四角形の記憶 卯波は、メモを貼った。 (a97) 2021/08/12(Thu) 13:58:41 |
【人】 学生 涼風>>165 夕凪 「もっと甘えてもいいのにな。頑張っている人は、その分甘えてもいいと思うもの」 真似をするように自分も視線を動かして大きな体の頼もしい彼を見た。自分も後でお手伝いしなきゃなと思いつつ。 もう一度、貴方に視線を戻す。 「ごめん。ごめんね……夕凪姉ちゃん。 でも、私は夢を見ているばかりではいられなくなったんだ」 零れ落ちるのは謝罪の言葉ばかり。 少年のかんばせは作り物のように綺麗な笑顔が乗ったまま。けれど、だらりと下ろされた拳は隠し切れなかった感情を滲ませたようにぎゅっと握られている。 「私は医者を目指さなきゃいけない。 それが父さんの望みだし、仕事として通用するか分からないものを追いかけ続ける勇気が……私にはないんだ」 ああ、貴方と話したかったことは、こんな事じゃなかったのに。 「夢は誰もが見られるけれど、みんながみんな叶えられるわけじゃない。誰もがずっと見られるわけじゃない。 眠る間に見る夢はいつしか覚めるし、心に秘める夢だって……いつか手放さなきゃいけないんだ。 私はもう、夢見る子供じゃいられない」 その言葉はいったい誰に向けて放っているのか。自分にさえも分からないまま。 柄のない刃を握って振り回している気分だ。 手のひらが、心が、焼けるように痛くてたまらない。 (169) 2021/08/12(Thu) 14:03:48 |
【置】 学生 涼風拝啓 毎日暑い日が続いておりますが、 様にはお変わりなくお過ごしのことと存じ上げます。 (中略) 小さな子が遠くで泣いている声を聴くと、たまに姿を重ねてしまいます。 都会に引っ越すことが決まったあの日。幼い私は顔を真っ赤にしてわんわん泣いて。「家の外にも響いていたとご近所さんが心配していたのよ」と語る祖母の声は今でも思い出すことが出来ます。 声をあげて泣いたのはあれが初めてでした。 弾けるような友達の声。共に歌うように響く蝉しぐれ。どこまでも続くような青空の下で、遮蔽物のない村の大地を風が思いきり駆けていく。 ささやかで特別なものではない時間さえも、お気に入りの紅茶缶にでもしまいたくなるような愛しさがありました。 私にとってこの村は、この村で過ごした時間は、この村で出会った人たちは。 まさに夢のようなものだったのだと、成長してから気付かされたのです。 (中略) 敬具 20××年 8月××日 涼風薫 (L3) 2021/08/12(Thu) 14:46:09 公開: 2021/08/12(Thu) 15:00:00 |
【人】 四角形の記憶 卯波>>168 涼風 「ましてやまた解散したら、 次はいつ会えるかわかんないですからね。 尚更、今のうちに色々撮っておかなきゃです」 辺りを見渡して、集まってる人を一人一人見る。 やがて会えなくなる人を写真に残しておくのが、どれだけ寂しさへの紛らわせになるものか、とふと頭を過ぎる。思った、だけ。 そんなの、撮り始めた時から答えが出ていないのだから。 いつまでもただ、綺麗だと思ったものを、ずっと形に残したいだけ。 「もちろんですよ。誰かに見てもらわなきゃ、 写真の意味がありませんから。 あと、十年前より俺はずーっと、写真撮るの上手くなったしね」 四角形の中は永遠だが、写る人たちはそうではない。 すこし目を離したすきにずっと遠くにいってしまう。 だから俺はレンズ越しでもその背中を追いたいのだ。 本当は肩を並べたかったけど。 それは、どうしても叶いそうにないから。 (170) 2021/08/12(Thu) 15:11:18 |
【置】 四角形の記憶 卯波男らしくなりたかった。 添木兄さんや清和兄さんと悪いことをしたり、1歳上の兄さんたちと肩を並べて遊んだりしたくて。 レンズ越しに見るだけじゃなくて、 自分もその思い出の一つになりたくて。 でも、幼い顔立ちで、体格もひとまわり小さくて、歳が一つ違って。 些細な差でも、距離が一歩ずつ遠ざかって、その全てが積み重なっていくと、もう四角形の向こうにしか皆が居なくなってしまう。 追いかけようと身体を鍛えても、 何をしても、生まれつきのものは覆せないものだ。 反対に、女の子らしくしてたらどうだったのだろう。肩を並べずとも、もっと違った関係で、側にいることはできたんじゃないか。全てはもう遅い話だったが。 一ノ瀬卯波は、中途半端だ。 田舎を出てからは、鏡や自身の写真を前にすると、四角形に切り取られた現在を見つめたくなくて、思わず顔を背けてしまう。 写真に映る、変わってゆくひと、変わらないひとが美しいのは、それが迷いなく成長して、人生を積み重ねてきた裏付けだからだ。 俺には何もない。 道半ばで心が折れて、反対のことをしていたらだのとありもしない妄想に浸って、それでも明るい未来を想像できずにいる。 それでも。自分の写すものだけは、 何もかもが綺麗で。それだけは救いだった。 (L4) 2021/08/12(Thu) 15:12:20 公開: 2021/08/12(Thu) 17:00:00 |
清和は、念入りにタオルでふかふかにされて笑う百千鳥を見れば、微笑んで。 (a98) 2021/08/12(Thu) 15:22:53 |
【人】 夕凪>>169 涼風 甘えていいといってくれるあなた。 頑張ってると認めてくれたあなた。 夢を見ていられないというあなた。 一瞬悲しい気持ちになってしまったけれど。 私はあなたが変わってしまったと思わないわ。 「謝らないで。 夕凪たちね、昔からあなたの書いた物語が読みたかったの」 そばにいたわけでもないのにふざけた話だ。 10年も経ち同じ夢を見ている方が珍しいのに。 「あなたが捨ててしまうなら預かっておくわ? 私たちの願いはあなたの夢がかなった先で叶うのね」 けれど、諦めてしまったあなたがそんな顔をするものだから。つい、わがまま娘が出てしまったわ? 「お医者さんだなんて立派じゃない。 お父さん思いで優しい涼風くんなら絶対なれる…、だけどそれだけで諦めたりしないで。 それにまだあの時からたった10年、あなたのファン1号と2号は不変よ。 私たち、待つことは得意なの」 無茶なことを言っているかもしれない。 本当に後悔をしていないのなら、わたしの話はすぐに蹴れるはず。 確かめるために、ゆっくりとあなたの手を包み込むように手を伸ばす。 安心してほしい。迷っても、怖がらないでほしいから。 今が私たち人生の中で一番夢を見ると決められるときだと思うから。 (173) 2021/08/12(Thu) 16:01:02 |
【人】 学生 涼風>>170 卯波 「次はいつ会えるか……ああ、うん。そうだね。確かにそう。歩む道も年齢も、何もかもがみんなバラバラだもの。 みんなを沢山撮っておいてね。頼んだよ、私たちの素敵なカメラマン」 離別のことが頭にちらついて浮かべる笑みにほんのちょっぴりほろ苦さが足されてしまったけれど、すぐにまた笑顔を作り直した。 貴方には陰りを帯びることなく、心の赴くままにカメラと一緒に世界を見てほしいから。 「それはいい。成長した卯波くんの写真を期待しちゃうね。 それなら明日か明後日か、それより先か……暇な時あるかな?ゆっくりできる場所で見てみたいな」 もしかしたら貴方を置いていってしまうであろう被写体は、貴方の心の内に秘めたものに気付くことがなく。 ただ無邪気に近い未来の約束を取り付けようとする。 (174) 2021/08/12(Thu) 16:11:07 |
【人】 学生 涼風>>173 夕凪 手と手が重なる。指が触れ合う。 少年は母親と瓜二つの姿をしていたけれど、決して柔らかくしなやかな女の子などではなく。 一瞬落ちた視界の中に、男の少し強ばり始めた長い指と、女のゆるやかな曲線を描く細い指が映った。自分たちは成長したのだと、時間が随分流れてしまったのだと、嫌でも気付かされてしまう。 「夕凪、姉ちゃん……。わた、し、私は……」 はく、と唇が何度も開いては閉じて。それでも言葉が音になって溢れてくることがない。 言いたいことがいくつもあって、ありすぎて、喉の奥で詰まって縺れて出てきてくれないのだ。 期待しながらいつまでも待たせてしまうこと。 今ここで、はっきりと切り捨ててしまうこと。 いったいどちらが残酷なのだろう? 「…………」 かすかな微笑みさえも上手く装えない。完璧に隠し通せるほどまだ大人になりきれていなかった。 決して変わる事のない貴方の思いを包んだ言葉が、泣きたくなるほど嬉しくて。だからこそ、苦しくて。 貴方の手の中で、指がきゅっと少しだけ丸まった。曖昧極めたぼやけた答え。はいともいいえとも付かないそれが、少年に出来る精一杯の返事だった。 今が私たち人生の中で一番夢を見ると決められるときだと思うから。 一番楽しくて、惨たらしくて、きらきらしていて、どろどろした気持ちが溢れて止まらなくなってしまうんだ。 ああ、決める事から逃げ出して、まるで夢の中のようなこの場所にい続けられたのなら。夢の中に溺れて沈んでしまえたのなら。 夢の中でずっと夢を見続けることができたなら。 どれほど幸せだったことでしょう。 (175) 2021/08/12(Thu) 16:58:10 |
花守は、御山洗の運転していた軽トラから降りて伸びをした。 (a99) 2021/08/12(Thu) 17:45:56 |
花守は、清和にパクられた。缶チューハイ開けようと思ってたのに。 (a100) 2021/08/12(Thu) 17:47:41 |
宵闇は、御山洗のバスタオルを頭からくらい、ふらついた。 (a101) 2021/08/12(Thu) 18:05:33 |
【人】 おかえり 御山洗>>171 清和 思わず両手を挙げる。レッサーパンダの威嚇に似ていた。 撃つ気がないのだとわかれば腕を下ろすが、ほっとしたような寂しそうな、なんとも言えない顔をしていた。 「そんなことはないよ、いつも楽しかった。二人がいなけりゃ外で遊ぶこともほとんど無かったろうな。 今は、こうして……次の世代に遊びを受け継ぐってのも、大事なことだしさ」 炭火を起こすと川辺の匂いに煙の匂いが混じった。火力を調整しながら、炭の一つを今度はバーベキューセットの下に入れる。 丸めた地域新聞を寄せて少しずつ火を大きくしていくと、そこだけいっそうに夏の暑さ深めていくようだ。 「さて、もう少しだな。学生達にも声かけてくれるか」 (179) 2021/08/12(Thu) 18:31:42 |
【人】 夕凪>>175 涼風 「困らせちゃったわね、親でもないのにごめんなさい」 残酷な選択をさせているのだと大人になった今、痛いほどわかる。 こうして言葉をすぐに返せないことが、全てだということも。 今私たちは一緒に夢を見てしまっているのだ。 「あなたの言葉もちゃんと聞いてないのに、悪いお姉ちゃんね。 ……ここにいる間だけとかでもいいのよ。 そうね、ここで綴りたいものができたらいつか形にするなんてどうかしら? 私、それだったら死ぬまで待ってもいいわ」 どうか私たちに夢を見させて。 目の前のあなたに投げかけたのに、どこかの誰かにつげているかのような不思議な感覚だった。 「暗い顔しないでよ、もうっ! ほら、お手製の豚汁作ったから飲んで元気出して頂戴? 楽しい思い出たくさん作って帰りましょう。それが一番よ」 握った手で嫌なほど伝わる苦しさ、辛さ。 しばらく握り続けて、その手が離されるまで少年の成長をしっかり感じることが私の出した答えだ。 (180) 2021/08/12(Thu) 18:53:24 |
【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>172 清和 「ああわああああわ!! なんだよ、油断した方が悪いんじゃん!」 無茶苦茶な鳴き声を上げて、清和の手を軽く叩いて抗議する。 ぐしゃぐしゃと髪を拭き乱されて首ががくんがくんと揺れた。 「……うん、楽しかった! やっぱりみんな昔と変わってないや! でも清和、呼子お姉の分までって約束忘れてないよね? 夏休みだってまだまだこれからなんだから…」 「…あれ、清和っていつまで居る予定なの?」 (181) 2021/08/12(Thu) 19:25:50 |
【人】 おかえり 御山洗>>178 宵闇 「来る前に着替えてくればよかったのに。熱中症になったら世話ないだろ」 呆れたような仕方ないというような語調だけど、そこまで口うるさく言うつもりもない。 きっとそんなに遊ぶつもりではなかったんだろう、その手を引くものがあったのだから。 清和と、百千鳥と。遊びまわる様子を見つめて、微笑ましそうに目を細めた。 「折角みんな集まっているし、雅成さんも久さんも釣りしてたからさ。 予定が無ければだけど、翔も食べていったらいいよ」 網に食材を並べていくとたちまち食欲をそそる匂いが煙の匂いを押しのけた。 ずっと火の傍にいるせいか、皮膚が炙られて熱い。汗が落ちないように気をつけてはいるが。 (182) 2021/08/12(Thu) 19:33:18 |
音楽家 宵闇は、メモを貼った。 (a102) 2021/08/12(Thu) 19:34:31 |
御山洗は、バーベキューを始めた。好きなものを食べよう。 (a103) 2021/08/12(Thu) 19:39:18 |
夕凪は、食事をするみんなに豚汁を配った。 (a104) 2021/08/12(Thu) 19:43:49 |
【人】 君ぞ来まさぬ 百千鳥>>176 >>177 宵闇 「……そう?」 特別根拠も無い、子供心に抱いた微かな違和感は 穏やかな声に包まれて、すぐに形を失ってしまった。 変化は決して喜ばしいだけのものではないと知っているから 「…あはは!いいね、たまにはそれくらい素直だった方が クールなだけより可愛げもあって、いいんじゃない?」 だから不安になってしまったのだろうか?なんて 霧散した違和感の元を辿る事も無く、 戯けた様子で喜んで見せる姿に楽しげに笑った。 (183) 2021/08/12(Thu) 19:44:44 |
【人】 インスピレーション 竹村茜>>150 薫 「メイクとかヘアアレンジとか凝ったらもっと綺麗になっちゃうじゃん〜〜 そう言われたって羨ましいもん」 きっとモデルのようにも、セレブリティな雰囲気も出せてしまうのだ。 羨望の気持ちもあらわにしながら、自分の変わらないものへ言及されれば嬉しそうな笑みを浮かべるのだ。 昔から持っているアクティブな部分も、自分の大好きな部分だったから。 「勉強禁止って言われるくらいしちゃってるんだ? へへ、じゃあ夏休みだしリミッター外して遊びに出ようか! 勿論、そのつもりで来てるんだよね? 」いくよ、と悪戯っぽく口元が弧を描き。 有無を言わさず貴方の手を取って、まさに話し込んでいる最中の皆の近くへ―――勢いよく、飛び込んだ。 (184) 2021/08/12(Thu) 20:02:06 |
竹村茜は、涼風と共にばしゃん!と水音を立てて、川に飛び込んだ。 (a105) 2021/08/12(Thu) 20:02:43 |
【人】 夕凪炭の香りをつられて忘れないように作った豚汁を入れて配る。 あっという間にお腹が膨れてふと視線をあげた。 「……流石に頼めないわね。みんな年頃だし」 少しもの寂しさを感じて誰かと夜語らいたかったのだが、すっかり疲れ切ってしまったことと頼める姉のような存在にも迷惑をかけてばかりだと口を噤む。 同い年同士で話すこともあるだろうと思うと、居場所がないような嫌ではないのに妙な気持ちにさせられた。 「夜、散歩するのは危ないかなあ…」 (186) 2021/08/12(Thu) 20:03:01 |
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