人狼物語 三日月国


212 【身内村】桜色のエピローグ✿

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【人】 火澄 七瀬




 「 …… お父さんとお母さんが死んでからですよ。 」


 次第に勢いを増した雨粒が、窓を叩きます。
 換気は必要なかったかもしれません。

 それでも私は、テラスへ通じる両開きの扉を
 ひとつだけ開け放ちました。

 蝶番の音と共に、外へと視線を向けたなら。
 少しだけ湿った空気の先に、
 大きな桜の木が立っていました。
 
 
 
(7) 2023/05/08(Mon) 17:14:40

【人】 火澄 七瀬




 「 …… たとえ望んでいなくても。
   やらなければならないこともあるんです。 」


 妹からの問いに対して。

 落ちて土にまみれるだけの花弁を背にしながら。
 私は静かに微笑みました。**
 
 
 
(8) 2023/05/08(Mon) 17:15:45

【人】 水面 禎光

 
 
 思い出作りだと言うのなら ───
 人気スポットに行くよりも、
 些細な相合傘の方が記憶に残るんじゃないか ?
 
 そんな僕の思いつきは、病弱キャラであるが故に
 お節介とまではきっと思われないだろう。

 心まで離れていくわけじゃないんだ、って
 彼女達の少し後ろから、肩を寄せ合う姿を眺めつつ
 僕は目的の場所までついていく。
 
 
(9) 2023/05/08(Mon) 22:48:26

【人】 水面 禎光

 
 
 僕は、基本的にテレビを観ない。
 入院生活の多かった身としては
 数少ない娯楽のひとつだけど ───
 病院では専用のカードを買わないと観られなかったんだ。
 両親もカードを切らす度に補充してくれるから
 なんだか途中から申し訳なくなってきちゃって。
 ───それに、読書の方が好きだった。
 
 もう退院できないんじゃないかって思いながら
 毎回入院していたから
 外の世界をモニター越しに見せつけられるより
 頭の中で想像している方が まだ心が穏やかでいられた。
 
 
(10) 2023/05/08(Mon) 22:48:30

【人】 水面 禎光

 
 
 つまりは ───
 テレビも観なければ、天気予報も調べない。
 荷物は最小限にしたいから、折りたたみ傘も持ち歩かない。
 学校に置き傘をしていたら、雨が降った日に盗られてた。
 晴れの日に戻ってきてたけど 雨の日にまた無くなってた。


 そんな僕が、然るべきときに傘を持ってないのは
 昔からよく或る事で。
 そういえば ───あの日もこんな曇天だったな、と
 記憶に色づけされた昔の空と 今の空を重ね合わせた。
 
 
(11) 2023/05/08(Mon) 22:48:33

【人】 水面 禎光

 *****
 
 
 「 うん、今から帰るとこ     ・・
   傘は持ってきてないなぁ …… 瀬名は ? 」
 
 
 或る放課後。委員会の話し合いが無駄に長引き
 帰路に着こうと昇降口に向かった先で七瀬に出会った。
 
 まるで瀬名のような口調に『 おや? 』と思った。
 束の間だけ、だけど。

 瀬名は外見を七瀬に合わせて、
 七瀬は口調を瀬名に合わせて。
 似た者同士 ─── 双子なんだから それはそうか。
 
 
(12) 2023/05/08(Mon) 22:48:37

【人】 水面 禎光

 
 
  服装や口調は、いわば彼女達の" 名札 "だろう
  他者が見分けをしやすくする為の ────
 
  僕が彼女達を間違えないのは
  もっと別のところで違いを感じているから。
 
  姉として産まれた双子の片割れと
  妹として産まれた双子の片割れ、とでも言うのかな
  滲み出るオーラというか 眼差しというか
  感覚的なモノだから、言語化するのは難しいね。
 
 
(13) 2023/05/08(Mon) 22:48:41

【人】 水面 禎光

 
 
 尤も ────
 
 僕が知っているのは当然、
 僕と出会ってからの彼女達であって。
 其れ以前はどうだったか、なんて事は知らないんだけどね。
 
 
(14) 2023/05/08(Mon) 22:48:43

【人】 水面 禎光

 
 
 ともあれ、少し面白そうだったので
 僕は間違えたフリをしてみる事にした。
 
 いつも呆れ顔で見守り体勢の七瀬にしては
 こういうイタズラは珍しいと思ったから。
 
 まあ、イタズラでもなく
 本来の口調に戻っただけなのかもしれないけどね。

 
 
 *****
(15) 2023/05/08(Mon) 22:48:47

【人】 水面 禎光

 
 
 さて、古びた一軒家 ───知らない人の家にやってきた。
 
 僕は、鍵を取り出す動作には気付かなかったけれど
 傘立てに傘を入れたり、換気の為だろうか 窓を開けたり。
 きょろきょろと部屋を見回すだけの僕と比べて
 機敏に思える七瀬の動作は" 知っている人の家 "に思えた。
 
 それから瀬名が七瀬に進路の事を問いだせば
 僕は彼女達から少し離れ、別の部屋へと足を向ける。
 
 七瀬の進路 ─── 全寮制の高校。
 普段通り" 相談 "だったなら僕も瀬名も反対したんだろう。
 だから、少数派が意見を通す為の手段。
 相談ではなく" 決定 "してしまったのだろうか。
 
 
(16) 2023/05/08(Mon) 22:48:50

【人】 水面 禎光

 
 
 もちろん、何でも僕たちだけで決められる訳では無く。
 今回なんて特に" 家庭の事情 "が絡んでくる。
 
 だからこそ─── 僕よりも瀬名の方が
 いきなり聞かされたショックが大きいのは想像に易い。
 そういう理由で会話に混ざらず、少し離れたのだけど。
 
 
 「 ……… なんだろう、日記 ? 」
 
 
 書斎らしき部屋に入ると まず本を眺め、
 それから窓際に置かれた重厚な机に視線を移す。
 その上に並べられた数冊の本 ────
 ひとつを手に取り開いてみると

         どうやら、それは日記のようだった。**
 
 
(17) 2023/05/08(Mon) 22:48:55

【人】 【NPC】ヒトデ姫 スピカ

 
 
 「 ひーとーでーのーうーたーがーー ♪
 
   ♪♪ きーこーえーてーーくーるーよー !
 
 
        ΨλДщ〇・Θη! Θη! ♪♪ 」
 
 
(18) 2023/05/08(Mon) 23:18:58

【人】 【NPC】ヒトデ姫 スピカ

 
 
 ご機嫌で歌ってたら、ちょうど雨が降ってきたの。
 小腹が空いてきたコトだし、
 私は ひと狩りしようかと外に出たわ。

 玄関?鍵??──なんで私が人間の出入口を使うのよ。
 ふつーに、換気扇のスキマから出たわよ!
 こうやって、グニャって それからグニグニってやれば
 誰でも出入りできるでしょ、常識よ。
 
 ……え?出来ないの??
 ニンゲンって偉そうなのに本当に惰弱よね!!
 
 あ、でも分裂は出来るようになったのかしら?
 ちょうど すれ違ったニンゲンが同じ顔してたわ!
 
 
(19) 2023/05/08(Mon) 23:19:01

【人】 【NPC】ヒトデ姫 スピカ

 
 
 ようやく分裂覚えたの〜?なんて思わなくも無いけど
 まあ、はやく私の域まで進化するコトね!!**
 
 
(20) 2023/05/08(Mon) 23:19:03

【人】 火澄 七瀬




 雨が降っていました。



(21) 2023/05/09(Tue) 17:16:20

【人】 火澄 七瀬




 禎光!どっちがどっちでしょうか!



 果敢に挑む瀬名の顔。>>1:30


 すごいね、禎光。また正解!
  今日は間違わせる自信があったのにな。 



 負けを認め、賞賛の言葉を送る流れさえ。>>1:50
 私の目には、輝かしく映っていたのでしょう。


             だからこそ ────



 
(22) 2023/05/09(Tue) 17:17:29

【人】 火澄 七瀬




  瀬名は ? 



 …………
 あの日呼ばれたのは妹の名で。>>12


       そうですね、私は勝利したのでしょう。
       ただその音の響きは、
       思ったより私の心を震わせませんでした。
 
 
 
(23) 2023/05/09(Tue) 17:19:44

【人】 火澄 七瀬




 「 仕方ないな。
   なら、私の傘に入れてあげるよ。

   濡れて体調崩したら大変だからね。 」


 なら、ここでネタバラシをするべきだったのです。
 しかし思いのほか心に掛かった負荷。
 そちらに気を取られてしまった私は、

 別の言葉を口にすると、
 彼の前に自身の薄紅色の傘を広げました。
 
 
 *****
(24) 2023/05/09(Tue) 17:20:59

【人】 火澄 七瀬




 「 私もひとつ、聞いていいでしょうか。 」


 私の回答に瀬名が納得したかは分かりません。
 なので不満の声が上がる前に、
 開け放たれた扉を前に尋ねます。>>8
 もう少し雨が強くなれば、
 吹き込む水滴が身体を濡らしたかもしれません。


 「  瀬名、貴女は ──── 」


 人間というのは不条理な生き物です。
 正しいとわかっている道を選べない、

 …… どうして、そのような愚かな存在に。
 私はなってしまったのでしょうか。

 
 
(25) 2023/05/09(Tue) 17:37:00

【人】 火澄 七瀬




 日記にしたってそうです。
 幾ら人の目に触れない場所にあるとはいえ、
 あんなものを記すべきではありません。

 残したところで、良いことなんて何ひとつないのに。
 私は自身の罪を告白せずにはいられなかったのです。


          
あの日も、雨が降っていました。



(26) 2023/05/09(Tue) 17:37:32

【人】 火澄 七瀬




 なので、
 
私が父と母を殺したことも

 
あの日記にはきちんと記されていたでしょう

 
 
 
(27) 2023/05/09(Tue) 17:37:43

【人】 火澄 七瀬




 雨が降っていました。
 雨が降っていました。
 雨が降っていました。
 雨が降っていました。
 雨が降っていました。


(28) 2023/05/09(Tue) 17:37:49

【人】 火澄 七瀬

 



 「 …… バレンタインのチョコレート。

           禎光に贈ったの? 」
 
 
 
(29) 2023/05/09(Tue) 17:38:51

【人】 火澄 七瀬




 「 瀬名は、禎光のことが好きなの? 」



         そして今日も、雨が降っています。**


(30) 2023/05/09(Tue) 17:40:29

【人】 火澄 瀬名

 
  
 
 テラスへ通じる扉がひとつ開けられると、
 湿った匂いと肌寒い風が流れ込みました。
 七瀬の視線の先を追うと満開には少し早い、
 大きな桜の木が目に入りました。

 半年前の両親の死。
 まだ死自体をうまく受け止め切れていない私でも
 先のこと、考えなかったわけではないです。
 

 だけど ……

 
   
(31) 2023/05/09(Tue) 23:15:14

【人】 火澄 瀬名

  
 

 「 ……やっぱり、望んでいないことなんだ。

  やらなくちゃならないことって、なに?
  どうしてそんな風に決めるの?せめて …… 」


  
(32) 2023/05/09(Tue) 23:15:17

【人】 火澄 瀬名

  

 
 せめて。 せめて ……



 
       どうだったら良かったというのでしょうか




  
(33) 2023/05/09(Tue) 23:15:21

【人】 火澄 瀬名

   

 
 私が言い淀む間に、七瀬からも問いかけが。

 扉を開けたことで強くなった雨音が煩くて。
 でもそれがなければ、乾いた空気の流れる沈黙は
 もっと重く感じていたかもしれません。



 「 チョコレート、あげたよ。

   七瀬とは作れなかったけど、
   他の日に作って、渡したよ。毎年みたいに。 」



 バレンタインなんて幼馴染の間では、
 年にいくつかある恒例行事のひとつに過ぎないでしょう?
 

 
(34) 2023/05/09(Tue) 23:15:24

【人】 火澄 瀬名

 



 「 ……… なんでそんなこと聞くの? 」


 
 『 禎光のこと、好きだよ。幼馴染として。 』



 いつも通りそんな風に答えれば良かっただけなのに、
 今日は突っかかってしまう気持ちが止められませんでした。
 
 

 「 七瀬は好きなの?禎光のこと。 」


  
(35) 2023/05/09(Tue) 23:21:07

【人】 火澄 瀬名

 
 

 「 …… 付き合っちゃえばいいじゃん。
   七瀬と禎光。
 
   私が禎光に言ってあげようか?
   エンキョリレンアイってやつになるのか。
   大変だね。

   それなら寮に引っ越すまで、
   沢山一緒に遊ばなきゃ。
   あ、もしかして今日も私って邪魔だった?


   そっかぁ …… ごめんね、
お姉ちゃん
 」 



 七瀬がお姉ちゃんの顔をすることを嫌がる私が、
 お姉ちゃんと呼ぶ時は決まって、 ────…… **


   
(36) 2023/05/09(Tue) 23:23:40
 




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