人狼物語 三日月国


184 【R-18G】ヴンダーカンマーの狂馨

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【人】 警備員 ジュード

 
 ── 深夜:水晶宮 ──

[水晶宮の前には、男の知っている者が多かった。
ロビー、アントン、ドリー……
皆、勤勉で素晴らしい職員だった。

だからこそ、すぐに違和感を察知して>>0:148
ここでずっと、腐臭の中に放置されていたのだろう。

水晶宮に入り込む風さえもを阻止しようと
割れた硝子の前で剣を振るう者も、
ひたすらに逃げ出した犬を
可愛がって撫でまわす者も。

段々と疲れが溜まり始めているようで
どうにも緩慢な動きをしている。


男も異常な行動をする彼等も心配ではあるものの、
優先すべきものは彼らではなかったから。

窓を守る警備員の横の
開け放たれた出入り口をこっそり通って、
植物の影に隠れたりしながら、水晶宮の奥、
バックヤードの方へと向かう。]
(0) 2022/11/14(Mon) 3:52:41

【人】 警備員 ジュード

 
[男がバックヤードの重たい扉を開くと、
瞬間、厭な獣臭と共に餌用の虫たちが飛び出した。
どうやら、檻を開け放った者もいるらしい。


そこらじゅうに這い回る虫が、
保護されているか弱い虫たちの住処を侵す。
爬虫類や齧歯類がそれを捕まえて食べる。
猫科がそれに飛びついて弄ぶ。

顔を顰めながらも廊下に入り込んだ男の傍では、
外の世界と変わらない秩序が保たれていた。


そうして食い尽くされる虫や獣が、
研究者たちの宝物である以外は。]
 
(1) 2022/11/14(Mon) 3:55:40

【人】 警備員 ジュード

[目的地の手前、ガラス越しに見える研究室も
気を失ってしまいそうな状態だった。


サンプルを解放しようとした者が居たのだろう。
倉庫に入っていたはずの試験管までもが
栓を抜いた状態で実験机に並べられている。

研究室の中には今、何の菌が放流され
互いを汚染しているのか……。


横目にその惨状をみた男も
まさか、と不安に駆られた。

あの中にもし『兄』が混じっていれば
汚染は免れないだろう。


恐怖を纏う足取りは、粘る水音を伴い
少し、早足に。]
(2) 2022/11/14(Mon) 3:58:36

【人】 警備員 ジュード

 
[……だが、男の心配は
現実にはなっていなかった。


『それ』は菌でも薬物でもない『遺骸』だから、
彼らには魅力的ではなかったのか。

沢山のラベルを貼られた掌大の密閉瓶は、
他の液浸標本たちと共に難を逃れていた。


男はそれに急いで近付くと、確認の為に
ラベルの文字に目を通す。

男も昔はその古代文字を読めなかった。
けれど翻訳家だった兄の部屋には、
運悪く辞典がまとめられていたから。
男も、それを読めるようになってしまっていた。
]
 
(3) 2022/11/14(Mon) 3:59:02

【人】 警備員 ジュード

 
...[Laboratório N.º 13: Resíduos de experiências de tratamento antipoisoning]

【13番研究所:防毒処理実験における廃棄物】

Nome de código: Anónimo.

分類名: Anonim

Comprimento: aprox. 180 cm (não incluindo cauda)

全長: 約180cm(尾を含まない)

Peso: 約70kg-300g

体重: 約70kg〜300g

Espécie: Salamandra

種族: サラマンドラ族

Habitat: Garaika

生息地: ガライカ

Designação de material perigoso: Nenhum...

危険物指定: なし

 
(4) 2022/11/14(Mon) 4:07:33

【人】 警備員 ジュード

 

 よ、よかったぁ……

 
[……並ぶ文面は見慣れていたものに違わず。
男は安心して息を吐く。

これが無事なら、ひとまずは安心できる。
かれらの罪状を訴える術も無くならないし
昔の平穏も、忘れないでいられる気がした。


男はそれを慎重に両手でもつと
倉庫の隅、棚の影へと座り込む。

既にめぼしいものを持ち出された倉庫は
人もおらず、窓もなく。
思いのほか、男の求める安心に
近いものであった。]
(5) 2022/11/14(Mon) 4:08:12

【人】 警備員 ジュード

[そうして、手の中に入っている小瓶
ぽつぽつと語り始める口調は、
島の者は聞いた事のないものだったかもしれない。]


 ねえ、外の様子がおかしいんだ
 なにかがおかしいんだけど
 もう、でていくのもこわくて
 友達も、いなくなってしまって

 ……いつになったらここを出られるだろう?


[── 一体いつになったら、
      怯えずに暮らすこの島に馴染む事が叶うんだろう? ──


……男を覆う粘液も元は体液である。
涙や鼻水、涎、汗、もしかしたら
少しの胃液とか血とかの
汚物も混じっているかもしれない。

それらを垂れ流して居れば、
脱水を起こすのも自然なこと。

微睡に飲まれかけている男は、
何者かが倉庫に入ってきても
すぐには逃げられないだろう。**]
(6) 2022/11/14(Mon) 4:09:06

【人】 警備員 ジュード

[── かつて、ガライカにはある兄弟が住んでいた。

兄は毒が強く、長く部屋を出る事もままならなかったが、
その中でも、家で行える書籍の翻訳の仕事をしていた。
弟も、その仕事を手伝い暮らしていた。

彼らはそれなりに幸せであった。
隣国からの手紙が、村の長へと届くまでは。


ラング機関に関する記述と
『あなた方の自由のため』、機関を利用した
防毒魔術の開発を計画している。
その協力者を募りたい。と書かれた手紙。


送られた内容は、民に隣国への疑念と
外の世界への希望を抱かせた。]
(42) 2022/11/16(Wed) 18:12:47

【人】 警備員 ジュード

[相談の末、特に強い毒を持つ者を制御できるなら
他の者の毒も制御する事は容易であろう、と
村の人々は、
厄介者であった
兄を送り込む事にした。

兄も迷惑ばかりでなく『やくにたつ』事を願っていたから
均一は、傍目には取れていたのかもしれない。


そうして連れて行かれた兄は
帰ってもこなければ、便りをくれる事さえなく。

交易に訪れる隣国の民も、最近は外では戦が激しいのだと
ぱったりと来る事をやめてしまっていた。


……兄が隣国へ行ってから何年が経った頃だろうか。
弟の元へ、隣国からの小包が送られてきたのは。]
(43) 2022/11/16(Wed) 18:13:20

【人】 警備員 ジュード

[長を通さず商人によって渡されたその中には
一通の手紙と小瓶が入っており、
手紙には以下のような文が書かれていた。


『お兄さんは今でも役に立っている。
 おかげで出来た防毒魔術のテストの為、
 防毒魔術を纏い、”一時返却”するこの瓶を、
 指定の日の夜に我が国の港まで持ってきてほしい。』


確かに同封された書類には、魔術の使用方法が記されていた。

手紙や魔術は読み解ける文字であったのに、
瓶のラベルが古代文字で書かれていたのは
秘匿性の為か、この計画の為だったのか。

どちらにせよ、読み解かない方が幸せだったのだろうけど。
疑念を抱いた弟は、それを読み解いてしまった。


彼らの脅威の片鱗を、知ってしまった。]
(44) 2022/11/16(Wed) 18:14:42

【人】 警備員 ジュード

 

 ── は ?

 
(45) 2022/11/16(Wed) 18:15:14

【人】 警備員 ジュード

 
 ── 朝日の届かない場所で ──

[座り込んでから、どれだけが経った頃か。
頬に当たる冷たい感触に目を開けると、
目の前にはモップの先端があった。

既に床を撫ぜた後なのだろうか。
それは色々な汚物を混じらせたような
粘性を含む汚水を垂らしており、
毛束の隙間には虫の足や潰れた羽さえ紛れている。

ひどい匂いに男が身を引くと、
向こう側にはモップを持つ研究員の姿が見える。

彼の表情は、憤怒を孕んでいた。]
(46) 2022/11/16(Wed) 18:15:40

【人】 警備員 ジュード

 
 「……お前がやったのか?」


[非常に端的な問いかけを、男は理解する。
少し眠ったからか記憶ははっきりとしていた。]

男は逃げ惑う内に、様々なものを侵した。
それはこの水晶宮も例外では無い。

何もかもを崩壊させた後悔は縺れて、
質問に答えようと口を開くも
乾いた喉に声がひきつれる。]


 あ……そ です、 おれ
 たくさんに、ひ、ひどいこと してしまって
 すっ、すぐ かたづけ を、


[どうしよう、と微熱に苛まれる頭で考えるも、
状況を改善する方法も、事態をなかったことにする
奇跡の一手も思いつかない。

せめて、今すぐにできることをやろうと、
男は座り込んでいた身を起こしかける。

……その喉を、指叉のようにモップが抑え込んだ。]
(47) 2022/11/16(Wed) 18:16:40

【人】 警備員 ジュード

 
 「どういうことだ
  最初にちゃんと毒性の処理は
  できてるのか聞いたよな?
  お前、大丈夫だって言ってたじゃないか。

  薬を飲んでるから大丈夫だって、
  具合の悪い時には来ないからって
  約束したじゃないか。

  なんで来たんだよ
  なんでおれたちの研究室を汚してるんだよ
  
なんで あいつらみんな 死んでるんだよ!



[返答の間も無く、研究員は叫びながら
振り上げたそれで男を殴りつける。

汚水がそこら中に飛び散っても、
硬い固定具が男にぶつかっても
止まることはない。]
(48) 2022/11/16(Wed) 18:17:21

【人】 警備員 ジュード

[男はこの道すがらに
彼の飼育していた希少な小鳥を
侵してしまったのかもしれなかった。

彼と仲の良かった職員が倒れていたのに
躓いてしまったかもしれなかった。

それ以外だって、思い当たる罪はいくらでも。


武器はいつのまにか持ち手の方になっており、
怒号とともに一際高く振り上げられる硬い木の柄。
その下で、男は前かがみにうずくまる。


……男は、自分の命よりも
『宝物』を守ろうとしていた。

目的と主体の優先順位が反転する。
それは正気なのか、狂気なのか。
]
(49) 2022/11/16(Wed) 18:17:36

【人】 警備員 ジュード

 
     [……研究員だって、本心から
     男のせいだと思ってた訳じゃない。
     ただ、宝物を失ったことを受け入れられず、
     一時的に責める対象が欲しかっただけ。
     気が済んだら、やめるつもりだった。

     その思惑は、本人にしかわからなかったけど。]



[── めき、と。
薄く硬質なものが砕ける感覚が
研究員の手に伝わる。]


 「── ぁ、」


[目線の先、床に倒れ伏す”それ”は、
ぼろぼろだった。]
(50) 2022/11/16(Wed) 18:19:07

【人】 警備員 ジュード

[べたべたの身体には、落ち葉、ゴミ、泥、煤、
虫、血液、風に舞った銀の体毛、だれかの体液……
さまざまな狂騒の名残がはりついている。

尾の骨が幾つか砕けているのか、
先端に瘤のような腫れが生じている。

火傷でもしているのか、
服の所々には浸出液が染みを作っている。

細かな切り傷や打撲は数え切れないが
一つ、頭蓋を叩き割った傷からは
滾々と血が流れている。


そして、それぞれの傷には
汚らしい死肉と汚水と毒とが染み込んで、

ぐずぐずと、患部を爛れさせていた。


浅い呼吸をくりかえす"それ"は
うごかないし、おきあがらない。]
(51) 2022/11/16(Wed) 18:19:34

【人】 怪物 ジュード

 
 ── 天舞う鷹は何を知るか ──

[……狂気の収まる頃には誰ともなく、
“この惨状から日常に帰れる”と信じるため、
残骸の片付けを始めるのだろうか。

その中に混じる目撃者や研究員は、
町民や師団員にも散らばる粘液の危険性を説き、
多くの命を救うのだろう。


『甚大な被害を齎した”害獣”は
施設研究員の手によって無事回収され
外部の研究機関へと収容された。』

真実を知らない人たちの間では
そのような推測に話が落ち着くのかもしれない。


混乱の傍、他の怪我人に紛れるように
師団の船へと運び込まれたぼろぼろの青年が
"それ"であると、気付くものはいるだろうか。
]
(52) 2022/11/16(Wed) 18:20:49

【人】 怪物 ジュード

[研究員は図らずも、”怪物”を仕留めた英雄となった。


怪物を収容しきれなかった点に対しても、
事件時の状況が明らかになる程に

「改善点があるのは事実だが、
一個人を責められる話ではない」

という意見も増えていくのだろう。


何も知らない者が怪物の噂をする中で、
研究者も、いくらかの目撃者も、その真実を語らない。

真実を知らなければその証言は偏見になりうる。
未だ不安定な人々に疑心暗鬼を生ずるだけの話をして
罪人捜しを扇動した所で、何になるのだろう。]
(53) 2022/11/16(Wed) 18:22:40

【人】 怪物 ジュード

[……男は、怪物は、害獣は
自らの手で己が危険なものであることを証明した。
無害であることを証明するよりも、ずっと容易に。


重ねた努力の甲斐もなく、
そこにはなにも、なにも残らない。


鍋に煮込まれた娘のように、
形のない死者は多く居た。
男の不在を訝しむものは少ないだろう。

嘗ての住処も、炎の中で
僅かな私物ごと焼け落ちていた。

もしもあの時、別の選択をしていたら
そんな後悔も脳を零れ落ちて



回収され、元のように収蔵される
兄であったものと、

いずれ、教会で見つかるかもしれない彼と
”関わり”があった者は、一体誰なのか?

そんな謎の他は、なにも。*]
(54) 2022/11/16(Wed) 18:23:08
 




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