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【人】 警備員 ジュード── 深夜:水晶宮 ── [水晶宮の前には、男の知っている者が多かった。 ロビー、アントン、ドリー…… 皆、勤勉で素晴らしい職員だった。 だからこそ、すぐに違和感を察知して>>0:148 ここでずっと、腐臭の中に放置されていたのだろう。 水晶宮に入り込む風さえもを阻止しようと 割れた硝子の前で剣を振るう者も、 ひたすらに逃げ出した犬を 可愛がって撫でまわす者も。 段々と疲れが溜まり始めているようで どうにも緩慢な動きをしている。 男も異常な行動をする彼等も心配ではあるものの、 優先すべきものは彼らではなかったから。 窓を守る警備員の横の 開け放たれた出入り口をこっそり通って、 植物の影に隠れたりしながら、水晶宮の奥、 バックヤードの方へと向かう。] (0) 2022/11/14(Mon) 3:52:41 |
【人】 警備員 ジュード[男がバックヤードの重たい扉を開くと、 瞬間、厭な獣臭と共に餌用の虫たちが飛び出した。 どうやら、檻を開け放った者もいるらしい。 そこらじゅうに這い回る虫が、 保護されているか弱い虫たちの住処を侵す。 爬虫類や齧歯類がそれを捕まえて食べる。 猫科がそれに飛びついて弄ぶ。 顔を顰めながらも廊下に入り込んだ男の傍では、 外の世界と変わらない秩序が保たれていた。 そうして食い尽くされる虫や獣が、 研究者たちの宝物である以外は。] (1) 2022/11/14(Mon) 3:55:40 |
【人】 警備員 ジュード[目的地の手前、ガラス越しに見える研究室も 気を失ってしまいそうな状態だった。 サンプルを解放しようとした者が居たのだろう。 倉庫に入っていたはずの試験管までもが 栓を抜いた状態で実験机に並べられている。 研究室の中には今、何の菌が放流され 互いを汚染しているのか……。 横目にその惨状をみた男も まさか、と不安に駆られた。 あの中にもし『兄』が混じっていれば 汚染は免れないだろう。 恐怖を纏う足取りは、粘る水音を伴い 少し、早足に。] (2) 2022/11/14(Mon) 3:58:36 |
【人】 警備員 ジュード[……だが、男の心配は 現実にはなっていなかった。 『それ』は菌でも薬物でもない『遺骸』だから、 彼らには魅力的ではなかったのか。 沢山のラベルを貼られた掌大の密閉瓶は、 他の液浸標本たちと共に難を逃れていた。 男はそれに急いで近付くと、確認の為に ラベルの文字に目を通す。 男も昔はその古代文字を読めなかった。 ]けれど翻訳家だった兄の部屋には、 運悪く辞典がまとめられていたから。 男も、それを読めるようになってしまっていた。 (3) 2022/11/14(Mon) 3:59:02 |
【人】 警備員 ジュード...[Laboratório N.º 13: Resíduos de experiências de tratamento antipoisoning] 【13番研究所:防毒処理実験における廃棄物】 Nome de código: Anónimo. 分類名: Anonim Comprimento: aprox. 180 cm (não incluindo cauda) 全長: 約180cm(尾を含まない) Peso: 約70kg-300g 体重: 約70kg〜300g Espécie: Salamandra 種族: サラマンドラ族 Habitat: Garaika 生息地: ガライカ Designação de material perigoso: Nenhum... 危険物指定: なし (4) 2022/11/14(Mon) 4:07:33 |
【人】 警備員 ジュードよ、よかったぁ…… [……並ぶ文面は見慣れていたものに違わず。 男は安心して息を吐く。 これが無事なら、ひとまずは安心できる。 かれらの罪状を訴える術も無くならないし 昔の平穏も、忘れないでいられる気がした。 男はそれを慎重に両手でもつと 倉庫の隅、棚の影へと座り込む。 既にめぼしいものを持ち出された倉庫は 人もおらず、窓もなく。 思いのほか、男の求める安心に 近いものであった。] (5) 2022/11/14(Mon) 4:08:12 |
【人】 警備員 ジュード[そうして、手の中に入っている小瓶に ぽつぽつと語り始める口調は、 島の者は聞いた事のないものだったかもしれない。] ねえ、外の様子がおかしいんだ なにかがおかしいんだけど もう、でていくのもこわくて 友達も、いなくなってしまって ……いつになったらここを出られるだろう? [── 一体いつになったら、 怯えずに暮らす事が叶うんだろう? ── ……男を覆う粘液も元は体液である。 涙や鼻水、涎、汗、もしかしたら 少しの胃液とか血とかの 汚物も混じっているかもしれない。 それらを垂れ流して居れば、 脱水を起こすのも自然なこと。 微睡に飲まれかけている男は、 何者かが倉庫に入ってきても すぐには逃げられないだろう。**] (6) 2022/11/14(Mon) 4:09:06 |
【人】 警備員 ジュード[── かつて、ガライカにはある兄弟が住んでいた。 兄は毒が強く、長く部屋を出る事もままならなかったが、 その中でも、家で行える書籍の翻訳の仕事をしていた。 弟も、その仕事を手伝い暮らしていた。 彼らはそれなりに幸せであった。 隣国からの手紙が、村の長へと届くまでは。 ラング機関に関する記述と 『あなた方の自由のため』、機関を利用した 防毒魔術の開発を計画している。 その協力者を募りたい。と書かれた手紙。 送られた内容は、民に隣国への疑念と 外の世界への希望を抱かせた。] (42) 2022/11/16(Wed) 18:12:47 |
【人】 警備員 ジュード[相談の末、特に強い毒を持つ者を制御できるなら 他の者の毒も制御する事は容易であろう、と 村の人々は、 厄介者であった 兄を送り込む事にした。兄も迷惑ばかりでなく『やくにたつ』事を願っていたから 均一は、傍目には取れていたのかもしれない。 そうして連れて行かれた兄は 帰ってもこなければ、便りをくれる事さえなく。 交易に訪れる隣国の民も、最近は外では戦が激しいのだと ぱったりと来る事をやめてしまっていた。 ……兄が隣国へ行ってから何年が経った頃だろうか。 弟の元へ、隣国からの小包が送られてきたのは。] (43) 2022/11/16(Wed) 18:13:20 |
【人】 警備員 ジュード[長を通さず商人によって渡されたその中には 一通の手紙と小瓶が入っており、 手紙には以下のような文が書かれていた。 『お兄さんは今でも役に立っている。 おかげで出来た防毒魔術のテストの為、 防毒魔術を纏い、”一時返却”するこの瓶を、 指定の日の夜に我が国の港まで持ってきてほしい。』 確かに同封された書類には、魔術の使用方法が記されていた。 手紙や魔術は読み解ける文字であったのに、 瓶のラベルが古代文字で書かれていたのは 秘匿性の為か、この計画の為だったのか。 どちらにせよ、読み解かない方が幸せだったのだろうけど。 疑念を抱いた弟は、それを読み解いてしまった。 彼らの脅威の片鱗を、知ってしまった。] (44) 2022/11/16(Wed) 18:14:42 |
【人】 警備員 ジュード── 朝日の届かない場所で ── [座り込んでから、どれだけが経った頃か。 頬に当たる冷たい感触に目を開けると、 目の前にはモップの先端があった。 既に床を撫ぜた後なのだろうか。 それは色々な汚物を混じらせたような 粘性を含む汚水を垂らしており、 毛束の隙間には虫の足や潰れた羽さえ紛れている。 ひどい匂いに男が身を引くと、 向こう側にはモップを持つ研究員の姿が見える。 彼の表情は、憤怒を孕んでいた。] (46) 2022/11/16(Wed) 18:15:40 |
【人】 警備員 ジュード「……お前がやったのか?」 [非常に端的な問いかけを、男は理解する。 少し眠ったからか記憶ははっきりとしていた。] 男は逃げ惑う内に、様々なものを侵した。 それはこの水晶宮も例外では無い。 何もかもを崩壊させた後悔は縺れて、 質問に答えようと口を開くも 乾いた喉に声がひきつれる。] あ……そ です、 おれ たくさんに、ひ、ひどいこと してしまって すっ、すぐ かたづけ を、 [どうしよう、と微熱に苛まれる頭で考えるも、 状況を改善する方法も、事態をなかったことにする 奇跡の一手も思いつかない。 せめて、今すぐにできることをやろうと、 男は座り込んでいた身を起こしかける。 ……その喉を、指叉のようにモップが抑え込んだ。] (47) 2022/11/16(Wed) 18:16:40 |
【人】 警備員 ジュード「どういうことだ 最初にちゃんと毒性の処理は できてるのか聞いたよな? お前、大丈夫だって言ってたじゃないか。 薬を飲んでるから大丈夫だって、 具合の悪い時には来ないからって 約束したじゃないか。 なんで来たんだよ なんでおれたちの研究室を汚してるんだよ なんで あいつらみんな 死んでるんだよ! 」[返答の間も無く、研究員は叫びながら 振り上げたそれで男を殴りつける。 汚水がそこら中に飛び散っても、 硬い固定具が男にぶつかっても 止まることはない。] (48) 2022/11/16(Wed) 18:17:21 |
【人】 警備員 ジュード[男はこの道すがらに 彼の飼育していた希少な小鳥を 侵してしまったのかもしれなかった。 彼と仲の良かった職員が倒れていたのに 躓いてしまったかもしれなかった。 それ以外だって、思い当たる罪はいくらでも。 武器はいつのまにか持ち手の方になっており、 怒号とともに一際高く振り上げられる硬い木の柄。 その下で、男は前かがみにうずくまる。 ……男は、自分の命よりも 『宝物』を守ろうとしていた。 目的と主体の優先順位が反転する。 ]それは正気なのか、狂気なのか。 (49) 2022/11/16(Wed) 18:17:36 |
【人】 警備員 ジュード[……研究員だって、本心から 男のせいだと思ってた訳じゃない。 ただ、宝物を失ったことを受け入れられず、 一時的に責める対象が欲しかっただけ。 気が済んだら、やめるつもりだった。 その思惑は、本人にしかわからなかったけど。] [── めき、と。 薄く硬質なものが砕ける感覚が 研究員の手に伝わる。] 「── ぁ、」 [目線の先、床に倒れ伏す”それ”は、 ぼろぼろだった。] (50) 2022/11/16(Wed) 18:19:07 |
【人】 警備員 ジュード[べたべたの身体には、落ち葉、ゴミ、泥、煤、 虫、血液、風に舞った銀の体毛、だれかの体液…… さまざまな狂騒の名残がはりついている。 尾の骨が幾つか砕けているのか、 先端に瘤のような腫れが生じている。 火傷でもしているのか、 服の所々には浸出液が染みを作っている。 細かな切り傷や打撲は数え切れないが 一つ、頭蓋を叩き割った傷からは 滾々と血が流れている。 そして、それぞれの傷には 汚らしい死肉と汚水と毒とが染み込んで、 ぐずぐずと、患部を爛れさせていた。 浅い呼吸をくりかえす"それ"は うごかないし、おきあがらない。] (51) 2022/11/16(Wed) 18:19:34 |
【人】 怪物 ジュード── 天舞う鷹は何を知るか ── [……狂気の収まる頃には誰ともなく、 “この惨状から日常に帰れる”と信じるため、 残骸の片付けを始めるのだろうか。 その中に混じる目撃者や研究員は、 町民や師団員にも散らばる粘液の危険性を説き、 多くの命を救うのだろう。 『甚大な被害を齎した”害獣”は 施設研究員の手によって無事回収され 外部の研究機関へと収容された。』 真実を知らない人たちの間では そのような推測に話が落ち着くのかもしれない。 混乱の傍、他の怪我人に紛れるように ]師団の船へと運び込まれたぼろぼろの青年が "それ"であると、気付くものはいるだろうか。 (52) 2022/11/16(Wed) 18:20:49 |
【人】 怪物 ジュード[研究員は図らずも、”怪物”を仕留めた英雄となった。 怪物を収容しきれなかった点に対しても、 事件時の状況が明らかになる程に 「改善点があるのは事実だが、 一個人を責められる話ではない」 という意見も増えていくのだろう。 何も知らない者が怪物の噂をする中で、 研究者も、いくらかの目撃者も、その真実を語らない。 真実を知らなければその証言は偏見になりうる。 未だ不安定な人々に疑心暗鬼を生ずるだけの話をして 罪人捜しを扇動した所で、何になるのだろう。] (53) 2022/11/16(Wed) 18:22:40 |
【人】 怪物 ジュード[……男は、怪物は、害獣は 自らの手で己が危険なものであることを証明した。 無害であることを証明するよりも、ずっと容易に。 重ねた努力の甲斐もなく、 そこにはなにも、なにも残らない。 鍋に煮込まれた娘のように、 形のない死者は多く居た。 男の不在を訝しむものは少ないだろう。 嘗ての住処も、炎の中で 僅かな私物ごと焼け落ちていた。 もしもあの時、別の選択をしていたら そんな後悔も脳を零れ落ちて 回収され、元のように収蔵される 兄であったものと、 いずれ、教会で見つかるかもしれない彼と ”関わり”があった者は、一体誰なのか? そんな謎の他は、なにも。*] (54) 2022/11/16(Wed) 18:23:08 |
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