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【人】 入江 修「じゃあ今日の授業はここまでな。 来週はテストだ。ちゃんと勉強しとけ。 こら、そこ。えーじゃない。 あとシューくんって呼ぶな。先生って呼びなさい。」 (1) 2022/12/09(Fri) 1:29:41 |
【人】 入江 修ぶつぶつと文句を言う生徒達に 俺は呆れたような声で勉強を促す。 まぁ気持ちは分かるけども。 こんななんの面白みもない教科書で 面白おかしく学んでいきましょうなんて 無理難題もいいところだ。 「大丈夫。俺がテストに出るって 言ったとこしか出さねーよ。 平均点70超えたら次の授業は 自由タイムにしてやるからな。頑張れ。」 カリキュラム的なところなんて 暗記ばっかさせるたかが社会科の しかも日本史ならさほど問題じゃない。 (2) 2022/12/09(Fri) 1:31:23 |
【人】 入江 修担任の先生ということもあってか 日本史、世界史、政治経済と、社会科目を 全て引き受ける俺は自分のクラスの生徒達とは 特に接点が多かった。 俺自身こんな権威のけの字もないようなやつで それが良かったのか悪かったのか 生徒達からは友達のような感じで接される。 まぁでもその方がいいかもしれない。 その方がこいつらのことをより近い目線で 見守ることができるし、 そのためなら権威なんて要らないってもんだ。 なんたってこいつらは俺の可愛い生徒達なのだから。 (3) 2022/12/09(Fri) 1:33:49 |
【人】 入江 修自分のクラスの生徒の一人に 呼び出しをかけて俺は教室を後にする。 俺からの呼び出しなんて大抵ろくでもないから なんで呼び出されたかなんて本人が言わなきゃ 周りの生徒からは浅見がゆるゆるの教師に こき使われてるようにしか見えないだろう。 浅見という生徒はやけに問題があって 担任の俺としては大変な生徒だ。 もっとも問題がなのは浅見というよりも 本人の周りなわけだから余計面倒な話だが。 特別扱いする気はさらさらないものの 少しばかり目をかける機会が多い。それだけだ。 (5) 2022/12/09(Fri) 1:39:23 |
【人】 浅見 律 暗記しかない日本史なんて、 少し勉強すれば満点取れるのに 周りの子が文句を言う理由が微塵も分からない。 どうせ家に帰っても勉強しかすることがないから 暗記科目くらい満点取れて当たり前。 地頭がいいわけじゃない私ですらできる科目が 暗記ばかりの科目だと思ってる。 多分、そんな思考から澄ましたように見えるせいで。 嫌われるのだろうけど。 (10) 2022/12/09(Fri) 2:30:45 |
【人】 浅見 律 嫌われても仕方ない。 私には価値なんてないんだから。 仮に友達ができたとしてその子が不幸になる。 だって、私と話しても 何も楽しくなんてないはず。 流行りの歌も、服も、漫画も。 同い年の子たちが興味を示しそうなもの。 その全ての話に、私はついていけないから。 つまり、私に話しかける時間が無駄だ。 だから、周りが私を気にかけないのも 私に友達がいないのも、仕方ないこと。 (11) 2022/12/09(Fri) 2:34:20 |
【人】 浅見 律 同い年の子が興味を示す娯楽が 一切与えられてない私に、 与えられてる数少ないものは、 生きるために必要な最低限のもの。 外に出たときに外聞の悪くならない服と 栄養失調にならない程度の食事と、 温かさなんてどこにもない住む場所。 その環境が異常だってことくらい 流石に分かってる、普通じゃない。 (12) 2022/12/09(Fri) 2:34:44 |
【人】 浅見 律呼び出しは何度もされてるから 普通なら周りからはいい加減不良生徒だと 疑われててもおかしくないけど、 そこは、先生の人柄なんだろうか、 そこまでの疑いはかけられてないから ひそひそ話の対象になることもなく。 ……人柄というより周りが私に興味ないだけ、か。 (15) 2022/12/09(Fri) 2:37:01 |
【人】 浅見 律「それで……。 手伝い、って何ですか?」 呼び出された資料室で聞いた質問。 あなたにとっても私にとっても、白々しかった? それでも、いつもそう聞いていたし。 私は、あなたに言われることを言われるままに。 あなたのW手伝いWをしようと。** (18) 2022/12/09(Fri) 2:38:41 |
【人】 入江 修─── 半年前 ─── 学校の先生をやめたくなる瞬間三選のうち 大きなウェイトを占めるのが保護者との面談だ。 学期半ばと末で年に4回行われる所謂クソイベ。 こっちが下手に出てるのをいいことに 保護者という名のクレーマーの処理をさせられる。 時には子供である生徒と俺を置き去りにして 一人で延々とキレ散らかしてる保護者さえいた。 だが、そういうときこそ 生徒たちの雰囲気を探れば そいつらの隠された本音がみえたりもする。 (19) 2022/12/09(Fri) 3:45:47 |
【人】 入江 修決して口に出すことは出来ないが 浅見律との面談はよく覚えている。 あの時感じた強烈な違和感が 俺にはどうしても気になってしまい、 他のやつがいないタイミングで 俺は思わず聞いてしまったんだ。 (21) 2022/12/09(Fri) 3:47:02 |
【人】 浅見 律─── 半年前 ─── 授業参観とか運動会とか。 両親が学校に来るような行事は 不参加って相場が決まっていた。 理由付けなんて簡単。 仕事が忙しいから。 このご時世、共働きなんて珍しくもないから そう言われて、疑う人はほとんどいない。 本当は、母親は専業主婦なのにね。 (28) 2022/12/09(Fri) 13:04:48 |
【人】 浅見 律でも、そんな我が家でも 面談だけは避けられなかったようで。 世間体を何より気にするくせに 娘を蔑ろにし続ける、矛盾だらけの親の演技なんて 多くの保護者を見てきた人なら、 看破するのは難しくなかったのかもしれない。 たとえ、上辺だけはいい親に見えたとしても。 (29) 2022/12/09(Fri) 13:05:23 |
【人】 浅見 律『あの子は、学校で迷惑をかけたりしてませんか?』 多分、この一言で分かるんじゃないだろうか。 信用も何もない、この一言で。 (30) 2022/12/09(Fri) 13:05:51 |
【人】 浅見 律にこりともせず返す。 別にこの時は、あなたを信用したわけじゃない。 そのつもりだったけど。 思いのほか、あなたの言葉が嬉しかったのだ、と。 気づくことになるのは、少し先の話。* (35) 2022/12/09(Fri) 13:07:39 |
【人】 浅見 律馴染めと言われたところで馴染む術もないし 先生にひいきされてると悪目立ちして いじめられるくらいなら、今のままでよかった。 どうせこの世界には 無価値な存在の居場所なんてないから。 (36) 2022/12/09(Fri) 13:08:39 |
【人】 浅見 律分からないわけじゃない、見当はつく。 でも、言われるまで自分から動かないのは 許可なく何かをすることは 私の家では許されないことだから。 ソファーに腰掛けるあなたを目で追いかけて。 本題を聞けば、ようやく私は自ら動く。* (38) 2022/12/09(Fri) 13:10:16 |
【人】 入江 修この激励になんの意味があるのだろうか。 大人になると意味の無いことも 時には声に出していかなきゃならないんだと うちの可愛い生徒にはいつか教えてやったはず。 だが実践してみせた場がまさか面談なんて 皮肉も効きすぎたら困りもんだ。 (41) 2022/12/09(Fri) 16:23:03 |
【人】 入江 修浅見の質問への答えは至ってシンプル。 だがこれで浅見が納得してくれるかといえば 少なくとも俺にはそんな気が全くしない。 「ただの不仲じゃ済まないってか? まぁあの面談を見りゃ気にもなる。 あ、やべ、タバコ忘れた。 浅見の要領を得ない回答が、 その闇の深さを物語ってるような気がして。 いつもの癖でタバコを吸おうとしたところで 忘れたことに気づくと肩を竦め、徐に口を開く。 (43) 2022/12/09(Fri) 16:25:00 |
【人】 入江 修「前にな。俺がよく面倒見てた生徒がいたんだ。 そいつは両親から虐待を受けてて いざ保護された養護施設でも居場所がなくてなぁ。 よく理由をつけては俺のところに来てた。 お前を見てると、何となく思い出すんだよなぁ。」 (44) 2022/12/09(Fri) 16:26:39 |
【人】 入江 修お前のことを目にかけようとするのに これ以上の理由は要らないだろと。 微動だにしない氷の表情へ バツの悪そうな表情で笑う俺は どんな大人に見えたんだろうな。** (46) 2022/12/09(Fri) 16:27:45 |
【人】 浅見 律 でも余計なことをこの人は言わない。 その確信を私に持たせてしまったからこそ。 この家庭環境を変える気などない、と 私は直感で悟ってしまったから。 だからこそ、私はあなたに話してしまったし…… (51) 2022/12/09(Fri) 19:04:14 |
【人】 浅見 律勘だけでここまで明け透けな質問なんてしない。 私がそのシンプルな答えに納得するはずもなく。 咎めるような視線が言葉よりはっきりと それを物語っていたと思う。 「……そう、ですね。 仲の良し悪しって、 関係を構築した後の話ですし。」 つまり、構築すらされていない、と。 そこまで言えばあなたは納得したのか。 タバコを吸おうとしてたことへは 何も言わない。 というか言えない。 (52) 2022/12/09(Fri) 19:05:27 |
【人】 浅見 律特に視線を合わせることもなく、 おもむろに語られる話を聞いていた。 あなたが私の断片的な話で どこまで察したのか知らないけれど 少なくとも、私を気にかける理由なのだ、と その程度は理解できた。* (53) 2022/12/09(Fri) 19:06:19 |
【人】 入江 修人のことを聞きたきゃ自分も話せ。 昔聞いた人と仲良くなる鉄則を 俺は浅見に対して使っただけのこと。 タバコに触れられなかったことは感謝しかない。 写真でも取られたら無事に俺の首が飛ぶ。 その効果があったかどうかはさておき 俺のことは、理解してくれたようだ。** (58) 2022/12/09(Fri) 23:36:24 |
【人】 入江 修だんだんと分かってくる。 俺の事をいい先生だと思ってるなら そりゃ至極光栄なことだが。 浅見は言われるほど不良なわけでもない。 蓋を開ければ良い子なんだ。** (60) 2022/12/09(Fri) 23:43:42 |
【人】 浅見 律大人の作る世界に 期待できるほどの育ち方はしてない。 あなたにだって別に期待してなかったけど。 あまりに白々しい言葉を言うものだから。 地雷ってほどではないけど 聞いてて気分が良くなる言葉ではなかったのは事実。 (61) 2022/12/10(Sat) 1:27:40 |
【人】 浅見 律私の視線が先生を反省させてるとは知る由もない。 別に見くびられてたところで それに対して言葉で何か言ったりはしない。 歳の差も立場の差もあるし、 何より私自身が大した人じゃないことくらい 自分が一番よく知ってるから。 (62) 2022/12/10(Sat) 1:28:01 |
【人】 浅見 律 料理を作ってもらったことも 衣服を洗濯してもらったことも 部屋の掃除だって。 私が何も出来ない本当に幼子の頃は 違ったのかもしれないけれど。 物心ついた頃から、身の回りの世話は 全て自分でするものだった。 私が家で何してるのか、少しでも聞いたなら 不干渉じゃないことなど すぐに知られてしまったはず。 (64) 2022/12/10(Sat) 1:28:54 |
【人】 入江 修この手の問題で大変なのは 児相の介入が親の倫理を破壊することだ。 通報された親が逆上して子供を殺したとか 児相が親を見誤って家に返してしまい 結果的に虐待が加速してしまったとか。 形が違うだけでネグレクトも同じだ。 まして世間体を気にするやつなら、 児相に厄介になった後の事は想像も容易だろう。 (67) 2022/12/10(Sat) 8:20:26 |
【人】 入江 修「児相も役に立たねぇしなぁ。 親元から離れる方法なら何個か思いつくんだが。 多分親とは絶縁みたいになるから 後は浅見がどうしたいかによるか……」 (68) 2022/12/10(Sat) 8:21:23 |
【人】 入江 修俺はぶつぶつと浅見の前で独り言を零し ヤニに呆けた頭をフル回転させる。 これが小学生なら話はもっと簡単で 問答無用で強行に出れたりもするのだが。 比較的自分でものを考えられる高校生となると 自主性や自己管理能力という言葉が いろいろと邪魔をしかけてくる。 それに浅見がそもそも事を大きくしたくないなら 俺がこの話を他のやつに持ち出すのも駄目なわけで。 俺は出ない結論を求めて 長く考え込んでしまったりする時もあった。** (69) 2022/12/10(Sat) 8:22:15 |
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