軍医 ルークは、メモを貼った。 (a25) 2020/05/20(Wed) 2:35:32 |
【人】 軍医 ルーク……もしあの薬を飲むのが嫌だと思うなら、 義手を使うな。 戦闘のことは領分の外、君の判断ではあるけれど、 それでも、だよ。 [ けれど、“使うな”と口にするときは真顔になる。 これまで何度言ったか覚えていない。 分かっては、いるのだ。 先の戦闘でこのうさぎがあの義手を使わなければ、 被害はより甚大なものになっていた。 もしかしたら、死傷者が出ていたかもしれない。 それを思うなら、ほんとうに、 自分が口を挟めることではないのだけれど。 それでもどうしても口に出してしまう。] (312) 2020/05/20(Wed) 22:01:22 |
【人】 軍医 ルーク記憶を取り戻せたら…… [ その言葉を、繰り返す。 それは、喜ばしいことのはずだ。 けれど、その言葉を口にしたときの彼の表情は、 いつものゆるやかな笑顔ではなくて、強張って。 ――まるで、何かを恐れているようにも見えて。 思考が一呼吸、遅れる。 呼吸をひとつ、忘れる。 記憶を無くしたものが取り戻すことを不安に思うのは、 理解出来ない心情ではない。 自分も知らない自分への不安、 いまの自分自身の存在を不安定に思う心理。 そんな一般論が頭を過り――… “変わってる僕は、少しは、マトモになるかも” 聞こえたその言葉に、口を開きかけ、噤む。 ……自分は、何を言おうとしていたんだろう。 ただ、何処かが酷く、痛んだ。 その正体も分からないまま、彷徨いかけた指先を握り込む。 変なことを言ったと謝られても、 首を横に振ることしか出来なかった。] (314) 2020/05/20(Wed) 22:02:13 |
【人】 軍医 ルーク[ 道すがら、飴を貰ったときのこと。 返って来た言葉に、くすりと笑う。] はは、それが魂胆かい? こういう味、かあ。 同じ味を作るのは難しいから、 そこは期待しないでおいて。 ああ、でも…… [ そろそろ、棚の中の瓶詰の果実は出来上がっている。 よく滅菌した瓶に詰めておけば、日持ちもする。 直接薬に混ぜ込むというわけにもいかないけれど、 薬の後にでも水で割って飲めば、 少しは後味もましなことだろう。 ――渡す心算なんてなくて、 きっと捨ててしまうのだろうと思っていて。 ただ、返された微笑みに、ふと。] あとで、いつでも都合がいい時でいいから。 お返しは、するよ。 [ そんな風に、口をついて出た。] (315) 2020/05/20(Wed) 22:03:01 |
【人】 軍医 ルーク[ 目的の場所に到着する。 激しい戦闘の痕跡を残した荒れ地は、 直に目にするとそれは酷い有様で、 其処彼処に崩れた瓦礫や、建物の残骸が飛び散っている。 硝子窓の欠片を靴の先でつつき、ぺんぎんを持ち上げる。 尖った破片を足で踏ませるわけにもいかない。 ぺんぎんは、きゅう、と大人しく腕にしがみ付いた。] 木箱ではない、と思う。 そう、恐らくは金属製。 [ 以前研究所で見た、それと思しき部品の形状を思い出す。 その後すぐに、解析できない状態に陥ってしまったそれが 本当に通信機だったかは――… 『使用している場面を見た』のだ、 ほぼ間違いはないだろう。] (317) 2020/05/20(Wed) 22:03:35 |
【人】 軍医 ルーク[ ――途切れてしまったはずの何かが、強く軋む。 けれど、不意に横合いから聞こえたうめき声に顔を上げ、 振り返った。>>298] どうした? [ 様子がおかしい。 まるで夢でも見ているかのように、ぼんやりと彷徨う視線。 此処ではない何処かを見ているような、 此処にはない何かを見ているような。 まず過ったのは、強かったと言っていた薬の後遺症。 あるいは、義手の。 それとも、まさか――… 先ほどの会話の中で感じたざわめきが、 強く湧き上がる。 途切れ途切れのノイズ、 身体の内側を剃刀で引っかかれているような、 ――“不安” それを振り払い、肩に手をかける。 もし倒れでもしたときに、自分の力でどうにかなるかは 分からないけれど、 何があってもすぐに対応できるようにと。] (319) 2020/05/20(Wed) 22:04:58 |
【人】 軍医 ルーク[ 息をつめて、じっと様子を見守る。 四角い金属――通信機を探しているようではあった。] “あの怪物の作りなら、きっと”…? [ その言い回しに引っ掛かりを覚える。 聞きようによっては、まるで、 『機獣の構造を知っている』ように聞こえてしまう言葉だ。 歩き出したその後を追ってゆく。 真っ直ぐに向かった先、瓦礫片の影。 そこには、まるで彼を待ち構えてでもいたかのように、 しっかりとした造りの金属製の箱が、瓦礫に埋もれていた。 作業員の回収の折には、此処まで調べていなかったのだろう。 少し距離があり、物陰になっている。 ――作業員が見逃しているような、そんな場所。 こちらを振り返った表情は、いつものあの笑顔。 いましがたの様子が、何かの錯覚であったかのように。] (320) 2020/05/20(Wed) 22:05:56 |
【人】 軍医 ルーク 具合は? 何か違和感があったり、 副作用の症状が強く出ていたりはしないか? [ 箱の事よりも先に、そのようなことが口をついて出た。 もし、何の事か分からないという様子だとしたら、 こう話しはするだろう。 さっき、頭痛があったように見えたから――と。 連れ出してよい状態だったのだろうかという迷い。 “知っていた”かのように箱を見つけたことへの疑問。 二つの思考は縺れて、ピアノ線はまた、おかしな音を立てる。] わたしが、持ってく。 帰ったら休むといい。 それ、貸して。 [ 箱に手を伸べて受け取ろうとして力を籠めれば、 自分の腕力では難儀しそうな重みにうっとなる。 フードの下、滅多にその存在を主張しない耳が ふるりと震える。 青白い顔を赤くして暫くの間頑張ろうとしたのだけれど、 物理的に無理だった。 なお、足場を確保して下に降りて、ぴょんぴょんはねて “おてつだい”しようとしているぺんぎんにも、 やっぱり物理的に無理だった。] (321) 2020/05/20(Wed) 22:07:57 |
【人】 軍医 ルーク[ その箱は、結局持ってもらうことになったか。 あるいは持ち帰るには重く、戻ったらすぐに回収班に 声をかけることになったかは、そのうさぎの腕力次第。 帰りの道すがら、ぽつり、口を開いた。] 今更の話を蒸し返して悪いけど。 ……言ってなかった。 医務室でのこととか、飴とか。 [ ゆっくりとした足取りで、瓦礫の中を歩く。 ぺんぎんを抱えたまま。 がらがらに崩れ去ってしまった、 けれど、嘗ての形を未だとどめている、そんな瓦礫たちが、 『月』と光る草木の下、ひっそりと物言わずそこにある。] ありがとう。 [ きっと、言いたいことはそれだけではない。 それだけじゃないはずなのに、分からない。 ざわめきがある、痛みがある。 それなのに、どうしてなのかが、 ――… わたしには、わからない。]* (322) 2020/05/20(Wed) 22:10:26 |
軍医 ルークは、メモを貼った。 (a28) 2020/05/20(Wed) 22:13:44 |
【人】 軍医 ルーク[ 自分が持ち上げられなかった箱を、 うさぎは軽々と持ち上げてみせる。 医務室で義手を巡って部下たちと話していた内容を思い出す。 恐らく、持って来た装備も、 自分が持てるような重さのものではないのだろう。 躊躇いはあったが、見たところいまは不調もなさそうだし、 不承不承頷き、手を離した。 代わりに、来るときには持ってもらっていたランタンを 受けとることにする。 道すがら、投げかけられた言葉に顔を上げた。] ……“心配”? [ 困惑しているような、理解できずにいるような、 その声はきっと、以前医務室で盛大に“怒りながら”、 “怒る”が分からずに問い返したときと同じもの。>>0:242 ] (397) 2020/05/21(Thu) 2:12:11 |
【人】 軍医 ルーク[ けれど、今はそのときとは違い、じっくりと思案を重ね、 ひとつ、ゆっくり瞬きをした。] ――ああ、それだったんだ。 そうか。 [ 外から言われて、初めて気づいたように。 途切れた糸を、不格好に一先ずは、結んでしまうように。 味の分からない飴を、甘い、と教えてもらうように―― そんな風に、呟いた。 きっと、それだけではない、心配だけではない。 けれど、“心配”していることに、間違いないのだろう。 義手を使うなと言っても、頷かない。 副作用は『いつものこと』と言う。 いつもの副作用なら、ずっと痛い―― 痛みに強い体質で、それでも強く感じるほどの痛み。] (398) 2020/05/21(Thu) 2:13:16 |
【人】 軍医 ルーク[ 先ほどの出来事を思い出す。 『通信機は攻撃されにくい場所、 背中の後ろから飛んだはず』>>348 それは、いかに間近で戦っていたとしても 知りようがない情報。 元よりどこかで知っていたとしか思えない知識だ。 あの時の様子は明らかに、普段の彼のものではなかった。 そもそもここに来るときの会話では、 通信機の話すら、初めて聞いた様子だったのに。 だとしたら――忘れていた、記憶? 機獣の知識なんて、どこで得たのか。 彼らの来襲が繰り返されるいま、自分と同じように、 機会は何処かにあるのかもしれない。 けれど、記憶が失われたのは最初の襲撃のとき。 戦闘中に、機獣から通信機が飛ぶのを見ていた? それもどこか、違和感があった。 ――ああ、まただ。 先ほど過りかけた“何か”が、 再びちりちりと思考を焙る。>>141 思考に沈みながら、ひどく難しい顔で、 ぐしゃりと自身の首元を、服ごと掴んだ。 呼吸の苦しさを、痛みで紛らわせるように。] (399) 2020/05/21(Thu) 2:15:10 |
【人】 軍医 ルーク[ “噂のようなひとじゃない” その言葉に、痛みが増した。 そうだ、噂自体は愚にもつかないカムフラージュ。 けれど、事実はそれよりも遥かに許し難い。 いまはない両脚が強く痛む。 どくどくと、血を流すように。 立ち止まらないように片方ずつ前へと踏み出す。] 噂、か。 あれはもう、話してる連中が どれだけ面白いことを言えるか ゲームみたいになってるんじゃないかな? けど、本当か嘘かは、さあどうだろう? 採点して医務室に張り出してやろうか。 [ いつものように、人の悪いことを言ってやろうと思っても、 どうしてか、それ以上は続かなかった。 “ルークの頼みなら”と、その言葉の意味が、 どうしたって、伝わってきてしまったから。] ――… うん。 頼みというなら、今はひとつだ。 帰ったら休むことと、 頭痛があったときは時間外でも医務室に来て。 (400) 2020/05/21(Thu) 2:16:50 |
【人】 軍医 ルーク[ 回収された箱は、研究棟へと持ち込むことにした。 勝手に探しに行く、とは言ったものの、 特に問題がある行動をしたわけでもない。 そこのところは、探索に付き合わせてしまった以上、 説明しておこう。] 勝手に探しに行くことにしたのは、 殆ど根拠もない憶測だったから。 上が取り合ってくれるか分からなかったし、 手続きがまどろっこしかったんだ。 でも、実物を見つけたなら、あとは引き渡せばいい。 小言の一つも食らうかもしれないけれど、 わたし、そういうの聞き流すの得意なんだ。 それに多分、今日担当してる連中は気にしない。 [ 後ろ暗いことをしているわけではないのだから、 持って行っても問題はない。 見つけるまでの手続きを簡略化しただけさ、と嘯く。] (401) 2020/05/21(Thu) 2:18:09 |
【人】 軍医 ルーク[ 果たして、未回収の部品が運び込まれた研究班の夜組は、 金属の箱を囲んで色めき立った。 自分が前にいた研究所で、 通信機ではないかと推定されていた部品に似ている。 今回の襲撃でこの部品が回収されなかったことが 気になって探しに行った。 特に隠すこともない成り行きをそのままに話せば、 経緯に疑念を抱くものもいなかったようだ。 ――話さなかったことがあるとすれば、 同行を頼んだ第一攻撃部隊の部隊長が、 あまりにも的確に、その部品を見つけた出したということ。 技術班の連中は案の定、細かいことにはこだわらなかった。 抑々、研究の事ばかり考えている連中で、 特にこの班は各方面の才能ある人材を集めてきた 研究畑の遊撃班という色合いが濃く、 その手の連中がまともであったためしがない。 まともに世渡りできるなら研究者なんてやってねえよ、と 記憶の中の父が笑った。 普段交流があるわけではないが、 非正規の手順で回収した箱を持ち込むならこの班だな―― という目算くらいはあった。] (402) 2020/05/21(Thu) 2:19:31 |
【人】 軍医 ルーク[ ――というか、] 『えーと、キミ誰だっけ、ルート? じゃあこの部品は責任もって 我々技術班が預からせてもらおう! 機獣がどこかと通信していたとして、 その記録が残されているなら、重要な手がかりだ。 というか、正直手掛かりとかそういうのより、さ! おまえらー!! 新しいパーツが! 来た!!! 今夜は徹夜だ!! 栄養剤持ってこい!!! ふわあああ!! 謎の怪獣の未知の通信機を解析できる機会! とか!! ひゃっほう!! あ、そこの兎君もありがとね、 そういえばキミだれ? まあいいか! 今日は祭りだ―!!!』 [ 細かいところに拘るどころの話ではなかった。] (403) 2020/05/21(Thu) 2:21:13 |
【人】 軍医 ルーク[ 技術班長のジルベールは、 ぎょろりとした目を益々大きく見開き、 箱を持ってきてくれたうさぎの両手を無理矢理とって ぶんぶんと振り回すように握手した。 そうして、机の上の箱に抱き着かんばかりの勢いで、 矯めつ眇めつ観察している。 基地内の噂話だの人間関係だの、何なら戦況に至るまで、 聞いても頭をすり抜けて、 日がな一日研究に明け暮れているような女性である。 自分のことを忌避しない珍しい人物ともいえるが、 単に頭の中に数式と螺子が詰まっているだけだ。 何なら総司令の名前すら覚えていないかもしれない。] 『あ、ルーディには話を聞かせてもらいたいかも。 別に今でなくてもいいけどさ。 いや、これは建前で、 出来れば今がいいなあ、今すぐがいいなあ。 キミが前いた研究所って爆発した所だろ? それなら、似たパーツの現物は 取り寄せられないだろうけど、 キミが見てたなら、見解を聞きたい』 [ そもそも、まともに識別されてすらいない。 適当に、おー、と頷き、 直ぐに戻ると言って部屋の出口へと。 技術班の連中は、此方には見向きもせずに箱を取り囲んで、 何やら議論を始めていた。] (404) 2020/05/21(Thu) 2:25:11 |
【人】 軍医 ルーク[ 立ち去り際の兎が、飴の包み紙を取り出す。 自分が貰った分の包み紙は、ポケットに入れてある。 くしゃりと丸めてしまうことはせずに、そのまま。] 確認したいこと? それなら今でも―― いや、無理だねこの調子じゃ。 [ 今ではだめだろうか、と思ったのだけれど。 背後で盛り上がる議論が否が応でも耳に飛び込んできて、 この後暫く捕獲されることは間違いないか、と諦めた。 抑々自分も、機獣の謎に迫るために此処に来た。 そう考えるに至った動機は、ひとつ、ふたつではないけれど。 通信機の内容が気になるのは、事実だった。 “お返し”の方は―― うん、そうだな、このうさぎの表情を見ていると、 既に何かの直感で、 甘いものの気配を嗅ぎついているような気がする。] (405) 2020/05/21(Thu) 2:26:42 |
【人】 軍医 ルーク――じゃあ、待ってる。 わたしがいるとき、か。 医務室から悲鳴上げて飛び出してくる新兵がいたら、 そのときの担当はわたしだろうな。 [ にやりと笑って脅すような顔をしてみせたけれど。 自分の部屋へと帰っていったうさぎの後姿は、 実に機嫌が良さそうだった。 ぺんぎんもその後姿に、跳ねながら手を振っている。 後ろを向くと尻尾が見えるなあ、と、 さっきと同じようなことを、どこか違う感覚で考えながら。 その後姿が角を曲がって消えるのを見届けて、扉を閉めた。 待っている、 そんな風に言葉にしたときに感じた感覚は、 飴を貰ったときの不思議なそれと、どこか、似たもの。]** (406) 2020/05/21(Thu) 2:30:48 |
(a30) 2020/05/21(Thu) 2:36:54 |
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