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(n3) 2022/11/13(Sun) 22:18:30 |
(n4) 2022/11/13(Sun) 22:19:05 |
【人】 警備員 ジュード── 深夜:水晶宮 ── [水晶宮の前には、男の知っている者が多かった。 ロビー、アントン、ドリー…… 皆、勤勉で素晴らしい職員だった。 だからこそ、すぐに違和感を察知して>>0:148 ここでずっと、腐臭の中に放置されていたのだろう。 水晶宮に入り込む風さえもを阻止しようと 割れた硝子の前で剣を振るう者も、 ひたすらに逃げ出した犬を 可愛がって撫でまわす者も。 段々と疲れが溜まり始めているようで どうにも緩慢な動きをしている。 男も異常な行動をする彼等も心配ではあるものの、 優先すべきものは彼らではなかったから。 窓を守る警備員の横の 開け放たれた出入り口をこっそり通って、 植物の影に隠れたりしながら、水晶宮の奥、 バックヤードの方へと向かう。] (0) 2022/11/14(Mon) 3:52:41 |
【人】 警備員 ジュード[男がバックヤードの重たい扉を開くと、 瞬間、厭な獣臭と共に餌用の虫たちが飛び出した。 どうやら、檻を開け放った者もいるらしい。 そこらじゅうに這い回る虫が、 保護されているか弱い虫たちの住処を侵す。 爬虫類や齧歯類がそれを捕まえて食べる。 猫科がそれに飛びついて弄ぶ。 顔を顰めながらも廊下に入り込んだ男の傍では、 外の世界と変わらない秩序が保たれていた。 そうして食い尽くされる虫や獣が、 研究者たちの宝物である以外は。] (1) 2022/11/14(Mon) 3:55:40 |
【人】 警備員 ジュード[目的地の手前、ガラス越しに見える研究室も 気を失ってしまいそうな状態だった。 サンプルを解放しようとした者が居たのだろう。 倉庫に入っていたはずの試験管までもが 栓を抜いた状態で実験机に並べられている。 研究室の中には今、何の菌が放流され 互いを汚染しているのか……。 横目にその惨状をみた男も まさか、と不安に駆られた。 あの中にもし『兄』が混じっていれば 汚染は免れないだろう。 恐怖を纏う足取りは、粘る水音を伴い 少し、早足に。] (2) 2022/11/14(Mon) 3:58:36 |
【人】 警備員 ジュード[……だが、男の心配は 現実にはなっていなかった。 『それ』は菌でも薬物でもない『遺骸』だから、 彼らには魅力的ではなかったのか。 沢山のラベルを貼られた掌大の密閉瓶は、 他の液浸標本たちと共に難を逃れていた。 男はそれに急いで近付くと、確認の為に ラベルの文字に目を通す。 男も昔はその古代文字を読めなかった。 ]けれど翻訳家だった兄の部屋には、 運悪く辞典がまとめられていたから。 男も、それを読めるようになってしまっていた。 (3) 2022/11/14(Mon) 3:59:02 |
【人】 警備員 ジュード...[Laboratório N.º 13: Resíduos de experiências de tratamento antipoisoning] 【13番研究所:防毒処理実験における廃棄物】 Nome de código: Anónimo. 分類名: Anonim Comprimento: aprox. 180 cm (não incluindo cauda) 全長: 約180cm(尾を含まない) Peso: 約70kg-300g 体重: 約70kg〜300g Espécie: Salamandra 種族: サラマンドラ族 Habitat: Garaika 生息地: ガライカ Designação de material perigoso: Nenhum... 危険物指定: なし (4) 2022/11/14(Mon) 4:07:33 |
【人】 警備員 ジュードよ、よかったぁ…… [……並ぶ文面は見慣れていたものに違わず。 男は安心して息を吐く。 これが無事なら、ひとまずは安心できる。 かれらの罪状を訴える術も無くならないし 昔の平穏も、忘れないでいられる気がした。 男はそれを慎重に両手でもつと 倉庫の隅、棚の影へと座り込む。 既にめぼしいものを持ち出された倉庫は 人もおらず、窓もなく。 思いのほか、男の求める安心に 近いものであった。] (5) 2022/11/14(Mon) 4:08:12 |
【人】 警備員 ジュード[そうして、手の中に入っている小瓶に ぽつぽつと語り始める口調は、 島の者は聞いた事のないものだったかもしれない。] ねえ、外の様子がおかしいんだ なにかがおかしいんだけど もう、でていくのもこわくて 友達も、いなくなってしまって ……いつになったらここを出られるだろう? [── 一体いつになったら、 怯えずに暮らす事が叶うんだろう? ── ……男を覆う粘液も元は体液である。 涙や鼻水、涎、汗、もしかしたら 少しの胃液とか血とかの 汚物も混じっているかもしれない。 それらを垂れ流して居れば、 脱水を起こすのも自然なこと。 微睡に飲まれかけている男は、 何者かが倉庫に入ってきても すぐには逃げられないだろう。**] (6) 2022/11/14(Mon) 4:09:06 |
(n11) 2022/11/14(Mon) 12:08:19 |
(n12) 2022/11/14(Mon) 12:09:11 |
【人】 人狼 ラシードごぽり、 と。 首に掛かった縄が締め上げられれば しろがねの巨体は血泡を口から零しながら、 紅く浅い海の中へと斃れる。 その躰には傷一つ無く、前肢を、口元を濡らすそれは 全て返り血、貪った際に滴り落ちた血。人間の、血。 (7) 2022/11/14(Mon) 12:09:45 |
【人】 給仕 シロタエ―― その頃の仔狐亭 ―― [本来なら火の気も人気も絶えるはずの時間 最初の狂乱はすでに無くなっていたけれど 掃除に憑りつかれたベテラン給仕は、汚れが、と言いながら水をぶちまけて調度品を台無しにして 店のものを食い散らしていた客たちは他へと移動したらしく 客とまぐわっていた給仕はあられもない姿で転がって動かない 店主はといえば相変わらず血まみれのエプロンのまま大鍋をかき回している 「あぁ違う、こんなんじゃない俺が作りたい味は!」 そう言いながら調味料やらをくわえていくが、何をどう混ぜたのか酷い臭いがする 鍋の中は煮込まれすぎて、何が入っているのかもわからない 足元には様々な食材とそうではない物の残骸が散らばっている そうして、新たな「食材」を放り込もうとしたところで 開け放たれていた窓から「それ」は来た>>n7] (8) 2022/11/14(Mon) 22:40:47 |
【人】 給仕 シロタエ[店主の手が止まる、瞬きをして、目の前の鍋とその臭いに顔をしかめ 手にした食材と思っていたものが何かに気付き絶句する] 「なんだ、これは……俺は一体何を……何を料理していた?」 [答えなど聞かずとも目の前にあった……鍋の端に覗く人の名残 呻き、よろめいて、店の中へと視線を向け 大事な店が酷い惨状に変わり果てているのを見た ベテランの給仕がモップを抱えたままやはり呆然と店主を見ていた] 「あ……なんてことだ、なんて……」 [崩れ落ちて、目を見開いて 当たりに悲痛な叫びが響き渡った**] (9) 2022/11/14(Mon) 22:42:30 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス所々で黒煙が上がる町。 文明の起源と云うべき其れが理性を損なえば 営みを焼き滅ぼす「現象」でしか無いことは 正しく────火を見るよりも明らか、 想定内の光景であった。 異国のタイル職人が家屋の土壁に至るまで敷き詰めた アラベスク模様の石床を、とめどない血が濡らす。 裏路地の子供達が、積み上げられた建材の中から ありもしない宝を爪が割れても尚探そうとする。 価値の総数が決まっている中で、 己の信じる価値を奪い合い、穢し合う獣の群れ。 (10) 2022/11/15(Tue) 4:22:37 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス己の苦痛と引き換えに 歪んだ価値を産出し続ける自分の様な生物が いつか人間の自己破壊を引き起こすと 心の片隅では薄ら感じ取っていた。 それが一体何に使われようとしていたのか。 如何にして学星院上層部が難を逃れたのか。 解ってしまえば、呪いと共に滅ぶ他なく。 訪れ、移り住む者はあれど 去る者の居ない、罪の蒐集を続けるこの島で 生まれた魂は、この島に還るのだろう。 …………だから、私は。 (11) 2022/11/15(Tue) 4:23:07 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[刺激臭の立ち込める通りは酷い有様だった。 体調不良を引き起こす何らかの物質が漂う大気は 苛立ちと共に理性を失った人々の欲望を加速させる。 それを密かに写真に収める者がいる。 我が子を叱り付ける事が生き甲斐となってしまった母親、 収穫したての頭部を売り捌いている露天商、 銀鷹公の治世に反対を掲げ川底まで行進を続ける先導者。 秘めた思想、隠れた危険性、それら全てを 戒めの様に残す。 その足取りはやがて、一つの死体の前で止まる。 全身の皮膚が泡立った様な死に姿と、 周囲に散乱する粘性を帯びた液体。 かつて貧相な地人の男であっただろう亡骸が それを半狂乱で小瓶に掬い集めようとして絶命したのは わけなく想像できる。] (12) 2022/11/15(Tue) 4:23:37 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[傍らに立つ小柄な影は、その様子をじっと見詰めて。 遺体の症状と、要因の液体に心当たりがあるかのように、 何も言わずに佇んで、屈み込んで、それから────] [後少しの所で、交わったかも知れない運命は そのか細き糸を罪の色に染めたまま、縺れていく。] (13) 2022/11/15(Tue) 4:23:53 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス──── 宵;へレース聖堂 [信仰とはこの島における啓蒙の対義語であり、 研究者達が最も近寄らない場所こそが此処だった。 欲を解放した人々の、奥底にある背徳感もまた 神の御前から足を遠ざけさせるのである。] (14) 2022/11/15(Tue) 4:24:11 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[北側へ続く大通りをなるべく人目に触れぬよう抜け、 今や崩れ落ち、熾火が燻るだけとなった自宅を超え、 漸く辿り着いた静謐な場所。 此処は事件後から人の出入りが無かったようで、 外側から閂を外せば容易く侵入できる構造にも関わらず 誰にも荒らされない聖域として残っていた。 普段通っていた敬虔な信徒や聖職者に至るまで 心のどこかでは質素な暮らしを捨て、 好き勝手振舞ってみたかったのかも知れない。 少し考えてみれば当然のことでもあった。 神に縋る事が真の欲望である者など居ないだろう。 誰しも神に祈るその内容こそが、隠れた欲求なのだ。 そして────最期の仕上げをするには お誂え向き過ぎる場所でもある。] (15) 2022/11/15(Tue) 4:24:29 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[咎人は聖堂の壁に造られた、 記憶に新しすぎる神体を見上げる。 咎人にとって、 発祥も、その名も知らぬ聖女の像が 人々に何を齎したかなど重要ではない。 赦しも、救いも、最早求めるには遅く この場所でさえも一種の舞台装置に過ぎない。 理論としての説明が叶う、それ以上の意義はない。 唯、都合が良いというだけ。 初めから、親殺しの罪を背負ってまで 生き永らえるつもりも、後世に名を連ねるつもりも、 其処にはなかった。 唯一の、揺らぎと言うなれば────] (16) 2022/11/15(Tue) 4:24:44 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[安否の分からぬ友を思えど、既に遅く。 けれども、もしも罪過を抱え生き延びていたら? その後の事は、計り知れない。 表面上取り繕われていた差別感情が噴出するか、 治安の崩壊により今後も略奪が相次ぐようになるか、 問題は幾つでも思い浮かぶ。 学星院の権威と重要な収入源を折ったところで、 これからの人々はまともに生きていけるのだろうか。] (……その為に、フィルムを使い切ったんじゃないか。) (18) 2022/11/15(Tue) 4:25:19 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[咎人は、震える手で日記帳にペンで記し始める。 母を亡くした悲しみと、父が暴虐を働いていた苦しみを。 そして飽くまで自分が正気であるという証明を。 事実の切り取りのみが綴られた紙面にも、 残されたものが全て燃え尽きた火事現場にも、 入念に練られたその罪を裏付けるものはない。 前列のベンチ、今朝の葬儀の際に彼が座っていた席には 核心的な音声記録のみが残った魔道具と “彼がポケットにしまい込んだ”ものを除いた、 無数の凄惨な写真が入った鞄が置かれている。 祭壇の上でランタンを床へ手放し、 不確かな灯りの中、ふたつの凶器を見る。] (19) 2022/11/15(Tue) 4:25:40 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス [長年連れ添ってきた者達を殺めた凶刃を] [宿命と連鎖を断つ為持ち出したナイフを] [この魂を完全に滅ぼす為の何よりも確実な手段を] [あなたを加害者にして得るあなたからの安らぎを] (20) 2022/11/15(Tue) 4:26:16 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[じっとりと冷や汗に濡れ、固くなった呪布の結び目は 思いの外あっさりと外れた。 外れて、しまった。 筒型の試料ケースに移し替えた液体を、 神の御前で一息に飲み下す。 十数秒の空白の後、長らく忘れていた味覚を 喉に残る刺激によって思い出す。] ゔ、 ごほ ……ッ あ… …… ァ、 [腹の内側から灼かれる苦痛だけは味わった事がなく。 鈍くなっていた全ての感覚が呼び起こされると共に、 次第に視界の淵までもを紅に染めた。 目を開けていられない程の痛み。 聲は縮れ、呼吸は鉄の味を帯び、音は遠ざかる。 反射的に吐瀉した内容物に赤い石は混ざっておらず、 毒性により凝り固まった鮮血でしかなかった。 ああ、今ならきっと命まで届く。] (21) 2022/11/15(Tue) 4:26:35 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[ぼたぼたと眼窩から、咥内から、 滴り落ちるそれだけが 己が未だ人間である事を肯定する。 記憶の水底から掬い出される、 “まだ”生き甲斐を感じていた頃の光景。 無尽蔵に産み出される「価値」に、 彼らが慣れ切っていなかった頃の噺。 かつて、何度千切っても再生する手指に使用人は慄いた。 次第に、より多く傷付けるほどに己の取り分が増えると 気付いてからは、良心も理性も見て呉れだけに変わった。 期待されたのは、甚振られていた瞬間だけ。 目の色を変えた奴らに貪られる、その時だけ。 それなのに。 こんなにも、久方振りの痛みが愛おしいなど。] (22) 2022/11/15(Tue) 4:26:54 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[内臓を破壊し血流から全身に蔓延っていく甘美な毒が、 元来持つ治癒力を容易に上回る。 手の中で握り締めた刃は、 破裂した血管腫から零れる血液にべっとり濡れていた。 滑らぬように、確実に。 服の袖を介して固く力を込め直す。 死と云う現象の先には何も無い。 遺される人々を想う義務も権利も無い。 誰かへ向けて残す言葉さえも、無い筈だった。 逆手に握ったナイフの切っ先を、 目を瞑ったまま、左胸目掛けて。] (23) 2022/11/15(Tue) 4:27:14 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[祭壇から身廊へ続く流れに 罪を雪ぐ役割はなく。 ただただ、自害を選んだ一つの遺体が 静かに横たわっているのみである。 末端は潰瘍によって壊死し、 本来青白い静脈は肌の下で炎症と破裂を繰り返した。 渇き果てた血の涙がその凄惨さを物語る。 それでいて、呪いに狂わされた者に比べれば 幾分かは名誉の保たれた死に様だった。 学者達が見向きもしない神聖な其の場所で、 身を焼く苦しみに耐え忍び絶命した小さな命を 人々は、何とするだろう。 或いは、“計画通りに”担ぎ上げるのやも。] (26) 2022/11/15(Tue) 4:28:29 |
【人】 住職 チグサ[いったいどればかりの時間がたったのでしょうか。 私は、仏様の頭を膝に抱え、手を合わせ、お経を唱えながら、己の精神世界に没頭していました。 外界からの刺激は遮断され、私と仏様の二人だけがそこにありました。体を膨らませるようにしてお経を唱え、極限まで集中を高めた時、しばしば陥る感覚です。 といっても、体は酷く消耗していましたから、実のところは朦朧としていたのかもしれません。 集中を解き、外に再び意識を向けたのは、何者かによって、故人の肩が揺さぶられたからです。 その方もまた、月明かりに照らされてなお赤い布で口元を隠していました。 呪布とは対照的に顔色は酷く青ざめていて、我が膝で眠る方に必死に呼びかけておられます。 私は、故人を揺さぶるその手に、皺がれた手を重ねて、静かに首を振りました。] (28) 2022/11/15(Tue) 21:47:31 |
【人】 住職 チグサ[南の空に、ぽっかりと月が浮いていました。 やがて彼は、しゃくりあげながらもぽつりぽつりと、何があったのか話してくださいました。 彼と親しかったこと。この計画で知り合って、話すうちに同郷だと知ったこと。 全てを賭けた結果、リーダーがどうなってしまったのかも。] そうですか…… [彼はごく近くで、首魁の夢が破れる様を見ていた様子でした。 一体何があったのか、誰にも追いつけぬ速さで駆け抜けていた首魁が、 命からがら逃げだして、走り迷ううちにここへたどり着いたこと。 加担した私に、何を言う権利もありません。 ただ、憐れでした。] (29) 2022/11/15(Tue) 21:48:08 |
【人】 住職 チグサ……それで、あなたはどうされるのですか? [詳しい話を伺いたくはありましたが、いつまでもここでこうしてはいられません。 私だけならば、ここで果ててもいいという、半ば自棄のような気持でした。 しかし今、また一つの命を見て、心に責任感が灯りました。] 逃げるならば、死角を縫って港へ行かなければ。 裁きを受けるにしても、私刑ではなく、司法によってでしょう。 いずれにしても、私のいる寺院に身を寄せられませんか。 ここに長くとどまっていたら、誰かにいたぶられるのも時間の問題です。 [通りの方からは、相変わらず欲の狂騒が聞こえています。 今まで誰にも襲われずに済んだのは、純粋に運が良かったからでしょう。 とはいえ、私の足はすっかり萎えていました。膝枕のせいなのか、負傷のためか、それすら分かりません。 案内をしながら、あべこべに彼に運んでいただくような形で、なんとか寺院に戻ってまいりました。 そこで目にした光景は──]** (30) 2022/11/15(Tue) 21:48:49 |
【人】 給仕 シロタエ[娘は運がよかった 大した怪我も負わず、手に負えない相手にも会わず 誰かがまき散らした毒に触れることもなく だけどそれはたまたまそうなっただけの事 娘が歩いた足元に澱んでいた毒は靴底に張り付いて すれ違う誰かが跳ね上げた毒の飛沫は服に染みついて そうして気化した毒は知らず娘に纏わりついて 知らぬうちに肺に、肌にそれが取り込まれていることに娘は気付かない 高揚した頭では体調の異変に気付かずに 気付いたとして気にも留めずにここまで来た 娘は、運がよかった] (31) 2022/11/16(Wed) 1:29:20 |
【人】 給仕 シロタエ[悪い人>>2:71 その言葉を投げられた男は明らかに激高していた 恐らくは、それが狂気の引き金になる言葉だったのかもしれないが、それは娘の知ることではなく 意識がこちらに向いたことで、それを避ける、という選択肢が消えた 運がいい娘なら、うまく躱すことを選んだだろう 狂気故か、それともほかの理由か判断力が歪んでいた 運というものに限りがあるとすれば、それが尽きるのが今だったのだろう ここまで己の動きが鈍っていることに気付かずに来た娘は 大きく息を……身に纏わりついた毒気を吸い込み、胸元の痛みにほんのわずか顔を顰めた] まぁったく、ロクデナシがいると気分が悪いわねぇ [先ほどまでなら避けていただろう相手を煽るように笑う 尊大になっているのか思考がぼけているのか、その両方か 娘は運がよかった……それは 過去形 ] (32) 2022/11/16(Wed) 1:31:34 |
【人】 給仕 シロタエ[ロクデナシ、それも目の前の男には地雷だったのだろう 大声で叫びながら手にした鉈を振り上げる、鉄パイプなどでは差は歴然 初手を避けて、向き直って踏み出そうとして、足がもつれた その立て直そうとしたところに鉈が振り下ろされ……] え [鈍い音と衝撃、そうしてどさりと何かが落ちる音 娘の右腕が肩口から切られて地面に落ちていた 空気が冷えたような気がして震える 汗なのか血なのか服がじわりと湿気を帯びていく 体勢を立て直す間も声をあげる間もなく、更なる一撃が今度は左腕を落とした] ひゅ…… [息を吸い込む、湿度の高い空気を吸い込んで……不意に何かが頭で弾けた気がした] (33) 2022/11/16(Wed) 1:33:23 |
【人】 給仕 シロタエ[娘の腕を落とした男は、そのままの姿勢で瞬きをする 何が起きているのかわからないという表情で 娘を見て、その周辺の血だまりを見て そのまま声もなく崩れ落ちる] (34) 2022/11/16(Wed) 1:34:30 |
【人】 給仕 シロタエ あ……ぁ…… [何が起きたの?何があったの? 落ちているものは何? そんなこと、聞かなくても全部知っている!!] あああああぁぁぁ!!!!! [痛い、痛い、 痛い 心が?体が?どうして? 全部覚えてる、全部自分がしたことだもの! 血の気が引いていく、その血を止める腕はなく 顔を覆いたくてもそのための腕はなく どうして、と呟いて娘は膝をついた] (35) 2022/11/16(Wed) 1:37:20 |
【人】 給仕 シロタエ 「まったく、あの人は稼ぎも悪いくせに船を新しくしたいだってさ」 「どうしてお前はそうなんだい、あれに似てぐずなんだから」 「いい加減ちゃんと覚えとくれ、何度言えばできるんだい?」 ごめんなさい、アタシちゃんとやるから 「あのロクデナシやろう、全部持って逃げやがった!」 「きっとお前もロクな奴にならないだろうね」 「ロクデナシになりたくないならいう事を聞けばいいんだよ」 「あぁ、本当にお前はあのロクデナシそっくりだ」 「教えたこともできないロクデナシだよお前は!」 アタシ頑張ったよ、だけどダメだったの アタシ、ああ。アタシ、は (37) 2022/11/16(Wed) 1:39:35 |
【人】 給仕 シロタエあは、あはは あぁぁぁぁ!! [笑う、笑う、慟哭ともつかない声をあげて 気付かない振りでいた本当の自分を嗤う そう、そうだわロクデナシは片付けられなくちゃ だからこうなったのも当然なの だって、あたしはロクデナシなんだもの] あはは あはっ かはっ [笑いすぎたか咳き込んで、血を、吐いた 吸い込んでいた毒がいつの間にか肺の奥を侵食して 激しく笑ったことで崩れ出していたなんて、娘は知らないけれど] (40) 2022/11/16(Wed) 1:45:37 |
【人】 給仕 シロタエ[つい、と頭から最後の血が抜け落ちていくのを感じる 怖くはない、忌避もない、だってこうなるのは当然だから] あは は [最後まで娘は笑ったまま、ゆっくりと地面に倒れ伏した**] (41) 2022/11/16(Wed) 1:47:46 |
【人】 警備員 ジュード[── かつて、ガライカにはある兄弟が住んでいた。 兄は毒が強く、長く部屋を出る事もままならなかったが、 その中でも、家で行える書籍の翻訳の仕事をしていた。 弟も、その仕事を手伝い暮らしていた。 彼らはそれなりに幸せであった。 隣国からの手紙が、村の長へと届くまでは。 ラング機関に関する記述と 『あなた方の自由のため』、機関を利用した 防毒魔術の開発を計画している。 その協力者を募りたい。と書かれた手紙。 送られた内容は、民に隣国への疑念と 外の世界への希望を抱かせた。] (42) 2022/11/16(Wed) 18:12:47 |
【人】 警備員 ジュード[相談の末、特に強い毒を持つ者を制御できるなら 他の者の毒も制御する事は容易であろう、と 村の人々は、 厄介者であった 兄を送り込む事にした。兄も迷惑ばかりでなく『やくにたつ』事を願っていたから 均一は、傍目には取れていたのかもしれない。 そうして連れて行かれた兄は 帰ってもこなければ、便りをくれる事さえなく。 交易に訪れる隣国の民も、最近は外では戦が激しいのだと ぱったりと来る事をやめてしまっていた。 ……兄が隣国へ行ってから何年が経った頃だろうか。 弟の元へ、隣国からの小包が送られてきたのは。] (43) 2022/11/16(Wed) 18:13:20 |
【人】 警備員 ジュード[長を通さず商人によって渡されたその中には 一通の手紙と小瓶が入っており、 手紙には以下のような文が書かれていた。 『お兄さんは今でも役に立っている。 おかげで出来た防毒魔術のテストの為、 防毒魔術を纏い、”一時返却”するこの瓶を、 指定の日の夜に我が国の港まで持ってきてほしい。』 確かに同封された書類には、魔術の使用方法が記されていた。 手紙や魔術は読み解ける文字であったのに、 瓶のラベルが古代文字で書かれていたのは 秘匿性の為か、この計画の為だったのか。 どちらにせよ、読み解かない方が幸せだったのだろうけど。 疑念を抱いた弟は、それを読み解いてしまった。 彼らの脅威の片鱗を、知ってしまった。] (44) 2022/11/16(Wed) 18:14:42 |
【人】 警備員 ジュード── 朝日の届かない場所で ── [座り込んでから、どれだけが経った頃か。 頬に当たる冷たい感触に目を開けると、 目の前にはモップの先端があった。 既に床を撫ぜた後なのだろうか。 それは色々な汚物を混じらせたような 粘性を含む汚水を垂らしており、 毛束の隙間には虫の足や潰れた羽さえ紛れている。 ひどい匂いに男が身を引くと、 向こう側にはモップを持つ研究員の姿が見える。 彼の表情は、憤怒を孕んでいた。] (46) 2022/11/16(Wed) 18:15:40 |
【人】 警備員 ジュード「……お前がやったのか?」 [非常に端的な問いかけを、男は理解する。 少し眠ったからか記憶ははっきりとしていた。] 男は逃げ惑う内に、様々なものを侵した。 それはこの水晶宮も例外では無い。 何もかもを崩壊させた後悔は縺れて、 質問に答えようと口を開くも 乾いた喉に声がひきつれる。] あ……そ です、 おれ たくさんに、ひ、ひどいこと してしまって すっ、すぐ かたづけ を、 [どうしよう、と微熱に苛まれる頭で考えるも、 状況を改善する方法も、事態をなかったことにする 奇跡の一手も思いつかない。 せめて、今すぐにできることをやろうと、 男は座り込んでいた身を起こしかける。 ……その喉を、指叉のようにモップが抑え込んだ。] (47) 2022/11/16(Wed) 18:16:40 |
【人】 警備員 ジュード「どういうことだ 最初にちゃんと毒性の処理は できてるのか聞いたよな? お前、大丈夫だって言ってたじゃないか。 薬を飲んでるから大丈夫だって、 具合の悪い時には来ないからって 約束したじゃないか。 なんで来たんだよ なんでおれたちの研究室を汚してるんだよ なんで あいつらみんな 死んでるんだよ! 」[返答の間も無く、研究員は叫びながら 振り上げたそれで男を殴りつける。 汚水がそこら中に飛び散っても、 硬い固定具が男にぶつかっても 止まることはない。] (48) 2022/11/16(Wed) 18:17:21 |
【人】 警備員 ジュード[男はこの道すがらに 彼の飼育していた希少な小鳥を 侵してしまったのかもしれなかった。 彼と仲の良かった職員が倒れていたのに 躓いてしまったかもしれなかった。 それ以外だって、思い当たる罪はいくらでも。 武器はいつのまにか持ち手の方になっており、 怒号とともに一際高く振り上げられる硬い木の柄。 その下で、男は前かがみにうずくまる。 ……男は、自分の命よりも 『宝物』を守ろうとしていた。 目的と主体の優先順位が反転する。 ]それは正気なのか、狂気なのか。 (49) 2022/11/16(Wed) 18:17:36 |
【人】 警備員 ジュード[……研究員だって、本心から 男のせいだと思ってた訳じゃない。 ただ、宝物を失ったことを受け入れられず、 一時的に責める対象が欲しかっただけ。 気が済んだら、やめるつもりだった。 その思惑は、本人にしかわからなかったけど。] [── めき、と。 薄く硬質なものが砕ける感覚が 研究員の手に伝わる。] 「── ぁ、」 [目線の先、床に倒れ伏す”それ”は、 ぼろぼろだった。] (50) 2022/11/16(Wed) 18:19:07 |
【人】 警備員 ジュード[べたべたの身体には、落ち葉、ゴミ、泥、煤、 虫、血液、風に舞った銀の体毛、だれかの体液…… さまざまな狂騒の名残がはりついている。 尾の骨が幾つか砕けているのか、 先端に瘤のような腫れが生じている。 火傷でもしているのか、 服の所々には浸出液が染みを作っている。 細かな切り傷や打撲は数え切れないが 一つ、頭蓋を叩き割った傷からは 滾々と血が流れている。 そして、それぞれの傷には 汚らしい死肉と汚水と毒とが染み込んで、 ぐずぐずと、患部を爛れさせていた。 浅い呼吸をくりかえす"それ"は うごかないし、おきあがらない。] (51) 2022/11/16(Wed) 18:19:34 |
【人】 怪物 ジュード── 天舞う鷹は何を知るか ── [……狂気の収まる頃には誰ともなく、 “この惨状から日常に帰れる”と信じるため、 残骸の片付けを始めるのだろうか。 その中に混じる目撃者や研究員は、 町民や師団員にも散らばる粘液の危険性を説き、 多くの命を救うのだろう。 『甚大な被害を齎した”害獣”は 施設研究員の手によって無事回収され 外部の研究機関へと収容された。』 真実を知らない人たちの間では そのような推測に話が落ち着くのかもしれない。 混乱の傍、他の怪我人に紛れるように ]師団の船へと運び込まれたぼろぼろの青年が "それ"であると、気付くものはいるだろうか。 (52) 2022/11/16(Wed) 18:20:49 |
【人】 怪物 ジュード[研究員は図らずも、”怪物”を仕留めた英雄となった。 怪物を収容しきれなかった点に対しても、 事件時の状況が明らかになる程に 「改善点があるのは事実だが、 一個人を責められる話ではない」 という意見も増えていくのだろう。 何も知らない者が怪物の噂をする中で、 研究者も、いくらかの目撃者も、その真実を語らない。 真実を知らなければその証言は偏見になりうる。 未だ不安定な人々に疑心暗鬼を生ずるだけの話をして 罪人捜しを扇動した所で、何になるのだろう。] (53) 2022/11/16(Wed) 18:22:40 |
【人】 怪物 ジュード[……男は、怪物は、害獣は 自らの手で己が危険なものであることを証明した。 無害であることを証明するよりも、ずっと容易に。 重ねた努力の甲斐もなく、 そこにはなにも、なにも残らない。 鍋に煮込まれた娘のように、 形のない死者は多く居た。 男の不在を訝しむものは少ないだろう。 嘗ての住処も、炎の中で 僅かな私物ごと焼け落ちていた。 もしもあの時、別の選択をしていたら そんな後悔も脳を零れ落ちて 回収され、元のように収蔵される 兄であったものと、 いずれ、教会で見つかるかもしれない彼と ”関わり”があった者は、一体誰なのか? そんな謎の他は、なにも。*] (54) 2022/11/16(Wed) 18:23:08 |
【人】 医者 ノーヴァ[神も仏も信じたことはない。 ただの一度も祈りを込めたことなどない。 ……けれど、彼等はどんな人でも受け入れられると聞いたから。 この行き場のない感情を、どう持ち歩けばいいのかを。 羽根をもがれた鳥に、自由を手にする手段を。 どうか───どうか、示してほしくて。 彼女の抱えた信仰が、清らかなものであるならば。] (55) 2022/11/16(Wed) 22:10:44 |
【人】 医者 ノーヴァ[門が開いた途端、ジェインはすぐさま別室へと連れていかれた。 重傷者への対応として適切なことはわかっている。今は唯、自分の体に伸し掛かっていた負担の大半が覗かれたことに安堵していたのだ。 無残な蹴り跡の残る腹部を見た小僧の目を言葉に表すことはできない。未だ外の奇々怪々とした様相を知らぬ相手に──例えそうでなかったとしても、「自分がやった」ということはおくびにも出さないつもりだった。 全てを見ている神の姿を、この目で見ていない限りは。 ( 果たしてどんな姿をしているんだろう? ) 疲労の残る自分は休息を許されただけの身であった。 十二分な結界が張り巡らされた難攻不落の要塞は、ほとぼりが冷めるまで息を顰めるのにはぴったりの空間だった。 ……けれど、今の自分の目的は、命が可愛いだけの一般市民の持つ其れではないから。探しているのはたったひとつだけ。] (56) 2022/11/16(Wed) 22:10:47 |
【人】 医者 ノーヴァ[経年劣化は免れなくとも、日々の清掃によって清められた寺院の中は、線香と木の香が混ざり合った空気が漂っている。 腐臭よりも断然居心地のいいそこを、床を軋ませ暫く行けば、本堂に人の気配を感じ取る。小僧の開門の手つきが手慣れていた理由は、老尼の言いつけ以外にもあったのだと悟った。] 「全く、災難だったぜ……」 「どこを見ても、臭くてかなわないったらありゃしない!」 「……おい、あの布はちゃんと持ってんのか?」 「今は必要ねぇだろ、少し位寛がさせろよ!」 「なあ、なんも落っことしてないよな?金貨の枚数は1、2、3、4……」 「然し、こんな安地があるなんてな……」 「あのクソ狼、どんなコネだってんだ!」 [障子の隙間から垣間見てみれば、泥塗れの衣服を身に纏った見覚えのない男たちが広間を陣取り、会話をしている様子があった。 違和感を覚えるのは、狂騒に浸されたこの街の雰囲気に反し、彼らが“冷静すぎている”といったところだろうか。] (57) 2022/11/16(Wed) 22:10:51 |
【人】 医者 ノーヴァ[この悲劇のきっかけともいえる───今は正気を失った人狼のこと。彼に連れ立って島内に侵入した者たちがいることを、男は知らない。 ……今は油断した彼等の口元から取り去られている呪布の正体でさえも。 その手の中にあるのは、美術館に保管されている筈の特級重要機密作品だったのではないかと思い出す。 他所から来訪した彼等では持ち出すことは愚か、閲覧することも難しくなる代物だった筈だ───微かに顔を顰めたのは一瞬の事。 暫く観察を続けていれば、彼等は束の間の休息と宝の確認を終え、信じられない行動を起こした。 本堂内にある数多の経典を漁り始めたのである。] (58) 2022/11/16(Wed) 22:10:53 |
【人】 医者 ノーヴァ[信徒にとっては何にも代えがたい宝の山であるのだろう、それを。価値がないモノだと見定めた瞬間、ゴミのように放り投げていた。 唯の偶像でしかない神はものを言わない。“言えない”。 誰にでも救いはあるのだと受け入れ、手を差し伸べる存在だから。自らが保護した者たちだから。銅や鉛で造られただけのがらくただから。 其処に横たわる数多の理由たちが、腐臭に狂わずとも物欲に溺れる盗賊たちを唯見つめている。 そのさまは、この世に蔓延る執着全てを認めでもしているように思える光景だった。] [今の状況は、起こるべくして起きた事。 その信仰を穢し、踏み入り、崩れ落してしまってもおかしくはないもの。 人はいつまでも過ちを犯し続ける生き物であると。] (59) 2022/11/16(Wed) 22:12:30 |
【人】 医者 ノーヴァ[“誰かの大切なものは、壊しちゃいけない”。 嗜められても、何がおかしいのかわからなかった。 否定され続けるだけでは、真に理解する事等できなくて。 …………いつの日か、叱る相手もいなくなったまま、大きくなってしまっている。] (60) 2022/11/16(Wed) 22:12:45 |
【人】 医者 ノーヴァ[例え雨が降ったとしても、火の手が回る木造建築。 木材と肉の灼ける臭いが、壊れた結界の穴から流れ込む腐臭と混ざり合う。悲鳴、残響、断末魔。 きっと誰もが逃げられない。 誰かに穢されるのであれば、自身の手で。己の思う“大切”のやり方を以てして。 それがせめてもの、彼女への応え方。 燃え落ちる寺院の澄み切った窓硝子には、最早何も捉えることのなくなった彼の虚ろな笑顔がいつまでも映りこんでいた。*] (63) 2022/11/16(Wed) 22:23:02 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス──── 終幕;叡智の代償、そして継承 [悪夢の様な一夜は過ぎ去り、 夜明けの翼によって平穏が齎される。 喪われたもの、残ったものは……] (64) 2022/11/17(Thu) 21:05:42 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[清らかな雨が陽の光と共に降り注ぐ時。 初めにその場所へ赴いたのは、付近の商店で 素朴な生計を立てている未亡人だった。 夫に先立たれた彼女は聖堂で行われる祭儀を楽しみに 足繁くこの場所に通っていたが、 混沌の晩には自ら卸した商品を独り占めにし 自室で暴食暴飲の限りを尽くしていたのだという。 小さな店故に誰の目に止まることもなく、 交流も僅かだった為に悪意に曝されずに済んだ。 そんな、“幸運な”女が正気を取り戻したいの一番に 向かったのが神の御前だったという訳だ。] (65) 2022/11/17(Thu) 21:05:58 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[惨状を目の当たりにした女は迷わず保安局に駆け込んだ。 彼等までもが被害者だったとは露知らずに。 その保安官は外部から来た医療部隊の拠点になっていた。 当然彼女はそこで何が起きていたのかを聞いた。 行動を開始した組織の分隊が聖堂へ突入した。 その場で死亡が確認された一体の亡骸と、 現場に残されていた成分を含む押収品が運び出された。 学星院の学者達が、行動し始めるより早く。 彼らが消耗し切った“抽出源”を確保するよりも早く。 計画通り、必要な品は在るべき人の手に渡ったのである。 この時回収された鞄と文書、及び複数の写真は 部隊が“お上”へ持ち寄るのを検討する程度には 深刻な事実を含んでいた。] (66) 2022/11/17(Thu) 21:06:11 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[画像データ。 欲望に駆られた人々の暴動の数々。 画角から所謂隠し撮りである事が分かる。 かなりの枚数があり、非常にショッキングな場面を 写し取っている為、箱に入れて保存された。 音声データ。 どの一般市民の供述からも一切出てこなかった 指導者ブランドンと首謀者の関わりについて 言及された複数人の会話。 しかし声の主らは別所で焼死体になって発見された。 現場から検出された劇物。 学星院由来のものでないとだけ断定。 詳細不明につき以降は████による██████ ██████████████████████] (67) 2022/11/17(Thu) 21:06:25 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[やがて。 再び飛行船がキュラステル上空に現れた時──── それは銀鷹公との協定による権利行使を意味する。 法官らが機動部隊と共に学星院内部へ立ち入り、 上層部までをくまなく捜索した。 幾重にも証拠隠滅を図った痕跡こそあれど、 重要参考人ジェイク・アスターの証言に始まり ブランドンをその場で拘留可能になるまでの 情報が集まったのである。 一連の流れは人員と運営資金に大打撃を受けた 各新聞社でさえも挙ってスクープにする程だった。 その後、ジェイク立会の元行われた家宅捜索により 重要な証拠品が押収される。 それは奇しくも、偶然処分しそびれた “漁船借用費の領収証”だった────] (68) 2022/11/17(Thu) 21:06:40 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[結論から言えば、ブランドンは失脚した。 同時に、プロジェクトの大部分が明るみに出た。 人間の欲望からエネルギーを抽出する試みは 理性を失った人間を支配下に置いて成立するものであり 人道的観点からこの実験は永久に凍結された。 此度の学星院の行いから、組織的な縮小が決定され 新たな指導者ジェイクは専ら机仕事に追われている。] (69) 2022/11/17(Thu) 21:06:51 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[────そして、遠くない未来。 崩壊した家屋、喪われた資源、追悼の日々。 人々の営みは以前の勢いを欠いてこそいるが、 穏やかな日常が取り戻されつつあった。 しかしそれは表面上だけの話。 隣人に家族を殺された者、 忌み嫌っていた種族に財産を損なわれた者、 その他数多の問題が山積みになっている。 水面下での混沌が煮え立っている中、 辛うじてキュラステルの交流と経済を繋いでいるのが ある焼け跡に建てられた写真館だった。] (70) 2022/11/17(Thu) 21:07:04 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[若きリーダー、ジェイクの牽引により 限られた資金で初めに発表された発明が 誰でも扱える、大衆向けの写真機だった。 “プロトタイプ”の段階では度々発生していた 予期せぬ事象が写り込む『不具合』は解消され 人々は切り取ったままの風景を残す事が可能になった。 島民は勿論、外部からの旅行者や 復興に手を貸すボランティアまでもが訪れる 一種の観光地として成立している。 家族写真などの撮影は勿論、 ギャラリーとしての鑑賞も出来る施設の壁には 厄災の戒めとなる無数の写真が展示されている。] (71) 2022/11/17(Thu) 21:07:16 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[────その、片隅に。 災厄をきっかけに解体・移転した保存施設の 敷地内を写した数枚の写真がひっそりと飾られている。 緑の多い風景を撮ったものが殆どだったが、 唯一、人物が映り込んでいるその写真に 心当たりがある者はもう、殆ど居ない。 居た所で、彼がこの発明の祖であると 今更口に出せる人間も居ないのだろう。 ……いや、言える筈がないのだ。] (72) 2022/11/17(Thu) 21:07:30 |
【人】 碧き叡智 ヴェレス[その日限りの記憶を、永遠の一枚へ。 写真館を訪れる人々は今日も絶えず。 美しく手入れされた植木が立ち並ぶ庭園には、 事件の際に何処かの施設から逃げ出した青いカナリヤが いつの間にか住み着いているようだ。*] (73) 2022/11/17(Thu) 21:07:41 |
【人】 住職 チグサ[寺院にたどり着くよりも早く、きな臭い香りが鼻を突きました。 いつでも見守ってくださったご本尊様。 幼少期から繰り返し体に刻み込んだ経典。 我が子と定めて育て上げた、傲慢になってもなお可愛いお弟子さん達。 それらいっさいが炎に包まれ、赤い舌先で夜空を舐めています。 周囲の木々は熱風に煽られ、表や裏を見せながら木の葉が散ってゆきます。 逃げ惑う人々の中に在って、唯一静かな目でその惨状を見つめておられる方が在りました。 それは、思いもよらぬ方でした。] あなたがやったのですか──何故? [欲に狂った街を見た後で、なんという愚問でしょうか。 彼は内側にどのような欲を飼っていたのでしょう。一体どのような衝動の果てに、寺院を燃やすという行動をなさったのでしょう。 お医者様の傍に、あの愛らしい助手の女性もいらしたでしょうか。 そうだとしても、ぱちぱちと爆ぜる音に微動だにせず、またいとし子の宿るはずの腹部は赤く濡れそぼっていて、狂ってしまわれたのはむしろ幸いという有様でした。] (74) 2022/11/17(Thu) 22:37:10 |
【人】 住職 チグサ[のろしが、雨を呼んだかのようでした。 視界が霧に包まれ、しとしとと雨が降り注ぎます。 その雨には、欲を雪ぐ力がありました。 しかし、火の勢いを止めるにはあまりにも頼りないのでした。 赤い炎は霧雨に阻まれ、その境界を曖昧なものにしていました。 ぱち、ぱちん、と。火の粉が爆ぜて、私の頬を炙ります。 私が命を燃やして守り、築き、育て上げた、掛け替えのない執着の塊。 放下着。それらは全て捨て去られ、煙となってしまいました。 本来であれば、私が自身の手によって捨て去らねばならなかった。けれどその修行も果たさぬままに、彼が成してしまいました。 もはや、その存在は、私の胸の中だけ。] (75) 2022/11/17(Thu) 22:37:51 |
【人】 住職 チグサ[そう。お弟子さんとの時間は、見守ってくださったご本尊様は、生きる智慧を授けてくださった経典は、未だに消え去っていません。私の胸の中に刻まれています。 私の自我が在る限り、それらは存在し続けるのです。 私はノーヴァ様の手首を掴み──爪が食い込むほどに強く、掴み。 玻璃のように澄み渡った、何物にも焦点を当てない瞳に、老いさらばえた我が瞳を合わせ。 あなたはそれでいいのですか、と暗に問いかけたのでした。] 、、、、、、、、、、、、 まだ、私が残っていますよ。 [と。] (76) 2022/11/17(Thu) 22:38:47 |
【人】 住職 チグサ[ここで果てるならば、彼の手にかかりましょう。 災難に逢う時には災難に逢えばいい。 死ぬときには死ぬのが良い。 それこそが災難を逃れる妙法といえましょう。 けれど、彼が迷いの果てにこの寺院を頼ってくださったならば。 救ってくれる神もなく、見守ってくれる御仏もなくとも、僧侶は確かに在ります。 ならば、迷い足掻く方に耳を傾けるのは、僧侶の務め。 私は彼に丁寧に合掌すると、その場で座禅を組みました。 ただ、しとしとと降り注ぐ小雨のように。 彼の話に静かに耳を傾けるため。 あるいは彼に毀されるため。]** (77) 2022/11/17(Thu) 22:40:21 |
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