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【人】 箱庭の雛 フェレスいつも何かが足りない、 何か大切だったはずの物が、 忘れてはいけない物のはずなのに、 たった一つ残された宝物だから。 僕は Who am I ... ?* (96) 2021/12/15(Wed) 19:55:33 |
【人】 箱庭の雛 フェレス―― 夕方/魔術師の家 ―― それでも、私は [ 安心させるような、その言葉。 その言葉の真偽なんて僕にはわからない。 救いの手がそこにあるかもしれないのに、 どうしても手が伸ばせない、助けてと言えない。 慣れてしまった考えに思いが固まって。 なのに、 (140) 2021/12/16(Thu) 0:43:26 |
【人】 箱庭の雛 フェレス私は……僕は…… [ " どうしたい "かなんて、そんなもの 決まってる、 僕は、誰にも迷惑をかけないで生きたい。 私は、生きていたことを誰かに覚えていて欲しい。 ―― あれ? ] (141) 2021/12/16(Thu) 0:44:19 |
【人】 箱庭の雛 フェレス―― 記憶/少女はただ[死にたかった] ―― [ 少女が初めて" 演技 "をしたのは母の死の日だった。 他の人からどう見られていたとしても少女は母が好きだった。 病弱な自分を唯一" 悪魔 "から守ってくれた母が。 ] お母さん、■■■は大丈夫だよ だから早く病気を治してね? [ 心配そうな母に大丈夫だと、自分は強いのだと、 泣いてしまいそうな本心を隠して、言葉にした。 けれど結果は大失敗、 少女は騙ることができなかった。 ] (142) 2021/12/16(Thu) 0:44:36 |
【人】 箱庭の雛 フェレス[ それ以来少女は学んだ。 いい子でいる方法、誰からも嫌われない方法。 笑って、泣いて、 怒って、嫌って、 気が付けば、自分は何者なのだろうか、 ] お母様、大丈夫ですか? ええ、大丈夫よ それより――いいえ、なんでもないわ [ 境界線もあやふや。 何もかも本当の体と心。 少女は自分を失った。 ] (143) 2021/12/16(Thu) 0:45:09 |
【人】 箱庭の雛 フェレス[ 悪魔は言った。 お前はこのために生かしていたのだと。 ならばと少女は言いました。 あなたのために役立ちましょう。 少女は酷く喜びました。 こんなにもあなたに求められているなんて! 男の瞳が見つめていたのは少女ではありませんでした。 けれど少女は言うのです。 幼いあの日に見た踊りと、あの言葉を。 ] ワルツを踊りましょ! [ 白く濁った、夜の夢。 悪魔は満足げに笑ったのだ。 少女は未来を失った。 ] (144) 2021/12/16(Thu) 0:45:26 |
【人】 箱庭の雛 フェレス[ そのことがバレたのは何度目か、 善人の女は心配そうに問いかける。 大丈夫ですか? 少女はその人物の望むように答えた。 大丈夫だと、か弱く、怯えたように。 善人の女は可哀そう、守らなきゃなんて、 英雄思考のような感情を思い出して。 少女は、安全を願い彼女に縋った。 彼女の感情を刷り込まれて、正義を刷り込まれて、 それでも、と。] 大丈夫だよ、クレア 信用して? [ 深い繋がりを求めた。 遠く、彼方、一人は寂しいと凍えるのだ。 少女は母親を失った。 ] (145) 2021/12/16(Thu) 0:45:40 |
【人】 箱庭の雛 フェレス[ 少女は失い続ける、けれど辞めることはない。 何故なのかと問われれば少女は語る。 ――――綺麗に死ぬためだと。 ] (146) 2021/12/16(Thu) 0:46:02 |
【人】 箱庭の雛 フェレス[ 少女はそのためならなんだってやった。 母のいない生活に慣れて来た時。 魔女の機嫌を損ねないように、 魔女の娘になった。 ■■■は、 少しずつ本当にも慣れて来た時。 悪魔に捨てられないように、 悪魔の神になった。 私は、天真爛漫な女だった。 普通にも慣れて来た時。 正義感の強い善人が夢を叶えるように、 健気な娘になった。 僕は、か弱い少女だった。 気が付けば何者でもない少女にも癖がついた。 嘘の中でついた嘘がわかる仕草。 その時には決定的に何かが壊れていた。 ] (147) 2021/12/16(Thu) 0:46:22 |
【人】 箱庭の雛 フェレス(だから諦めていた、) (きっとその夢は叶わないって、) (願うだけ無駄なこと、) (そう思って心の奥底を守る、) (なのに、) (なのに、) (148) 2021/12/16(Thu) 0:46:35 |
【人】 箱庭の雛 フェレス私、僕、……いや、違う [ 零れるのは宝石のような涙。 そして、大切な言葉達。 ] ずっと苦しかった、けど [ 演じることも、騙ることもない。 願いを。 あの頃に叶えたかった夢を。 ] (149) 2021/12/16(Thu) 0:48:30 |
【人】 箱庭の雛 フェレス人といっぱいお話して友達たくさん作って、 見たこともないような綺麗なとこにいって、 幸せだって、自由だって笑いたい [ 諦めてたこと、 それがたくさん溢れて、流れ出て。 ] だからっ! [ あの日に言葉にしなかった、叫びを。 ] (150) 2021/12/16(Thu) 0:48:54 |
【人】 箱庭の雛 フェレス■■■は優しすぎなの もっと自分を大切にして欲しいわ? 私はいつも神様に願ってるのよ? 私の愛する■■■が自由に生きて、 誰よりも幸せになりますように、って (151) 2021/12/16(Thu) 0:49:25 |
【人】 箱庭の雛 フェレス[ 掠れたように声にならなかった言葉、 少女は声になりそうだったことを知らない。 その言葉の意味を知らない。 忘れ去られた宝物。 たった一つの存在証明。 再び少女の言葉として世界に記憶されることはなかった。 けれど、その言葉は少女の心の中で確かに生きていた。 ] (154) 2021/12/16(Thu) 0:51:45 |
【人】 箱庭の雛 フェレスメミニ、愛しているわ [ 幸せをいつも思い出せますように、 そう願われた少女の名前が。 メミニ。 少女の唇は確かに動いた。* ] (155) 2021/12/16(Thu) 0:52:06 |
【人】 箱庭の雛 フェレスいつの日か聞いた噂話。 あの頃はそんな物嘘っぱちだと思ってた。 夢を正当化する都合のいい言い訳。 その程度のくだらない妄想であると。 けれどそれはきっと、 本当のことだった。 噂が真実だったと知った。 (244) 2021/12/17(Fri) 0:09:16 |
【人】 箱庭の雛 フェレス[ 猫 はその輝きに惹かれた。謝罪の言葉なんて気づかないほどに。 ] えっ……にゃっにおっ!? [ その行為を理解をすれば、 顔を真っ赤にして、慌てて。 やわらかかった 変な感想と共に、少女の体は熱く、 けれど、今までの気だるさなんて存在しない。 ] (245) 2021/12/17(Fri) 0:10:18 |
【人】 箱庭の雛 フェレスあっ、えっと……はい? [ 少女にとっては一瞬の出来事で、 魔術師の言葉に驚愕と、安堵の感情。 長く苦しまれた、呪いがあっさりと解決されたこと。 そのことに実感がわいていなかった。 それこそ、人魚の彼に見送られた後に、 やっとこそその事実を理解したくらいには。 ] (246) 2021/12/17(Fri) 0:10:33 |
【人】 箱庭の雛 フェレス―― 後日談/そして、 ―― [ 言葉は繰り返し、音と成る。 言葉は綴れば、世界と成る。 ] [ 風の音色の響く部屋。 主の到着を今でもかと待ち続ける。 ] もうっ!叔父様は心配性すぎるよ! [ 声が扉の前までやってきて、 怒ったのを表すように扉が大きい音を立てた。 ] (304) 2021/12/17(Fri) 23:12:18 |
【人】 箱庭の雛 フェレス[ 未だ少女という身を脱せない少女。 月日が経ってもそれは変わらず。 ] はぁ、ほんと叔父様は…… [ 怒った表情の裏。 顔に映った笑みは、隠されることもなく。 ] わたしももう子供じゃ…… あ゛ [ 視線の先、開かれた窓と風の音。 開かれたページと、擦れる紙の音。 ] (305) 2021/12/17(Fri) 23:12:31 |
【人】 箱庭の雛 フェレス[ 慌てて、見つからないように、 文字の書かれた本が閉じられる。 ] うぅ、窓閉め忘れるなんて…… [ 屋敷の者が入らなくてよかった。 そう胸をなでおろす少女。 ] よしっ、書こう [ 机の上。 本と、ペンと、インクの匂い。 そこで世界が生まれる。 ] (306) 2021/12/17(Fri) 23:12:45 |
【人】 箱庭の雛 フェレス[ やがて時間は経ち、 綴られた言葉も乾いた。 ] ふぅ…… [ 一息つこうと少女が閉めた窓を開ける。 そして突然の風。 ] んっ…… って、まっ [ 学びもせずに窓を開ける物だから。 風と共に、一枚の手紙が空を翔ける。 ] ……取りに行かないと! (308) 2021/12/17(Fri) 23:13:39 |
【人】 箱庭の雛 フェレス[ 慌てたように飛び出した少女。 窓は未だに開けたまま。 ひらり、 また、ひらり、 少しずつ繰り返して、 一番最初のページ。 ] (309) 2021/12/17(Fri) 23:14:21 |
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