「上手に焼けました〜！」

「……」

何を零すこともなく、ただ静かに処刑場に向かう。

ソファの上の命が絶たれていようと。
処刑室へ向かう処刑者が何も話さなかろうと。

いつも通り、最後尾を歩く。

……向かう足の数も、もう随分少なくなったな、と思いながら。

「今のセリフはこのレシピに、
　【古来より伝わる呪文】として書かれていた。
　よくわからんが書いてあるとおりにしたぞ」

誰にともなく説明をし、後片付けをして処刑場に向かった。

「……キュー、」

足は進まなかった。けど、どんどん離れていく先頭を見て、駆け出す。
だって、……

「……一番にやりたいやついるか？」

短く問いかける。誰もいないのならば自分が。

キューの近くまでは来たがそこで足を止めた。

「そういうことなら。……先に行けよ、サルガス」

「俺は、構わない」

伏せていた視線を上げて、貴方を通す。
自分の番を待ちながら……扉が開く事を、どこかで期待している。

「じゃあ、次いくか。なんでもいいんだろう？」

とりあえずその辺にあった迫撃砲^armsを持ってみた。

「う〜ん……流石にまずい気がする。
　もうちょっと手頃なのがほしい」

迫撃砲はやめて、トライデント^armsを手にとった。

クルクルクルパシッ。
拾い上げたそれを、手首で数度回転させて構える。

「………………シィッ！」

ダンッ！強い踏み込みで一足にキューに近づき、
三叉の鉾を胴体に突き刺す。グサッ☆


しばしの後、構えを解いてそのまま処刑室を去るだろう。

「……あ……つ、次、私が……　私、やります」

用意されたものの中からナイフを手に取る。
人数が減った分、確実にやらなければならない。ゆっくりとキューの傍に近寄り、心臓部を狙って突き刺す。

「っあ、無理、やっぱ無理ぃ……！！！」

全員の処刑が終わるのも待たず、血に濡れた手もそのままに、走って部屋から出ていった。

ナイフのひとつを手に取る。昨日よりも少し大きいのを選んだ。
「……やる、次」
息を吐いただけのような、思ったより弱々しい声が出た。それじゃダメだ。
それじゃ。

「次、やる……！」
キューの前に進み出て、しゃがんで、全ての傷を見留めて。

狙ったのは、首元だった。キューの首の左側を深く傷つける。
昨日のことをお手本に。見様見真似で。

「……、ね」
ふらつきながら立ち上がって、足を引きずって離れる。

最初はナイフだったと記憶している。
その次は注射器だったと記憶している。
先日はダガーを使った。
最初と似た動きになったと記憶している。

―――用意されたものから、メスを見つけた。
ずっとこれを使い続けていた者は来ないだろう。
銀に光るそれを手に取る。これは今から命を救うためではなく、命を刈り取るために使われる。

何も言わぬ少女を見下ろし、目測で急所となる箇所……あまり苦痛を与えない場所を見定めて。
頚にメスを突き刺した。

数秒押し込み、引き抜く。遅れて血が吹き出す。

「……」

眉一つ動かさず、黙したまま。男は少女から離れた。

皆がそれぞれ、キューを処刑していくのを眺めていた。
それぞれの処刑を眺めて、視界に入れて、記憶に刻み込むように、見ていて。

……キューの正面に膝をつく。手には小型のナイフを持っていた。
見上げる力もない少女に見せるつもりのない銀色を高く振り上げ。
肩口に強く深く突き刺した。

暫く深く押し込んで引き抜けば、吹き出した血に触れて。

けれど、言葉はない。

静かに数歩距離を置いて、最後の一人へ視線を投げる。

与えられていく傷を、全て眺めていた。目を逸らしもせず、背を曲げもせず。
連日、毒以外は常に迷うことなく手に取っていた、刃の分厚い短剣を持ち。

寄る。まだ息はあるだろうか。意識は。
あってもなくても、流れ溢れて床に溜まる血の中に、躊躇いもせず膝をついて。

刃を水平に持つ。抱き寄せるようにしてその喉に食い込ませる。
関節を絶つように刃を押し進めれば、まだ血は溢れるのだろう。

「……またね」

一言。それと共に、頬に口付ける。
事切れた、と分かるまでは暫くそのまま抱き寄せたままで。

その後は、ゆっくり立ち上がり。　死者から離れていく。

「――……」

背を向けて処刑室を出ていく。
次第に足音は早く、遠くなっていった。

結果だけ言ってしまったあとで、ロビーのソファの上で突っ伏し、もごもごと弱音を吐いた。
あれを言う前に言葉にしてしまうと本当に言えなくなりそうで、それはダメだから。言ってしまう前に結果だけ言えてよかった。
しばらくは話し合いの方、参加できる気はしないけど。

「きゃ！？」

ジャーンジャーン↑ジャーンジャーン↓にめちゃくちゃびっくりしたオネエ。

「なんの曲かわかんないけど〜……」


本格的になに？

分からないのに乱入できるのすごいなってオネエは思った。

「本船で50年くらい前に流行った曲よ。……まぁアタシあんまり上手くないけど…」

「聞こえたから〜……だいたいこんなかなって」
弾き語りでよく使われるパターンで入っただけなので、実際とは違ったに違いない。

「それじゃ知らないや〜……ん〜どんな感じ？ふいんき口で教えてくれたらできるよ！
オレ元の知らないから上手い下手もわかんないし〜」

>>22　カストル
音楽にあまり詳しくないので、実際は違ったとしてもわからなかった。びっくりが大きかったし。

「生まれてもないでしょ？きっと。
……人前で歌うの、恥ずかしいわね」

煙草で掠れた喉を、咳払いで少し落ち着けて。
ゆっくり、丁寧に、いつものオネエ声で歌い始めた。多分さっきよりは聞きやすいはず。上手くはないが。

>>23ムルイジ
「生まれてもないときの曲はなかなか聞けないよね〜……」

壁に寄りかかって、だいたいこうかな、とのんびり弾く。
所々合わないだろうし、あまり明るい音にも感じないだろう。

「……なんかあっちうるさくない？」
カラオケ大会はじまってるし。

>>24　カストル
「アーカイブでも漁らない限りは機会ないわよね」

50年前なんて、漁る機会すらなさそうだ。
だから歌った、ということでもある。

元より明るい曲調ではない。が、ところどころ合っていないのは分かる。それでもちょっと聞いただけで大体弾けるのはすごいと思った。

「やっぱり音楽すごいのね。
……ロビーに戻る？」

小さく笑いながら聞いた。

>>25
「ん〜あとで答え合わせしよっかな。ぜんぜんちがったらごめんね。
戻る？」
少しだけ考える素振りを見せる。あの賑やかさに混ざりたい気もするけど。

「人前で歌うの恥ずかしいならさ、もうちょっとここで歌ってくのもいいよ？」

>>6:26　カストル
「…アタシの下手さが露呈するのね……でもいい曲だから、聞いてみて」

素直に勧めた。友人の幸せを願う歌詞のもの。

「もう歌わないわよ。……戻りましょ。
喫煙所なんかに学生を長時間居させたくないしね」

そんなことを言いながら背を軽く押して促した。

>>27ムルイジ
「下手かどうかはオレ一人じゃ決められないな〜……曲名なに？」
なんて聞きながら、歌わないという言葉に残念そうにエ〜と不満を漏らし、ロビーへ向かっただろう。

「……」

片付けて以降、端末に視線を落としながら歩いている。
何かに躓いても、壁にぶつかりかけても、端末から顔を上げられない。

……参加者一覧を眺め、時折議論ログを確認する。
それだけのことをずっと続けている。

>>+48　ヌンキ
ガラゴロ響くワゴンの音に、顔を上げた。

「あら、どうしたのヌンキ」

特に忙しくはないとアピールする様に両手を開き。
何か用かと首を傾げ。

>>+51　ヌンキ


「……いいわね、酒盛り。あら、ボウモアあるの？水割りがいいかしら……アナタ作ってくれる？」

食欲はあるか、何か食べたか、その辺りの質問には一切答えず。けれど、に言葉を紡ぐ。

「うろこ……」

うろこそばだ……

>>+58　ヌンキ
「……そうね、お酒は好きよ。
食堂、お邪魔しようかしら」

食堂の方向を視線で確かめて。
行きましょ、と言わんばかりに首を傾けた。

「…………」

ロビーに飲料を取りに来て、そこにいる面々の顔を見て。
襲撃報告が上がっていたサルガスや、あの処刑前に死亡していたと後ほど知ったシトゥラやいるのを見て。

「……おはよ」

とだけ短く挨拶をした。

>>+72 シトゥラ
「……いや、大丈夫。薬を貰うほどのものじゃないし」

はは、と少し明るく笑って手を振って。
飲料を手に取って背を向ける。

「おかえりシトゥラ。……お大事に」

「あっ……！」


タイミングを逃さなかったので、声がデカくなってしまった。キューとシトゥラはタイミングを逃しちゃった……

>>+73 サルガス
あなたの様子を見てほんの少し眉を下げて微笑んで。

「ああ。……おかえり」

それ以上は言わずに背を向け、ロビーの端を陣取る。

おかえりチャンスだった。

いつの間にかキューのそばに移動していたバーナードの腹から特大の音が鳴る。

……パネトーネ^foodかバゲット^foodあたりを注文しようか。

小麦粉だらけだ。

特大ブーメランだ。ブーメランどころじゃないし勢いとしては迫撃砲に近い。

答え·みんな疲れてたから。

わかんなかった。

「すまない……手が滑った……」