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【人】 三月ウサギ─── 友人、恋人、契約者。 俺達は、何かになれたんだろうか? 確かめることはせず、ゆっくりと身体を起こと。 白い太陽を、背負いながら。 ようやく重なった視線を惜しむように 真っ直ぐに君を見つめたあと。 目を細めて微笑んだ。 (42) 2021/07/15(Thu) 20:43:12 |
【人】 三月ウサギ最初から、一夜だけの約束だった。 このホテルを出た後は。 それぞれの別の世界に分かたれて。 君の家族が俺の家族になり。 俺の家族が君の家族になる。 なのに、俺と君は家族にはなれない。 そんな当たり前のことに対して。 心底不思議そうに、首を傾げれば。 (43) 2021/07/15(Thu) 20:43:51 |
【人】 三月ウサギ…… 少し考えたのは、俺の家族だった人のこと。 「そんなこと考えてなかったのよ、どうしよう?」 ほわんとした笑顔で搾取する。 そんな悪意は、俺が偽物だったからで。 君が晒されることがないといい。 心からの願いを浮かべて。 (76) 2021/07/16(Fri) 23:52:38 |
【人】 三月ウサギそのあと、俺は両親と出会い。 そのあと、俺は両親と別れた。 「 品のない子ね。 やはり育ちが卑しいとああなのかしら? 」 「 あれなら、あの偽物の方がまだ ─── 」 俺の前では穏やかに微笑んでいたけれど。 陰でそんな話をしているのを聞いてしまえば、 嫌でも気づく。 (79) 2021/07/16(Fri) 23:56:40 |
【人】 三月ウサギそうか、俺には家族なんていなかったんだ 気付いた瞬間、目の前が開けた。 迷いはなかった。 そのまま、あの大きくて息苦しい家を出た。 名前はどちらでもよかったけれど 下手に変えて詮索されるのも煩わしい。 なので、一番最初にもらった。 俺は俺の嫌いな、 俺の好きな女の子の 名前で生きていて。元々大学は奨学金で通っていた。 再びキャンパスに戻ることも可能だっただろう。 生活費もバイトして稼いでいた。 家族を養う必要がない分、余裕ができたくらい。 そうか、俺には家族なんていらなかったんだ 気付いてしまった、幸せで不幸なこと。 (80) 2021/07/16(Fri) 23:57:14 |
【人】 三月ウサギ………… 誰にも煩わされない幸せな日々。 誰にも煩わされない不幸せな日々。 世界は次第に、色を失い。 今が夜なのか朝なのかもわからない。 (81) 2021/07/16(Fri) 23:57:30 |
【人】 三月ウサギそんな日をどれだけ過ごしただろうか。 アスファルトの地面を渡る風が、 短く切り揃えた髪をさぁっと通り抜けた。 一瞬、反射的に目を閉じて、 パッと風の吹く方に目を遣ると、 どこかで見たリボンが、ひらりと宙を舞っていた。 (82) 2021/07/16(Fri) 23:58:06 |
【人】 三月ウサギ「 これ、─── 」 リボンを掴もうとしていた手に、 俺の手に収まったリボンを掴ませる。 それから相手の顔に、大きく目を見開いて。 思わず、その名を口にしようとして、噤む。 (84) 2021/07/16(Fri) 23:58:25 |
【人】 三月ウサギ三月ウサギとトト。 終わってしまった物語。 誰にもなれない、どこにもいけないひとりとひとり。 どこにもいない彼らは、ここにもいない。 …… だから、驚愕に彩られた瞳を、柔く細めた後。 上げた口角と共に「 君 」に向ける言葉は、きっと。 (85) 2021/07/16(Fri) 23:58:34 |
【人】 宇佐美 有栖一夜限りの約束。 果たし、途切れてしまった縁の糸は。 ひとひらのリボンを結ぶように、 キュッ絡み合い、繋がって。 あの「はじめまして」から。 幾度となく、世界は朝と夜を繰り返した。 (100) 2021/07/17(Sat) 18:34:31 |
【人】 宇佐美 有栖夜のしじまも、明ける朝靄も共に生きたいと。 願う俺の顔は、情けないことに若干強張っていた。 心を張り詰めて、僅かに震える手には、 ひとつのリングが輝いてる。 それは、沈む夜と昇る朝を必死に駆け抜けて。 時刻は刻む針が、真上を向いて重なる時。 日付は ……… (101) 2021/07/17(Sat) 18:36:48 |
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