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【人】 控井[そろそろ帰宅しようと、腰を上げた瞬間だった。 コォーーーーーー ン…… 金属を打ち鳴らしたような、音叉のような、 けれどそのどちらとも違う、 耳馴染みのない音が響いてきた。>>2:n3 視界を過る白銀は危険を感じるより先に、美しいと見惚れた。 砂の海に沈んだ後に、幼体の魚竜だろうかと当たりをつける。 生きていれば、こんな光景に遭遇することもある。 娘の嫁ぎ先は近くの別の島だけれど、 距離や方角を考えると、見ることは出来なかっただろう。 あと一年待てば、一緒に見られたのに勿体ない。 内心で、意地の悪い事を考えた。 でもこの神秘を目の当たりにする以上の幸福を、 彼女は自分で掴んだのだ。 今度会った時の、お土産話にとっておこう。] (7) 2022/10/05(Wed) 21:41:40 |
【人】 控井[今度こそ帰ろうと、荷物を纏めて兎を抱えて帰路につく。 また変わらぬ日常が私を待っている。 世界に身を置かせて頂いているのだ、 きちんと務めを果たし貢献しなければ。 じゃっくを定位置の揺り椅子に座らせると、 私も明日の支度を少しして、すぐに布団に入った。 珍しいものを見た所為か、色々と物思いに耽った所為か、 その晩は中々寝付くことが出来なかった。**] (8) 2022/10/05(Wed) 21:42:55 |
【人】 控井[君のいない世界で、小さな幸せを積み重ねて、 いつか私が此岸と別たれたその時に、 きらきらと輝く思い出を土産に、君を月まで迎えに行こう。 その時に偽物の宝だなどと、がっかりされぬよう、 私は精一杯、残された人生を謳歌する。] (22) 2022/10/06(Thu) 21:24:19 |
【人】 控井[失うことを前提に、 今を輝かせようというのは後ろ向きが過ぎるだろうか。 けれど、失うことが確定しているものを大切にすることは、 とても幸せな事で、そしてとても愛しい事だ。] 今一度、誓いを立てよう。 健やかなる時も、病める時も。 死が二人を別つときも、その後も。 私の心は常しえに君と共にある。* (23) 2022/10/06(Thu) 21:24:59 |
【人】 控井― 回想:彼女が巣立つ前 ― [定位置の揺り椅子に悠然と座るじゃっくに、手を伸ばした。 耳を撫でれば、 今も変わらず柔らかい感触で私の心を和ませてくれる。] 貴方とお別れするのは、とても寂しいけれど……。 どうかお父様の事、宜しく頼みますね。 [物心ついた頃から、私はこの兎とずっと一緒だった。 一緒でなければ眠れないと、駄々をこねた夜もあったわね。 あまりお父様は話したがらないけれど、 私が生まれると同時に最愛の母を亡くしたことは知っていて。 母の死と引き換えに生まれた私に、 父はずっと愛をもって接してくれた。 本当は複雑な心境の一つや二つ、あった筈。] (24) 2022/10/06(Thu) 21:26:26 |
【人】 控井ずっとお傍にいる選択もできるけれど、 お父様にはやっぱり、孫の顔を見せて差し上げたいわ。 [親離れも子離れも、その時は寂しくとも新たな幸せを運ぶ筈。 他にも幸せにしてあげたい方が、出来てしまったことだし。 私は明日、お嫁に行く。] お父様、大事に育ててくれて有難う。 でも私はいつまでも、お父様とお母様の娘よ。* (25) 2022/10/06(Thu) 21:27:23 |
【人】 控井― 回想:君が巣立つ前 ― [随分と大きくなった、臨月のお腹を撫でる。 お腹の中でも元気に自己主張をするようになって、 わんぱく坊主かじゃじゃ馬娘か……。] 産んであげることしか出来ない、 お母様でごめんなさいね。 どうかお父様の事、宜しくお願いします。 [大事な夫にも言えない秘密の願いを、 まだ小さな赤子に託した。 あの人はきっと、酷く悲しむだろうから……心配だわ。 分かっていて決断した、わたくしも大概嫌な女ね。] 最期に今一度、誓いを立てましょう。 (26) 2022/10/06(Thu) 21:28:19 |
【人】 控井思 君 着 天 今 ひ を る の は 知 哀 折 羽 と り れ ぞ 衣 て ぬ と る [健やかなる時も、病める時も。 死が二人を別つときも、その後も。 わたくしの心は常しえに、貴方と共にある。**] 神楽耶 潤之輔さん (27) 2022/10/06(Thu) 21:28:50 |
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