【人】 芸術の悪魔 インタリオ[ 書斎の扉は下僕が訪れれば音も無く開かれる。>>94 中は闇に包まれ、背の高い本棚が所狭しと並ぶ 世界中の、既に過去のものとされた言語の書物が揃っている。 人類が使用したことのない言葉で綴られたものも含み、 時代により材質に差があるが全て劣化などは無い。 それらの全てが、 魔術、悪魔、邪教、人ならざる存在たち、あらゆる邪悪に関する本 中には――――……館の主の信仰者達が綴ったものも存在した。 教育に使用した、人類との接触に必要な術に関するものは>>93 かつて魔術師が使用した部屋に保管されている。 合間を縫って灯りが漏れる奥へと進んだ先に、 L字を象るような形でダークブラウンの机が置かれていた。 大きな窓からは枯れ木に実る紅色の連なりを見下ろせる 向こう側に、奈落の裂け目も確かに存在するのが分かるだろう。 ] (95) 2022/05/24(Tue) 2:43:59 |
【人】 芸術の悪魔 インタリオ[ 胸像に掛けられた大粒の真珠のネックレスを覚えているだろうか。 少年が館に来た頃、 今一番のお気に入りであると悪魔が語ったものだ。 近くで祈りの形に手を組むと、 滲むように黒が沸き出て、見る見る内に黒真珠へと変わる。 戯けながら悪魔自ら神僕の真似事をしてみせた。 やってみるように、と言えば彼はどう思っただろうか するしか無かっただろう、主が命じたのだから。 お前はそれに縋る以外の選択肢を捨てたのだから。>>91 よく言うことを聞き、教えられたことを吸収していき 貪欲に糧を取り込んだ少年を、 悪魔は触れ合いで言葉で、さも可愛いとばかりに振る舞った。 その演技に絆されただの子供に戻ることはなく 与えられる役目の為に成長していく姿を、確かに見ていた。>>92 ] (96) 2022/05/24(Tue) 2:44:25 |
【人】 芸術の悪魔 インタリオ「 アレイズ=クローリー 」[ “Arrays-Crawly“ 過去と現在が重なるように、その名を呼ぶ。 人間の頭では追い切れない過去を語らない悪魔は、 その名の意味も語ることはしなかった。 だが、無知な少年の面影を殺した魔術師には伝わった筈だ。 例え館に揃うコレクションとなるには相応しくない魂であっても、 主の所有物であることに変わりはないのだと。 そう定義されても尚、 地を這い見下される立場たるお前は、悦ぶしかないのだと。 悪魔は祝福など授けない。 これは手を離れることとなる魔術師の心を縛り付けた枷である。 忠誠を誓う従者の喉を、黄色の爪が擽った日が遠く過ぎ去れども その錠前は今も外されていない。 ] (97) 2022/05/24(Tue) 2:45:20 |
【人】 芸術の悪魔 インタリオ莫迦な仔。 人間に虐げられてきた君に、飲み物一つやらない主だと思った? [ 共に杯を傾けたこともあっただろう、と。 悪魔はおかしいとばかりに小さく笑って見せた。 掌が宙を仰ぐように片手を傾けると、 もう一つ、従者が持って来たものと同じグラスが現れた。 その手が再び降ろされると、 机の端、空いたまま佇んでいた椅子が勝手に引かれる。 二つに注いだ後、座すことを許そう。 ] (98) 2022/05/24(Tue) 2:45:50 |
【人】 芸術の悪魔 インタリオ[ 過ぎ去りし華美の王朝時代を思わせる意匠のグラスは、 血液めいた酒を注がれる程に、それそのものが真紅へと変わる。 赤き水面を揺らし、白い喉が飲み干してゆく。 その合間にぽつりぽつりと、悪魔は思い出話を始めた。 ] 覚えていないのかな ほら、君が随分活躍してしまって、 血相変えたオレが連れ戻しに来たこともあっただろう あれは中々逸材も揃っていたんだけどね 質の悪い魂も、それ以上に多かったな…… [ アレイズとなった魔術師を地上に戻したのは、 その生きるべき年月が過ぎ去り、魔女狩りが最盛期を迎えた頃。 短い期間に多くの争いが起きた時代であり、 彼にとっては忠誠心を示せる良いタイミングであった。 だが、あまりに多く魂を送ってきた時は 剪定の助けをしろと彼の傍らに体現したこともある。 ] (99) 2022/05/24(Tue) 2:47:51 |
【人】 芸術の悪魔 インタリオああ、そうだ これは返しておかないといけないね [ 二杯目も半ばに減らした頃だろうか。 話が途切れた沈黙に、思い出したように机の上の装身具を取る。 冷たい手が彼のそれに重なり、しっかりと握らせた。 ブローチが置いてあったそこには、 シェードの中で蝶が羽撃き続けるランプの他に、 魔術師が訪れるまで開いていたらしい本がある。 これは人の世で、数十年以内に記されたものである。 アレイズはよく、知っている筈だ。 ]** (100) 2022/05/24(Tue) 2:48:13 |
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