1年生 工藤美郷は、メモを貼った。 (a40) 2022/09/08(Thu) 22:19:30 |
【人】 1年生 工藤美郷──特別展前>>3:123── 先輩は最初からはうまくやれなくても、失敗から学んだ。>>125 いちいち聞かなくても、人の反応から察した。 [工藤は失敗だけでは学べない。だからいちいち質問して、一つずつ丁寧に躓かなければいけない。 その代わり、指摘されても傷つかない無頓着さを持っていた。 それは人によっては強さと見えるのかもしれなかった。 工藤の長い話を、小泉先輩は時折相槌を打ちながら聞いた。 その苦しみを現実のものと肯定されれば、>>3:126] ……………………。 [工藤はしばらくの間沈黙した。 あの時のような、評価が産む苦しみは、もう胸の中には宿らないけれど。] (191) 2022/09/09(Fri) 7:06:38 |
【人】 1年生 工藤美郷そうですね。例えば…… [と、工藤の面倒な魔法のことを話しただろう。>>3:127 肌に当たる服の感触が気になって、同じ素材しか着れないこと。 天井の低い場所では、音が逃げなくて耳が痛くなること。だからよくイヤフォンをつけていること。 同じ食材を食べても毎回違う味に感じてしまうこと。 林檎一つ食べるにしても。品種が違えば果肉の歯触りが変わる。 口に入れて、咀嚼するうちに温度が上がれば、酸とえぐみの香りが解けて、舌がひきつれる感覚が起こる。 皮にわずかに残る農薬の香り。洗った水道水の塩素の匂い。そういったものにえずいてしまう。 切れにくい包丁で切れば、繊維のもつれが気になる。かといって、ステンレスより鋭い切れ味の鉄包丁を使えば、今度は鉄の味がする。 鋭すぎる五感の上、多くの人が当たり前に行っている、不要な情報を捨てる能力が低い。 そういった特性を持つ工藤にとって、世の中はうるさかった。 だから工藤は同じ事ばかりを繰り返す。同じ音楽を聴き、同じ時間に動き、同じ食べ物を選ぶ。情報が多くて混乱しても、同じ事を繰り返していけば秩序が生まれるから。] (192) 2022/09/09(Fri) 7:08:28 |
【人】 1年生 工藤美郷こういったことは、当たり前のものだと思い込んでいました。 自分の体しか使ったことが無いので。 私に皆さんの思考の癖の説明が必要なように、皆さんにも私の説明が必要なのですね。 [何を説明し、何を省くか。 その取捨選択能力は、おそらくこれから小泉先輩のサポートで身に着けていくものなのだろうけれど。] (193) 2022/09/09(Fri) 7:09:40 |
【人】 1年生 工藤美郷……………………。 先輩がどう思っていたか>>3:131>>3:132は伝わりました。きちんと、とは断定できませんが。 ですが、行いの疑問視を否定的に捉えるのは、私にとっては厄介な思考の癖です。 [きっと、そう思わせないように柔らかく伝えるのは、工藤の最も不得手とするところ。 だから結局、疑問に思ったことは、遠慮なく言ってしまう。] 先輩が良かれと思ってやっている方法は、小泉先輩が抜ければ成り立ちません。 先輩は四年生、就職と共に居なくなる人です。 調整は、現場を円滑に回すために必要なものでしょう。ですがその方法を、先輩が一番うまくできるからとやってしまえば、やがて困るのはあの店です。今は上手くいっていても。 それとも先輩はあのパン屋に就職するのですか。 [もしかしたら、来年を待たずしてその「困るとき」はやって来てしまうのかもしれないけれど。 あの時できなかった話の続きを、ここで、した。]* (196) 2022/09/09(Fri) 7:13:49 |
【人】 1年生 工藤美郷──会話の後── では私もレストランに向かいます。 オムライスとおにぎりは先輩が食べればいい。 [と言いながら足を向けようとしたとき、工藤はふと口を噤むと、] 津崎先輩がこちらに来ていますね。>>183 合流しますか。 [当たり前のように言った。 まだそれは、足音もまだ遠く、耳鳴りと勘違いしてしまうほどかすかな時。 だが工藤は耳に聞こえる足音の癖や、履いていた靴の素材からそう推察できた。 工藤には実体の無いものが分からない。 その代わり、実態のあるものを感じ取る能力は、人一倍優れていた。 やがて、「コイ先輩?」と呼びかける声も聞こえてきたか。]** (197) 2022/09/09(Fri) 7:14:26 |
1年生 工藤美郷は、メモを貼った。 (a65) 2022/09/09(Fri) 7:24:37 |
【人】 1年生 工藤美郷──回想・特別展前── 本当に? [褒め言葉>>3:217がよほど意外だったのか、工藤は数度目を瞬かせた。 それは、表情の無い工藤にとって、最大限の驚きの表現だった。] ……珍しい反応です。 [工藤は我儘な奴。みんな我慢しているのに、 少しは集団に合わせることを学ばないと、みんな離れていくよ。 そうやって言われ続けてきたから。 工藤にとって耐えがたい音や、味や、匂い。そういった不快なものを、他の人は皆我慢しているのだと思い込んでいた。まさか感じ方が弱いとは、想像もしていなかった。 自分にとっての当たり前を、言葉にして説明できれば>>3:218、我儘とは言わないでくれる人が増えるのだろうか。 相手と反応を合わせることができなくても、それもまた一つの彩りと見てもらえるのだろうか。] (何が可笑しいんだろう……) [自重めいた笑い>>3:220の意味も、理解できなくても。] (300) 2022/09/09(Fri) 19:17:35 |
【人】 1年生 工藤美郷『「私は」こう思ったけど、実際は違うのでしょうか』 [工藤は繰り返して練習した。自分の血肉とするように。 人の言葉を模倣して、会話の型にしてしまう。それは工藤がよくやる癖だった。 相手の言葉を真似ていれば、同じ言葉を繰り返していれば、不必要に不快な思いをさせずに済みそうだから。 相手の思考を汲み取って確認する方法も教えてもらえたけれど、] それは私には難しいです。 [できることから一歩ずつ進めることにした。 できないことはまだ多い。 小泉先輩のバイトの話>>3:221も、じっと聞いていたがやはり難しい部分はある。 引継ぎの事情までは納得できたが、比喩表現が理解できず、「何故突然蟻の話になったのですか? 今はパン屋の話をしているのですが」などと話の腰を折りながらも、根気強く説明してもらって、少しずつ理解していっただろう。] (303) 2022/09/09(Fri) 19:18:12 |
1年生 工藤美郷は、メモを貼った。 (a104) 2022/09/09(Fri) 19:20:56 |
【人】 1年生 工藤美郷──移動・特別展前→レストラン── [そうしてレストランに戻ると、食べ物の匂いがいきれのように工藤を包み込んだ。 その中に嗅ぎ覚えの無い臭いがして、工藤は一瞬立ちすくむ。 正確に言うならば、なじみのある香りではあった。だがあまりにも濃密すぎて、最早別種のように感じられた。 むせかえるような、林檎の匂い。 植物は、音ではなく香りで会話をする。 それは限界まで熟した、腐り落ちる寸前の林檎の悲鳴。獣を呼び寄せ、食わせることで、熟した林檎を間引くための。おまけに、並行するように鉄の味が空気に混じっている。 煮詰めたような濃厚な芳香が、粘度さえ伴って充満していた。 そのくせ、机の上に置かれた林檎は鮮度が良さそうで、とてもそんな香りを帯びるとは思えない。] くさい…… [ここで怪我をすると、血であって血じゃないものが流れる。 津崎先輩の言葉を思い出した。 なるほど林檎が怪我していると思えば、この香りも納得だ。] (330) 2022/09/09(Fri) 20:32:29 |
【人】 1年生 工藤美郷──魔法>>3:327── [それはどのタイミングだったか。 黒崎先輩の合図>>328で、窓を見る。 屋上から紙吹雪が振りまかれた。] ………………。 [工藤は身を起こすと、机やら椅子やらに体のあちこちをぶつけながら、ふらふらと窓際に寄る。 切り取られた色、が、空気に煽られて、くるくると回る。淡い裏面と濃い表面が、太陽の光を受けて、斜めに影の線を作る。 工藤はそれをじっと見つめていた。鋭敏な色彩感覚で。 届かないと知りながら、松本先輩の放った色とりどりの魔法に手を伸ばした。 結果として、窓に手を押し当てる形になった。]* (334) 2022/09/09(Fri) 20:44:08 |
【人】 1年生 工藤美郷──レストランで朝霞さんに話しかけた── [レストランに入った時、朝霞さんは何をしていただろうか。 工藤は林檎の匂いに一瞬ひるんだものの、やがて彼女の傍に近づいて行った。 ハンカチのことや、色々言うべきことはあったが、まずは] 朝霞さんの記憶が混濁したと聞きました。脳梗塞や脳内出血が無いか調べます。 頭を打ったりしていませんか。言葉のもつれや手足のしびれはありませんか。 目の反射を見るので動かないでください。 [聞きながらスマホを取り出してライトをつけると、朝霞さんの目に当てた。 激しめに拒絶されない限りは無遠慮に瞳孔をのぞき込んでいたが、やがて] 今のところ器質的な異常は見つけられませんでした。 が、詳しい検査をお勧めします。 [と、足りない言葉のままにライトを消した。]* (343) 2022/09/09(Fri) 21:03:20 |
1年生 工藤美郷は、メモを貼った。 (a115) 2022/09/09(Fri) 21:09:43 |
【人】 1年生 工藤美郷──脳みそチェック── [オム米とおにぎりとカレー米というトリプル炭水化物をキメてる小泉先輩>>346の横で、朝霞さん健康観察はしばらく続く。 混乱しないように順当に話しかけることも、返答を待つことも、工藤にはできなくて、畳みかけるような口調になった。 当然、朝霞さんの返答には迷いが生じて、おそらくは要領を得なかっただろう>>347。 それでも、しばらく目玉をいじくり倒していれば、工藤は納得したが。 やがて朝霞さんが礼を言えば>>353、] ……………………。 [無言のまま、背中を見送った。 工藤の耳にも足音が聞こえなくなってから、ぽつりとこぼす。] 『松本先輩、ありがとうございます。』 [こういう風に模倣すれば、礼は伝わるのだろうか。]* (365) 2022/09/09(Fri) 22:04:40 |
【人】 1年生 工藤美郷──黒崎先輩とガールズトーク── [過分に気遣いをしすぎる黒崎先輩とは対照的に、工藤には全くそれができない。 おそらくは足して二で割れば程よくなるのかもしれないけれど、そう簡単にはいかないわけで。 だから、黒崎先輩が居心地悪そうにしていても、不躾に直視してしまう。] 黒崎先輩が林檎剥いていたからかな。 いいえ、違います。もっと濃い匂いです。 [そんな無遠慮な言葉も重ねてしまう。] ……ここに来てから、やけに林檎が目につきます。 [事実を確認するようにつぶやいた。 瞼の裏に、10枚の絵がよみがえる。 最期まで砕けたままの林檎は、いったい誰のものなのか。] (372) 2022/09/09(Fri) 22:30:35 |
【人】 1年生 工藤美郷そうですか。 [正直に少し飲んだと白状する黒崎先輩>>356に、工藤は抑揚無く返した。 その動揺から、葛藤の末の摂取だったことなど当然察せない。 少し前までなら、「課題の最中の飲酒は禁止事項だと思いますが」程度は返したかもしれないが、この時は] お酒は楽しいものですか。 [そう尋ねた。 生真面目な工藤は、大学生になっても酒には手を出していない。 一度も口にしないままに果てる可能性もあった。 余談だが。消毒用アルコールかな、などと言っていれば、「手からは匂いません。消毒用エタノールは飲むと失明します」の言葉と共に眼球チェックが始まっていただろうから、結果として賢明な判断だったと言える。]* (373) 2022/09/09(Fri) 22:31:08 |
1年生 工藤美郷は、メモを貼った。 (a137) 2022/09/09(Fri) 23:13:19 |
【人】 1年生 工藤美郷──ジョークのルール── [カレーの虹>>388に、工藤は表情を変えぬまま、松本先輩から少し席を離した。] ……………………。 おやじギャグはおもろくなくても無意識に口にしちまう。 [それから、じっと松本先輩のことを見上げると、思ったことを無意識のように口にした。] ですが、同じ音を使うのは正しいルールだと、武藤先輩に教わりました。 武藤先輩はジョークの正しいルールとして、私におやじギャグを教えたのですか。 [などと松本先輩と真剣に談義していたか。 だが武藤先輩はいくら噂話で名前が飛び交おうとも、その会話には入ってこなかっただろう、確信を持って言える。 時が来るまではあと僅か、黒崎先輩との貴重な時間なのだ、ジョーク談義なんぞに時間を使ってはいけない。]* (393) 2022/09/09(Fri) 23:23:16 |
【人】 1年生 工藤美郷[たとえ吹きかけただけでも、工藤の優れた色彩感覚には若干吹いた飛沫かカレーかの油膜が七色に光輝くのが見えたのだろうたぶん。>>401] 武藤先輩が……私をハメた…… 武藤先輩……すべての元凶…… [当然それも信じた、そして随分と長いこと沈黙していた。 その誤解を解くためには、還って追求しなければならない。 そのような状況を生み出したのは、松本先輩の温かい願掛けなのだろうけれど。 工藤には、それを「ありがとう、そうですね」と受け取る能力が無い。] 誰が死んだかはもう既に決まっています。私達には分からないだけで。 自分ではどうにもできないのに、「ちゃんと還って」と言われても、約束できません。 [温かい、甘やかな願望を、壊した。]* (409) 2022/09/09(Fri) 23:56:21 |
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