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【人】 美術 エノ海の見える場所で。 そのアナウンスを聞いていた。 あぁ、良かった。 これで君が死なずに済むよ、という思いと。 あぁ、やっぱり。 俺が殺さなければ、君は生きられたのに、という思いと。 色々な気持ちが渦巻いて、ただ俯くばかりだった。 「……裁判場に行かないとな。」 飲み物を用意してくれるって、言ってたもんな。 (0) 2022/03/07(Mon) 23:18:18 |
エノは、親指で君の手を撫でてみたり、ちょっと寒くて、繋いだ手ごと、自分のポケットに入れてみたり (a0) 2022/03/08(Tue) 1:40:35 |
エノは、手が湿る様子に、「苦手だった?」と少し眉を下げて、首を傾げて聞いてみたり。 (a1) 2022/03/08(Tue) 1:41:25 |
エノは、「ちょっぴり田舎の方だ」なんて、揶揄ってみたり。 (a2) 2022/03/08(Tue) 1:42:11 |
エノは、そうして、二人一緒に、会場の扉を開けて、隣同士着席するのだろう。 (a3) 2022/03/08(Tue) 1:42:51 |
エノは、アクタが隣で通話相手に滅茶苦茶怒鳴ってる………と思った。 (a16) 2022/03/08(Tue) 18:31:45 |
エノは、アクタの腕の中に収まっている。 (a19) 2022/03/09(Wed) 11:21:56 |
エノは、フカワの言葉を聴いて、それ以上引き止めることはせず、見送った。 (a33) 2022/03/12(Sat) 13:41:41 |
エノは、アクタと体を離して、「清算してくるね」と告げた。 (a34) 2022/03/12(Sat) 13:42:17 |
【人】 美術 エノ>>ALL 『薬局には近づかないで。』 裁判所から出たのち、全員に向けてそれだけ通達して。 自らは薬局の中へと入る。 自身の名字がでかでかと書かれた看板が目に入る。 自分が倒した商品棚を見る。 かつて、自分が殺してしまった人がいた場所を見る。 「まぁ、ここだよね。」 罪の清算をするなら、ここしかないよね。 (18) 2022/03/12(Sat) 16:25:09 |
【人】 美術 エノ少し開けたスペースに、イーゼルを立てて。 そこに一際大きなキャンパスを立てかけて。 ふぅ、と一息。 端末を見る。 合議の参加者、未だ生存してる8人。 それぞれのマーカーの位置を確認して、 薬局には1つ分しかいないことを確認する。 汗が出てくる。 手が震えてくる。 せめて、清算をする前に少し、落ち着きたくて。 オレンジジュースを飲もうと、出そうとして。 ………少し迷ってから、レモンティーにした。 喉を潤す。 1度飲んだだけのレモンティーは、再現するのが大変で。 随分無駄なデータ容量を使ってしまったけれど。 「………美味しい。」 でも、心は落ち着いた。 よし、とパレットと筆に手をかける。 (19) 2022/03/12(Sat) 16:30:19 |
【人】 美術 エノ───薬局が僅かに揺れる。 データの海から絵具を作り出して、パレットに絞り出す。 そうして、真っ白なキャンパスに筆を入れていく。 まずは、この周りの風景を。 人工物と薬で囲まれた無機質なこの店内を。 棚の一つ、商品の一つまで丁寧に描いていく。 ───薬局が僅かに揺れる。 データの海から新たな絵具を取り出しては、絞る。 2回の合議への参加で知ったことだが。 この世界では、一人が作り出せる物には上限があるらしい。 あまり負荷をかけて、不用意なエラーを引き起こさないためだろうか。 凡そ自由に好き勝手作ったとしても上限には至らないくらいの余裕はあるが。 でも確かに、上限は存在する。 ───薬局が僅かに揺れる。 この薬局なんかは、品数から何から、薬の一粒、成分、パッケージに至るまでを精密に再現したものだから。 見た目よりはるかに多いデータ量を持っていて。 (20) 2022/03/12(Sat) 16:39:03 |
【人】 美術 エノ───薬局が揺れる。 では上限に達したらもう何も作れないのか、というと そう言うわけでもなく。 どうやら最初に作り出した物を消去して、容量を確保するらしい。 もしかしたら実際には全然違うシステムなのかもしれないが。 青年はそのように認識し、そして、実際にそのように見える挙動が行われている。 ───薬局が揺れる。 絵具を出す。データの海から、望む色を生み出しては、 それを筆に付け、キャンパスを彩っていく。 汚れた筆を洗う時間も惜しくて、新たな筆を作り出す。 息が切れる。汗が止まらない。 絵を描くことに疲れてるわけじゃない。 それは例えば、苦手な発表を目前にしてる時のような。 どうしようもない緊張と、そして…… …………恐怖。 (21) 2022/03/12(Sat) 16:45:03 |
【人】 美術 エノ───ガシャンッ!と、 薬局の入り口が崩れて埋まった。 絵を描く、描き続ける。 ようやく無機質な風景を描き終えて。 汗を拭って、また違う色を出す。 ガララッ 新たに絵具を出すたび、筆を出すたび、 その容量を補填するように、何かが消えていく。 この薬局を作った時、最初に生み出したのは、 この建物そのものだ。 最初に作ったものから消えていく。 徐々に、徐々に。 建物が自分を支えきれなくなっても、構わずに。 きっと本来なら、危険だと警告が出たり。 あるいは、先に既存のデータを消すよう促されたりするのだろう。 だが青年はそれらをすべて無視して、ここに立っている。 自信を死に導くことが、罪の清算だと信じているから。 (22) 2022/03/12(Sat) 16:57:46 |
【人】 美術 エノガララララ!と薬局が徐々に崩れていく。 青年は一心不乱に絵を描く。 無機質な風景に、人間を描いていく。 それはもう何度も描いた、この世界での自分の姿。 震える手でぐにゃぐにゃになりながら、描いていく。 「……ひっ…!」 ガン!とほど近くの天井が崩れ落ちた事に、声を上げてしまう。 そこかしこで何かが崩れ落ちる音がする。 商品棚がひしゃげる音がする。 重くけたたましい落下音が聞こえてくる。 それでも、筆を止めずに。 酷く不格好な自分を描き終えて、いつもならそれで完成。 ……の所に、また新たな色を出す。 色を出すたびに建物は崩れていく。 それでも描かねば、描かねばならない。 ───隣にいると言ってくれた、あの子の色を出す。 (23) 2022/03/12(Sat) 17:04:42 |
【人】 美術 エノそうして、自らの絵の隣に、その子の絵を。 寄り添い、手を繋ぐように。 自らの未来を望んでくれたその姿を。 出来るだけ丁寧に、でも、どうしたって崩れる絵で。 描いて。 「………かん、せ………っ」 ちょうど描き終えた所で。 そのキャンパスを潰すように、目の前に瓦礫が落ちる。 驚きと恐怖で尻餅をつき、腰が抜ける。 もう立てなくて、仮に立っても、出られる場所もなくて。 仰向けに、転がるしかなかった。 天井では、自分の名字がでかでかと書かれた看板が。 それが吊るされてる天井ごと、自分を潰さんと揺れている。 支えのほとんどを失った建物は。 もう何をせずとも、いずれは全てが崩れ落ちる。 ───あぁ、良かったな、と思った。 (24) 2022/03/12(Sat) 17:11:00 |
【人】 美術 エノ「……ったく、ない………」 死を間際にして、冷静になって。 絵を完成させて、すっきりして。 死で罪が洗われる事に、喜びを感じて。 「しに、たくっない…………!」 死を両手を広げて受け入れられて。 死に何の恐怖も感じなくて。 生きたいと思ったあれは、ただのその場の雰囲気に 流されてしまっただけで。 「───死にたくない!!!」 とか、じゃなくて。 死はただただ怖くて。 なにをしたってそれを受け入れることなんてできなくて。 逃げたくて、泣いて、喚いて、怒鳴って。 気持ち悪くて、吐きそうになって。 これ以上ないほどに生きることを望んで、心の底からそう願って。 あぁ、俺。 ……本当に、本当に、死にたくなかったんだって。 未来に、希望を抱いていたんだってわかって、良かった。 「嫌だ!!死にたくないよ!だれかっ」 たすけ──── (25) 2022/03/12(Sat) 17:18:47 |
エノは、薬局から鳴り響いていた音は、やがて止む。見に行けばそこにあるのは、ただの瓦礫の山だけ。 (a35) 2022/03/12(Sat) 17:19:55 |
エノは、そこにあるのは、『何もかもが終わった跡』だけだった。 (a36) 2022/03/12(Sat) 17:20:52 |
エノは、奇跡なんて起きない。こんな瓦礫の山の下で、助かるなど物語の中だけだ。 (a41) 2022/03/12(Sat) 21:15:13 |
エノは、物語の中だったら助かったのかもしれない。例えば、何かの拍子に抜け出せたとか (a42) 2022/03/12(Sat) 21:15:56 |
エノは、例えば、ヒーローが来て救いだしてくれたとか (a43) 2022/03/12(Sat) 21:16:20 |
エノは、例えば、下に穴が開いて地下の空間に落ちたとか (a44) 2022/03/12(Sat) 21:17:31 |
エノは、例えば、………………例えば。 (a45) 2022/03/12(Sat) 21:17:51 |
エノは、───レモンティー一杯分の隙間に、運良く挟まったとか。 (a46) 2022/03/12(Sat) 21:18:46 |
エノは、きっとそれは、産声だった。 (a67) 2022/03/13(Sun) 15:51:41 |
エノは、絵乃という男は今日…………やっと、生まれたのだった。 (a68) 2022/03/13(Sun) 15:52:10 |
エノは、きっとレモンティーの味を唇越しに君に伝えた。 (a79) 2022/03/13(Sun) 20:03:13 |
エノは、愛とか恋とか、そう言うのはまだ分からない。君を好きな気持ちが、そうであるかは分からない。 (a80) 2022/03/13(Sun) 20:03:42 |
エノは、でも、君にレモンティーの味を移した時、確かに嬉しい気持ちになった。 (a83) 2022/03/13(Sun) 20:04:11 |
エノは、いつか君のことが理解できればいいなと思った。 (a84) 2022/03/13(Sun) 20:04:52 |
エノは、君が抱く気持ちを理解して、同じものを抱ければいいなと思った。 (a85) 2022/03/13(Sun) 20:05:13 |
エノは、そう遠くない未来に────きっと理解ができる。 (a86) 2022/03/13(Sun) 20:05:46 |
エノは、でも、今はまだ分からないから。唇に指を添えて。少し止まって (a87) 2022/03/13(Sun) 20:09:35 |
エノは、それから、ぺろり、と舌で唇を舐めて、「ありがとう」と微笑んで (a88) 2022/03/13(Sun) 20:10:48 |
エノは、そうして、二人、帰っていくのだろう。 (a89) 2022/03/13(Sun) 20:11:06 |
エノは、「帰ったら一緒にあんなことがしたいな」なんて───穏健なる提案をしながら。 (a90) 2022/03/13(Sun) 20:12:24 |
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