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【人】 生贄 セレン[ 願えば、伝わるのだろうか。 ならば独言のように語り聞かせた疵も、 明け透けに伝わってしまったのだろうか。 狼の瞳を覗き込むも静かで変化はなく、 暫し迷って、部屋に行かせてくださいと囁いた。 足を向けて貰うほどの用事ではない。 寧ろ、側にいたいのは己なのだから行くのが当然だろう ] (707) 2019/04/11(Thu) 23:35:09 |
【人】 生贄 セレン[ 伝えてしまえば行動は早かった。 どうやってこの城を維持しているのか不思議だけれど、 指先まで温まった湯を出て、バスタオルに包まれる。 湯気香る身体は仄かに薔薇の香りが漂って、 それこそ、村で施された生贄化粧よりも甘やかで。 それを意図せず水滴を拭いバスローブに身を包むと、 主の上着をまた羽織り、裸足のまま浴室を後にする。 目指すは厨房、湯を沸かして、紅茶を一客。 道具は奴隷であったころに使い方を憶えているから、 あとは薔薇の花弁を洗って紅茶に浮かべるだけ。 慣れない場所に少しは戸惑ったものの、 黄金の一滴まで理解したそれを両手で抱え、 足は急いで彼の部屋へ── 扉をいきなり開く不躾はせず、 とんとんと叩いて、様子を待った ]* (708) 2019/04/11(Thu) 23:36:48 |
【人】 生贄 セレンぼくの意志じゃなければ、意味がないのでしょう? [ 部屋に来た理由も、温まって欲しい理由も。 冷たい夜の怪物に近付こうとする意思を紅茶に混ぜて、 薔薇の湯船に浸かり香を纏う身体はふらりと距離を取る。 花弁を紅茶に浮かべた理由も意思表示のひとつ。 彼から手を伸ばしても届かない距離で夜を見つめて、 上着を羽織る身体を抱くように己の身を抱きながら ] (752) 2019/04/12(Fri) 4:34:29 |
【人】 生贄 セレン……ニクスさま。 ぼくは生きていたい、死にたくない。 そんなぼくが貴方を殺す方法を知らされて、 どうしたいと思うかを想像、しましたか……? [ 薔薇の香に包まれ夜の上着に包まれ囁き、 薔薇の香茶を夜に差し出し温まって欲しいと願い。 飲めば香気は彼の内へと落ちるのを望む艶やかさを、 微笑というには稚い唇で歪な弧を描く。 不慣れな仕草であることは伝わるだろう。 けれど、その行為に、惑いの曇りは一点もなく ] (753) 2019/04/12(Fri) 4:48:35 |
【人】 生贄 セレン[ 耳に届けた囁きは魅了の楔に囚われた甘さはなく、 無邪気なまでの悪辣さを含んだ、自己の発露。 夜を殺す術の真偽など試す気はなく、 けれど、夜への好奇心を殺すつもりはなかった。 全てに裏切られ、捨てられ、捧げられ、 居場所など、この夜の城以外にどこにもないとしても。 夜を排してひとり生きることなど望んでもいない。 ならば己の価値を彼に認めて貰わねば意味がない。 もし、夜がそれを望んでいたとしても。 彼の為であっても殺しはしない、そして生きてみせる。 ―――夜が、己を望むまで ]** (754) 2019/04/12(Fri) 5:17:42 |
【人】 生贄 セレンただの生贄でも子供でも玩具でもない、 そういうことでしょう……? [ 無関心に近ければ変わり者など装飾を紐付けない。 無意識に零れ出た感想だとしても、 彼の記憶を過ぎ去る数多の子供とは僅かに違う。 そう思ってもらえたなら己にしては上出来の部類だ。 他人の無関心には慣れていた。 他人に突き放されるのも、拒絶されるのも。 それでも、辛うじて生き繋いで、 未来などないと告げられながらここにいる。 そう、後はない。 未来はないからこそ、冷たい夜の怪物へ ] (788) 2019/04/12(Fri) 14:51:06 |
【人】 生贄 セレンぼくには生きる意味を考える余裕なんて、 いままで許され無かったんです、ニクスさま。 ただ死なないために生きることしか出来なかった。 [ 淡々と事実を並べて、言葉の意味の薄さに苦笑した。 そういった人生だったのを振り返る余裕があるのが、 未来が閉ざされた城の中だというのが妙におかしくて ] (790) 2019/04/12(Fri) 14:53:13 |
【人】 生贄 セレン誰に、赦されたいんですか。 何を、赦されたいんですか。 [ 男にしては高めの声を玲瓏に響かせた。 少女のように身飾られた理由の一つだが、 夜に囁く心地は後がない故の度胸で落ち着いている ] (791) 2019/04/12(Fri) 14:53:56 |
【人】 生贄 セレン……教えてください、もっと、たくさん。 あなたの好きなこと、好きなもの、厭うこと、 今、何を考えているかとか……そういうことも。 [ 狼の気配は安堵を呼ぶものの、 欲しいものはそれではなくそっと溜息を吐きながら。 ああ、世の中はいつだって残酷で、 望むものに手を伸ばそうともこの手は届かない ] (793) 2019/04/12(Fri) 15:11:15 |
【人】 生贄 セレンそれを、あなたは償ったと云える……? [ 嗚呼、でも、本当に逃避なのだとしたら。 死にたくないから生き延びた己との差は何だろう? 終点のない螺旋を下る彼と、 いつでも階段から突き落とされれば死ぬ己と。 ……そう、殺されるのは慣れている。 殺すことも慣れ親しんでいるのだから今更だ。 死にたくないならば己を殺してしまえばいい。 それを彼が望むのなら叶えればいい、その筈なのに。 痛苦は指から広がり全身へ、 ひどく痛む想いに瞼を落として首を横へ振り ] (815) 2019/04/12(Fri) 16:55:19 |
【人】 生贄 セレン………ぼくに、先はないんです。 [ ここが終点。未来の終わり。 進む道は彼の後にしかないと伝えた言葉は、 砂糖細工のようにほろりと崩れて夜気へ融かして] (817) 2019/04/12(Fri) 17:07:44 |
【人】 生贄 セレンあなたの傍にしか居場所がない、から…… [ 手は未だ我儘な子供らしく払われても伸ばしたまま、 稚さとは掛け離れた孤独を知る歪さで、笑ってみせて ] (818) 2019/04/12(Fri) 17:19:03 |
【人】 生贄 セレンどうして貴方がそんなに苦しいのか、 ぼくには……ぜんぜん、分からないから。 その答えは、ニクスさましか出せないんじゃないかな。 [ 諦めが浸潤した囀りは小夜啼鳥のようには響かず、 沈むように落ちる視線と共に差し伸べた腕も落として。 瞼を半ば鎖して細い息を吐く。 夜気が渦巻く城にひとり佇むような錯覚に呑まれ、 察したか近寄ってきた狼の姿に勇気を出し言い添える ] (848) 2019/04/12(Fri) 20:43:41 |
【人】 生贄 セレン……なら、あなたもぼくを捨てる? 捨てられたらぼくはまたひとりぼっちで、 少し待てばきっと次がくる……くるはず、だよ。 [ 生贄の価値すらない。>>831 そう判断された孤児の行く末など知れていた。 村に戻ったとしても居場所など在る筈もなく、 寧ろ、古城の主に粗相でもしたのかと責め立てられて。 怒りの矛先から逃れようと森へ逃げ込んでも、 彷徨う内に飢えるか、迷って獣に食われるかだろう。 彼の手も目も届かない場所で勝手に死ぬ。 たったそれだけで、鬱陶しい子供は処理できる。 手を振り払い、縁も所縁もない子を厭うならば。 願いを叶えないと知り捨てるならば、 そうして突き放してしまうことが最も後腐れがない ] (849) 2019/04/12(Fri) 20:49:07 |
【人】 生贄 セレンみんなぼくを気持ちが悪いって言うんだ。 目も、髪も、普通じゃないから。 人間じゃないみたいだから要らないって。 誰にもまっすぐ見られたことはないよ。 誰にも、こんな風に触れられたこともない。 [ 過去をなぞる言葉は抑揚もなく、 耐え難い何かすら削れて残り滓だけの子供らしく。 村で詰め込まれた知識に引きずられた丁寧な言葉は失せ、 素の、幼い口調で、唇は静謐な笑みを象って ] (855) 2019/04/12(Fri) 21:05:54 |
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