「……」

何を零すこともなく、ただ静かに処刑場に向かう。

「……一番にやりたいやついるか？」

短く問いかける。誰もいないのならば自分が。

キューの近くまでは来たがそこで足を止めた。

「そういうことなら。……先に行けよ、サルガス」

皆がそれぞれ、キューを処刑していくのを眺めていた。
それぞれの処刑を眺めて、視界に入れて、記憶に刻み込むように、見ていて。

……キューの正面に膝をつく。手には小型のナイフを持っていた。
見上げる力もない少女に見せるつもりのない銀色を高く振り上げ。
肩口に強く深く突き刺した。

暫く深く押し込んで引き抜けば、吹き出した血に触れて。

けれど、言葉はない。

静かに数歩距離を置いて、最後の一人へ視線を投げる。

「――……」

背を向けて処刑室を出ていく。
次第に足音は早く、遠くなっていった。

「……」

片付けて以降、端末に視線を落としながら歩いている。
何かに躓いても、壁にぶつかりかけても、端末から顔を上げられない。

……参加者一覧を眺め、時折議論ログを確認する。
それだけのことをずっと続けている。

「…………」

ロビーに飲料を取りに来て、そこにいる面々の顔を見て。
襲撃報告が上がっていたサルガスや、あの処刑前に死亡していたと後ほど知ったシトゥラやいるのを見て。

「……おはよ」

とだけ短く挨拶をした。

>>+72 シトゥラ
「……いや、大丈夫。薬を貰うほどのものじゃないし」

はは、と少し明るく笑って手を振って。
飲料を手に取って背を向ける。

「おかえりシトゥラ。……お大事に」

>>+73 サルガス
あなたの様子を見てほんの少し眉を下げて微笑んで。

「ああ。……おかえり」

それ以上は言わずに背を向け、ロビーの端を陣取る。

いつの間にかキューのそばに移動していたバーナードの腹から特大の音が鳴る。

……パネトーネ^foodかバゲット^foodあたりを注文しようか。

小麦粉だらけだ。

特大ブーメランだ。ブーメランどころじゃないし勢いとしては迫撃砲に近い。

わかんなかった。