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【人】 朽ち果てた日記 …………大嘘だ。 心から彼等の解放を願っていた そんなこと、鼻っから思っちゃいないのだ。 何れは国の収容所で惨い死を迎える者に安息などない。 張りぼての天国を与えたところで現実は変わらない。 緩やかに地獄へと自ら反抗することも無く堕ちてゆく。 ……だれの一人だってあの豚共に渡してなるものか。 黒い歴史に葬り去られる前に、私が 救 ってやるのだ。 (88) 2020/11/30(Mon) 1:35:55 |
【人】 “先生” リヴァイ[────「先生」と。 呼ばれることは4年近く経っても慣れないままだ。 診療所を経営する傍ら、回避できない敬称ではあるが、捨てた筈の想い出が痛い所を擽ってくる。 何れ彼等にすることを思えば、好いていたあの人の顔に生臭い泥を塗っているような心地さえしてくる。 彼等は歴戦を潜り抜けた兵士にしてはどこか頼りなく、 仲間を思い合う優しい心の持ち主で……酷く脆かった。 自身の現状に涙を流しながらも、元凶を恨めない。 それどころか更なる繁栄をしていることに喜びさえする。 自己犠牲を全てかたちに表したかのようなものだった。 それでも満月が夜空に浮かべばもがき苦しみ、欲しくも無い血肉を欲して正気との戦いに嫌でも身を投じることになる。 自分の現状を誰かのせいにすることもできず、自らを呪いながらも懸命に引きずり出された本能と立ち向かおうとする彼等は親友と瓜二つに見えた。 とても好きだった。守りたかった。救いたかった……この手で。] (89) 2020/11/30(Mon) 1:37:00 |
【人】 朽ち果てた日記だから、 殺 4年余りの年月を過ごし、信用が高まったあたりに。 特効薬ができたと言って桃色の瓶を彼等に手渡した。 「寝る前に飲むといい。ゆっくり眠れる筈だから。 もう君達は、苦しまなくて済むようになるさ……」 キャロル・マーガトライト 19歳 病種 兎 チノ・フォーサイス 15歳 病種 狼 スケープ・エインズワース 21歳 病種 山羊 テイル・クロフォード 20歳 病種 鼠 ビル・フランシス 18歳 病種 トカゲ ミネ・ウィルコックス 23歳 病種 猫 ─────その他■■■名、死亡確認。 登録された月光病患者全ての浄化を完了。 好ましい相手だからこそ、 自分の手で生を終えねば納得できなかった。 憎たらしい魔の手に落とされるなど許してはならなかった。 強力な睡眠薬を混ぜたのは本心からの慈悲だ。 苦しまず、何も知らず、穏やかに逝けばいいと、そう願った。 (90) 2020/11/30(Mon) 1:37:53 |
【人】 浄化者 リヴァイ『やめるんだ先生──いや、リヴァイ。 君はしてはならないことをしようとしている! こんなのビビだって望んじゃいない筈だ、 今なら間に合う!その手を下ろして、俺と───……』 「ジズ…… 君はビビと同じくらいにどうしようもなく善人だが、 私の正義だけは理解してはくれないんだな。 ……残念だ。同じ結果を生み出してしまうことが。」 『────…………ッッ 、!? まさか、彼奴は行方不明だって──── その目の傷跡だってそうだ、まさか、 君は、最初から俺たちのことを……!?』 [長期に渡る文通により、この病の研究報告を聞いていた彼ならば、こんなにも簡単に特効薬が完成することが不可能であることくらいわかっていた筈だ。 偽の薬の正体に気づいた時のために、彼の点滴に筋弛緩剤を混ぜていたのが功を成したらしい。 徐々に力が抜けて寝台に身を沈めていく彼の、その開きかけた唇の隙間から飲むことの無かった桃色の薬品を流し込む。 そのかんばせに、悲哀も憎悪も浮かぶことはない。無感動なアイスブルーが、欠けた月明かりに反射して鈍く輝いているだけだった。] (91) 2020/11/30(Mon) 1:38:26 |
【人】 浄化者 リヴァイ[眼帯を剥ぎ取っていた盲目の右目に、もう一本。 永遠に消えることの無い深い切り傷が刻み込まれる。 ────親友と全く同じ抵抗をした彼がか細い声で最期に零した言葉だけが、どんな刃よりもこの胸に突き 刺 さる。] 『……リヴァイ、君の言う事は聞けない。 他国を滅ぼす戦争は国が願い、人々が起こすものだが 故郷の国を滅ぼすなんて化け物のする所業だ。 君はきっとどこへも行けない大罪人になる。 ビビも、俺も、 君を決して許しはしない ───……!』[抱いたのは、安堵と失望。 安堵したのは彼が命欲しさに計画に乗ったりしない正義の徒であったから。 失望したのは彼が自分のことを欠片も理解してはくれなかったから。 一度私の誘いに乗る振りをすれば良かった。隙をついていつの日か自分に反旗を翻してくれて構わなかった。 彼ならこの心に燃える決心を受け入れてくれる筈だと、どこかで期待してさえいた……] (92) 2020/11/30(Mon) 1:38:50 |
【人】 浄化者 リヴァイ私のことなど幾らでも恨んでくれて構わない。 私は君達を踏み台にしてあの王城へと乗り上げる。 その憎悪も怨念も、全て背負ってこの国に鉄槌を下そう。 君達をここまで追い詰めた奴らに仇を討ってやろう。 君達の代わりに彼奴らに神罰と終焉を味わわせてやる。 (93) 2020/11/30(Mon) 1:38:57 |
【人】 浄化者 リヴァイ─────……なんてな。 君達はそんなこと、望んでなんかいなかったんだった。 法螺を吹いた。私がやると決めたからやるだけだ。 お前達が擦り切れるまで守ったこの国の最期、 遠い空の上で眺めているといいさ。 [掌を添えた頬は、既に冷たくなっていた。 眠るように安らかな表情からは、苦痛の欠片も感じられない。 静かに病室を出て、政府に電報を打つために廊下を歩く。 ひゅう、と窓から吹き込んだ風がやけに冷たくて自らを抱きしめた。 かじかんだ指先が痛くなろうと、温めるための温度はもう、この場所には存在しない。] (94) 2020/11/30(Mon) 1:39:04 |
【人】 浄化者 リヴァイ[……もう少女とは呼べなくなった体を突き動かすのは、幼き頃から燃やし続けたどこか激しい庇護欲だった。>>26 新しいことを知る度に、知りたくなかったことが増えていく。 未知を切り開く度に、汚いものが見えてしまう。 いつからひとこそが化け物なのだと思うようになっただろう。 いつから醜い世界で息苦しく喘いで生きる者を 救ってやれないものかと思うようになっただろう。 そこに彼のような■■は存在していなかった。 女の世界に親友の影がある限り、湧き出てくるのは常に聖母の如き慈愛のみ。相手自身を見ているようで、どこか遠くの存在を見つめているような───過去への恋慕が抑えられない。] (95) 2020/11/30(Mon) 1:39:29 |
【人】 浄化者 リヴァイ[小瓶を預けた理由は、決意と願いの混じりあい。 武器で斬り捨てられれば救うことさえままならない。 叶うことがないのだとしても、ひとひらの思いが届いていればそれできっと良かった筈だった。 何時の折だったろうか。まだ「先生」だった頃、診療所の窓を叩く一羽の鴉を迎え入れた時、別れ際に届いた叫びを思い出したのはきっと必然。>>0:185 権力に唾を吐く程に興味が無ければ他国の諸侯の事等教えられても直ぐ忘れる。比喩的な文面に眉を顰めながらため息をついたのは、文通相手の無事が確認できたからだろうか。 大した言葉も浮かばぬ石頭、返信のための道具も付いていないのを言い訳に、既読代わりの如く使っていた髪紐を一本、その足に結び付けた。] (内容に理解が及ばなかろうと、 彼の行く先が血濡れていることだけは理解が出来る。 ならばせめて、休息の時だけでも楽な夢が見れればいい。 ────……言葉にできない感情を、ちっぽけものに託して。) (96) 2020/11/30(Mon) 1:39:42 |
【人】 朽ち果てた日記 少女の卒業から五年が経とうとした頃合い。 未だに根強い独裁戦争国家の新聞記事の一面は、 異様な重大ニュースで世間を騒がせた。 月光病感染者 ついに消滅す 若き研究者が患者を毒 殺 栄誉を賜るか紙面を飾るのは眼帯を着た白衣の女と王のツーショット。 満面の笑みで女の腰を撫でるように手を添える王に反して 女は光の無い落ちくぼんだ瞳で、無表情にされるがまま。 王城は強固な要塞のようなものだ。 高貴な城に貧しい平民たちが入ることは決して許されない。 特例があるとすれば、“立派な功績をたてた者”のみ。 ……平々凡々な生まれの彼女は同胞を殺すことにより 皮肉にも憎い国家の懐に入る機会を得た。 大量殺人を褒め称える文面は、 彼女の目的を知っている者からは そんな皮肉すぎる内容を暗に伝えていたことだろう。* (97) 2020/11/30(Mon) 1:40:53 |
浄化者 リヴァイは、メモを貼った。 (a2) 2020/11/30(Mon) 1:47:29 |
浄化者 リヴァイは、メモを貼った。 (a3) 2020/11/30(Mon) 1:48:30 |
【人】 『ブラバント戦記』包囲突破作戦の折、アリン公は 最後の一人となる覚悟で戦い抜いたと云う。 物量で上回っていた彼の敗因を分析する学者らは 奇襲、準備期間、地理……と様々な要因を挙げるが、 最大の理由は“相手が悪かった事”に尽きた。 居城の広間にて捕えられた当主ジョセフは 死の間際まで皇帝を避難し続けた。 『宣戦布告を行わなかった卑怯者』 『青二才なんぞに命乞いはしない』 『貴様の様な男は卑しき魔物同然』…… (98) 2020/11/30(Mon) 9:20:59 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ しろかねの翳りがその頸を 断 つ。 ][ 父帝に剣を振りかざしたその時とは異なり、 唾棄すべき謀反人の頭は石畳に転がり落ちた。 その髪を掴み上げ、戒めの様に掲げる。 断罪とは呼べぬ二百年越しの報復だったが、 獅子がその爪と牙で一つの貴族の全てを奪い 歴史から消し去ったのは確かだった。 ] ……生まれ落ちた其の日から、 欠かさず貴様の死を望み歌い続けたが 聴こえていなかったのか? 其れは遺憾だ。 (100) 2020/11/30(Mon) 9:22:04 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ 騎士団長に渡された毛皮で懐剣を拭う。 刀身には焼き焦がされた血が硬化してこびり付いている。 切り伏せた刹那に命まで燃やそうとしたかの様だ。] 加え、俺の様な男はこの俺だけだ。 ( 俺で最期にすべきだ ) [ その眼が、主君の死を見届けた敵兵をなぞる。 恐怖に竦み上がり、思わず声を上げる者までいる始末。 だが、而して屠った無抵抗の羔などに価値は無く。 ] [ 出生から将来に至る生涯の全てを火に焚べた心には、 仇敵の言葉など最早何一つ届かない。 ] (101) 2020/11/30(Mon) 9:22:53 |
【人】 『ブラバント戦記』アリン家滅亡の報せは公国諸侯にとって 十分過ぎる事実上の脅迫になっただけでなく、 其の衝撃性から遠方に至るまで知れ渡っては 異常な求心力によって各地の統治環境を狂わせた。 文字通りの火と血の雨を降らせた闘い振りは噂になり、 真の王の訪れを信じた人々が領土に溢れる。 彼をテリウス大陸全土の王と謳う者さえ居た。 アリン家が納めていた集落は『解放』されたが、 新皇帝は略奪や徴収を決して許可しなかった。 (102) 2020/11/30(Mon) 9:23:33 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム施しがあれば受け取るのは構わん。 だが、此方から要求する事は許さない。 奪い取るなど言語道断だ。 ────彼等は“今も昔も”余の民であるが故に。 ( 恐怖による支配を望んだ訳ではなかった。 とは言え、歴史書が其れを記す事はないだろう。 ……後の世など知った事ではないが。 ) (103) 2020/11/30(Mon) 9:24:01 |
【人】 『ブラバント戦記』緑樹の葉が落ちる頃には国に戻り冬に備える。 冬支度をし、暫くの平穏に息をつく事が出来るのは、 この国の深く積もる雪の功績でもあった。 同時に敵には充分な時間を与える事になる。 次の攻撃はこれまでの様には行かないだろうと、 世論も議会も721年度の計画を慎重に練っていた。 侵攻を恐れた近隣諸国から舞い込む無数の交渉。 金品や栄誉にまるで興味を示さない帝に、 女ならばと実の娘を投げて寄越そうとする王族。 仇ですらない彼等の憂慮は的外れであったが、 皇帝はいつしか供物として捧げられた女達の中から 一人を選んで妃として迎えた。 (104) 2020/11/30(Mon) 9:24:33 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム[ 添い遂げられないと知っていて選ぶのは、 他国からの協力を得られる可能性があったから。 政略結婚など幾らでも目にして来たが、 いざ当事者となっては誰の眼も直視出来ず…… 家柄も、容姿も、振舞いも考慮はせず 唯一人悲しむでもなく、一度たりとも俯かなかった 凛々しい横顔の彼女を選んだのだ。 ] ( 選ばれた者が幸運なのか不幸なのか、 其れすら確かめるには時間が足りない。) (105) 2020/11/30(Mon) 9:25:06 |
【人】 燎原の獅子 ヴィルヘルム( 選ぶ立場でありながら、誰と向き合っていても 『何かが違う』と過去に思いを馳せるなど──── 図々しいにも程があるとは解っている。 其れでも、夫婦の務めは果たさねばなるまい。 ) (106) 2020/11/30(Mon) 9:25:43 |
【人】 地名 真昼[引っ越して来る前、母さんは店の客を 毎日のように家に連れて帰ってきた。 体を売ってお金を貰う為で 僕に相手をさせることもあった。 客じゃなく、同僚を連れて来る日もあった。 前も後ろもよくわからないまま初体験は過ぎた。 相手をする頻度は次第に上がっていき 複数人まとめて、なんて日もザラになっていった。 母さんも隣の部屋か、同じ部屋で客の相手をしてた。 一度に沢山相手にした方がお金がたくさん貰えるから 僕もそれは効率的だなと思った。 客は勝手気ままに振る舞った。 ヤりながら殴られたり煙草の火を押しつけられたり ブッ飛ぶクスリを注射されたり――、 そんな非常識こそが僕にとっての常識。] (107) 2020/11/30(Mon) 9:46:59 |
【人】 地名 真昼[置かれた環境が世界の全てで 拒絶をするすべも発想もないまま完璧に順応した。 母と己が毎晩相手を変えて行っているのが 本来子を成すための行為だと知ったのは 身体がすっかり快楽を覚え切ったあとのこと。 ご飯を食べるのと水を飲むのと同じくらい セックスは日常に溶け込んでしまっていた。] (108) 2020/11/30(Mon) 9:47:09 |
【人】 地名 真昼[母さんは、お金が大好きだ。 DNA鑑定の結果と共にこの村にやってきて 僕らの世界は変わってしまった。 食べたことないような美味しい食事。 トイレと別にある泳げるくらい広いお風呂。 柔らかくてふかふかのお布団。 父と弟は、あたたかく僕らを受け入れてくれた。] (109) 2020/11/30(Mon) 9:47:17 |
【人】 地名 真昼[僕には物足りなかった。 客が帰り色んな体液に塗れてくたくたのへとへと 今日もよくがんばったねって掛けられる労いの声と 頭を撫でてくれる掌こそが親から貰える愛情。 他では、ダメなんだ。足りないよ。] (110) 2020/11/30(Mon) 9:47:40 |
【人】 帝国新聞 王城に一般市民が受け入れられることなど 何年ぶりのことだったろうか。 それほどの快挙を成し遂げたにも関わらず この若き女研究者は驕り高ぶらず、謙遜することも無く 実に慎ましく───悪く言えばネタを提供しなかった。 切れ長の青い瞳には全くと言っていいほど生命力がなく 視線は虚空を漂っているようにはっきりとしない。 「傷モノだが、顔は悪くはない」と王は絶賛していたが、 私はあの女に寒気さえ感じる印象を覚えていた。 何のために感染者を全て一夜の内に毒殺したのか。 4年も診療所を経営していながら、一体どうして。 ……彼女からは、生の気配が少しも感じられないのだ。 (112) 2020/12/01(Tue) 2:29:58 |
【人】 王室研究者 リヴァイ[「奇病の消滅を祝った宴が数日後に開かれる。」 恭しく会釈した執事はそう言って、此方に出席の返事をするようにと暗に促した。 拒否権なんて最初から存在していない癖に、いかにも相手自身の意思がそうさせたように仕向ける手法は変わっていないのか。 浮かんだのはそんな無感動な感想くらいだった。 自身を舐めるように見つめる視線から逃げるように生返事をして、与えられた無駄に豪華な客室から廊下に出た。 当てもなく歩く足取りは回遊魚のようにどこか力が抜けている。 どこまでも腐りきった国家だと思った。 自分たちのために命を捧げた少年少女に対して その献身に感謝の一つもせず、あまつさえ死を喜ぶなど。 そんな魂の抜けた人形の如きかんばせが不意に強張ったのは、もう二度と逢わないだろうと思っていた───否、“二度と逢いたくなかった”人間の声が聞こえたからだ。] (113) 2020/12/01(Tue) 2:30:17 |
【人】 王室研究者 リヴァイ 「……リヴァイ! なあ、リヴァイなんだろう? 返事をしてくれ────おい、 待て! 」[次の瞬間、踵を返して床を蹴って、彼とは反対の方向へ駆け出していた。 ハスキー・フーシャー。騎士学部兼男子寮長。 ───自身と同じ学年の、相棒とも呼べる存在だった。 彼とは故郷の話をしたことはないが、 まさか同郷だったとは思いもしない。思うはずがない! 一瞬見えた彼の翠の双眼は、酷く哀しい色合いに染まっていた。 足を止めてしまえば、きっと問い詰められてしまう。吐き出してしまいそうになる。 「万人を救う薬師になる」と言ったかりそめの夢も、それに反する数多の殺戮行為のことも、この国の終焉を辿る運命のことも───全て。] [それだけはどうしても避けたかった。これまでの計画が水の泡になりかねない。 同時に、運命の時が来てしまった時、彼でさえもこの手にかけなければならない事実に気づいてしまう。絶望の底に叩き落されたような黒い感情が溢れて止まらなかった。] (114) 2020/12/01(Tue) 2:30:41 |
【人】 王室研究者 リヴァイ[王都を没落させるからには、反乱因子は全て根絶やしにする他ないのだ。余力を残せば腐った種がまた育ってしまう。 そこにどんな善人が混ざっていようが、無垢な幼子が紛れていようが、等しく略奪を行わなければならないことが、征服者の絶対条件。 ……彼は学徒の頃から責任感に溢れ、真面目であった。 権力に唾を吐き、礼儀の欠片も無い己を叱咤し、 少しは人前に立てるように叩きなおしてくれた。 愚痴を言い合い、極稀に授業をサボる悪友であり、 生徒を束ねる立場特有の悩みも常に聞き入れてくれた。 どんな自分も否定することのない、尊敬できる存在。 汚濁の中に潜んだ、澄んだせせらぎのようだった。 どうしてこの国に暮らしているんだ、という混乱だけが募っていく。 逃れられぬ運命の歯車がゆっくりと軋み、新たな 痛 みを生み出していく。窓から覗いた月は、無情にも残り数日で満ちる事実を告げている。 済度の日取りは刻一刻と迫るばかりで留まることを許してくれない。 眠るという行為を重ねるごとに、狂気に意識が呑み込まれていく。]** (115) 2020/12/01(Tue) 2:31:05 |
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