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【人】 宮々 蓮司高速を飛ばして、それから下道も飛ばす。 そうして短いようで長い道のりをやってきた。 山間には余り似合わない車を停めたのは、夕日が地平線にだいぶ近づいてからだった。 今日は はじめて の週末デート。エンジンを切って車を降りる。 もうあと数歩の距離がもどかしい。 ドアの前。 一度シャツのヨレを直して、それから三度ノックした。 (126) 2022/05/30(Mon) 20:38:41 |
【人】 宮々 蓮司今はもう頭にかかっていた靄はすっかりと晴れていた。 でも、それを瀬里に伝えてはいない。 今ここにいる自分はいったいどの蓮司≠ネのだろう。 瀬里に会う前? それとも恋人になってから? 記憶をなくして、もう一度瀬里に恋をした男? それとも──── どの蓮司¥o会っても構わないし、 それを決めるのは自分自身ではない気がした。 それは、これから目にする愛しい瀬里が決めればいい。* (127) 2022/05/30(Mon) 20:39:16 |
【人】 宮々 蓮司ドアが開いて俺の両目が瀬里の姿を映す。 それだけで鼓動が強くなっていく。 『 蓮司さん 』 瀬里の声。 俺は両手を開いて華奢な瀬里の身体を包む。 会いたかった。 この一週間はまるで何ヶ月にも感じられた。 お前を思い出してから、こうして会えるのが何よりも待ち遠しくて。 お前に会うたびに、お前に触れるたびに、恋をしているのかもしれない。 (131) 2022/05/30(Mon) 22:42:20 |
【人】 宮々 蓮司「 そうだな、まずは飯にしようか。 」 今日はどこがいいだろう。 和食?中華?イタリアン? 肉がいいだろうか、魚介にしようか。 きっとそれが何でも何処でもきっと楽しい時間になる。 「 ……今日は、泊まっていってもいいんだろ? 」 耳元に唇当てて、そっと囁いた。* (132) 2022/05/30(Mon) 22:42:44 |
【人】 宮々 蓮司それはとても不思議な感じだった。 記憶を取り戻した今でも恋心は無くしたままだった。 あのお見合いで雨宮瀬里を選び、兼光と灯歌によって結ばれた恋は治療と共にたしかに霧散してしまった。 だけど 今もたしかに 恋 をしている。記憶を取り戻したからこそ理解できる。 瀬里が目の前にいる、瀬里が隣にいる、瀬里に触れている、その一分一秒ごとにもっと好きになっている、夢中になっている。 俺は雨宮瀬里が大好きなんだ。 (141) 2022/05/31(Tue) 6:46:36 |
【人】 宮々 蓮司薄暗い部屋の中。 肌を寄せ合いながら、瀬里の言葉を聞いていた。 相変わらず蓮司さん≠ニ呼ぶ瀬里は、記憶が未だ戻らない。 なぜ二人にそんな違いが生じたのかはわからない。 瀬里にとって、思い出したくない何かがあったのだろうか。 相槌を打ちながら、時折返した言葉に瀬里は首を横に振った。 (142) 2022/05/31(Tue) 6:46:52 |
【人】 宮々 蓮司緩く抱きしめていた瀬里の身体が離れる。 それは、よく知っている赤いマニキュア。 二人を結びつけたきっかけ。 瀬里は知らないまま。 俺はよく覚えている。 「 つけてみたらどうだ? 」 何気なく口にする。 見覚えがあるとも、ないとも言わず。 それがきっかけで記憶が戻るかもしれない。 そう思ったわけじゃない。 記憶の中にある恋を失う前の瀬里がつけていたからでもない。 ただ単純に、瀬里にそれがよく似合うことを知っていたから。* (143) 2022/05/31(Tue) 6:48:01 |
【人】 宮々 蓮司『 これを? 』 俺は小さく頷く。 『 似合うかな 』 似合うに決まってる。 『 不思議ね 』 そう、たしかにあった。 俺はスマホを手に取るとライトをつけて瀬里の指を照らす。 そうして、瀬里がようやく目を覚ます。 (154) 2022/05/31(Tue) 9:37:48 |
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