力を使い、邪魔してくる ミュジークの奴らを蹴散らしながら、 私と一緒に異世界にある イーリスを探すのよ。』 (0) 2023/10/15(Sun) 23:58:22 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ……イーリス。七色の宝石。 **すべての願いを叶えるという。 そうだ、イーリスを手に入れて俺はーー。 「良いだろう、協力しよう。」 この時初めて、俺は精霊を召喚した。しかしその感覚は酷く懐かしいもので、まるで故郷に帰ったかのようで。 ーー俺は誰なのか。 いや、そんな事はどうでもいい。 ユスターシュ・アリマオーネ。 水の精霊を使役する魔騎士。 それ以外などきっと、思い出す必要はない。 ただイーリスを手にする事だけ考えたらいい。 そう、大事なことは、きっと。 (1) 2023/10/15(Sun) 23:59:11 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ 「人ーーですか?いいえ、誰も 見ていませんよ。」 屋上での出来事を知っている?まさか、何か見られたのだろうか。 先程の男子生徒もそうだが、一般生徒に探られるのは面倒だ。 とぼけて見たが誤魔化せるかどうか。 教師を演じるなら、彼女が言った探し人の方に興味を示すべきだろう。 首を傾げて見せて。 「橋本彩綾さんーー 連絡が取れないのは心配ですね。 親御さんに確認を取った方がいいかもです。 彼女の担任の先生に お願いしておきますよ。 心配だとは思いますが、後は任せて もう帰宅なさい。」 こう生徒だらけでは、イーリスの探索もままならない。 仲間のベアトリスが今頃捕らえた魔法少女から聞き出しているかもしれないが。* (10) 2023/10/16(Mon) 13:15:34 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュまさかその、行方不明と噂の女子生徒が直後走ってくるなど思いもよらず。 何故身体を縛られているのか? 絡まっている?と言っているが。 倉庫で遊んだりしていたからなるのか? 疑問に思ったが、問いただせば話が長引くだけだ。 譲としては、屋上での出来事を誤魔化しやり過ごしたいわけだから。 こほんと咳払いの後ーー。 「大事にならず良かったです。 二人とも、あんまり遅くまで 残っていたら駄目ですよ。」 先程屋上に向かう前、千秋に教室で逢っている。彼女も何かを探していたが、まさか。 三人は同じ軽音楽部であるのを譲は思い出した。仲間思いなのは良いことだが。 ーー仲間。 いや、まさかな。 捕らえた魔法少女の事を考えたが、縄を解いて貰っている生徒と重なりはしなかった。 もっと気が強く好戦的な少女だった。 こんな風に縄に絡まっているような間の抜けた感じではない…。 (11) 2023/10/16(Mon) 13:25:21 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュさて、二人の生徒をなんとか追い払いベアトリスと合流しようと考えているとーー 先程屋上に現れた男子生徒と、姫宮千秋が階段を降りてきた。 気絶させた男子生徒は何故目覚めた? あの場にはチアキローズとその従者がいたはずだ。二人は去り、その後に千秋が騒ぎを聞きつけ屋上に来たのか。 面倒くさいことになっている… 今後は戦闘は結界を張って行うべきか。 もう外は真っ暗だ。冬にも差し掛かる頃だから日暮れが早い。 四人にただ帰れと言うのは無理があるか…。* (12) 2023/10/16(Mon) 13:33:02 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ 「えッ魔法少女が…?屋上で…? それは警備員さんに知らせておいた方か 良いですね。 君は怪我はないのですね? では…彼女を、岸咲さんを送って貰えたら 助かります。 私は姫宮さんと橋本さんを車で送りますよ。」 話の流れから生徒だけに帰れとは言えなかった。それにーー 千秋が居るのなら、送っていきたいという気持ちもある。 譲は姫宮千秋を気に入っている。 とても聡明であり、品性の高い生徒だ。 仮初めにも教師と生徒であり、年齢も離れている。 異性として意識しているわけではないが、 何故か庇護欲をそそられる。 不思議な魅力のある生徒なのだ。 「姫宮さん、橋本さん、岸咲さん。 それでいいですか?」* (13) 2023/10/16(Mon) 13:59:13 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ教師を演じるのはあまり苦痛でもない。 譲は真面目な性格だし、生徒をただ疎ましいとも思わないから。 ベアトリスには悪いが、魔法少女への尋問は任せよう。 きっと彼女ならやり遂げる。 二人の生徒と共に駐車場へ。譲は職員寮に住んでいるのですぐ近くだが、二人の家をぐるりと回ることにしよう。 運転席に着くと、彼女たちが乗り込むのを確認する。 魔法で運転したら簡単だがそういう訳にはいかない。 譲はハンドルを握った。 駐車場から滑り出す車。車内にて、譲は二人に尋ねる。 (20) 2023/10/16(Mon) 21:27:15 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ 「おうちを教えて下さい。 ナビに登録します。」 教師であるから住所の名簿は持っているが、暗記している訳ではない。二人から場所を聞いたら順番に向かうとしよう。 「ーー親子さんが心配していないと 良いですが。 部活動もほどほどにしましょうね。 ……ところで。二人は魔法少女について、 何か知っていますか?」 然り気無くそんな質問をしてみる。譲の脳裏に浮かぶ顔は、ミュジ−クの姫チアキローズだ。 あの顔には覚えがある… しかし、記憶はない… 「橋本さんは縄に絡まってましたが、 体育館倉庫か何かで遊んでたんですか? ……何か変わったものを見たりは してませんか?」 運転しつつバックミラーに映る二人を覗き込む。 学校の事は案外生徒が知っていたりしないだろうか…。 イーリスをひょんな事から生徒が見つけている可能性もある。* (21) 2023/10/16(Mon) 21:28:06 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ彩綾は随分軽いノリの明るい生徒のようだ。 簡単なやり取りからもそれが伺える。 今時の若い女子、という感じか。 授業態度までは記憶にないが特に問題児童の記憶はない。 「ファン?いえ、私は 姿を見たこともないですから。 実際魔法なんてものを使う 存在が居るのが、未だに 信じられませんね。 ……猫?ああそういえば、 学校に住み着いた野良猫が いるみたいですね。 飼ってる訳ではないと 思いますよ。 でも何か、首輪をつけていたような。 迷い猫でしょうかね。」 これも警備員に相談する案件か? 譲は猫を近くで見たことはない。首輪に装飾があってもわからなかっただろう。 橋本彩綾を家の前で車から下ろす。 (27) 2023/10/17(Tue) 9:10:34 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ 「手品ごっこは、次にやる時は 気をつけてくださいね。 取れなくなって誰もいなければ 惨事になりますから。」 車を降りた彼女が妙にスカートを気にしているような気がしたが気のせいか。 そして譲は千秋と車内にて二人きりになった。 カーナビに従い車を走らせる。時刻はもう夕食時だ。 「遅くなってしまいましたね。 お母さんが心配しているでしょう。 なんなら私が逢って謝ります。 あなたが怒られるのは忍びない。」 彩綾の時もすべきだったと考えながらハンドルを握る。 後部座席の千秋は浮かない顔をしている気がした。 それを親に怒られる心配をしていると、勘違いしたのだ。 (28) 2023/10/17(Tue) 9:11:13 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ 「担任なんて、たまたまの 巡り合わせと言ってしまえば そうだとは思うんですよ。 でも人と人との出逢いは、 大半はそんなものです。 最初はそういう位置付けというだけ。 でも話してみると人格がわかる。 そうして心が通じる。 歳上の男性とか、そういう垣根を越えて。 生徒と話してみたい。 ……自分の心すら、人はよくわからないものだ。 しかし他人と話すことでそれが わかったりもする。 人との関わりは良いものです。」 本来の目的や正体を考えたら生徒との深入りはマイナスでしかない。 だが、こうして譲でいると生徒が心配にもなり、関わってみたい、知りたいと思うのである。 それは己の心が不透明だからかもしれない。 記憶のない、自分。 譲の睫毛は憂いに揺れる。* (29) 2023/10/17(Tue) 9:11:21 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシューー失なわれた記憶。 眠っている過去。 その中でユスターシュは、一心不乱に剣の稽古をしている。 傍らにて厳しい視線を注ぐのは父・ゲオルグだ。 『踏み込みが甘いぞ、そんな へっぴり腰で姫様をお守り出来ると 思うのかッ未熟者がぁッ』 一回でも太刀筋がぶれたら容赦のない叱咤が飛ぶ。 額に汗を滲ませながら、ユスターシュは何度も何度も、剣を振るった。 『ユスターシュ、我がアリマオーネ家は 代々王族警護という誉の任を 賜っている。 私が亡き後はお前がそれを 継ぐのだ。 だが、今の実力ではとても 務まるとは思えん…。』 「すみません、父上。」 頭を下げると、また鋭い叱責が飛ぶ。 『誰が休んでいいと言ったッ 凡人ならば人の倍努力せよッ』 「はいッ」 (43) 2023/10/17(Tue) 16:50:53 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ幼い頃からただひたすらに剣技を仕込まれた。遊ぶことなど許されず、毎日修行に明け暮れる。 王族を護るため、と言われてもそんな高嶺の花を見たこともないし、実感もない。 それでも休むことは許されなかった。 ある夜、ユスターシュは父と母が話し込んでいるのを耳にする。 『とんだ見込み違いだった。 類希ない才に恵まれた 子供だと情報を得たから、 拐ってきたというのに。 精霊の召喚などまるで 出来もしない。 仕方ないから剣を仕込んでいるが、 これも凡才だ。』 ため息を溢したのは父だ。 『私が世継ぎを産めたら、 その子はきっとあなたの才能を 引き継いでいたでしょうに。 ごめんなさい、あなた。』 『言うな。お前は悪くない。 ユスターシュをなんとか騎士として 育てれば問題はない。 私に任せておけ。』 (44) 2023/10/17(Tue) 16:51:55 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ幼いユスターシュには、何処か気付いていた。自分が両親の本当の子供ではないことを。 そして、本当は精霊を召喚出来ることを隠した。 それを利用されたくないと思ったから。 ユスターシュにとって、水の精霊ウンディーネだけが友のような存在だったから。 独り立ち出来るようになったら、この家を出て、両親を捨て。 本当の家族を探したい。産まれ故郷に帰りたい。 そう思っていた。 それだけを希望に苦しい修行に堪えていた。 しかし、そんな日々に一滴の清涼が注がれる。 ーー初めての謁見にて。 後にユスターシュの婚約者となる、チアキローズ・ピゥロイド・ミュジ―クに出逢った瞬間。 その美しさ、輝きに目を奪われてーー。 ** (45) 2023/10/17(Tue) 16:52:41 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ後部座席の彼女の様子をミラーで窺う。独りになると余計に、どこか不安そうというか心許無げに見える。 学校では探し物をしていた。 彼女は多くを語らない。 何をそんなに憂いているのだろう。 「仕事で?では、帰っても独り なんですか?」 兄弟や世話をする人が家にいるのだろうか。しかし、彼女が抱える悩みはそれとは関係ないものであった。 「婚約者……」 その単語を聞くのは今日二度目である。屋上での戦闘の際、敵国の姫が叫んだのだ。 ユスターシュは彼女の婚約者であると。 そんな記憶は全くないからひていしたがーー。 思考を戻したのは、自分のことを考えるより彼女の相談に乗りたいと思ったからで。 「婚約はご両親がきめたことなんでしょうか? でも姫宮さんは、その方が好きなんですね。」 勝手に決められたもので気持ちがないなら悲劇でしかないが、想いがあるなら幸いだ。 しかし、彼女は悩んでいる。 「遠ざけたい…というのは、その婚約者は 婚約を解消したいと言っている? 姫宮さんを避けたりしている、 という事情でしょうか。」 (46) 2023/10/17(Tue) 16:53:25 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ情報が少ない。相手はどんな人物なのか。どういう態度なのか。 迂闊な事を言い彼女を傷つけたくないが…しかし。 このまま悩んでいるのが良いはずはない。 「人の気持ちはーーとても不透明なものです。 相手の行動から、相手の気持ちを推察しても、 実は全く違ったりもします。 また、自分自身の気持ちに気付いていない、 なんてこともありますからね。 確かめるのは怖いことかもしれません。 でもーー想いは覚悟。 迷っているならまた、ハッキリは していないのでしょう? 覚悟を決めて、確かめるのが良いと 私は思います。」 (47) 2023/10/17(Tue) 16:54:32 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュその結果、もし彼女が傷つくことになるのなら。 一瞬、譲は姫宮千秋の細身を抱き締める己を想像し首を振った。 何故そんなことを。 仮初めにも自分は教師で、彼女は生徒なのに。 しかし、傷ついた彼女を放っておきたくない、という気持ちを強く感じた。 「姫宮さんにだけ言い、他人事なのは あれですから。 実は私も確かめたいことがあるんです。 今度その相手に相対したら、覚悟を 決めて追及してみます。 ……教師だって別に立派でも なんでもない。 本当はちょっと怖いなあと 思ってるんですから。 ーーだから姫宮さんもどうか、勇気を持って。」 こんな言葉が彼女の支えになるだろうか。悩んでいる間に目的地に到着する。 「おうちには誰かいますか?もしいないなら戸締まりをしっかりして。」 玄関まで送る事にした。彼女が家に入るのを見届けよう。* (48) 2023/10/17(Tue) 16:54:54 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ姫宮千秋の婚約者は、随分幸せな男だ。このように聡明で美しい少女を将来に妻として迎えられるのだから。 しかも彼女は一途に想いを寄せている。 男としてこれ程恵まれた立場は考えられない。 だが、彼女は大いなる不安を抱えている。二人が想いを寄せあって結ばれた仲であれば、こうはならなかったのだろう。 彼女は揺れている。 親が決めた関係だからと。 その男がもっとしっかりと彼女を抱き締め、安堵を与えたら良いのに。 自分ならば、きっとーー。 (54) 2023/10/17(Tue) 23:16:38 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ玄関口まで彼女と共に。 明日には学校で逢えると言うのに、離れがたいのは何故か。 手を伸ばしたくて仕方ないのは、どうしてか。 彼女は花のようだ。 強い風に晒されても、堪えている。凛として花弁を開いている。 美しく気高く咲き誇るーー。 恭しい別れの挨拶に息を飲む。 それは譲の、ユスターシュの記憶を強く刺激したから。 「チアキロ……」 喉元まで出かかる名。 輝くばかりの衣裳に身を包んだ麗しき姫を幻視する一瞬。 (55) 2023/10/17(Tue) 23:17:00 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ護衛として、近衛騎士団を率いる迄実力を高めたユスターシュが姫君の婚約者に選ばれた日。 その吉報に父はことのほか喜び、祝杯を上げた。 酔った父の言葉をユスターシュはよく覚えている。 『血の繋がらぬお前を息子として 育ててきた甲斐があったというものよ! このような地位についてくれるのであれば 精霊など使えなくともお釣りがくるわ。』 かつては剣豪と呼ばれた父ゲオルグは、既に剣の道を引退している。 母は去年亡くなった。つまり、ユスターシュと父は二人暮らしであった。 ユスターシュは父にとって道具に過ぎない。 姫と結ばれる事で、その計画は完成するのだろう。 どんな根回しがあり、この婚約が成立したのか、ユスターシュは知り得ない。 だがーーそんな風に利用されながら、ユスターシュの心は喜びに満ちていた。 何故ならーー。 (56) 2023/10/17(Tue) 23:17:52 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ「これからも、俺は姫を全力で 御守りします。 それは騎士であろうと、夫であろうと、 変わらぬ生涯の誓いです。」 酔った父はユスターシュの言葉など聞いてはいない。 窓からは冷えた風が吹き込んでいる。 ふと、いつも姫が別れの際に優雅にドレスの裾を摘まむ姿を思い出す。 花のような笑顔と共に。 ーー何度その花を手にし、香りで鼻腔を満たしたいと考えたことか。 それが現実となるーー。 ユスターシュは選ばし者の恍惚に身を震わせた。 (57) 2023/10/17(Tue) 23:18:30 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ記憶はまだ、譲の脳裏を掠めただけだ。完全に思い起こすには至らない。米神に指先を添えて少し頭を振ってから、目の前にいるのは生徒であるのを思い出す。 「ええ、明日。 お休みなさい、姫宮さん。」 そう挨拶を残して譲は車に戻るのであったーー。** (58) 2023/10/17(Tue) 23:18:46 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ昨晩帰宅してからベアトリスとLINEにて情報を交換した。 魔法少女に逃げられたこと、その魔法少女は三人の女子生徒のうちの一人であることなど。 姫宮千秋に関しては、譲が担任である。彼女が魔法少女であるとは考えにくいが、それは私見に過ぎない。 三人を確かめたいと話すベアトリスの言葉には了承を示すしかない。 問題は手段であるが。 ベアトリスからは途中から返信が途絶えたので、作戦会議は翌日に持ち越される。 その時間が取れぬままに休み時間に突入したのは想定外であったが。 朝のHRにて、譲は姫宮千秋が出席しているのを確認している。 昨日は随分憂いた様子だったが今日は普通に見えた。 もし彼女に話を聞く必要があるのなら、ベアトリスこと華夜に任せるのではなく自分がやりたい。 そんな想いが譲にはあった。 (70) 2023/10/18(Wed) 12:23:29 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ教室の前を通り掛かったのは偶然。いや、運命の巡り合わせといって可笑しくはないだろう。 譲は華夜とは異なり真面目である。何より生徒想いだ。 詰め寄られている女子をそのまま見逃すなどあり得ない。 生徒が誰かを確認するよりも素早く教室に躍り込む。 「何をしているんですか。」 男子生徒は三年生だろうか。スマホを手にしていた。 女子生徒はーー姫宮千秋である。 何故かスカートを握りしめて震えていた。 「姫宮さん、スカートの裾を直して 大丈夫ですよ。 そんな格好を他人の前でしなくては ならない謂れはありません。 ーー君は、学年と名前は?」 男子生徒は答えるだろうか。または、逃げ出すかーー。* (71) 2023/10/18(Wed) 12:23:48 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ男子生徒が見せてきたスマホの画像は手ぶれが酷いし距離もあり、また日が落ちて辺りが暗いせいで不鮮明。 譲はスマホを受け取り、眼鏡の奥の目を細めながら観察したが証拠にしては不十分に思えた。 緩く首を振ると、大胆な行動に出る。彼のスマホからその証拠写真を消去したのだ。 きっと男子生徒だけでなく、千秋も驚いたはずだ。 しかし、譲はスマホを彼に返すと毅然とした態度のままこう言った。 「曖昧な写真を元に人を脅すような 行為を看過できません。 彼女が魔法少女か否か。 この写真に証拠としての価値が あったか。 そういう問題ではなく。 あなたに人を裁く権利があるのか。 まず、それを考えて欲しい。」 (79) 2023/10/18(Wed) 21:44:33 |
【人】 水の魔騎士 ユスターシュ世間における魔法少女の認知は、ヒーロー的な見方もあるが、害悪のように考える者もいる。 この男子生徒のように面白がり、興味本位に扱う者もーー。 譲、ユスターシュにとって魔法少女は敵対する存在だが、そのような行為は目に余るものだ。 目の前で震えている姫宮千秋は、 魔法少女なのか。 いや、今はそんなことはどうでもいい。 彼女を護らなくては。 「行きなさい。担任の先生には、 報告しないでおいてあげます。 その代わり、こんな事は二度としないように。 ーー良く意味を考えて下さい。」 男子生徒が納得したかはわからない。しかし、彼は教室を先に出ていった。 後は、千秋と譲が残された。 譲は彼女に近寄り、その細い肩に手を添える。 「大丈夫ですか。」 今にも折れそうな彼女の姿に譲は深く心を傷める。そのままそっと抱き締める事は叶うだろうか。* (80) 2023/10/18(Wed) 21:44:53 |
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