【人】 澤邑よし [ >>33こゆきの体についた木の葉の屑や指の間の泥を拭うと、嫌そうに鳴き声をあげるのだが、まだ甘えたような響きがあって可愛らしい。本気の抵抗に変わる前に何とか終わらせる。 上半身を包み込むように装着されていたハーネスもすっかり取り払われて、こゆきは肴と酒器を用意する自分の足元をうろちょろしていた。] 頭が良いね [ こゆきは、何か良いものが貰えると既に察知している様に見える。いつもなら自室へ向かうのだが、今夜は縁側で月を見ながら一杯とする。 こゆきを逃したくないのと、少し肌寒くなってきたからガラス障子は閉じたままだ。そろそろ熱燗でも良いかもしれないと思い始める。] わかったわかった [ 刺身を一つ摘んで指で小さくちぎってこゆきに差し出す。自分のどうでもいい考え事なんかより、目の前のご馳走を早くと訴える猫の方がよっぽど賢い。美味しいものを食べて、季節のちょっとした綺麗なものを眺めて、そんな少しの余裕が幸せだ。 そのうちに出かけていた家族が帰ってくる気配があって、居間で戦利品を広げて楽しげな声が聞こえてくる。お団子を食べても良い?と遠くから声をかけられて、良いよと答えたりもした。 その後お茶とお団子を皿にいくつか持ってきてくれたし。寝るなら歯を磨いてからにして下さいよと、小言も言われただろう。ついでにお土産があると言って硝子細工の板を妻に渡したら、複雑な表情をしていた。栞に使えるそうだと伝えると何となくの納得をしていた。 明日になったら、蜻蛉のおもちゃで遊ぼう。今は毛糸玉をこゆきに見せてみたがもう疲れているかもしれない。こゆきはずっと側に居ただろうか、それともうろちょろとして寝る頃に戻ってきたか。**] (52) 2022/10/05(Wed) 3:54:22 |
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