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【人】 欠けた星 スピカ>>一日目・湖畔 自分を追いかけてきた者は同行するだろうか。ついてきてもそうでなくても、女はバスケットを抱えてまっすぐ歩く。 遠い遠い、手が届きそうにない魔法の名残を追いかけて。 「ねえ、子供たち! どこにいるの!」 絶えず言葉を投げながら歩いてきたらしい。 きっとそのうち、約束を交わした子供たちの耳にも女の声が飛び込んでくるはずだ。 (8) 2022/01/18(Tue) 13:11:07 |
【人】 欠けた星 スピカ>>10 アルレシャ 「ぅええっ!? なん、何? ぁ、綺麗…… ……じゃなかった。これもあの子の魔法みたいなものかしら」 自分たちの目の前に現れた蝶々を見つけてたじろいだ。ひっくり返った声が飛び出たが、先導する意思を汲み取るとおとなしくついていく。 「い、いた!」 二人を見つければ自然と足取りも慌ただしいものになる。城に来てから既に走ったり歩き回ったりしていても、疲労は見て見ぬ振りだ。 「貴方たち! いきなり子供二人でいなくなるなんて――」 空色の瞳と、余裕のある声を思い出す。 「――……。 …………怪我はないかしら。寒く、ない?」 叫び出しそうになるのをぐっと堪えて、女は子供たちに努めて静かな声で問いかけた。 (11) 2022/01/18(Tue) 16:19:01 |
【人】 欠けた星 スピカ>>湖畔 眉間に皺を寄せてこちらを見やる少女に一瞬自分の唇を噛むけれど、すぐに物怖じせずに一歩前に進む。 「……そうね、関係ないかもしれないけれど。 大人は子供を守るもので……。……いいえ、私がしたいからしたのよ」 そのまま更に距離を詰め、『何馬鹿なことを言っているの、帰るわよ!』と無理矢理にでも腕を引いて城に連れ戻そうとしただろう。 ……今までのスピカなら。 ▽ (30) 2022/01/19(Wed) 16:12:09 |
【人】 欠けた星 スピカ>>湖畔 こういう時こそ、努めて落ち着いて。 誰かの声を反芻して、深呼吸。 「ラサルハグ。貴方もどうかしら」 ついて来てくれた女性に一言声をかけてから二人の元まで歩み寄り、すとんと腰を下ろす。 「……いいわよ。えっと……アル。私も紅茶を持ってきたの。きっとパンに合うと思うわ」 「……ただ、その前に約束してちょうだい。 一つ。今は寒くなくても風が体温を奪ってしまうかもしれないから、ブランケットを二人にかけさせて。 二つ。城の外に行くときは、誰か大人にどこに行くか教えて頂戴。いきなり空を飛んでどこかに行ってしまうから、驚いたのよ。落ちて怪我をするのが怖いから、できれば空を飛ぶのもあまりしないでほしいけど……。 ……少なくとも、この二つ。できるかしら?」 (31) 2022/01/19(Wed) 16:13:15 |
【人】 欠けた星 スピカ>>湖畔 「う、ううん……」 紅茶の準備をしようと魔法瓶を手にしたまま困ったように唸る。ふわふわ浮いているカップと幼い少女を交互に見やり、自分の指でこめかみを数度とんとんと叩きながら返事を考える。 「…………アルが空のこと好きなのはよく分かったわ。 それならこうしましょう。一人の時でも誰かと飛んでいても、絶対に怪我をしないって約束して。帰ってきたら怪我をしていないってことを、誰かに教えて。報告と責任は大事なことよ」 女は既婚者になって4年にもなるが、未だ子供がいない。 だからだろうか、或いは生来の生真面目さからだろうか、子供に分かりやすく物事を伝えることはあまり得意ではなかった。子供の視点が、わからない。 (33) 2022/01/19(Wed) 19:01:39 |
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