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【人】 葛切 幸春? なん、だ。 [一晩を共にした場所を後にする頃、己は未だ何処か夢心地だったのだろう。呼び声>>1 に応えて振り向いた先、差し出された物の意味を噛み砕くのに幾許かの時間を要した。] ――――……あ、ああ。 [曖昧に頷き、軽やかに差し出された鍵を凝視する。 反射的に出した手は、鍵へ触れる前に空中で止まった。然して動かぬ表情の下、内心の確かな動揺に、小さな其れと彼の相貌を数度見比べる事となる。 伝えた言葉に嘘は一つも無い。 既に信頼も心も、相手の下へ置いている。 ―――だが彼の立場を思えば如何だ。 手を伸ばそうとする我欲と、僅かに残る良心の呵責が葛藤を生む。] (3) 2024/04/26(Fri) 22:50:17 |
【人】 葛切 幸春[――逡巡が、返答までの僅かな間となった。 それを察してか、次いで差し出された選択肢>>2 に束の間詰めた息を吐く。機微を察するのが上手い男だと、知れず目を細めた。 惜しく思う心は、手元に引き戻す指先と共に握り込む。] ……ああ、そうだな。 あんたは少し不用心が過ぎるから、先ずは俺を知ってくれ。 [差し出された信頼に値する男だと思って貰えたなら。 きっとそれからの方が良い。 微かに笑って、己の携帯を取り出した。] 改めて、宜しく頼む。冬莉。 [無事に繋がりを得たのなら、その日は送迎の気遣いを断って駅まで歩くと固辞しただろう。 押し問答になる前に有無を言わさず唇へ口付ける。相手が動きを止めたならその隙に、またな、≠ニ笑って扉を抜け出した。*] (4) 2024/04/26(Fri) 22:52:21 |
【人】 葛切 幸春……の資料でしたら、此方を。 はい、月曜の十時からとなっています。 午後には────……、 [滞りなく打ち合わせを終えて、一息吐く。 現在己が従う上司は、少なくとも此方を深掘りする事がない点においては気が楽だった。面白味のない奴だと思われているからにしても、仕事さえ熟せば文句は言われない。沸点の低さは人間味の範疇だろう。 思考と共に手帳を閉じて鞄に仕舞い込んだ。 時計を見れば既に軽く定時は過ぎている。規程の差はあったように思いながらも、慌てて携帯を起動した。赤い通知がメッセージの到着を報せていたが、届いてから然程時間は経っていない様子に胸を撫で下ろす。その瞬間、背後から肩を叩かれて柄にもなく肩を跳ねた。] ああ、いえ。俺は……。 [気の良い同僚からの、気軽な飲みの誘い。 申し訳無さそうな顔を作って断りを入れた。] (11) 2024/04/27(Sat) 12:49:22 |
【人】 葛切 幸春[あの施設での時間を経ても、周囲との距離は変わらない。 だが、] そちらも、良い週末を。 [在り来りな言葉をなぞる声に、少し私情が滲んだ。] (12) 2024/04/27(Sat) 12:51:41 |
【人】 葛切 幸春……… 、 [建物を出れば、冬の気配が未だ此処に在る。 喧騒から少し離れるように、足先は比較的人気の少ない通りへ向かった。 会社を出る前に位置を報せるメッセージは送信済みだ。相手へ伝えた目印となる店の近くに佇み、携帯を取り出してコミュニケーション・アプリを立ち上げる。 トーク画面の上部に、固定表示してある眼鏡のアイコン。 ここ暫くの間に見慣れた画を指でなぞる。何気無い、よく見掛ける類のものなのかも知れない。それでも、可愛らしく見えるのは惚れた欲目だろうか。 何気なくやりとりの記録を遡りながら、ふと思い返すのは、連絡先を交換した折の事。] ……… あんたを剥がす事は出来たのか。 [過日の呟き>>5 は 裏を返せばそういう意味だろう。 誰も知らぬ柔らかな内側に触れ得たようで、微かに笑みが滲む。あの夜に打ち明けられた過去と心情は、彼の弱さであり強さでもあった。根が優しく情深い男だと思う。 反面、自身の薄っぺらさが剥がれた時、己が如何思えるかは解らなかった。] (13) 2024/04/27(Sat) 12:54:01 |
【人】 葛切 幸春……いや、俺も今着いたところだ。有難う。 [メッセージと云う繋がりは確かにあった。 が、直に逢えば矢張り感慨も一入となる。微かな安堵と僅かな緊張感を携えて、隣へ邪魔をしながら首を振った。そうしてまるでデートの定型文だなと考え、否これは確かにデートだったと一人思う。口の端が綻んだ。 鞄と紙袋を膝に置いて腕で囲い、受け取ったカフェオレを指で包む。触れた肌から滲む温かさが、その儘 相手の心のようでもあった。 以前に乗り込んだ時とは異なる心境に 何気なく車内を見回して、目を瞬く事となる。] (15) 2024/04/27(Sat) 13:09:32 |
【人】 葛切 幸春犬、外したんだな。 [口に出してから正気付く。目敏い反応ではなかっただろうか。 可愛らしいと思ったが。 そう付け足せば尚更白々しい気がして、誤魔化すようにカフェオレへ口を付ける。二度目の逢瀬、早々に格好が付かないのは男として避けたかった。] 俺は別に、普段と変わりないな。 ……あんたは如何だった。気の塞ぐ事はなかったか。 [世間話に遅れて乗って、目的地までの話題とする。助手席から眺める横顔も堪能しておく事にしようと、目を細めた。*] (16) 2024/04/27(Sat) 13:10:11 |
【人】 葛切 幸春[窓硝子の向こうを流れ行く景色の何よりも、隣にこそ視線を惹かれている。 ハンドルを握る相手が前を向いているのを良い事に、見詰める視線は過日よりも余程不躾だったろう。此方の質疑を暫し咀嚼する声>>17 に、相手の心にあの犬が最早居座っていない事を知る。] ……… そうか。 [表情を取りあぐねて、僅かに視線を彷徨わせた。 こんな瞬間に舌の回らなさを自覚する。] [あの犬は、己にとって謂わば彼が元来ストレートである象徴だ。 故にその言葉>>18 を嬉しく思ってしまう。のは、結局のところ器が狭い証左でしかない。それを口に出すのは憚られた。可愛らしい女性なら未だしも、男の嫉妬は醜いとも云う。 いや、俺はあんたなら嫉妬も愛しいと思うが ―――閑話休題。] [暫しの沈黙を如何受け取られたにせよ、思考を現へ戻せば何時しか信号が赤く光っている。重なる視線に微か眦を弛め、薄く口を開いた。] (20) 2024/04/27(Sat) 22:29:06 |
【人】 葛切 幸春……、あんたの運転は心地好いな。 とはいえ毎度世話になるのは、申し訳無くなるが。 [再び緩やかに発進する車の背凭れへ、幾らか気を弛めた様に身を預ける。 途中聴く“何ら変わりなく”は、相手の場合それはそれで心配ではあったが、此処で掘り下げる事はせず相槌に努めた。] いや、俺は特に……。 というよりも待て、何も用意せずともいいと言っただろう。 [気遣い深い相手の事、忙しい中での負担を避けるべく予測出来る持て成しは事前に止めた筈だった。唯でさえ送迎の手間を掛けている。此方とて手土産は用意したが、己の甲斐性の無さに眉間に皺が寄った。 ――その間にも、車は滑るように道路を往く。] (21) 2024/04/27(Sat) 22:30:35 |
【人】 葛切 幸春[恋人。>>24 その単語を噛み締めるように反芻する。] ───それは解る。 [好いた相手の前では格好良く在りたい。深く理解出来るだけに、同じ気持ちを自身へと返して貰える幸甚は未だに夢ではないかとさえ。 言い含めるような声すら甘い彼の、その横顔を再度覗き見る。顔貌も心の内も、運転一つとっても穏やかで良い男だ。 だからこそ、注がれる愛情を手放しに喜んでいるだけでは居られない。 言葉を飲み込んだ一寸の間。それさえ慮られているとは流石に知らぬ儘>>23、目線を上げた。] ……、あんたからの愛なら誉だな。 冬莉こそ、俺の愛を頑張って受け止めてくれ。 [軽口に似た応酬は、人気のない限りは車を降りた後も続けただろう。だからエレベーターに乗る時にも、前回の時のような緊張感は無かった訳だが。] (27) 2024/04/28(Sun) 1:38:51 |
【人】 葛切 幸春[相手から少し遅れて、エレベーターを降りる。 入ったのはサウナではなかった筈なのだが。体温の上昇が些か所在なく、顔色を戻すよう頬を手の甲で擦って眉間に力を込める。それから漸く、後を追った。] (28) 2024/04/28(Sun) 1:40:48 |
【人】 葛切 幸春……… 失礼する、 [彼に続いて足を踏み入れた一室は、初めて訪問した時の儘だった。此処の主の抱く寂しさを感じさせる程、相変わらず綺麗過ぎる。 少しだけ目を細めて携えた鞄を適当に置かせて貰った後、忘れる前に持っていた紙袋を差し出した。] あんた、甘いのが好きだろう。 美味いと評判を聞いて……。 [中身はある種定番の焼き菓子、フィナンシェだ。 口に合えばいいが、≠ニ顔色を窺うように視線を投げる。相手は袋の中を確かめただろうか、] だが今度は、あんたを出迎えてくれる縫いぐるみでも買って来るとしよう。何の動物が好きだろうな。 (29) 2024/04/28(Sun) 1:44:18 |
葛切 幸春は、メモを貼った。 (a0) 2024/04/28(Sun) 2:05:15 |
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