【人】 聖杯のジン ナディル案の定、というべきか。 アルバリは納得のいかない顔で ひとつ、ふたつ、みっつと不満をこぼす。 『自分がどんな顔でそれを言ってるのか 解ってんのかよ』 機嫌が良いつもりだったが、 上手く笑えていなかっただろうか? 『俺は、お前にムカついてた。 俺を見ないお前に。』 アルバリの若鷹はとても魅力的だったから 結構見ていたつもりなんだが? 『……願わない人間には、用がないのかよ 俺が、お前を……見てても……?』 …………?? 用がないのは、願わない人間が、俺に、じゃないか…? (3) kintoto 2021/09/19(Sun) 23:39:25 |
【人】 聖杯のジン ナディルアルバリの言うことがわからなくて 少し混乱する。 ジンが珍しいから。 自分の行く先がわからないから。 「人間を幸福に導くジン」の残骸のような俺に 一種の期待を抱いたんだろうと思っていたが。 (4) kintoto 2021/09/19(Sun) 23:41:18 |
【人】 聖杯のジン ナディル『俺は……お前のためになにか願いたい。』 急に迷いが晴れたようにアルバリが笑うので ますます面食らってしまった。 割合に長く生きていたつもりだったが、 そんな事を言われたのは初めてだったから。 「……我は…言わばただの道具だぞ? 、、、、、、、、、、、、、、 利用して初めて価値のあるものだ。 それに…、自分の為の願いを叶えられるほど 我は器用ではないぞ……?」 何をどう話せば伝わるだろう。 ───いや、俺はアルバリに 、、、、、、、、、、、、、、、 何を伝えようとしているのだろう。 言葉を探しあぐねて、視線が泳いだ。 [パス] (5) kintoto 2021/09/19(Sun) 23:42:41 |
【人】 聖杯のジン ナディルファルーサの願いを叶えてやって以来、 ナディルは度々闘技場に足を運んでいた。 未だ少年ながら無敗を誇るファルーサの人気は 凄まじく、もはやファルーサの勝利オッズは あってないようなものだった。 そうやって稼いだ金で飲む酒の席に 律儀に誘ってくれるのだから ファルーサは基本的に育ちが良いのだ。 粗野で暴力的に見えても礼儀を知っている。 いつもと少し香りの違うアラックを舐めながら、 先日より二回りくらい脚も太くなっただろうか 懐っこく身体を擦り寄せてくる仔虎を撫でていると ファルーサが思い出したように話し出した。 (14) kintoto 2021/09/20(Mon) 2:17:33 |
【人】 聖杯のジン ナディル『ナディルは俺の願い叶えてくれたよな。 あれから試合で勝ちまくりなのは良いんだけどさ なんか、足りないなって思い始めた。』 そうか、と微笑んで軽く相槌を打つ。 ハングリー精神は仔虎の良い餌だろう。 更に上を目指せば良い、と頷こうとしたら 続けてファルーサは不思議な言葉を吐いた。 『ナディルは俺に勝っててほしい? 強いままで在ってほしい? 俺、まだそういうの聞いてなかったから』 ……ン?よくわからないな。 「我がお前に望むことは特にない。 何故そんなことを気にする?」 ……なんだ、これは。 先日のアルバリと言い、サーリフと言い、 最近の流行りか? 「あー…そうだな、敢えて望むとすれば お前自身がこれで良いと満足するまでは、 強くなろうとしていて欲しい……かな。」 答えを捻り出してはみたが、 ファルーサにはどう届いただろうか。 [パス] (15) kintoto 2021/09/20(Mon) 2:21:10 |
聖杯のジン ナディルは、メモを貼った。 (a14) kintoto 2021/09/20(Mon) 5:09:59 |
【人】 聖杯のジン ナディル『──己の罪を数えろ』 呆れたように吐き捨てて、 アルバリは大袈裟に溜息をつく。 ほんの先刻、質問ごっこを始めたときは 全く逆の立場だったような気がするが、 いったい何が起きているのだろう。 低いテーブルを挟んだ距離をひと足に詰め、 全く飲み込めていない俺に 言い聞かせるようにアルバリは言葉を紡いだ。 (23) kintoto 2021/09/20(Mon) 10:40:11 |
【人】 聖杯のジン ナディル『俺にはお前は、価値、あるよ。 精霊じゃない、ただのお前自身に。』 ───ただの、俺? 耳の奥、眼の裏、脳の片隅で なにかがカチ、カチと小さな音をたてる。 記憶の向こう側、見えそうで見えない。 ───ただのナディルなんて……何処にいる? 『ここに来て。まっすぐ俺を見ろ。』 いつの間にか吐く息が届くほど近く、 アルバリの瞳を探して視線を合わせようと試みる。 けれど、これに何の意味がある? 『───お前が触んねぇなら、俺が触るよ。』 手を握られて、その次の瞬きの間。 唇の端に柔らかいものが触れて、離れた。 (24) kintoto 2021/09/20(Mon) 10:42:08 |
【人】 聖杯のジン ナディル口づけだと理解するまでに、2秒。 「──えっ!? なに──」 なに、いまそういう雰囲気だった!? え、これ同衾の誘い!? マジ!? 気づかなくてごめ……… 言いかけて息を飲む。 恐らく俺はひどく赤面していた──と思う。 そこに居たのは本当に「ただの俺」だったから。 (25) kintoto 2021/09/20(Mon) 10:43:40 |
【人】 聖杯のジン ナディルこんな……ガキの口づけひとつで 安いな俺は、となりつつ俯いて呼吸を整える。 早く戻ってこい精霊の俺。 そこで思い出した、 俺が『願いを叶える』人間に アルバリを選ばなかった理由のひとつ。 アルバリは『優しすぎる』。 その上でファルーサよりもずっとずっと 『怖いもの知らず』なのだ。 いわゆる『魅入られ易いタイプ』。 腰に携えている妖刀がその証拠だ。 アルバリみたいな人間は、 俺みたいな人外に近づいちゃ駄目なんだよ。 いままで何度も願いを叶えた人間のなかで 最速で死ぬタイプがこれ。 あんなやべー妖刀に憑かれて よくここまで生きてたなと思うレベル。 (26) kintoto 2021/09/20(Mon) 10:48:26 |
【人】 聖杯のジン ナディル「っお前…、ほんと、馬鹿だろ。」 そろそろ顔の火照りは落ち着いただろうか。 正直アルバリの顔はまだまともに見られない。 ああでも、これだけは言っておかなきゃいけない。 「………ありがとう…」 そう告げたのはやっぱり『ただの俺』で。 ちょっと泣きそうだった。 [パスor〆] 【絆取得:アルバリ】【感情書き換え無し】 (27) kintoto 2021/09/20(Mon) 10:51:14 |
【人】 聖杯のジン ナディル『もし出来るんならさ。 俺に叶えてくれた"無敗"の願い、取り消してくれ。』 意外と言えば、意外だった。 一度叶えた願いを取り消したい、という『願い』自体は そう珍しいわけではないのだが、 ファルーサがそれを願うとは思っていなかったからだ。 「……別に構わんが、本当にいいのか?」 ファルーサと仔虎を交互に見遣る。 ファルーサは確かに強いが、 『願い』の加護を失って“無敗”は保てないだろう。 なんだかんだ、負ける賭けには乗らない人間だと 思っていたが、そうでもないのだろうか。 (36) kintoto 2021/09/20(Mon) 13:01:47 |
【人】 聖杯のジン ナディル「“3つの不可能”にあたる願いでもないし 問題ないぞ。 ──その願い、我が手に承る。」 傍らで、仔虎がまた一回り成長する。 「さぁ、これで明日の試合は『負けるかも知れない』。 見に行ってやるから無様に負けるなよ。 ……恐れているようだが、 我がお前の精気を吸って殺すなどと いうようなことは無い。 人間の精気を吸うのは…… 同衾でもすれば別だが 。」こんなふうに『人間に恐れられる』のも そう珍しいことではなかったが、 ファルーサが、と思うと少々の落胆はあった。 見込み違いだったのだろうか。 「……死ぬなよ。」 ぽそ、と呟く。 もしも試合に手を加えたりしたら きっと怒るだろうなと思うと 明日は心の休まらない一日になりそうだった。 [パス] (37) kintoto 2021/09/20(Mon) 13:02:44 |
【人】 聖杯のジン ナディル雨が降っていた。 砂漠に降る雨は恵みとはならず、全て砂地に沁み落ちる。 森の中では木々の葉をほんの少し湿らせ、 渡る風の温度を幾分か下げた。 ひんやりした空気の中で 遅い午睡を貪っていたナディルは 遠く微かに聴こえる聖歌の音色に薄らと半醒した。 覚めやらぬ微睡みのなかで サーリフの歌声であることを知覚すると同時に 彼が何処に居るのだろうと思い馳せ、 『自分が聴こうとしているから聴こえる』 ということに気がついて、ごろんと寝返りをうった。 (48) kintoto 2021/09/20(Mon) 16:10:43 |
【人】 聖杯のジン ナディル目を閉じたまま、大きく溜息をつく。 呼べば来る、と言っていた。 呼んでみようか。 いややっぱめんどくせぇな…。 「おはようございます。」 ───は? 咄嗟に見開いた目に、 寝顔を覗き込むサーリフの笑顔が映った。 「おま、っ……、なにして……」 「呼びましたでしょう?私を呼びましたよね?」 「いや呼んでねぇし!!!」 慌てて起き上がり、思わず正座する。 「さて、ナディルさん。お説教の時間です。」 にっこりと微笑む片翼の天使からは 勿忘草と雨の匂いがした。 [パス] (49) kintoto 2021/09/20(Mon) 16:11:34 |
【人】 聖杯のジン ナディル『──約束、な!』 屈託なく笑うファルーサの目に映る自分は もしかして、物凄く頼りなく見えているのだろうか とナディルは思う。 ファルーサが望むと望まざるとに関わらず、 一度でもナディルが『願いを叶えた』人間は 聖杯のジンの契約者となる。 例え一度叶えた願いを取り消したとしても この縁が消えることは無い。 思えば、幼くして色々な人の願いを叶えていた頃 ナディルの『契約者』は母だったのだろう。 ナディルが本来のナディルの姿を保てていたのは 生まれてから、母が亡くなったあと 最初に願いを叶えた契約者が亡くなるまでの間で それ以来、ナディルは自分の姿を忘れてしまった。 (53) kintoto 2021/09/20(Mon) 18:20:03 |
【人】 聖杯のジン ナディル姿が変わることを面白いと思いつつ あまりに頻繁に変わることにも辟易していて、 だからナディルがファルーサに「死ぬな」と願うのは 今の姿が割と気に入っているというだけの話だ。 もちろんファルーサ自身を気に入っている (そうでなければ契約しない)のもあるが、 ファルーサの周りの人間をよく知る前に ファルーサが死んだ場合、 ナディルは自分がどんな姿になるのか そしてそれが誰なのか なにもわからないままで変わってしまうのだ。 はっきり言って結構面倒臭い。 ファルーサはなにか良いように解釈したようだが 実態はこんなものである。 けれどもそれがナディルの『願い』であることは 確かにそうで、これまでナディルに対して 「お前の望みを叶える」と宣った契約者は 母の他にはファルーサただひとりだった。 [〆] 【絆取得:ファルーサ】【感情書き換え無し】 (54) kintoto 2021/09/20(Mon) 18:22:19 |
(a36) kintoto 2021/09/20(Mon) 18:28:35 |
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