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【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙 ー 夢の終わり ー [千由里と別れてしまえば 俺には家に帰る他道はなくて、 例え振り向いても追い縋っても 一時の夢には戻れない。 そうしてきっと俺はひとりとぼとぼ 家に帰るんだ。 絵美から出迎えの言葉もなく 梨花の泣き声で押しつぶされそうな家に。 重い足を引きずるようにマンションまで辿り着くと 玄関にちょこんと梨花が座っていた。 今しがたまで母ではない女と 一夜を過してきた父を、何にも知らない顔で にっこり笑って出迎えると 梨花は足りない舌で「ぱっぱ」と呼んだ。] ただいま、梨花。 …………ママは? [尋ねれば、「ママ、ねんねしてぅ。」と応え 梨花は俺に抱っこをねだる。 どっしりと、重い。 子ども特有の甘酸っぱい匂いを感じながら 奥へと足を進めると、絵美は和室で 洗濯物の山に囲まれたまま横になっていた。] (0) 2021/07/14(Wed) 15:07:50 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙絵美、ただいま。 [呼び掛けても返事はない。 網戸から吹き込む風が、絵美の前髪を吹き上げ その疲れに浮腫んだ顔を晒す。 久しぶりに俺と過ごす時間が嬉しいのか 梨花はひっきりなしに俺に話し掛けてきて 俺はその他愛ない話に耳を傾ける。 でも、まるで平らげた馳走に思いを馳せるように 頭の中には千由里の顔がチラついた。 キスのひとつひとつ、汗ばむ肌の味…… それは掛け替えのない、未来を生きるための糧。] 梨花、ママねんねしてるから パパと一緒にプリンセスソフィア観ようよ。 [パパの顔に戻った俺はそんな提案をしながら 梨花とのひとときを過ごすだろう。] (1) 2021/07/14(Wed) 15:08:19 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[─────けれど、 夜まで起き上がらない絵美に 「いつまで寝てるの?」って声を掛けて、 絵美の身体が冷たくなっているのに気付くまで 俺は何も知らないでいた。 俺が夜を過ごすうちに、 神様は絵美の生命を天へと昇らせ 代わりに、梨花だけを置いていった。 そうして、逃げることも出来ない「パパ」の名前が 俺の上により一層重く伸し掛ることなんか バカな俺は全然、気付かなかったんだ。] (2) 2021/07/14(Wed) 15:10:42 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[絵美が死んでいるのに気付いてからのこと、 実は全然覚えていない。 どうして?なんて問う暇なんかなく 無情にも日々の瑣末事は押し寄せてきたし、 瑣末じゃない諸々も抱えきれないほどあった。 料理も、洗い物も、洗濯も、掃除も 分からないけど、頑張るしかなくて、 でも、全然上手く出来なくて。 上手く作れななかった料理を出したら 「ママのがおいしい。ママのがいい」って そう言われる度、死にたくなった。 ほら、パパじゃダメだって、って 逃げ込めるところなんか、何処にもなくて、 仕事から帰って、家の事やって、泣かれて 寝なくて、梨花が熱出して、仕事も出来なくて そんな日々が続く。 たまにどうにもならない苛立ちが募って 梨花に当たると、ママ、って泣くから 気持ちを内へと殺すようになった。 絵美が生きていた時より ずっとずっと辛い毎日が連綿と続いていた。] (3) 2021/07/14(Wed) 15:11:17 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[ふと、思うんだ。 絵美にも「ママ」になる覚悟が あった訳じゃなくって、 どうやっていいか分からない、 このどうしようも無い状況から 「助けて」って俺に手を伸ばしてた だけじゃないかって。 だとしたら、これはきっと罰だ。 一人抜け出し、夢を見ようとしたことへの。 でも、罰なら受け入れなくっちゃ、って そう思うのに、「おいしくない」って 食べてもらえなかった卵焼きをゴミ箱に捨てる時 もう、どうしようもなく涙が止まらなかった。] (4) 2021/07/14(Wed) 15:11:39 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[でも、時々、ね。 梨花がご飯食べてくれて 新しい言葉覚えたり、歌を歌ってくれたり 下手くそな似顔絵で「ぱぱだいすき」って 描いてくれたりしてさ…… そんな一瞬のことが、すごく嬉しくて。] (5) 2021/07/14(Wed) 15:14:27 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[─────そうして、あっという間に あの夜から半年が過ぎてしまった。 たまたまその夜は梨花がすんなり寝てくれたから 一人静かに夜風に当たりたくて そっと家から抜け出したんだ。 玄関横にある鏡に映った自分の顔は すっかり「おじさん」の顔をしてて、 それを見たせいか、夜の公園から臨む夜景は ぼんやりと滲んで見える。 家の灯りや街灯が色とりどりに点って まるであのアクアリウムを思い出す。 ……覚えているとも、あの日食べた レモンケーキの味とか、交したキスの甘さまで。 でも今の俺を見たら、きっと千由里は こんな窶れたおじさんに「好き」なんて 言ってくれないに違いない。 ベンチの上にぐったりと項垂れると 涙は足元の砂の中へと消えていった。]* (6) 2021/07/14(Wed) 15:14:53 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[そうして、夜が明ける。夢が終わる。 エスカレーターを下りてフロントを後に、 ホテルを出たら駅まで歩いて 改札を通り抜けてから先に背を向けたのはどちらだったか。 通勤ラッシュを過ぎたホームは静か。 ベンチに腰掛けて手持ち無沙汰にスマホをいじった。 通知の溜まったLINEを開くことはなく 別に面白いわけでもない画像投稿を眺めた。 いつもとそう変わらない日常。 いつもと同じ、退屈な日常。 無意識にパーカーの長袖を掴んでいて ぎゅっと指が食い込んだら、少し痛い。] (7) 2021/07/14(Wed) 17:06:28 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[だから良いの、タイガさんの一番じゃなくても 愛してるし、ちゃんと忘れない。 あの日知ったあなたのことも、 ――あれから見つけたあなたのことも。 ブログに映ってた写真。 マンションの場所ならネットで見つけた。 最近、あんまり更新してないね? ふらっと立ち寄ってしまったのは あの夜からひと月くらい後だっけ。 ちょっと通り過ぎただけ、それだけのこと。 週に一度、数日に一度、――毎日、 ほんのすこし眺めてただけ。 ゴミを捨てに行くタイミング、 リカちゃんを連れて買い物に出かける姿。 夜の公園で明かりのついた部屋を眺めて 電気が消えるのを見たら、 そっと「おやすみ」を告げる。] (8) 2021/07/14(Wed) 17:08:41 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[彼はちゃんと「パパ」だった。 ぐずるリカちゃんを抱っこするのも、 ご機嫌なリカちゃんに笑いかけるのも。 あの夜よりもっと、ずっと大人に見えたんだ。 ちゆなんかじゃ届かないような気すらして 愛し合ったのが、なんだか幻みたい。 ――ねぇ、ちゆのこと覚えてる? 思わずそんなこと聞きたくなって、 何度か電話を掛けようとした。 でも、出来なかった。] (9) 2021/07/14(Wed) 17:09:31 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[タイガさんの奥さん、まだ見たことないけど 連れられて歩くリカちゃんが幸せそうで 羨ましくて――ちゆには壊せなかったんだ。*] (10) 2021/07/14(Wed) 17:09:47 |
【人】 OL 奈々────── ……ふふふっ。 あのねヨウくん。私明日でもいいの。 ヨウくんのこと返したくないから、 ご実家にご挨拶して、そのまま… 結婚したいと思うの。 それまでは私が養うし、 なんならずっと養ってもいいのよ! [ 彼をダイニングテーブルに座らせ 隣に密着するように座り手を握って話し始める。 もしかしたら勢いに彼が押されていたら ごめんね、と少し落ち着いてみて。 もっともっと話したい、と 気持ちは伝わったなら嬉しい。 あ、勿論帰り道にDVDは返していたよう。 ]* (11) 2021/07/14(Wed) 20:17:38 |
【人】 神原 ヨウ──────────── …………明日。 そうだね、明日オレの家に来てもらおっか。 オレの両親になーりんのこと改めて紹介するよ。 養う養わないは、ちょっと待って。 気持ちは嬉しいけど、それは長続きしないと思う。 でも同棲するならお金とかの問題はあるもんね…… [>>11彼女の勢いはとても嬉しかった。 それだけ彼女の思いをはっきりと伝えられたのだから。 だから代わりにオレが少し冷静な役になる。 彼女と結婚するにあたって一番現実な道は何か、と。 色々話すことはあるが まずはお互いの両親に話を通してから そこから始まるような気がした。 特にオレがまだ学生だから、オレの両親には。] でも、オレが学生のうちに結婚しよう。 もう10年も待って、また2年も待てないから。 (12) 2021/07/14(Wed) 20:50:35 |
【人】 神原 ヨウ[そうしてとあるものをバッグから出す。 それは元々用意してあったもの。 彼女にあげた薔薇の花束と同じもの。 ────たった一本のバラ。] (13) 2021/07/14(Wed) 20:50:48 |
【人】 神原 ヨウ付き合う事になったら渡そうと思ってたんだけど どうせなら、後7本は持ってくるべきだった。 ……オレの奥さんになって、奈々。 [これからの計画を話す前に もう一度自分の気持ちを言葉に直す。 あのホテルの出来事が夢では無かった事を示すために。]* (14) 2021/07/14(Wed) 20:51:09 |
【人】 敷島 虎牙[目覚めた俺の鼻腔を紫煙がくすぐる。 視線を向ければ、とっくに目覚めていた 千由里と目が合った。] ……おはよ。 [気怠い体をベッドの上で転がすと 俺は柔く微笑んで、両の腕を彼女へ開く。] ぎゅーして。 [抱っこをねだるように甘えて。 こっちに飛び込んできてくれたら 思いっ切り抱き締めてキスをしよう。 寝起きだから、ちょっと口が粘つくかな。 でも今キスしたいんだから仕方ない。] (15) 2021/07/14(Wed) 21:10:39 |
【人】 敷島 虎牙[そうして、気が済むまで チェックアウトまでの時間をベタベタ過ごそう。 シャワーで性の残渣を洗い流すのも惜しいけど 家に帰るなら、と丁寧に汗を流した。 千由里のうなじや肩の痛々しさと比べて 俺の身体には傷一つない。 中に胤を残しているわけでもない。 何食わぬ顔で帰れば、きっと 絵美も俺には何も言わない。はず。 綺麗さっぱりな身体のまま 千由里と駅まで手を繋いで向かったら 最後にひとつ、キスだけしたい。] ちゆ、本当にありがとう。 ……俺の相手が、君で良かった。 [別れを惜しむように髪を一筋、指に搦めて 俺は眉を下げて微笑む。 本当だよ?嘘じゃない。 それでも家に帰らないといけないってだけで。] (16) 2021/07/14(Wed) 21:18:47 |
【人】 OL 奈々────── 大丈夫、…?ヨウくん、学校の後でも 全然私は大丈夫よ? [ 学校に行くことは彼のお仕事。 だから、学校帰りに迎えに行って 彼の家に向かっても全然彼女は苦でない。 彼女を宥めるような、 落ち着いた彼の様子にふわっとした気持ちが。 養うことが現実的ではないことは 何となく分かっていたけれど、 やっぱり社長だったり、お金を稼いでおけばと 少しこう、後悔のようなものが湧いてくる。 ] 、ぁ……よ、くっ……… [ ごそごそと彼が取り出したものに、 彼女は口元を両手で押さえ、どうしようと 目を何度も開いては閉じを繰り返し 恐る恐るそれを受け取って。 ] (17) 2021/07/14(Wed) 21:25:32 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[だから、予想もしてなかった。 電車の中で考えていた絵美への言い訳なんか ひとつも役に立たないこととか、 また暇を見つけてこの企画に参加したいなーなんて 甘っちょろい幻想が砕かれるのとか、 自分が思ってたより子を育てることが重い事すら。 会社の同僚や部下、上司は気遣ってくれるし、 近所に住むお節介なおばちゃんとかも よく声をかけてくれる。 更新しなくなったブログにも気遣うコメントが あったかもしれないけど、そこまで見れない。 正直、怖かった。 絵美を真綿で締めるように殺したのは俺で、 人はそれを知って、後ろ指を指してやしないか。 「あいつは人殺しだ」「ロクでもない男だ」って みんなが知っている気がして。] (18) 2021/07/14(Wed) 21:29:35 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[誰でもいい。 ちゃんと俺を見てくれる人が欲しい…… そう願うことすら、自分には許されない。 公園で俯く俺は、どうにもならない自分の心を じっと殺していたんだと思う。 梨花と買い物に行く時も、怖くて 周りをよく見ることも出来なくて。 ただ、都合のいいことを願うことに慣れた俺は 抱きしめてくれる誰かの存在を渇望して。]* (19) 2021/07/14(Wed) 21:34:01 |
【人】 OL 奈々────── ん……なら、明日の朝帰りましょうか。 学校へは送ってあげるから、 きちんとお話しできるようにしましょうね。 [ 何を着たらいいのか。 どんなメイクをしたらいいのか。 彼女の頭の中では色々とこうしようああしようが 浮かんできてしまって、ほわほわとした そんな気分になってきた。 でも、怒られるのかもしれないと 彼の両親に会うまではそわそわが 止まらないような気がする。 ] ヨウくんの、き、もち…… [ 込み上げてくるものはやっぱりあった。 彼が本当に、こんなにまで好きでいてくれた。 それが分かる行為がこんなにも簡単で こんなにもわかりやすくて、 伝わりやすいなんて。 言葉が失われていくなんてことは容易。 ] (21) 2021/07/14(Wed) 22:59:51 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[差し込む光を浴びながら、彼の声に振り向いたとき その無防備な微笑みに自然と目は細まっていたけれど 昨日よりなんだか甘えん坊な姿、 お強請りされるまま腕の中に飛び込みながら おはようのキスをしながら 別のことを考えてしまったんだ。 奥さんの前だったらこんな感じなのかな、とかさ 彼の寂しさは知っていたつもりだけど――それでも 純粋にちゆだけだって思えないのは きっと写真に映ってたあの女の子のせい。 ……こんなの面倒くさいって思うよね、だから 彼はなんにも知らないままでいい。] (22) 2021/07/15(Thu) 4:05:05 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[シャワーを浴びた。 昨日の痕にボディソープが少し沁みた。 それが嬉しくて、鏡越しに見えないのはもどかしくて 身支度を整えたら、もういつでも外に出られる格好。 昨日はほとんど目につかなかった時計が 今日はやたらと視界に飛び込むの。 チェックアウトの時間が近づいて、名残惜しくて 駅までの道をやけにゆっくり歩いていたけれど それでもやがては辿り着いてしまう。 最後のキスを交わした、その後は どんな顔をしていいかわからなかった。 気づいたらじっと爪先を見つめてた。] (23) 2021/07/15(Thu) 4:05:33 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里……うん、ありがと。 ちゆも幸せだったよ。 [“またね”なんて存在しない。 手を振る彼が背を向けて、反対方向に歩き出して 見えなくなったらそれでおしまい。 あたしたちを繋ぐ関係性はどこにもないから。] (24) 2021/07/15(Thu) 4:05:47 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[そうして彼を見守ったところで、 苦しいのが消えるわけでもない。 たとえば何気ない偶然を装って目の前に現れてみたら あの夜の続きが始まるかもなんて、何度か考えた。 そしたら彼は驚くかな、それとも困った顔をするのかな。 だけど思い浮かべる傍らにはあの子がいて 小さなリカちゃんの物心なんて知らないけど ――あの子さえいなければ、なんて思いながら あの子がいたから足を踏み出せなくて。 壊しちゃえっていつかは簡単に考えたのに ちゆを見て、困った顔されるのが怖かった。] (25) 2021/07/15(Thu) 4:06:52 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[その夜も遠くから眺めただけ。 暗闇に紛れたらきっとあなたは気づかない、 それでも街灯に照らされたベンチはよく見えた。 あなたは俯いてた。疲れた顔してた。 嫌なことあったのかな、 毎日寄り道したってほんの些細な日常しか知らないけど 好きだよ、大好き。今もずっと愛してる。 たとえ一晩の恋人でも、あの夜は確かに特別で あたしたちは確かに愛を囁きあって ……ねぇ、少しくらいは、また寄り添ってもいいのかな。 そんなこと考えてたら、今までさんざん躊躇った足が 気づいたら前に進んでた。] (26) 2021/07/15(Thu) 4:07:18 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里……タイガさん? [声を掛けて彼が気づいてくれたなら、笑った。 まるでさっき通りすがったみたいな顔で 歩み寄って、それから小走りで近づいた。] ひさしぶりだねっ [平然と微笑むの、潤んだ目なんか知らない振りして。 だからどうか、ちゆの演技にも気付かないで。 *] (27) 2021/07/15(Thu) 4:07:54 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉[握られた手の熱さに。その安心感に。 意識を手放す瞬間、聞こえた褒め言葉に。 幸福感に包まれて、そのま?ま落ちた。 ぼんやりと揺蕩う意識の中、 あたたかなぬくもりが私の体を 包んでいるような気がして─── 目が覚めて、ぱちり、ぱちり、瞬きを。 一瞬、ここがどこだか分からなくて、 二秒ほどあけて、気づいた。 夢ではない、その温もりにゆっくりと体を 動かそうとして、その痛みに顔を歪める。 だけれど、そこにいる人を知っているから。 おはようございます、と挨拶をしようとして 声が掠れて、うまく出なかった。 ゆっくりとその腕の中で身を捩り、 包まれたまま、顎先にキスをすれば 挨拶しようとしたのだと気づいて もらえただろうか。] (28) 2021/07/15(Thu) 6:40:06 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉[くすくす、笑い声が降ってきてわたしは笑む。 寄せられた唇を追うように閉じかけた瞼を ゆったり開いて見つめ返し、数度啄むような 口づけを交わした。 こく、と唾を飲み込んで、呼吸するその人の胸板を とんとん、と優しく2度叩いた。] ん………いま、なんじ、ですか? [自分でも少し驚くくらい枯れた声に、 困ったように眉を下げて、その答えを待つ。]* (29) 2021/07/15(Thu) 6:40:31 |
【人】 神原 ヨウ今更ではあるんだけど もの凄い朝帰りしましたって感じだね。 [>>21朝になって息子が帰って来たら 隣には女性が居て、更には結婚を前提に付き合うもしくは 結婚します、なんて言うのだから大したサプライズだろう。 賛同されるか反対されるかは分からないけれど、反対されても説得するフェーズに入るだけだ。 オレはあくまでオレの両親だからまだなんとか大丈夫だけど 奈々からしてみたらもっと緊張するだろうな、と 落ち着かない感じが少しある彼女を見てそう思う。] 態度で示して、言葉で示して。 そしたら後はプレゼントになるかなって。 [10年前は伝え方で失敗してしまったから。 今度は抜かりなく、彼女を捕まえて隣に居てもらうために。 その試みはどうやら成功してくれたようだ。] (30) 2021/07/15(Thu) 13:40:30 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[そうして夢から帰って待ち受けていたのは 終わりの見えない悪夢のような現実で。 罪悪感と無力感とに押し潰されそうになって 日々を生きて……そうして漸く暇を見つけて 夜の公園まで逃げてきてしまった。 根元からぶつりと切り離されて 荒い波間を漂う海藻にでも なってしまったかのような心許無さに 小さく震えていると……] …………ちゆ、り、さん…… [顔を上げれば、あの時と同じまんまの 千由里が、夜の灯りを背に立っていたか。 ずっとそばにいたなんて、知らない。 きっとあのまま俺を忘れて もっと熱を埋めてくれる誰かを 見つけてしまったのかなって思ってた。 ……いや、そうじゃないなら、 あの日よりも痩せて疲れ果てた顔の俺に 幻滅して、きっと離れていくのだろう、と。] (32) 2021/07/15(Thu) 14:58:52 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[「本当に、久しぶりだね」。 そう言おうと開いた唇からは 奇妙なうめき声だけが出た。 もう顔も見られたくなくて、 それでも耐えきれなかった俺は 此方へ歩を進める身体をきつく抱いて まるで子どもみたいに泣いてしまう。 逢いたかった。 会いたくなかった。 助けて欲しい。 助けを乞う資格がない。 どうしよう。 どうしようもない。 でも、 だいすき。 いろんな気持ちがとめどなく溢れて、 千由里の肩口を濡らしていく。] (33) 2021/07/15(Thu) 14:59:45 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[冷静さを取り戻すまでしばし肩を借りたら やがて洟を啜って離れていこうとするだろう。] ごめ……俺、あの後からずっと もうどうしていいか分かんなくて…… [ベンチに腰を下ろすまでに 千由里がそばに居てくれるのなら あれから何が起きたかを話そうか。 帰ったら妻が亡くなっていて、 今は娘とふたりで暮らしていること。 医者からは死因は致死性不整脈と言われ 特に責められたわけじゃないけれど 気付くまで遅くなったのを自分で悔いてること。 娘の梨花の育児からずっと逃げていたせいで 家事も育児も手探りで、 それでも「ママがいい」と毎日のように泣くこと。 全部、千由里には正直に打ち明けようか。] (34) 2021/07/15(Thu) 15:00:10 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[言ってどうなるわけじゃない。 あの日見た夢には、もう、戻れないだろうし。 でも、そばに居てくれるのならそれだけで 俺はひとりぼっちじゃないって事実が 何より俺を落ち着けてくれるだろう。 すんすんと鼻を鳴らしながら それでも大人の顔を作ってみせようと 目を擦り、微笑みを作ってみせる。] …………ダメだね、俺。 何もかもから逃げて、都合悪いところは 人に頼ってばっかりだ。 [そうやって千由里から子どもを奪って 逃げ仰せた男がいるのを、俺は知らない。 前の俺ならきっと、同じことをした。 でも今は、無理だ。そんな酷いこと。] (35) 2021/07/15(Thu) 15:01:27 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[嫌われる勇気も、でも独りになる勇気もない俺は 頬にこびり付いた涙の跡を手の甲で拭いつつ この場に適当な話題をひり出そうとする。] あー……千由里は、あれからどうしていたの? ─────あと、もし知ってたら、 三つ編みのやり方、教えてくれないかな。 [聞いてまた、後悔する。 もうちょい余裕を取り戻せたらって思うのに 全然思ってたのと違うのが出ちゃって。 突っかけてきただけのスニーカーの爪先へ 視線を落としながら、それでもそばにいる存在を この場につなぎとめようと。]* (36) 2021/07/15(Thu) 15:07:47 |
【人】 星条 一 → スタンリー[行為の後の微睡は格別の時間である。 暫し起きていた男も何時しかうつらうつらとしていた。 腕の中の温もりが動き出すと浅い眠りについていた男は目を覚ました] おはよう、珠莉――。 [男は身を捩り顎先にキスをしてくれる珠莉を柔と抱きしめると小さく笑いの声を漏らした。 繋がっていたものもいつしか抜け落ちていたろう。 身体を向き合うように抱擁しなおすと正面から見つめたままに唇を重ねあう。 雛鳥が餌を求めるように啄むものだから男はやはり小さく笑い、舌を絡めては唾液をゆるゆると流し込んでいた] なんだ、もういいのか? [胸板への合図に唇を離すと少しばかり残念そうにそう伝える] (37) 2021/07/15(Thu) 18:41:37 |
【人】 星条 一 → スタンリー ん、今は――。 [男は時計へと視線を向ける。 お昼過ぎにこの部屋で出会い、少し話をしてからエッチをし始め、少し寝て――] 20時くらいか、時間はまだまだあるな。 [そう告げると男は再び唇を重ねあった。 其れは触れるだけに留めたものの男は今も尚、珠莉を求めていることは明白であろう。 ただその掠れた声を眉の動きに、男もまた眉根を下げた] ルームサービスを頼もうか。 食事と飲み物も用意してもらって――。 流石に紅茶はもう渋かろうからな。 [銅製のケトルで淹れられた紅茶を男は結局まだ口にはしていない。 また淹れてもらえる機会があると良いのだがと緩く珠莉の身体を抱き寄せた] (38) 2021/07/15(Thu) 18:46:52 |
【人】 星条 一 → スタンリー そうすると風呂に入ったほうが良いな。 一緒に入るだろ? [問いかけながら男は自分のズボンへと脚を伸ばした。 足の指で器用に摘まむと引き寄せポケットから喉飴が入ったケースを取り出した。 そこからひと粒飴を取り出すと自分の舌の上に乗せて、 レモンの味がするそれを口渡しで珠莉の口内へと押し込んだ*] (39) 2021/07/15(Thu) 18:49:26 |
【人】 OL 奈々え、そういえば待って? 今日お泊まりすることちゃんと話した? [ はっとした。 もし彼が昨日のお泊まりだけを 家族に話していて今日のことを話していないなら 彼女はまず持って先に連絡させる。 無断外泊させたなんてことを明日言われたら 彼との交際をダメと言われてしまいそう。 彼が宥めてくれたなら、 彼のことを信頼して彼女の心配は落ち着いていく。 ] (40) 2021/07/15(Thu) 19:47:12 |
【人】 OL 奈々昨日の、薔薇5本も… すっごく、よかったのに…… あぁ、もう…すき……… [ 薔薇をどう飾ろうかと、 徐々に彼女の思考はそちらにも動いて。 しっかりと示された彼の気持ち。 それを1日でも長持ちさせたい。 そしたら、彼が一度実家に帰っても 彼女はそれをみて幸せを感じられる。 彼のことを、まだまだ知っていきたい。 おばあさんになっても、 ずっとずっと彼という人を好きでいたい。 ] ねぇヨウ? あなたの初恋、どんな味か… もう一回私に教えてくれる? (41) 2021/07/15(Thu) 19:48:02 |
【人】 三月ウサギ─── 友人、恋人、契約者。 俺達は、何かになれたんだろうか? 確かめることはせず、ゆっくりと身体を起こと。 白い太陽を、背負いながら。 ようやく重なった視線を惜しむように 真っ直ぐに君を見つめたあと。 目を細めて微笑んだ。 (42) 2021/07/15(Thu) 20:43:12 |
【人】 三月ウサギ最初から、一夜だけの約束だった。 このホテルを出た後は。 それぞれの別の世界に分かたれて。 君の家族が俺の家族になり。 俺の家族が君の家族になる。 なのに、俺と君は家族にはなれない。 そんな当たり前のことに対して。 心底不思議そうに、首を傾げれば。 (43) 2021/07/15(Thu) 20:43:51 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[気付いた彼が顔を上げる。 よそよそしくちゆの名前を呼んで。 それにぱちりと目を丸くして、 うっすらと壁みたいなものを感じては 嫌だな、と人知れず思う。 やっぱり忘れちゃってたの? 心に掛かったのは見えないもやもや。 不意に彼がちゆの身体を抱きしめたら 埋まる距離感といっしょに取り払われるけれど。 ――あの夜とは違う、彼がいた。 震える身体はどうしようもなく弱々しくて 手を添えた背中はいくらか小さく感じる。] (44) 2021/07/15(Thu) 21:08:46 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[どうして泣いていたのかなんて知らない。 喧嘩でもしたの?怒られちゃった? あれから変わりなく「リカちゃんパパ」をしてたんだから あたしたちの関係は、奥さんに知られてはいないんでしょう? それなのに何があったのか――ちゆは、知らなかった。] ……大丈夫、ちゆがいるよ。 [何が大丈夫かなんて知らない。 それでも、ちゆは側にいたんだよ。 今だってあなたの側にいるの、だから。 あやすように背を撫でる。 男の人の泣く姿を見るのは、初めてだった。 だけど知らないタイガさんの顔、また一つ知れたって ちょっぴり嬉しくなったことは内緒。] (45) 2021/07/15(Thu) 21:08:58 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[彼が落ち着くのを見ればベンチの隣に腰掛ける。 そうして語られた事実を知る。 ちゆの知らなかったこと、 いつもリカちゃんと二人だった理由。 奥さんの姿を一度も見たことがなかった理由。] 辛かった、ね [いつかの別れ際みたく視線は足の先に向けたまま 深刻な声で同情を口にした。 ――それもまた、半分くらいは演技だった。 なんだ、もうとっくに壊れてたんだ。 ] (46) 2021/07/15(Thu) 21:09:21 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[仲良くやってるんだと思ってた。 ちゆじゃない女の人のところへ戻って ちゆの知らない時間を過ごしてるんだと思ってた。 どうせ一番にはなれないんだ、って だから壊せなくて、諦めてたんだよ。 でも、奥さんがもういないんだったら あなたの最愛がこの世界にいないんだとしたら 今度こそちゆを選んでくれるのかなぁ、なんて 自分勝手な酷い考えは あなたが知ったら幻滅しちゃうのかな。] (47) 2021/07/15(Thu) 21:09:58 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里……なんにもできないけど、 話だったらちゆが聞くよ。 [頬に手をやるタイガさんを、 出会いがけのソファでそうしたみたいに覗き込む。 微笑んだのは優しさで、明るい声色は思いやり。 ――本当だよ?だってちゆ、「良い子」だもん。] えへへ、普通にしてたよ。 タイガさんのことずっと考えてたかな。 [はにかんで笑ってみせる。別に、嘘はついてない。 タイガさんのこと、ずっと見てただけ。] (48) 2021/07/15(Thu) 21:10:17 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[だけど三つ編みのやり方を聞かれたら つり上げた唇の端がふっと落ちてしまう。] できるけど、なんで? [覗き込む顔を正面に戻して尋ねた。 目的なんか聞かなくたってわかるけど。 そっか、結局「リカちゃんパパ」のままなんだ。 ……そうだよね、そりゃそうだ “普通”はお父さんかお母さんと一緒だもんね。] (49) 2021/07/15(Thu) 21:10:48 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[今度こそ彼を手に入れられると思った。 今度こそちゆのことだけ見てくれると思った。 今度こそ愛し続けてくれると思ったのに 今度はあの、小さな子どもがいるなんて。 なんでかな、もどかしいの。 愛しても愛しても愛しても愛しても いつまで経っても報われないの。 ちゆだって「良い子」にしてるのに、 欲しがっても掴んだ手からすり抜けてしまう。 それなのに、] (50) 2021/07/15(Thu) 21:11:21 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里……娘さん、いくつなの? タイガさんの子どもなら、 きっと可愛いんだろうなぁ。 [タイガさんの注いだ種で 知らない女の人のお腹から生まれたあの子が ひどく羨ましくて、恨めしくて。] ねぇ、ちゆも会ってみたいなぁ。 [――――狡いよ、リカちゃんは。*] (51) 2021/07/15(Thu) 21:11:41 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉[甘い抱擁。伝わる体温で、同じだけ熱を持つ 体が触れ合うのが、心地よくて。 啄むような口づけの合間、差し込まれた舌が ゆるく唾液をこぼすから、飲み込んだ。 とんとん、と二回合図。 軽いキスだったはずなのに、少しだけ 息が上がりそうになって、深く吐いた。 それから、尋ねた時間。 20時だと返ってきたから少し安心した。 完全に寝落ちてそのまま何時間も 待たせていたわけではなかったらしい。 ほ、と息を吐いたらまた掬い取られる。 触れ合った唇が微かに音を立てて。 「よかった」と紡ごうとして、 また出なくて、眉を下げる。 彼の表情も同じように曇るから、 なんだかおかしくて、伸ばした指先で、 その眉間をつん、とつついた。] (52) 2021/07/15(Thu) 22:50:08 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉はい、そうしましょう わたし、お腹すいちゃいました。 [と微笑みかけながらいうと、初めの約束が 果たされるようだとわかって。 ふわ、と花開くように笑んで 肯定を数度の頷きで返す。 すると彼が何やらごそごそと足を伸ばすのが みえたから首を傾げてしばし、待つ。 今度は何かを口に放り込むから。] ───それ、 っ……ン、 [何ですか、と聞こうとした唇が 塞がれて、甘酸っぱいものがころん、と 口内におちると、じゅわ、と唾液が ひろがるのがわかった。] (53) 2021/07/15(Thu) 22:50:28 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉ん、 ぁ、飴? [ころん、と口の中でころがして、 こくんと唾を飲み込むと、甘くて酸っぱくて レモンの味が。───昔、本で読んだ、 ファーストキスの味を思い出した。 きゅ、と心根が掴まれる心地がする。] ……ふふ、おいし [そう微笑みかけながら、両手を広げて、 彼の首元に回して引き寄せる。 そのまま数度口づけを重ねれば] おふろ、連れてってくれますか? [とおねだりを。]* (54) 2021/07/15(Thu) 22:50:50 |
【人】 星条 一 → スタンリー[初めての口づけの味。 それは十の年齢差があっても変わらないものであったようだ。 男は珠莉が浮かべた表情に頬をやわらげた。 喜んでくれているのがとても分かるもので、 一つ共通項を積み重ねたことにも嬉しさを覚えていた] 気に入ってくれたなら嬉しいよ。 ご飯は先に頼んでおこうか。 [口づけを重ねながらそうした会話を積み重ねることでキスすることが普通の間柄のように思えてくる。 心の距離は実際の距離とも言われることもあり今のこの距離感は最も近しいものと言えるだろう。 おねだりを聞くと男は頷いて見せ。 受話器を取りルームサービスをコールして少し後の時間にと指定を入れた。 お風呂からあがる頃には届くだろう遅めの夕ご飯は珠莉の好むものと男はサンドウィッチをはじめとした軽食を中心としたものとした] さて、と――珠莉。 お風呂に行こうか……ところで。 [男は身体を起こして自然と珠莉の横に移動した。 背と膝裏へと手を差し入れると横抱きのままお姫様抱っこをしてベッドの端まで移動してから立ち上がる] (55) 2021/07/16(Fri) 0:29:12 |
【人】 星条 一 → スタンリー こうして運んでもらうのも、初めてか? [どこまでが初めてなのだろうか。 それは未だに分からないが男はそう尋ねながらお風呂場へと珠莉を連れていく。 辿り着いたお風呂場はそれだけで並みの部屋一部屋分程度はあった。 というより男の自室より広いかもしれない。 壁際はガラス張りになっており外を一望できるようになっていた。 恐らく外からは見え難いようになっているだろうが少しばかり落ち着かない。 そこに露天風呂とでもいうように浴槽がありそこまた広かった] (56) 2021/07/16(Fri) 0:29:27 |
【人】 星条 一 → スタンリー 円形の風呂なんて初めてみたぞ。 ジャグジーか、これ。 [浴槽の近くにはいくつかのボタンがあり、押すと泡の出るものもあるようである。 一先ずはと男はシャワーを弱めに出し始めた。 そのシャワーですら専用のもので天井に取り付けられている輪状の目から出てくるようである。 いよいよわからんと男は首を傾げると風呂の床に腰掛けた。 組んだ脚の合間に珠莉の尻を置いて座らせて、 横抱きのままにぱらぱらと霧雨のように降る温かな湯を浴びる] これはあれだな。 滝とかミストとかそういう。 マイナスイオンがあるとかいうやつだ。 [あるかは知らないが男は考えることを止めた。 豪奢すぎて理解度が追い付かないでいる。 男は手を伸ばしボディソープを手に取ると手の中で泡立て始めた] (57) 2021/07/16(Fri) 0:29:36 |
【人】 星条 一 → スタンリー 珠莉はどこから洗うとか決めてるのか? 特になければ――。 [男の手はその耳元へと伸び、耳の裏側に指を這うよう伸ばしているのは明白であった。 隅々までと身体を洗ってしまおうと思うが男の手が集中する場所なぞ言わずもながであろう**] (58) 2021/07/16(Fri) 0:29:43 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[「ちゆ」ってあの夜みたいに呼んで 柔らかい髪を梳いてあげたら もっと喜んでくれたのかな。 でも、ごめん。もう、そんな資格はない。 抱いた体はどくどくと脈打ってて、 確かな生命の匂いがした。 それがまた、胸がぎゅうっと 締め付けられるような心地になって また新しい涙が頬を伝っていく。 辛かった。 でもそれを泣くのが、自分で許せなくて。 家も、絵美も壊して、梨花からママを奪って、 それでどの面下げて泣くの?って。 千由里の肩を濡らしても 振り払われなかったのをいいことに 今しばらくだけ、自分の心を解き放った。] (59) 2021/07/16(Fri) 11:24:03 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[そうして話を聞いてもらえれば 少しずつ落ち着きを取り戻していく。 「話聞くだけ」って千由里は言うけれど 聞いてくれるだけの魔法はすごい。 ずっと俺のこと考えてくれてた、って 今この状況になってそれほど嬉しい言葉はなくて つい、また嗚咽を漏らしてしまう。] 保育園行ってみたら、同い年くらいの 女の子達、結構凝った髪型しててね。 「パパだから出来ない」って、 思われたくないし、言いたくもないんだ。 [三つ編みを習いたい理由を打ち明ける時は やっぱりちょっと恥ずかしくて 照れ笑いで誤魔化した。 千由里が笑顔の奥に秘めた気持ちにまだ俺は届かない。 隣にいる体温が、嬉しくて、つい ベンチの上でそっと指を絡める。] もうすぐ3歳。 もう、ずっとずっとしゃべってるし、 それ以上にずっと歌う子なんだ。 [絵美が遺していった、俺の子ども。 今一番、守らねばならない存在。] (60) 2021/07/16(Fri) 11:25:06 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙会ってみる? やんなっちゃうくらい俺に似てるよ。 [くすくす笑って、それからふとあの夜を思い出す。 「ママになってよ」なんて 責任を取る気もないのに吐き出した自分に 今更、心底腹が立つ。 怖いけど、千由里の方を向いたら どんな顔してただろう。 瑣末事に溢れかえった脳みそで それでも千由里への気持ちを整理して……] ………………正直、ね。 いろんな事があって、考える余裕も無かったけど この夜景を見て、ちゆ、のこと、思い出してた。 あの時デートしたアクアリウムみたい、って。 [少しずつ、吐き出していく。] (61) 2021/07/16(Fri) 11:29:03 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙全部人に押し付けて、逃げて そのくせ「愛してる」なんてよく言えたなって 今となっては恥ずかしいけど…… でも、ちゆが幸せでいてくれたら、って その気持ちは嘘じゃない。 ずっと俺の事覚えてくれたのも、嬉しい。 …………だから、もし良かったら、さ。 またこうして、会って欲しいと思うんだ。 [あれだけキスして、獣みたいにセックスしたくせに 今は手を繋ぐのが関の山。 だけど、震える手で千由里の手を握って 心の奥の寂しい部分を、晒け出す。] (62) 2021/07/16(Fri) 11:29:26 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[一番じゃなくてもいいやって、一度は確かに思ったの。 だってちゆには届かないと思ったから 彼には奥さんがいて、リカちゃんがいて、 そこに入り込む隙間を見つけられなかったから。 ――――だけど今は違う。 目の前に彼がいて、彼の愛する奥さんはもういない。 タイガさんをちゆだけのものにして ちゆがタイガさんだけのものになって、 二人で「普通の」幸せな恋をするのに 邪魔なのは小さなあの子だけ。 期待しちゃうの、タイガさんのせいだよ。 そうやってちゆの目の前で泣いて 他の人に見せられないような弱いところを晒すから。 手が届くような気がして、欲しがってしまうんだ。] (63) 2021/07/16(Fri) 15:24:23 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里ふぅん、そうなんだ。 [タイガさんがリカちゃんの話を始めたら 鼻歌を歌うように暢気な声で相づちを打った。 今が夜で良かった。外が暗くて良かった。 目だけは笑えない、可愛くない笑みを浮かべてしまうのも 本当はそんな話をすこしも楽しいと思えない本心も 全部暗がりが隠してくれるから。] おしゃべり好きなんだ、可愛いね 一人でお世話するのは大変だろうけど…… [遠くの景色を見つめたままで返事した。 顔を見ない割に、絡めた指だけはぎゅっと握って。] (64) 2021/07/16(Fri) 15:24:35 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[ごめんね、ちゆはやっぱり子どもが好きじゃないみたい。 彼が笑うのを聞けばつられて笑って、 「タイガさんの子どもだもんね」なんて零して。 知ってるよ。 目のかたちも鼻筋も、 笑い方もよく似てるって。 それであなたに似てないところは 奥さんの面影を残しているんでしょう? 彼がちゆの方を向けば、笑ってみせる。 あの日より静かな笑みを浮かべてみせる。] 覚えてくれてたんだね、嬉しい。 連絡先も交換してなかったから、 もう忘れちゃって会えないと思ってた…… [ちゆはこっそり知ってたんだけどね。 さっさと掛けちゃえば良かったな、電話。] (65) 2021/07/16(Fri) 15:26:19 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[そうして彼が一つ、また一つ語り出す。 後悔だとか嘆きだとか、それと少しの愛だとか。 繋いだ手はちゆより冷たくて震えてた。 それでも熱は溶け合って、同じ温度に染まる。 あの夜みたいに寂しさを分け合って――だけど、 彼が知らない本心を伝えるつもりはなかった。 「愛」の形なんて知らない。 リカちゃんがどんなに大切かなんて知りたくない。 あの子がどんなに可愛くて 無邪気でかけがえのない存在だとしても ちゆにとってはタイガさんと誰かの子どもで いらない存在でしかないの。 ひどい?ひどいよね、分かってるよ。 でも、だって、だってさ、] (66) 2021/07/16(Fri) 15:26:39 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉[至近距離でゆらゆら見つめながら、 また交わしたキスははじめての味。 柔らかな微笑みを向けてくれるから、 それが嬉しくて首をすこし傾けて、 もう一度重ねて、ちゅ、と音を立てた。 からん、と口の中で鳴った飴玉は甘くて、 だけど少し喉に絡む。 じわ、と口内をうるおす唾液を飲み込んで、 その問いかけににっこり笑って頷く。 忘れてしまいそうになる、この関係が 今日、このとき限りであることを。 男性にこんなふうに甘やかされることは、 今までなくて。はじめての心地は、なんだか 中毒性すらあるように感じた。] (67) 2021/07/16(Fri) 19:47:39 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉[彼が、ルームサービスをコールしているその間 一人、ベッドの上でその姿を見つめる。 ずっとくっついていたから、なんだか 一人でいることが、違和感で。すこし、寂しくて。 はやく帰ってこないかなって思いながら 体を包む薄い布の中で、ころころしていた。 何が食べたい?と聞かれても、すぐには 思い浮かばなくて、とりあえず、スムージーが 飲みたいとお願いしただろう。 あとは、彼が注文したサンドイッチに、 わたしも、と同調して。 やっとこちらに向いた視線に至極嬉しそうに 微笑みかけて、頷く。 すると、その腕が背中と膝裏に周り、 ふわりと持ち上げられるから、 首に腕を回して、引き寄せて頬にキスをひとつ。] んー……お父様に小さい頃、 運んでもらったことはあるけれど…… こんなふうにしてもらうのは、はじめて。 [と答えてもう一つ、今度は唇に、キスを。 彼が歩むたびに少し揺れる体。 そのリズムが心地よくて、自然と口元は綻んだ。] (68) 2021/07/16(Fri) 19:48:05 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉[たどり着いた浴室は、自宅にあるものと 似た作りになっていて、ふむ、と頷く。 ガラス張りの壁の向こうは、夜景がよく見えた。 けれど、彼の感想はどうやら違ったようで。 困っている様子の彼を見ながら、 楽しそうに笑っただろう。 ぱらぱら降ってくる温かな霧雨。 少し上を向いて、汗をかいていた額を流す。] ふふ、そうかも。 なんか……体に良さそう……? [くすくす笑いながらそんな返事をして、 心地よさに目を細めた。 清潔感のある花の香りが鼻腔をくすぐる。 彼の問いかけに、「んー」と間延びした 思考時間のあと ] とくには、ないです [と答えると、その指が耳裏をなぞる。 急な刺激にゾクゾク、としたものが 駆け巡ってびくん、と体が震える。] (69) 2021/07/16(Fri) 19:48:22 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉くすぐ、ったい [閉じかけていた目蓋を開いて 見つめれば、目は合っただろうか。 合ったならば、じぃ、と見つめよう。 彼の手のひらが体を滑って 洗ってくれるから、その度に微かに震えながら その瞳の奥を、覗き込むように。 前面が洗えたのがわかれば体を捻り、 首に腕を回して軽くその胸板に擦る。 ぬる、とした石鹸で滑った素肌同士 胸の蕾がひっかかって、その刺激に また主張を始めるのが自分でもわかった。] ……はじめさ、ん [体を滑っていた指が敏感な箇所に触れるなら、 びくん、っとまた跳ねて、同時に、 見つめた瞳がとろりととろける。 舌を差し出すようにして近づけば、 それを吸ってキスしてくれないか、と。]* (70) 2021/07/16(Fri) 19:48:43 |
【人】 星条 一 → スタンリー[膝上の珠莉はこの浴室を見ても動じてはいなかった。 男の反応を見て笑う姿に少しばかり唇をへの字にして見せたが別段腹を立てていたわけでもない。 改めて感じるのは住む世界の違いというものだ。 如何ほどにこの場で親しくなったとしても外に出てしまえば大学の講師と教え子という関係に戻ってしまう。 見つめてくる視線はそれを見通すかのようで男は小さく笑みを浮かべて見せた。 覗き込まれると弱ってしまう。 齢を重ねれば自然と減ってくる真っすぐに見つめるという行為を自然と行えるのは羨ましくもあった] 詮無い事か。 [男は小さく愚痴ると指先で珠莉の身体を愛でていった。 細かな泡を身に纏わせ肌の上を指先でなぞりすべらせていた。 掌で、指先で。 触れる度に震える身体は男を求めてくれているようであり、 狂おしい程に愛おしさを覚えてしまう。 身体の前を洗い終わってもそれは乳房以外だけである。 首筋に回る腕に、背に回している手を引き寄せると華奢な身体を抱き寄せた] (71) 2021/07/16(Fri) 20:54:11 |
【人】 星条 一 → スタンリー 珠莉――愛してあげるのは。 まだ続いているからな。 ["まだ"終わっていないと言として。 男は蕩ける瞳を見つめながら差し出された舌に己の舌を絡めた。 唇が触れ合う前の舌だけのキスは留めるものがない唾液を滴らせていった。 濃厚に舌を絡め合うと漸くと唇を重ねあい、貪るようにその柔らかさを堪能していく。 男の手もまた漸くと乳房に触れる。 下乳のラインに手を這わせて弾ませるようにしながら汗をかきそうな場所を撫でていく。 そうして胸板に感じたひっかかりへと指をかけると二本の指で交互に爪弾いていった] そう――教えることは山程あるんだ。 教え終わるまでは、まだ、な。 ["まだ"と"まだ"。 時間の違いを掛け違えていきながら男は股間の盛り上がった熱を柔らかな尻肉に押し付けた] (72) 2021/07/16(Fri) 20:54:19 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[話を聞いてくれるのが嬉しくて ついつい梨花のことばっかり話してしまって きっと俺が千由里の様子に気がつくのは ちらりと見た彼女の表情が 思っていたより静かなのに気付く頃。] 忘れたり、しないよ。 [なんだろ、女の子と会話してて 他の女の子の話しちゃった時みたいな ぞわっとした感覚。 でもちょっと、可愛いって思ってしまう。 張り合わなくていいんだよ。] (73) 2021/07/16(Fri) 21:01:48 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙[問いかけには、じっと黙って言葉を探す。] 俺にとってのちゆはね───── [もちろん「一夜限りの相手」ではない。 もちろん「ママ」でもない。 「お嫁さん」なんて、望んでいいの? いろんな言葉に当てはめようにも 上手く当てはまる言葉が浮かばなかった。] 今一番、幸せでいて欲しい人、かな。 [近しい言葉が、それだった。] (74) 2021/07/16(Fri) 21:04:03 |
【人】 リカちゃんパパ 敷島 虎牙もしあの日、ちゆと一緒に駆け落ちして 家から逃げ出しちゃったとしても、 俺はまた結局ちゆからも逃げたと思う。 子どもができても殺させて、 そんでごちゃごちゃ言わなさそうな子を探す。 それがどんなに酷いことかも知らないで。 [握った手は、まだそこに居てくれたかな。 顔を上げたら、幻滅の顔があったりしないか。 また視線をスニーカーに落として 自分の心を吐き出していく。] (75) 2021/07/16(Fri) 21:04:27 |
【人】 三月ウサギ…… 少し考えたのは、俺の家族だった人のこと。 「そんなこと考えてなかったのよ、どうしよう?」 ほわんとした笑顔で搾取する。 そんな悪意は、俺が偽物だったからで。 君が晒されることがないといい。 心からの願いを浮かべて。 (76) 2021/07/16(Fri) 23:52:38 |
【人】 三月ウサギそのあと、俺は両親と出会い。 そのあと、俺は両親と別れた。 「 品のない子ね。 やはり育ちが卑しいとああなのかしら? 」 「 あれなら、あの偽物の方がまだ ─── 」 俺の前では穏やかに微笑んでいたけれど。 陰でそんな話をしているのを聞いてしまえば、 嫌でも気づく。 (79) 2021/07/16(Fri) 23:56:40 |
【人】 三月ウサギそうか、俺には家族なんていなかったんだ 気付いた瞬間、目の前が開けた。 迷いはなかった。 そのまま、あの大きくて息苦しい家を出た。 名前はどちらでもよかったけれど 下手に変えて詮索されるのも煩わしい。 なので、一番最初にもらった。 俺は俺の嫌いな、 俺の好きな女の子の 名前で生きていて。元々大学は奨学金で通っていた。 再びキャンパスに戻ることも可能だっただろう。 生活費もバイトして稼いでいた。 家族を養う必要がない分、余裕ができたくらい。 そうか、俺には家族なんていらなかったんだ 気付いてしまった、幸せで不幸なこと。 (80) 2021/07/16(Fri) 23:57:14 |
【人】 三月ウサギ………… 誰にも煩わされない幸せな日々。 誰にも煩わされない不幸せな日々。 世界は次第に、色を失い。 今が夜なのか朝なのかもわからない。 (81) 2021/07/16(Fri) 23:57:30 |
【人】 三月ウサギそんな日をどれだけ過ごしただろうか。 アスファルトの地面を渡る風が、 短く切り揃えた髪をさぁっと通り抜けた。 一瞬、反射的に目を閉じて、 パッと風の吹く方に目を遣ると、 どこかで見たリボンが、ひらりと宙を舞っていた。 (82) 2021/07/16(Fri) 23:58:06 |
【人】 三月ウサギ「 これ、─── 」 リボンを掴もうとしていた手に、 俺の手に収まったリボンを掴ませる。 それから相手の顔に、大きく目を見開いて。 思わず、その名を口にしようとして、噤む。 (84) 2021/07/16(Fri) 23:58:25 |
【人】 三月ウサギ三月ウサギとトト。 終わってしまった物語。 誰にもなれない、どこにもいけないひとりとひとり。 どこにもいない彼らは、ここにもいない。 …… だから、驚愕に彩られた瞳を、柔く細めた後。 上げた口角と共に「 君 」に向ける言葉は、きっと。 (85) 2021/07/16(Fri) 23:58:34 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉[触れてくれない乳房に、もっと触れて欲しくて。 じれったくて、彼の身体で塗りこめるように 体を動かしては、首に腕を回した。 まだ、と続けられた言葉にふにゃ、と 頬を緩めてじっと見つめたまま。] はい [と一言返事をして、舌を差し出した。 ちろ、と先端が交わった後、 ぬるりと滑って絡まった。 だらしなく開いたままの唇から、 つつ、と唾液が垂れるのがわかった。] (86) 2021/07/17(Sat) 1:07:54 |
【人】 トトそのあと、私は両親と出会い。 そのあと、私は両親と別れた。 「 ごめんね、そんなに余裕ないのよ。 」 突然増えた家族、兄妹。 立場を弁えていたつもりだったから、 何も望んでいなかった。 望んでいないつもりだったのに ──── ズレは続いていく。軋んで、歪んで。 腫れ物に触るように同じ空気だけ吸っても、 微妙な距離は縮まることはなくて。 (88) 2021/07/17(Sat) 13:37:22 |
【人】 トト私には家族なんていなかった。 血の繋がりも、過ごした時間も、 両方揃っていたらどうだったかとか、 考えるのも無駄なのでやめることにした。 両親は私を通して別の誰かを見ていた。 私のことを名前で呼ぶことは一度もなかった。 貴方がどれだけ愛されていたのか、 報せることもできないの。 (89) 2021/07/17(Sat) 13:37:45 |
【人】 トト家を出る決意をしたのはすぐだった。 元々、そうするつもりだった。 少しだけ、何かを期待して一緒に過ごしただけ オモチャの線路を走った私は、 脱線してから回る車輪を眺めて、 途中下車を決めた。 唯一の私のもの、一瞬の重なりの記憶を持つ 質の良いリボンを髪に結んで。 (91) 2021/07/17(Sat) 13:38:51 |
【人】 トトそんな日をどれだけ過ごしただろう。 全てと引き換えに自由を手に入れて、 質素で、だけど穏やかな日々を送ったわ。 独りには最初から慣れていたもの。 木々を揺らす風が波打って 長く伸びた柔らかな髪をさぁっと通り抜けた。 風が私のリボンを攫ったから、 頬へと引っ付いた解けた髪をかきあげて 空を仰いだ。 (93) 2021/07/17(Sat) 13:39:09 |
【人】 トト「 あっ ─── 」 リボンを掴もうとしていた手が宙を舞って 収まった先を見つめて、口を噤んだ。 終わった物語。 誰にもなれない私たちの線はきっと、 もう一度 ──── 上がった口角を見つめて、同じ顔で答える。 (95) 2021/07/17(Sat) 13:39:40 |
【人】 木峰 海斗― それから ― [ ホテルで起きた、夢みたいな、奇跡みたい出来事から また少しの月日が経った 俺と兄貴の関係は、かなり変わったと思うけど、 俺は相変わらず、素直ではないし、可愛くもないし メッセージへの返信も大抵既読スルー まぁ、10回に1回とか、5回に1回とか、3回に1回は 返事をしていることもあるから、少しは変わったけど 外に一緒に出掛けても、兄を邪険に扱う弟のまま 両親の前では、変わらない兄弟関係を取り繕っていた さすがに両親に気付かれるのは、まずいしな それから、大きく変わったこと――] (96) 2021/07/17(Sat) 13:52:53 |
【人】 木峰 海斗なぁ、兄貴…… [ たまに、言いかける 結婚くらい、してもいい。とか 孫を、見せてやれよ。とか でも、その度に、 その言葉は、唾液と共に飲み込まれる それは、兄貴も、兄貴の相手も傷つけることだし ]何より、俺が一番―― 嫌だったから、 (97) 2021/07/17(Sat) 13:53:07 |
【人】 木峰 海斗[ だから、言いかけて止める いつか、兄貴から終わりを告げられるまでは、 幸せな夢を見ていようと、笑うんだ ―――― 相変わらずの傲慢さで*] (98) 2021/07/17(Sat) 13:53:11 |
【人】 ぶろーくんはーと 真白 千由里[「幸せ」と聞いて、噛みしめる。 そうしてタイガさんの聞かせてくれた本心も。] ……そっか。 [彼がくれると言ったのは「一番」。 だけどちゆが欲しいと願うのは、求めてしまうのは 彼の手、言葉、愛情、時間――… 彼の隣で笑うこと。彼の側にいること。 タイガさんの人生の、唯一の大切でいたいって どうしようもない自分勝手だ。 「パパ」の顔したタイガさんの隣で笑えるのかな。 辛いときだけなんて、ちゆは、足りないよ。] (99) 2021/07/17(Sat) 18:14:37 |
【人】 宇佐美 有栖一夜限りの約束。 果たし、途切れてしまった縁の糸は。 ひとひらのリボンを結ぶように、 キュッ絡み合い、繋がって。 あの「はじめまして」から。 幾度となく、世界は朝と夜を繰り返した。 (100) 2021/07/17(Sat) 18:34:31 |
【人】 宇佐美 有栖夜のしじまも、明ける朝靄も共に生きたいと。 願う俺の顔は、情けないことに若干強張っていた。 心を張り詰めて、僅かに震える手には、 ひとつのリングが輝いてる。 それは、沈む夜と昇る朝を必死に駆け抜けて。 時刻は刻む針が、真上を向いて重なる時。 日付は ……… (101) 2021/07/17(Sat) 18:36:48 |
【人】 木峰 夏生── 翌朝 ─── [ 背中で寝返りを打つ気配に、瞼を上げた。 ぎしぎしと軋む身体を動かして、 後ろからそっと抱きしめる。 ] ……おはよ。 [ 明るい日が差しているのに、どこか気怠げで 寂しげな室内。 子供のころのように、丸く体を擦り寄せる海斗は すっかり牙を仕舞って猫のよう。 ] まだ、時間あるから、 ……寝な。 [ 背を、髪を、優しく撫でた。 醒めなくていいなんて、言えなかった。 ] (103) 2021/07/17(Sat) 22:02:24 |
【人】 木峰 夏生[ この恋心を自覚した時から、所謂 普通の幸せとは縁遠いことになるとわかっていた。 両親のことを思えばそれなりに胸が詰まるけれど。 それ以上に、まだ二十歳そこそこの 海斗の未来を奪うことの意味を 考えずにはいられない。 いつだって、ただしいことは、めにはみえない。 だから、言葉を、温もりを、 俺は縋るように求めてしまうのだと思う。 ] (104) 2021/07/17(Sat) 22:03:16 |
【人】 木峰 夏生[ はらへった、と言う海斗にぶは、と笑って、 ] マジかよ…… 俺は無理だ……食えねーわ。 [と頭を大袈裟に抱えながら、可愛らしい おねだりに応えようか。 昨夜のダメージなどどこ吹く風か、 次々胃に消えていく食べ物に笑って、 幸せを感じるくらい、 今は許されてもいいよな。 ] (105) 2021/07/17(Sat) 22:04:13 |
【人】 木峰 夏生── それから ── [ 海斗はどうだかわからないが、俺はあの日から ずいぶん変わったと思う。 夜遊びは封印したし、帰りは早くなったし。 ちゅー♡と唇を突き出すうさぎのスタンプの 登場頻度は増えたし、 たまーに返信が返ってくることがあったり。 ] (106) 2021/07/17(Sat) 22:04:59 |
【人】 木峰 夏生なに、海斗、 おれのことがすきだって? [ 多分、お前の言いたいことはわかってる。 俺ら、きょーだいだから。 だから、俺はその唇を塞ぐ。 ダメな兄貴だって、笑って、 いつか、お前が、 俺を嫌いになってくれる日が来ればいい、なんて こころの片隅で願ってるってバレたら、 きっと俺は殺されるんだろうな。 ]** (107) 2021/07/17(Sat) 22:08:28 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉[次に目が覚めたのは、あなたの腕の中 だっただろうか。 少しスッキリした体だけれど、 どうしようもないほどだるくて。 重い瞼をゆっくり上げて、首をかしげた。] ん ……はじめさ、…ん、 ……わたし、 また…… [そう尋ねて眉尻を下げれば、 そのまま彼に抱きついた。] ………強く、抱きしめて、ください [そうお願いをして、胸板に頬を擦り寄せる。] (108) 2021/07/17(Sat) 22:38:14 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉……おなか、すいたけど、 くっついてたくて、それに、ねむくて ……抱きしめて朝まで、眠って? [終わりが見えるまではどうか、 わたしの未来からは目を逸らして。 わからないの。どうしてこんな気持ちに なってしまうのか。お父様は正しいはずなのに。 だからね、もう少し、目を背けさせて。] ───……… [決まりきった結論を享受する前に もうすこしだけ、この気持ちを。]* (109) 2021/07/17(Sat) 22:38:30 |
【人】 がーるふれんど 真白 千由里[――出会いは突然だった。 それが偶然か運命かは知らないけれど、 恋に落ちるには一瞬で、愛してしまえば消せはしなくて。 「お嫁さん」じゃない、「彼女」と呼んでいいのかどうか 一つだけ確かなのは「恋人」とかいう肩書きだったか、 そんな曖昧なものを背負って彼に会い続けた。 彼の家を訪れることは滅多になかった。 あの夜に宣言してしまった通り、 彼と血を分かつ小さな少女が受け入れ難かったから。 でも、それでもね 何度か遭遇する機会はあったかもしれない。 そんな折に彼はあたしをなんと呼んだか、 何でも良かった。幼い少女に物心が付く頃は 少しは大人になれていたと思うから。] (110) 2021/07/17(Sat) 22:53:38 |
【人】 がーるふれんど 真白 千由里[「ちゆりおばさん」なんて迷わず口にしたものだから 名前を覚えられた最初にはむっとしてしまったけれど 無垢で無邪気な子どもは躊躇いもなく笑う。 彼によく似た目元で、彼と同じ笑い方で。 あたしの胸の内なんて知らずに、笑ってみせるものだから。 お菓子を買った。女の子向けの玩具を買った。 タイガさんが悩んでいたのなら、 七五三や卒園式の衣装選びに付いていった。 「ママ」という呼び名だけは否定して 彼女が好きかと聞かれたら―― 「わからない」、と答えただろうけど いつかの感覚すら麻痺してしまったのか。 彼女の成長の様を見守るのはいつしか ]彼女が自立したその先への期待ばかりでもなくて。 (111) 2021/07/17(Sat) 22:55:57 |
【人】 がーるふれんど 真白 千由里[「普通の恋」がしたいと言った。 彼と過ごしたその時が普通だったかどうかは知らない。 ただ、ただあたしは彼を愛していて タイガさんの隣に居られることが幸せだった。 けれど一つだけ未練があるとすれば 空っぽの左手が目につく時がある。 形ばかりでもそこに証が欲しいと願うのは 困った欲張りさんになるかしら。 でも――――、] (112) 2021/07/17(Sat) 22:57:01 |
【人】 木峰 夏生*** ─── いつかのはなし ─── [ 相変わらず仲の良い両親は不在。 件の先輩に頼まれた仕事をやりかけて、 リビングのソファでタブレットを操作していた。 空気に混ざる匂いにはすぐ気付く。 バレないようににやりと唇を歪ませていれば、 視界を遮るのは愛しい弟。 俺の腿に跨って、首に回されて絡める腕に、 かたんと音を立てて仕事を強制終了する。 ] ……いくら親がいないからって、 リビングのソファで盛るのはお兄ちゃん ちょっと、 背徳感でぞくぞくしちゃうんだけど。 [ 耳を食んでくる唇の温もりにぞくりとしながら くすくす笑ってするりと衣服の下へ手を滑らせる。] (113) 2021/07/17(Sat) 23:25:05 |
【人】 木峰 夏生[ いつもの合図が鼓膜を揺する。 ] 家族の共有スペースで、 いつからこんな淫乱になったの 俺のかわいい弟は。 [ その時は、気ままな王子様は どのようなご気分でいらしたのか。 多少態度のデカくなった忠実なしもべは、 耳朶を食んで返し、硬い歯を当てて、 背の窪みに爪を立てて下半身へ滑らせて。 ] ─── 抱いてくれんの? なら、さ…… (114) 2021/07/17(Sat) 23:26:15 |
【人】 木峰 夏生結腸、掘らしてやろーか。 [ くるりと体を入れ替えて、海斗の上に俺が跨って。 あの高級なホテルで踏みとどまった、 腸の行き止まりのその奥を、海斗に抉らせる そんなことも、あった。 ……ひとつ経験談として言うならば、 少なくとも布製のソファの上でやるもんじゃない。 ソファが新しい革張りのものにかわっていて、 何も知らずに帰宅した両親が喜んだ話は、 そうだな、またいずれ。 ]** (115) 2021/07/17(Sat) 23:27:37 |
【人】 星条 一 → スタンリー[目覚めた珠莉を男は優しく抱きしめた] 風呂から上がったら、ベッドへ行こう。 メインは使えないだろうからサブの方な。 [努めて柔らかくそう伝えるとシャワーを止めた。 繋がりを離して浴室に入ったのと同じように横抱きに抱き上げる。 脱衣所でタオルで拭いて、着替えるのも面倒だし今日はこのままで――。 そこで男は思考を一度切るために首を横に振った] 珠莉――。 [眠たそうにしている君を抱きしめて――] (116) 2021/07/17(Sat) 23:41:16 |
【人】 東堂 唯織リボンが結んだ線と線 誰にも内緒で固く、強く結んで、 もう二度と解けて飛んでいかないように、 願いながら季節は巡っていったの。 (117) 2021/07/17(Sat) 23:53:47 |
【人】 東堂 唯織あの日、言うことのなかった 「おやすみ」と「おはよう」。 たった四文字を口にできることが こんなにも満たされることなのって、 私は今まで知らなかった。 (118) 2021/07/17(Sat) 23:53:53 |
【人】 東堂 唯織 The Lapis 全ては、あの場所 から始まった。 貴方と出会い、貴方と過ごす日々が、 私にとっての人生だって。 過言に聞こえるかもしれないけれど、 全然過言じゃないの。 そしてこれから2人を繋ぐのは、 リボンではなくて、新しい約束のリング。 いいえ、心はきっと、 もっと前からずっとずっと、繋がっていたのだけど、 (119) 2021/07/17(Sat) 23:55:41 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉[きっとわたしの瞳は揺れていた。 知らぬ初恋が胸をときめかせる感覚に、 とく、とく、と心臓の音がする。 何も知らない生娘だから? 始めてくれた男性だから? ええ、そうかもしれない。 ただ、この熱を話すことが寂しいと思うのは きっとそう、間違いなく、わたしの意思で。 乱された心に、うまく返事ができないまま、 わたしはその胸に顔を埋めて眠ったのだ。] (120) 2021/07/17(Sat) 23:58:06 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉[ねえ、先生。 何もかも、不自由なく暮らしてきたわたしなのに、 どうしていまこんなにも こんなにも、不自由を、─── この身のままならなさを呪っているのだろう。 ───答えは出せない。わたしには。 まだ、なにも、わからない、触れられない、 ただ、芽生えたこの気持ちだけは、 わたしにとって大切なものだから ───だから。] (121) 2021/07/17(Sat) 23:58:20 |
【人】 大学生 廣岡 珠莉[わたしはなにも返事ができないまま きっとあなたに笑顔で別れを告げるでしょう。 でもね、忘れてないの。だからきっと───] 星条先生 [大学で会ったら、そう声をかけて。] ………はじめさん [そう、耳打ちをして。] ……… [もう少し、まって。 もうすこしだけ、誰かのものにはならないで。 わたし─── わたしね] (122) 2021/07/17(Sat) 23:58:50 |
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