人狼物語 三日月国


77 【ペアRP】花嫁サクリファイス 弐【R18/R18G】

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【人】 鬼 紅鉄坊



[ 今は他人のようにしか思えない自分を見つけたとして、
 何を思うのは鬼には未だ分からない。
 それでも、千の想いが喜ばしかった。
 この子がいれば何かが悪いように傾くとは、思えなかった。

 ──だが。
 眉を寄せ、少し遠くを見るように考え込んで。
 再び口を開けば、重くなった声で語る。 ]

とはいえ、今更その手段など……

[ ありはしないだろうがな、と。 ]*
(16) 2021/06/29(Tue) 22:55:22

【人】 鬼 紅鉄坊



── それからの日々 ──


千、またこんなにも埃に塗れて
私に言ってくれれば、共に掃除も出来たというのに

[ 身体が小さいと何処にでも入り込めるものだと、
 肩を払ってやりながら、鬼は心の内で思う。

 あれから、千はひたすらに記憶の縁を探そうとしている。
 だが、この寺に鬼の管理下に無い古い品など無いだろう
 成果など出ないまま、時間ばかり経っていった。>>20>>22
 それでも、もういいとは言えなかった。

 この人の子を駆り立てているのは、
 自分に対する思い遣りなのだと、理解していたからだ。>>21 ]
(25) 2021/06/30(Wed) 19:19:43

【人】 鬼 紅鉄坊

── 或る秋の日の朝 ──



[ 迎え入れた千の手にはいつか渡した書物があった。>>23
 言葉少なくともその様子と姿から察するものがあり、
 自ら文机に向かって足の合間に座らせたのだった。 ]

そうか、この書物の中に──思いもしなかった
彼女に悪いことを……否、違うな

お前と共に、今日この日に開く定めだったのだろう

[ 鬼が知る日まで伝えることを選ばなかったさと、
 手掛かりの無い過去を伝える為に努力した千。

 母子の行動がこの時に結ばれたのなら、今こそあるべき瞬間。 ]
(26) 2021/06/30(Wed) 19:21:54

【人】 鬼 紅鉄坊



……これは、

[ やがて、示された文字の連なりは凄惨な過去を綴る>>24
 大きな流れの中に点在した、小さな村の陰の歴史。
 ある僧侶と流れ者が辿った末路。

 理解出来る筈の言葉が、思うように頭に入らない。
 やがて千が声とした名を、子供のように追い掛け繰り返し。
 ある一瞬で、隻眼を見開き身体を強張らせる。 ]

ああ、そうだ。そうだった……

私は、この僧に命を助けられた……そして、共に殺された

[ 夢を見ているような朧な声が、取り戻したものを告げた。

 意識の外で震え、小さくなっていく。
 それでも抱えた花嫁の耳には、全てが届くだろう。 ]
(27) 2021/06/30(Wed) 19:22:26

【人】 追憶 紅鉄坊



とても寛大で慈しみ深い方だった

いつ死んだって構わない、そう思う程絶望していた私を
老いた身で懸命に看病し、励ましてくれた

山の鬼のことを、恐れるのではなく憂い
危険な場所から離れず、彼らが救われることを祈り続けていた

数多の恩を受けたというのに
守れなかった……私はいつでも、無力だった


[ 取り戻さなかった──千が見せることを選ばなかった記述の中
 そこにいる親代わりのような誰かのことも
 僧に宿っていた面影が、曖昧に輪郭を形作る。

 湧き上がるのは温かさと、それを奪われた喪失感。 ]
(28) 2021/06/30(Wed) 19:22:49

【人】 鬼 紅鉄坊



よく見つけてくれた、礼を言う
これで充分だ……充分過ぎる程、取り戻せたよ

千のお陰で思い出し、受け止めることが出来た

[ 悲しみも憎悪も、その声には宿らない。

 鬼がかつての生の全てを思い出すことは無かった。
 それでも、喪ってしまった大切なものの記憶は蘇った。

 心を落ち着ける時間を、千の体温を感じたままに暫く得てから
 再び口を開き、切り出そう。 ]
(29) 2021/06/30(Wed) 19:23:32

【人】 鬼 紅鉄坊



千、お前に伝えたいことがある

だが、それはとても大きな話で
私たちだけではなく、山にも村にも影響が出てしまう

長い間変わらなかった二つの関係が、大きく揺らぐのだ

だから、待っていてほしい
私の心が決まるまで、重い選択をする覚悟が出来るまで

[ 触れた手をそのままにしてくれていたのなら、
 そっと握り込んでから離し、言葉を続けるだろう。 ]
(30) 2021/06/30(Wed) 19:23:55

【人】 鬼 紅鉄坊




冬が明けたら、きっと告げよう

         あの花が──梔子が咲く前に



…………必ず全て、話すから

[ 背中から抱く腕の力は、人間の身には少し痛い程に。
 今だけは緩めることが出来そうにない。 ]*
(31) 2021/06/30(Wed) 19:24:11

【人】 鬼 紅鉄坊

── 来たる冬 ──


では、行ってくる

見つければ村近くまで届けねばならないのでな、
遅くなるだろうが、心配しなくていい

[ 戸口に立った千を見下ろし、頬を撫でる。
 人よりずっと強く逞しくある鬼の身体とはいえ、
 凍える空気の中その命の温かさが愛おしい。

 少しばかりの名残惜しさを覚えながら、背を向け山の奥へ歩き出す。

 その日、独り寺を出たのは陽が昇りきった刻
 薬屋の店主が訪ねて来た後だった。 ]
(48) 2021/07/01(Thu) 1:56:16

【人】 鬼 紅鉄坊


[ 奪い合った時間、抱いていた温かさはもう名残も無い。>>37
 その分過ぎた日々で、幾度も触れてきた。

 すっかり梔子の実が橙に染まり、収穫を終えたのは数日前のこと。

 辺りは白に包まれ、すっかり姿を変えている。
 この百数十年山で過ごし、数える程しか見たことのない雪。
 やはりこのところの気象が影響しているのだろう。

 店主曰く、その中で一人の子供が朝から山に遊びに行ってしまい
 昼を過ぎても帰ってこず、村人が立ち入れる範囲では見つからない。

 先日実を引き渡した際、寺を気にしている様は気に掛かったが
 村の者など皆、どうせ千を嫌っている。早く喰われろと思っている。
 引き合わせたわけでもないなら、そこまで気にすることもない。

 千について口に出して何かを言うでもなかった男の願い、
 小さな子供の命が掛かっているとあれば、引き受けぬ理由は無い。 ]
(49) 2021/07/01(Thu) 1:56:32

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 独特の感触を踏みしめ、音を吸い込む世界を征く。

 吐いた息が白く煙のように立ち上り、消える。
 ──どんなに寒い思いをしているだろうか、可哀想に。

 鬼が探しに来ても、きっと迷子は怖がるだろう。
 共に帰るどころか逃げてしまうかもしれない。

 それでも、鬼の歩みは途絶えない。
 恐ろしがるからこそ、在るべき場所に戻さなければならないから。
 誰かに見つけてもらうのは>>34
 とても救われることだと、知っているから。 ]
(50) 2021/07/01(Thu) 1:56:54

【人】 鬼 紅鉄坊

[ だが─── ]
(51) 2021/07/01(Thu) 1:57:06

【人】 鬼 紅鉄坊



……一体、何処に行ったんだ

[ 山は何処までも静まり返っている。
 どれ程歩いても、痕跡は見つけられなかった。

 同胞が騒いでいないのなら、つまり襲ってはいない。
 雪はとうに降り止んでいる、
 途中からでも隠されていない足跡がある筈だ。

 陽の傾き始めた空を木々の合間から確認し、ふと気づく。
 ああ、
そういえば性別も名前も聞いていなかった。
 ]*
(52) 2021/07/01(Thu) 1:57:19

【人】 鬼 紅鉄坊

「帰れ、今すぐに!」
(58) 2021/07/01(Thu) 2:02:10

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 人の善意を信じる鬼は、何の情報もなく未だ彷徨い続けようとしていた

 何処からか怒号のように響き渡る、
 育ての父たる男の声がその歩みを漸く止める。

 直ぐに同胞が狼狽え囁き合うような気配を、あちこちから感じた。 ]

まさか……

[ 鬼は漸く気づく。
 山に棲まう妖らにとっても想定外の、非常事態が起きている。

 迷子など、何処にもいない。 ]
(59) 2021/07/01(Thu) 2:02:28

【人】 鬼 紅鉄坊



[ 輿入れの季から時は過ぎ、
 鬼の知る彼らしい振る舞いをしていた薬屋の店主。

 その傷は決して癒えないものだとしても、
 裏で何を考えていたのか、思いもしなかった。

 体躯に似合わぬ速さの走りが、鬼の焦りをありありと表す。
 己を傷付けることなど無い枝や草など押し退け、
 道無き道を駆け、最悪の想像を払う為に寺を目指す。 ]
(60) 2021/07/01(Thu) 2:02:43

【人】      紅鉄坊




 男が二人、何かを話している。
 息を殺し足音を潜め近づき、様子を覗っているが
 その内容が聞き取れる位置に来ても、意味がよく分からない。

 こんな寂れた資料館なんかに、強盗が入ったというのか。
 どれ程建物が新しく見えても、金があるわけがないだろう。

 大昔は山ばかりだったという、過疎化の進んだ田舎町だが
 夜遅くだって、いくらでもコンビニやガソリンスタンドがあるのに。

 自分から見て正面に開け放たれた窓、左右に展示物が置かれている
 差し込む光により、それを眺める男達の輪郭が浮かび上がる。

 一人は黒い短髪の大柄な男、青緑色の上着越しにも筋肉が分かる。
 もう一人は脱色したのか白い髪の小柄な男で、やけに着込んでいた。
(106) 2021/07/02(Fri) 23:07:44

【人】      紅鉄坊



 侵入経路は明確だが、窓に鍵を忘れていたのだろうか。
 今までそんなことは一度も無かったし、
 警報装置が起動していないのも奇妙だ。

 だが、凶器の類は見当たらない。
 懐にあるとしても、こちらは直ぐに然るべき場所へ連絡が出来る。
 何が目的かは未だ検討も付かないが、
 その現代社会を舐めた行いをすぐ後悔することになるだろう。

 踏み込み、彼らを手持ちのライトで照らしながら叫ぶように言った。
(107) 2021/07/02(Fri) 23:07:57

【人】      紅鉄坊

「────ここで何をしている!」
(108) 2021/07/02(Fri) 23:08:10

【人】      紅鉄坊




 驚いたように両者の身体が反応し、こちらへと振り返った。

 そして、そして──……これはなんだ?
 続ける言葉も思考も足も、何もかもが停止してしまう。

 自分は休憩室の机に突っ伏して、居眠りでもしているのか?
 そう思ってしまう程、信じられないことだった。
(109) 2021/07/02(Fri) 23:08:22

【人】 異形 紅鉄坊

「ッ、すまない。私たちは怪しい者ではない。ただ、その……」
(110) 2021/07/02(Fri) 23:08:47

【人】 異形 紅鉄坊



 男達が一瞬で、まるで普通の人と思えない姿に変わったなどと。
 奇特なコスプレイヤーという言い訳すら出来ないじゃないか!

 勇敢な警備員ぶろうとしていた筈が、腰を抜かして座り込む。

 大柄な──より異形が強い方が何か弁明する言葉など、
 耳にも入らないどころか、必死に距離を取ろうとしてしまう。

 その時、小柄で白い方が動いた。
 一歩、一歩。この状況など意に介さないような軽い足取り
 目前まで近づいて、屈んでこちらを紅い片目が凝視した。

 男達はどちらも片方しか目が開いていなくて、
 紅色をしていることも同じらしい。

 補い合うように左右対称のそれの意味を考えてしまったのは、
 恐ろしさでついに後退ることも出来なくなった現実逃避なのか。
(111) 2021/07/02(Fri) 23:09:03

【人】 鬼 紅鉄坊




 ────鬼がいたみたいじゃないか。*
(119) 2021/07/02(Fri) 23:15:06
 




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