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【人】 孤児 ヘイダル■ヘイダル→アールアレフ 秘密抜き 「やっぱ、さ。あんたがここに居るってことは、あんたにも叶えたい願いがあるって事なんだよな?」 奴の表情は窺えない。 だって、首をうんと顔を上げないと、目線が噛み合わないんだ。 見上げるのが悔しいから、俺は視線を合わせない。 「あんた、金持ちなんだろ。買えないもんなんて、何もないんだろ」 見かける度に違うくらい、いろんな服を纏っている。 近くを通れば、くらりとするような蠱惑的な香り。 いつだったかは、両手で抱えるほどの異国の花を店に運ばせていた事もあったっけ。 「…………なんだって、できるじゃねーか」 ぼそりと呟く。 何が欲しいのか言ってみろ、と。 それは金で解決できる事なんじゃねーのかよ、と。 続けて、そう悪し様に罵ろうとしたんだ。 でも喉の奥が乾いて貼り付いたみたいに動かない。 (5) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 4:35:46 |
【人】 孤児 ヘイダルわかってる。 わかってるよ。 金があったって、どうにもならない事はある。 山ほどの金貨があっても天の星は落とせない。 過ぎ去った時間は戻らない。 壊れてしまったモノをすっかり戻すことだって。 ────でも。 でも、さ。 「でも、あんたは、いっぱい持ってんじゃん……?」 口端を持ち上げ、笑ってみせたつもりだった。 だから譲れよと、きろりと不敵に睨め付けて。 でもなんでかな、出てきた音はやけに掠れてしまってた。* (6) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 4:36:25 |
【人】 孤児 ヘイダル■ヘイダル→ハーレフ 秘密抜き 「んぁ?これ?イカサマ用のサイコロ」 親指の先ほどの白い立方体をこねくり回し、針でつついてはヤスリで調整を繰り返す俺に、ちんちくりんが不思議そうに何をしているのかと訊ねてきた。 賭博の場で、隙をみてこのサイコロと入れ替える。 投げ方によって特定の出目が出やすくなるこいつは、仕込みは面倒だがバレにくいしカードのすり替えとかよりはよっぽどリスクが低い。 ただ、見た目や触感で違和感を覚えさせたらアウトだから、細かく整える必要はあった。 「……心配しねーでも、ここの勝負はイカサマ抜きで真剣にやるよ?」 だって、真剣だろ? アールアレフも、あんたも、さ。 「博打は、まあ生活賭けてやったりもするけど、基本道楽だし。騙される方が悪いみたいなとこあるしな。でも、本気には本気で返さないと失礼だろ?」 そこの筋はちゃんと通すぜと小さく笑う。 さんざ盗みや悪さをして生きてきたけど。 この線引きが他人に理解して貰えるとも思わねーけど。 でも俺は、した事やしなかった事を後悔したくは無い。 自分で自分に胸を張れない事はしたくない。 (7) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 4:43:30 |
【人】 孤児 ヘイダル「そういや、さ。昨日ははぐらかされたけど。人の願いを叶えたがってるあんた自身の願いはねーの?」 人にちょっかい出す前に、自分の欲を追えばいーのにさ。 「────暇人。モノズキ」 そんなんだから貧乳のちんちくりんなんだよ、とぼやく俺の声は、でも少しばかり笑いを含んでいた。* (8) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 4:43:58 |
【人】 孤児 ヘイダル■ヘイダルの秘密開示 俺の願いは、 村の外れに逗留中のサーカス団から 銀獅子ゾラフを救い出して"自由"にすること 怪我、してるんだ。 後ろ足を少し引きずっている。 毎昼毎晩火の輪くぐりをさせられて、派手な照明で客席からはそうとは分からないけど、あちらこちらに火傷の跡も痛々しい。 "彼"と出会ったのは、たまたまだった。 盗み目当てで忍び込んだテントの中、彼の身体には全く見合わない小さな檻。 身体全部が白く輝く獅子は神々しいばかりに不思議な毛色をしていたけれど、瞳は昏く沈んでいた。 「すっげー……きれい……」 でもこの檻はあんまりに狭いな、と呟いた俺に、仕方ないさとばかり獅子は尻尾をゆるりと揺らした。 (11) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 11:44:12 |
【人】 孤児 ヘイダルこの国で獅子が神格化されていたのは、もう昔の話。 かつては太陽の象徴、盛夏の象徴だった気高き獣が、鞭の合図で吠え、走り、腹を見せて寝転がる様を、俺は忍び込んだ客席の端から唇を噛んで眺めていた。 彼を救い出したいという俺の欲は、独りよがりでしかない、子供じみたものかもしれない。 でもあいつは全然サーカスで大事にされていないんだ。 傷ついてぼろぼろなのに、倒れれば代わりがいるとばかりな粗末な扱いを受けている。 我慢できずに数日後、あの獅子を引き取りたいと申し出てみれば、サーカスの団長には鼻先であしらわれた。 金貨200枚持って来ればいつでもくれてやる、だってさ。 (12) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 11:44:47 |
【人】 孤児 ヘイダルわかってる。 金貨200枚集めたところで、今、この街で彼を保護できるだけの環境なんて俺には用意できない。 生まれ故郷に連れて行くのには、また更なる金と労力が必要だ。 連れて行けたところで、あの目立つ見目のゾラフが今更自然界で暮らせる見込みは薄い。 ぜんぶ、わかってる。 大体、何が彼にとって一番の幸福なのかも、俺にはわからない。 でも、"夜明け"の名を冠する百獣の王を、このままにしてはおけなかった。 今更、見て見ない振りをするなんてことは、できなかった。 多少の無茶を重ねて金貨50枚までは貯めた。 でも、もう時間が無い。 5日後には逗留を終え、サーカスは次の街に行ってしまう。 (13) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 11:45:45 |
【人】 孤児 ヘイダル「────俺が欲しいのは"ゾラフが望む自由"だ」 金は必要。 でも、金があるだけじゃどうにもならない。 聞いてきたからには「それは無理」とか言わねーでくれよな?* (14) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 11:46:13 |
【人】 孤児 ヘイダル音も無く、目の前にふわりと少女が降ってきた。 人としての重さを全然感じさせないその所作に、さんざ「魔神とか"自称"だろ」と嘯いた俺も、薄々とだけどこいつは人じゃないんだなって事を悟りつつある。 なら、わざわざ問わずとも、俺の願いくらい当ててみろってんだ。 収穫を問うてくる声に、悪くはなかったと口端を持ち上げる。 「まあ、ぼちぼち?」 先の"客"は良かった。懐に金貨5枚入った袋を抱えていてくれた。 生きる為だけなら、これほどあれば10日は孤児仲間の分も含めて充分腹を満たすことができる。 ────必要なものを、必要な分だけ。 "彼"に出会う前の俺だったら、もうこれで当面の仕事は控えるところだったけど。 (32) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 21:28:01 |
【人】 孤児 ヘイダル足りない。 まだ全然、全然足りない。 時間が無い。 地位も力も、何も無い。 それでも、今の俺に出来る事なんて、 このくらいしか無いから。 「……俺の事、いつから見てた?」 数時間前、色鮮やかなテントの中の俺の姿を見ていたのなら。 ────必ず助ける。待ってて。 銀獅子の檻の前、そう呟いた若き獅子の声を、こいつは拾えていたはずなのだ。* (33) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 21:28:34 |
【人】 孤児 ヘイダル豪奢なソファー、明らかに上等な織物。 アールアレフの自邸に呼び出されたは良いが、触ったら割れそうな華奢な茶器といい、見たこともない繊細な外見の菓子といい、どうにも居心地が悪い。 そも、"仕事"をしたばかりで、俺、いつも以上に埃やら何やらで汚れているし。 汚しちゃいけないんじゃないかという意識がどうしても働いてしまって、もぞりと尻を小さく縮こませた。 「…………っ」 ゆるりと女が背後に回る。 たおやかな指が肩から、そして首へと。 つつ、と辿る硬質な感触もさることながら、体温を持つ指すらもなんだかひんやりと感じられる。 ────人形、みたいだな。 悠長にそんな事を思ったのは、ほんの一瞬。 優雅さを失わないのに有無を言わせない申し出に背がひくりと凍り付いた。 (34) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 21:58:57 |
【人】 孤児 ヘイダル「……譲ら、ない。俺の願いは、金だけじゃ解決できない」 ああ、今は"冗談よ"とは言わないんだ? いや昨日のだって、 本当のところは冗談じゃなかったのかも。 "歯を全て抜いて乳飲み子のように"って。 笑い飛ばそうとしたけど、できなかった。 この女はそれができるし、 "する必要"があるのならおそらく躊躇などしない。 敵に回せば相当におそろしい女だ。きっと。 でも。それでも。 ふうと息を吐いて、ぐいと彼女を睨め付けた。 俺は、あんたに従わない。 従うべきは、"あんたが俺に"だ。 「あんたは、俺の魔神にはなれない。だから、戦う」 だって、俺の願いはさ────* (35) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 21:59:48 |
ヘイダルは、入浴シーンは!記録!しねーでいいですから!![雄叫び] (a1) Valkyrie 2019/06/14(Fri) 22:53:11 |
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