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【人】 カメラマン サクライ[その後ゆっくり二度寝を決め込もうと 第三ラウンドに持ち込もうと 結局チェックアウトの時間は容赦なく訪れてしまう。 俺は荷物を纏めると、先刻の約束の通り シロくんを連れて帰ろうとするだろう。 見晴らしのいいホテルの一室から 築30年の安アパートへ。 身体が沈む、雲みたいなベッドじゃなく スプリングの軋むセミダブルベッド。 まだ話してないけど、俺のうるさい親というのが 有名な櫻井重工の会長で、 家でそのまま縛られ暮らす人生を捨てて こんな貧乏暮らしをしてる……なんて。 そんな話したら、シロくんは笑うだろうか。] (88) 2021/03/29(Mon) 20:08:44 |
【人】 カメラマン サクライ[狭い部屋には、仕事や趣味で撮った風景写真が 小さな額に入れられ、所狭しと並んでいる。 一面のネモフィラ畑とか、 俺も名前を知らない高山植物とか。 聞かれれば撮影場所とか、出掛けた時の思い出話とか。 全部打ち明けてしまうだろう。 俺のことを好きだと言ってくれる君に 俺の事をもっと知って欲しくって。 もし、君の写真が撮りたいから、と デートになんか、誘ってみたりしたら 嫌がられないかな、なんて 臆病な俺は切り出すタイミングを見計らっている。] (89) 2021/03/29(Mon) 20:14:03 |
【人】 カメラマン サクライ[話ながら、俺はシロくんに出すコーヒーを淹れる。 食器棚の片隅でにっこり笑ったスマイリーは 榛原が愛用していたマグカップ。 来客用のマグカップを探しにもたつく俺を スマイリーはにっこり笑って見守っている。 ……榛原が嫌いになったのではない。 シロくんと榛原を計りにかけたいのでもない。 二人とも違う形をした、俺の大事な人。 榛原の手で外の世界に逃げ出せた俺が 独りになった世界で、シロくんと生きることを決めた。 ただ、それだけ。 結局、どうしてもマグが見つからなくて シロくんには俺の普段使いのマグカップ、 俺がスマイリーを使うことにした。] (90) 2021/03/29(Mon) 20:23:51 |
【人】 カメラマン サクライシロくん。 [コーヒーを出しながら、「これから」の話をしよう。] 今度一緒に、マグカップ買いに行かない? [君がいつ来てもいいように。 いつか当たり前のように、君に淹れるコーヒーが 入るための器を探しに。 君が望むなら、共に暮らしてもいい。 そこがこんな狭い部屋じゃなくてもいい。 ─────そういう将来になってもいいような 初めの小さな一歩として。]* (91) 2021/03/29(Mon) 20:28:35 |
【人】 カメラマン サクライ[何も知らないシロくんに俺の事を教えていくのは 白紙のアルバムが埋まっていくよう。 何度も何度も、目があう度にキスをしてくる シロくんが、可愛くて、可愛くて。 だから話の途中であっても 落ちてくる唇を拒むことはなく。 ソファに並んで腰掛けて カップを渡すついでに、俺からも唇を寄せる。] 本当に? どうせなら新しい、シロくんが使いやすいのを 探しに行くのも楽しいかなって思ったんだ。 [俺のマグカップを気に入ってくれたのを 眉を下げて笑いながら。 でも欲しいならあげる。 幸せそうに笑嘘の手元に、なんだかそのマグは とても似合っているように見えたから。] (109) 2021/03/29(Mon) 23:00:31 |
【人】 カメラマン サクライ[0.00034%の可能性を追うよりも 隣に少し腰をずらして、シロくんとの 距離を縮める方が、余程簡単で確実。 そっと肩に回した腕にシロくんを収めて 将来について語らっていたら、 シロくんはもっと先を見ていたようで。] えーやだ俺の方が先でしょ。多分。 縁起でもないこと言わないの。 [また隣からすっぽり温もりが消えるのが怖くって そっとシロくんの肩に凭れる。 温かい。触れたところだけじゃなく この空間全部が。 流石に俺の副葬品にディルドが入るのは 笑ってしまったけれど こんなことで笑える相手ができるなんて 一昨日までは思ってもみなかった。] (110) 2021/03/29(Mon) 23:00:58 |
【人】 カメラマン サクライふは、何、地獄まで着いてきてくれるの。 ……でも、一緒に死ぬより 死んだら俺の灰をばら撒いてくれよ。 [シロくんの髪に指を差し入れながら 俺も将来に思いを馳せる。] (111) 2021/03/29(Mon) 23:01:21 |
【人】 カメラマン サクライ[狭い安アパートの一室の中、 互いに身を寄せあって 何処までも互いを縛りあう。 死しても傍に居る、というシロくんに 嫌な気持ちなんか起きなくて ─────むしろ、酷く心地よくて 俺はシロくんの顬から頬、唇へと 唇を滑らせながら、仄暗い愉悦に 密かに心を躍らせていた。] (112) 2021/03/29(Mon) 23:02:04 |
【人】 カメラマン サクライ[体の相性や家柄云々じゃない。 「一緒にいて、何かしらに縛りを受けることすら 心地良かったら─────きっとそれが運命の人」 いつか、彼の寵愛を受けることが 俺にとっての当たり前になった時、 そう伝えてみようと思う。]** (113) 2021/03/29(Mon) 23:05:58 |
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