元々、この恋は成就するなんて思ってなかった。
良い友人。ふざけ合い楽しみあえる仲間。それだけ。
それだけで終わると思っていたから。
　
　
　
だから。
叶わないものが叶ったことで箍が外れて。
お前をいつでも何度もつながりたいって思うくらい。
　
　
予想できるよな？　な、育夢♡
　

　
ー合宿直後ー
　
それでも、合宿中は後輩たちがいたから。
寝室では何度も。トイレの中でもこっそり。
それでも近くにいると足りなくなって困る。
沢山触れたい。キスしたい。気持ち良くして、繋がっていたくて。
でもさ、無意識に煽られると言うか？
多分、煽ってるつもりはないんだろうな〜。
素なんだろうな〜って、これでも付き合いだけなら三年目。
そうなんだろうなって理解はするけど、俺は健康的で多分人より性欲の強い男なわけですよ。
あんまり煽られると、さあ。
それに、その数年。悶々としていたわけだ。
多分ハグはノンケで、男に好きって言われても喜ばないんじゃね？　って。
だから我慢してきた分。今更の我慢はノーサンキュー。
なのにコイツったらさあ、可愛いわけで。やたら可愛く煽るわけで？
　

　
「いや〜、新品のオモチャ売ってるんだなって。
　まあ、イチャイチャしようぜ？
　ここには俺と育夢の二人きりだし。」
　
　
何を気兼ねすることがある？
ついでに言えば、そんなに緊張することもない。
にんまり笑いながら、靴を脱いで俺もベッドの上。
やたらと広いベッドの隅に転がるは、如何わしいかつド派手なピンクや紫のオモチャ色々。
けど先ずは、チュッ、と軽くキスをして。
　

　
「シャワー浴びる？　プールもあるし楽しそうだけどさ。
　先ずは俺、育夢に思う存分触りたいな♡」
　
　
育夢の手を取り、指先にキスをする。
手の甲にも。手のひらにも。
舌先を添えて、指の股から指先に向けてチロチロ舐めて。
　
少しずつ。でも確実に。
育夢の全部を俺のものに。**
　

…そう。俺は、ハグと結ばれるつもりは無かったんだ。
　
　
男同士って。そりゃ、世の中にはBLとかが流行ってるのもあり、昔から男色とかの文化はあったけど。
それでも、どうしたって生物の基本は男女ペア。
同性同士のカップルはマイノリティーになってしまう。
俺はそう言うのが身近だったし、受け入れてきたけど。
そうじゃない奴の方が多数派で。
ましてやそれが自分の身に降り掛かったら拒絶感を示されても仕方がないかもしれない。
だから、言えなかった。
軽い雰囲気で、さらっと流せるようにしか最初は言えなくて。
そもそも、それだって言うつもりは無かったんだ。
　

　
ハグは、配信でいろんなやつに顔を知られてて。
ハグに対する恋愛相談に、自分も覚えがあるなんて、片想いしていますって感じで答えててさ。
ましてや誰だかわからない相手に胸を貸す、なんて言えてしまうんだ。
それはきっと、自分がマジョリティだって思ってるからだろうと、俺はそう感じてた。
　
　
少数派ではないからこその自信。
多数派であるからこそ自分を魅せることが出来て。
ハグと一緒にいるのはとても楽しくてさ。
あ、可愛い。そう思って、いやいや、あいつノンケだろ？って、見ないようにしてきた気持ち。
でもさ。
あいつがどんなやつに片想いしてるのか。
そんなことを思って、なんとなくモヤモヤしたりして。
　

…いつだったかな。
俺がさ、女子に告白されて。
本気の相手になれないから。その時にはもうハグの事が好きだったから。
その気持ちを無視できないくらいになってたから。
ごめんなって断って。
その後、それを見られてたらしくて。
可愛い子だったのにって言われて、苦笑いになるよな。
俺なんて恋人ほしくてもできないのにって言われて。思わず。
　

　
　

　
　

　
　
そう言った時も、俺はきっと。
　
　
「あ、マジになった？」
　
　
なんてにんまり笑って、冗談にさせてしまうけど。
　
　
その裏っ側の本気の気持ちを知った時。
ハグが、遠ざかるのだけが嫌で。怖くて。
　
　
それよりクーポンあんだけどさ、なんてメシに誘って誤魔化すくらいしかできなかったかな。**
　

　
ある日のこと。
その日はたまたま俺は一人でさ。
暇だな〜、なんか無いかな〜、そういや今度のバイトは…なんて色々考えながら歩いてたわけ。
>>43そんな時だよ、育夢が女子と歩いてるのを見たのは。
実は、それが初めてじゃ無いんだよな。
その時見たのは(5)²ⁿ⁵回目くらい。
初めてだったら、そんな事もあるかな、だったけど。
どうして分かったって？
なんとなくさ、いつも視線で探してるから。
暇な時は、あいつは何してんだろうなって、もう重症。
視線で探して、探してるのを自覚して乾いた笑いが出て。だからより、誰かと一緒にいたくなって、その頃はセフレが今までの中でもかなり多くなってた時期。
だって、叶わない思いを抱えるのは辛いじゃん。
それを吐き出すのは、よりそれを自覚しそうで怖くて。
だから同じような寂しがりでお互いごまかしあってた、んだけど。
　

　
「へ〜…？」
　
　
遠目に見て。ちょっと、かなり、つまらない。
育夢とその子を何となく追って。
育夢と別れて暫くしてから軽くナンパしてみた。
可愛いね、今暇？　俺暇なんだけど、一緒にお茶でもどう？
こんな軽いナンパにひっかかるくらいなら。
俺の方があいつのこと、なんて。叶いもしないと思いながらも彼女を試す。
まあでも、…俺に本気になられても困るから。
それで俺の方に来たら、俺の友人の誰かを紹介してさ。
俺の方に来ないなら、また育夢と二人の時に間に入ってやろう。
　

　
だってまだ。うん、まださ。



　

　
「え〜、まあ俺は遊んでる方だけどさ。
　その分いろんな奴紹介もできるよ？」
　
　
>>49ニコニコしながら、ハグの俺評を聞いて。
ほんの少しそれに傷ついてる自分がいる。
そうそう、俺なんか好きになってもさ。
苦労するよ。俺が本気の相手でもきっと。
でも本気で好きな奴には尽くすんだけどな。
でも。
そんな事、ばらせない。
そんなん重いわ〜、って。男同士ってだけ以外でも嫌われたらキツい。
つきんと痛む胸を笑顔で無視して。
…うん。この子のこと気に入ってんのかな？　ハグがなんか不機嫌だ。
　

　
「まあ、暇な時は呼んでよ。これ俺の連絡先。
　
　で、ハグ。今度フリーホラーゲームが
　製品版でリメイクされるらしいんだけど一緒にやらね？
　結構エンディングが鬱って評判だし
　驚かし要素満載らしいぜ〜。」
　
　
でもハグの前だと。
その子を軽く誘っておきながらも本気では口説くに至らずに。
それでも誘いを忘れないのは、離れろよって気持ちもあって。
その癖、結局誘うのはいつも通りの友人の顔をしてハグだったりする。
　
　
…だってさ。流石に目の前だと。
引き剥がしておいてポイするイヤなやつとは流石に、なあ…。**
　

　
ハグのことを気に入ってたらしいあの女子についてはさておき。
　
　
「え？　んー、別に…？
　強いて言えば本気で暇だったから？
　一人でぼんやりしてるより誰かと茶〜飲んでた方が
　楽しいなって時あるだろ？　ない？」
　
　
>>53なんか探りを入れられたぽいので、こう答えておく。
つまりは気まぐれ。
…まさか。お前の横にいたから剥がしてやろうなんて、言えない。
ちょっと目を逸らしたの、バレてないと良いけど。
　
　
「ってウワー！　今のは初見殺し！
　あんなん調べたくなるじゃん！！！」
　
　
画面では主人公の女の子があるアイテムを拾い、その状態でステータス画面を開くと明らかにグラフィックがおかしく。
なんだ？　とアイテム欄を見ると「死ぬ」と説明があり、そして死んだ。
探索系ホラゲで拾っただけで死ぬとか鬼だこれ…！
　

　
「…ん、まあ。
　
　好みって、結構曖昧でさ？
　好きになったやつが好みのタイプ、かも…？」
　
　
なんて。
ゲームをやりつつロードしつつ。
そんなことをぽつり、付け足した。**
　

「どんなにアプローチしたくても、か…。
　でもさ。
　俺はその前段階で躓いてる奴多く見てるからさ。
　どうか、好いた相手が俺のことを嫌いませんように。
　拒絶しませんように、なんて思うけどな。
　
　ほら、相手の子がビアンだったりとか〜！」
　
　
そう言うこともきっとある。
好みの相手にあったとしても、性嗜好が噛み合わないだなんてこと。
だからより、臆病になって。
だけど、触れ合いたくて好かれたくて。
>>58俺の嗜好は受け入れてくれても、好いた好かれたの関係を向けられたらわからない。
ハグのこと、抱きしめたい。
キスしたい。抱きたい。そんな事まで受け止められるかってのは別問題。
だから言えないまま。
>>59そしてそんなことまで言うから。
　

　
「あ〜、オッケ。　ダブルデートでもする？」
　
　
ハグが友人って顔しかおれに求めてないから。
俺も友人って顔でハグに接することにする。
それが一番、誰も傷つかない。
だからハグの申し出ににんまりと笑って。
　
　
「はぐも、そんな子できたら教えろよ？
　浮気症ないかチェックしてやるから。」
　
　
…お前には幸せになって欲しいから、な。**
　

まあ、そんな事を話していたのも今は過去の話。
いやぁ…語ろうと思えばいろんな時のことを語れるけど。
なんやかんや、あのサークルの合宿の後でたくさんのカップルが出来ていた。
男ばかりのサークル内だけで。
つまりは、俺の色んな葛藤は杞憂に終わったわけだ。
そして今は…。
　
　
「ふふふふふ。
　黙って座ってりゃかなり良い線いってるだろ？」
　
　
そんなメンバーたち全員ではないけど、Mr.ミスコンに参加だか、サークルの出し物だかで女装していた。
清楚系黒髪ロング。化粧も薄目メイクを作って。
何せその道で悩み研鑽する方々から仕込まれた奴だ、除毛もしたし良いと思う。
まあ、そうでもしないとそこそこ背があってがっつり男性体型の俺はなかなか厳しいものがあるからな。
ふわっとスカートを捌きながら、育夢の方に向かう。
そんな育夢も似合ってるんだけどな。
それぞれ個性活かした格好できてて、でも特に育夢が可愛い。
個性を活かしてるよな。
　

　
「このまま女子デートしても良いけどな。
　…これは自分で考えた奴？」
　
　
なんて。
俺とは違って脚線美を見せつける形だったかな。
育夢の脚を見ながら、胸は〜？　なんて、両手でタッチ以上の触り方をしようとするのだった。**
　

　
まあ、トモちゃんには悪いことしたかなと言うか。
あの中でまさか、トモちゃんだけが独り身になるだなんて知らんかった件。
まあ、愚痴聞きくらいは付き合うよ。昔からの仲だもんな。
でも、逆に言えばそれしか出来ない。
前みたいな、誘われたり慰めて欲しいと頼まれたりして肌を重ねる事はできない。
それは、育夢だけの特別だから。
　
　
まあ、ムクタにはちょっと悪いことしたけどな！
でも、それがあってまたそっちも燃えたりしただろうからおあいこだな！
　

　
「喋ったら男なのは仕方がないだろ。男なんだし。
　MtFの子みたいに本気で女になるってんじゃないし、
　あくまで女装だからな。
　でもお前もくっそ似合ってるわ。
　けどハグの、結構タイトなドレスじゃね？
　それだと色々…なあ。」
　
　
別に臑毛が生えてたって普段は気にしないけどな。
一応ミスコンって名前がつく奴だから、綺麗に仕上げてある分育夢の素足はより魅惑的で。
情報元のうちに動画があるところは育夢らしい。
ちなみに俺のはふんわりしたドレス。これだとほら、男のシンボルがアレしても目立ち難いけど。
育夢のは…？　なんて考えながらも偽乳をもみもみもみ。
うん、偽物だけあっていつもと反応違うわ。
それでも、下から掬い上げてまるで先端をこねるようにくにくにするから、周りに人がいたら二度見三度見されたかもな。
　

　
「偽乳でも触られたら恥ずかしいもん…？
　てか、これはホントにブラしてる奴？
　うーん、俺はそこまではしてなかったからな〜。
　むしろ…いやなんでも。」
　
　
面倒になってノーパンにしました、までは流石に言わないけど。
>>68それにしてもギリギリまで見せてたな。下着はどうしてんだろ？　ブラをしてるかもってことは…なんて首を捻りつつ。
ざわざわ騒がしい文化祭。
その最中、あたりをチラッと見て。
みんなの注目が散ってるその瞬間。
　
　
「スキアリ♡」
　
　
少し背をかがめて、ちゅっとキスをした。
もちろん、お互い口紅を塗ったその唇に。
細い腰を抱き寄せて、普段とは装いの違う育夢に。
　

　
…うん、この格好も新鮮かも。
側から見たら倒錯的なんかもしれんけど。
　
　
「女装して歩いてみた動画とかやる？
　それともほんと…このままデート、とか？」
　
　
ちなみに、ミスコンでの俺の点数は85点だったそうだ。
それが低いか高いかはさておき。**
　

>>76さすが俺の育夢。みんなに可愛さがわかってしまったようだな！
まあ俺だって負けてなかったけど、どうしたって背が高いし体型もよりがっちりしてるからなあ。
なんでって？
あんな体位やこんな体位してるからかもしれませんね！！
　
　
「ブラまではしなかったんだよなあ…。
　せめてキャミソールくらいしておけば良かったか。
　カップ付きのやつ。
　ヌーブラとかも考えたんだけどさ〜。」
　
　
下着までこだわると言うなら。
そこまでするのも考えたけれど、一先ずガワだけ女の子にしてみたのだった。
胸を作るとどうしても違和感があった、というのもある。
育夢についてるのならそれはそれで愛でられるのにな、と相変わらず胸を揉みつつ。
　

　
「良いじゃん、恋人同士なんだぜ、俺たち。
　そんじゃこのままデートすっか〜。」
　
　
するっと、育夢の胸から離れた手。
その手を繋いで、指先を絡め合わせて。
　

　
ぽそ、耳元に囁きかけて。
ほんのり染まった頬は、メイクした後でも分かるもんなんだろうか。
雑踏の中を歩きながら、清楚系女装にしてはにんまりとした、俺の笑い方で笑って。
　
近づいてきたナンパ二人組を、しっしっと追い払って。
手を繋ぐだけじゃ効果薄いと思い、腕を絡めて。
　
　
「どっか何か食べに行く？
　って、この格好のまんまだと迂闊にトイレも行き難いな。
　育夢一人でナンパされても大丈夫…？」
　
　
なんて。
二人組でイチャイチャしてても、女の子と見れば何度もナンパされるのか…と、女子の苦労を見にしみて感じたりなどしていた。**
　

　
>>82別に普段から、こうして腕に抱きついてくれて良いんだけどな。
まあ、男だとアレだ。男のプライドもがあるのかもしれない。男同士付き合ってますよ〜、と、育夢はあんまりオープンにしすぎないきらいはある気がする。
お前がオープンにし過ぎなんだよ、とは言われそうだけどな。
だって別に恥ずかしがることじゃねーじゃん？
好きなら。好き同士なら。
でも。だからか、こうして恋人同士ですよアピールよろしく、抱きつかれるのは新鮮だ。
新鮮だから勃った。
　

　
「まあ、ちょっと申し訳ないけどトイレは
　多目的の所使わせてもらうかあ。
　この間みたいに二人で長々使ってなければセーフだろ。
　
　んだな。何か美味そうなもん…おっ。」
　
　
見つけたのは埼玉のB級グルメ、ゼリーフライ。
あれなら程よく小腹は満たせそう。
女子らしくない？
女子らしさを求めるならクレープ買うのもアリだけどな。
むしろ両方買っても構わないけど。
　
　
そんなこんなで、適当に買って、適当な箱に戦利品を入れて。
向かったのはB級グルメ研究会が部室として使ってる部屋。
誰かいるかな？と思ったけど、今は誰もいないみたいだ。
女装に挑戦した後だからか、部屋の片隅にメイク道具が押し退けられている。