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【人】 麻央[ 麻央、改め本名久遠春翔という男には 母親と4歳下に弟がいる。 父親は春翔が小学生の頃に突然消えてしまった。 死んだわけではない。いなくなったのだ、突然。 つまり、母子家庭で彼は育ったということ。 母親の愛情というものは分け隔てなかった。 そう見えていたけれど、そうじゃないと 春翔が実感したのは高校1年の冬。 弟が私立中学校を受験して合格した。 そこは春翔が行きたかったところ。 受けることさえ叶わなかった春翔は 弟の合格を 羨ましい と思い母親の喜びを 妬ましい と思った。 ] (0) 2021/11/24(Wed) 18:24:45 |
【人】 麻央[ 兄は公立に行き、弟は私立に行く。 母子家庭だから仕方がないという人がいるなら 弟も公立に行かせてくれ、と春翔は言うだろう。 高校生になってから、春翔はアルバイトを始めた。 それは勿論弟の学費を捻出するため。 春翔が自由に使うことができた金額は 今の給与からしてみればほんの少し。 成績優秀者として学費を免除されているから アルバイトをしつつ、勉強をしないわけにはいかない。 だから高校を卒業するまで、 あまり友達と普通の高校生がやるようなことは やった記憶がなく、現在は疎遠になっている。 ] (1) 2021/11/24(Wed) 18:25:28 |
【人】 麻央[ 大学だけは自分が行きたいところを選んだ春翔。 だからこそ莫大な学費を自分で払わなければいけない。 そして、20万円の仕送りを母親にするために 春翔は今の世界を4年間のアルバイトとして選んだ。 実力主義のこのホストの世界は 春翔の脳内をカネへとシフトさせてしまったが その分麻央のことを高みへと連れていった。 ] (2) 2021/11/24(Wed) 18:33:57 |
【人】 麻央[ 手料理を作ってほしいとお願いしたときの彼女は いつかの日の春翔を見ているようで苦しかった。 けれども、優しい彼女は作ってくれて 愛情というものを示してくれた気がした。 だからこそ、麻央は彼女を掌で転がせたのだ。 愛情を返せば、パブロフの犬同様に そうすることで愛情がもらえると 彼女の普通を変えていくことができる気がして。 ] (3) 2021/11/24(Wed) 18:35:10 |
【人】 麻央[ 囁いた言葉の真贋は麻央にしかわからない。 けれど、小遣い稼ぎの話を切り出したとき、 彼女の声色が困惑しているように感じて まだ正常な判断ができるのかもしれない、と 麻央は何も言わずに彼女のことを抱きしめた。 ] (4) 2021/11/24(Wed) 18:36:10 |
【人】 麻央────── [ 部屋に入れば机には水がある。 飲んでくると思われていたのだろう。 実際に飲んできたのだから仕方ない。 酔いを醒ますために一口をそれを飲めば 耳に聞こえてくる彼女の返事。 麻央は、ほっとした表情を見せながら 彼女に対してこう返す。 ] (5) 2021/11/24(Wed) 18:45:07 |
【人】 麻央[ 視線を合わせてまじめな表情で言えば 人は簡単に騙されていく。 これは麻央の気持ちであって、 春翔の気持ちではない。 春翔という人間は、実に冷めた人間で 今すぐにでも通うのをやめてしまえと言いかねない。 そして彼女のケーキを所望するけれど、 彼女が離れてしまう前にその手の中にいいものを。 ] (6) 2021/11/24(Wed) 18:46:00 |
【人】 麻央[ お祝いだからとケーキを食べるのなら 麻央として3周年の記念の日。 春翔として彼女へ同棲を打診した日。 受け入れてもらえたなら、ケーキをせがみ そうでなければ、悲しそうに彼女から離れる。 夢と現実をうやむやにする場所 春翔の家 に彼女を招待してしまう覚悟はとっくの昔にあった。 ]* (7) 2021/11/24(Wed) 18:47:07 |
【人】 麻央[ 彼女がまともでないなら、麻央もまたまともではない。 だから彼女を抱き込んで金なる木にした。 そうすれば彼女は麻央から離れられなくなり 望む限りそばにいることが確約されるから。 だから、麻央は彼女に愛を伝える。 たとえそれが麻央にとっては嘘でも、 ]春翔にとっては本当だから。 (12) 2021/11/26(Fri) 21:35:05 |
【人】 麻央────── [ ヘルプを少なめに置くのもあって 彼女が頼んでくれたボトルはほぼ麻央がこなす。 だからこそ、彼女は時折心配しながら ボトルを下ろすタイミングをずらしてくれる。 そんな優しさも、ひとりの人として 春翔が彼女に惹かれていった理由なのかもしれない。 でも、彼女は麻央というホストに惹かれている。 覆すことが出来ない事実は、 2人の間に越えることが出来ない壁を築いているような。 今は何を言っても、変えられないもどかしさ。 ] (13) 2021/11/26(Fri) 21:35:43 |
【人】 麻央[ 自ら切り出しておいて軽蔑するなんて そこまで下衆な男ではない。 けれども、彼女の欲しい言葉を探すのは 彼女を縛りたくて堪らない鬼畜だから。 笑みを見せて、麻央 春翔 は彼女にそう囁きかけた。 ] (14) 2021/11/26(Fri) 21:37:56 |
【人】 麻央[ このとき食べたショートケーキの味を 麻央は鮮明に覚えている。 すごく甘くて、しょっぱい。 彼女の笑顔が眩しすぎて、 引っ越しの日程をすぐに決め、 彼女を受け入れてしまった麻央。 彼女とのここからの1年弱の間の生活は 愛おしさと罪悪感との入り混じりで どれだけ香奈太に怒られたことだろう。 ] (15) 2021/11/26(Fri) 21:39:26 |
【人】 麻央[ これを言うときは全てが終わり 初めましてを彼女に言う時。 でもまだ、それをいうときは来ない。 腐ったリンゴはまだ 腐り 続ける。周りにいるリンゴも一緒に腐らせながら。 ]** (17) 2021/11/26(Fri) 21:40:48 |
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