人狼物語 三日月国


246 幾星霜のメモワール

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視点:


【人】 寡黙 エミール

「……………」

お触れを読み、ひとつ息をつく。
痣に光がともれば、更なる祝福を得ることができるのだとか。

――だとするなら。

彼女たちがここで最高の幸せを得ることができるというのなら。

そこまでを考えると小さく頭を振り踵を返す。
……今日は子どもたちと遊んでやる約束が男にはあったから。
(0) 2024/02/05(Mon) 21:21:03
「……私の痣を光らせたのは

 一体何のつもりでやったの」

教会で人々の祝福の声囲まれながら、女はまるでその光が聖女からの施しでなかったかのように不満の声を言い放った。
困惑する人達を退けてツカツカと街の入口の方へと足を向け、一度だけ振り返る。

「何が祝福よ、もし自分の私腹を肥やそうとしているつもりだけでやったのなら容赦しないわ。
 必ず見つけ出してやるから」

「痣が……」

ガリガリと胸元を搔き毟る。
油断はしていなかった。誰かに触れられてもいない。
ならばこれは魔法か呪いか。

「失せろ。殺すぞ」

いつもの人当たりの良さは消え失せて。
囲み祝福する民衆を押しのけてどこかへ消えていった。

「え……と」


街中で当然のように湧いてくる野次馬たちをほうぼうの体で抜け出す。

「すいません。あの……ありがとうございます」
「でも、できれば私なんかよりも──」


「聖女様を祀ってあげてください。
 私じゃなくて彼女のためのお祭りですから」


落ち着いて息を吐けたのは郊外まで逃げてきた頃だった。

直に確認できないうなじに、知っている気配を感じる。

泣くことも怒る事も喜ぶこともできずに手を当てて人気のない路地裏で蹲っていた。

【人】 寡黙 エミール

>>+2>>c0>>c1 ファリエ

――踵を返した道すがら。

見慣れた長い髪を見つけて、その後を追った。

「……!」

「おい、どうした。具合が悪いのか」

そこまで言って気づく。
うなじから光が漏れ出ている事に。
ファリエの痣が発光したのは知らせを見て知っていたが、ここまで目立つとは。
これでは相当、往来で目立ち祝われていたのだろう。
先日かなり緊張していたくらいだから、慣れないことに戸惑ったに違いない。

「……大丈夫、か。なぁ、」

貴方に伸ばした手は、肩に触れることができただろうか。
(6) 2024/02/05(Mon) 23:55:54
 エミール

「ひっ」


それは文字通り飛び跳ねたように、肩に触れたあなたの手に反応した。
手を離してなおその肩は小刻みに震え、爛々と輝く痣だけが女の意思と反して確かな存在感を放っている。
しかし振り返って薄暗い光の中あなたの顔を確かめれば幾分穏やかになったようだ。

「……エミール。どうしてここに?」
「ああ、いえ。そうでした。今日は面倒を見に来てくれる日でしたっけ……私ったらうっかり忘れちゃって」

【人】 寡黙 エミール

>>+3 ファリエ

「……悪い、驚かせた……」

驚かせるつもりはなかったけれど、怯えてるときに後ろから触れられれば驚きもするだろう。
言葉少な気に謝罪して、蹲る貴方と視線を合わせるようにしゃがみ込む。

「孤児院に向かおうとしたらアンタがここに入るのが見えた。
 ……路地裏は流石に治安が悪い。
 落ち着ける所に行くか……?」

顔色が悪いし震えている。
今は孤児院に向かうより、人の居ない静かな場所で落ち着いたほうが良いように感じてそう提案した。
(7) 2024/02/06(Tue) 0:18:25
 エミール

「……こっち」

交わした視線に数度瞬いて頷く。
普段の落ち着いた在り様が嘘のようなか細い声で、路地を抜けた先を指さす。
そこは郊外とはいえ都市部でありながら建物隙間に開けた空き地。元は建物があったのだろうか。辺りには大小の瓦礫が置き去りにされている。
辿り着いて天を仰げば、まるで空だけを切り抜いたような光景が目に映るだろう。

「ここなら滅多に誰も来ません。
 いつも落ち着いて考え事がしたい時はここに来るんです」

多少喋れるようにはなったようだが、とても子供の前に立てるような状態ではないのは明白だった。
適当な瓦礫に腰を下ろして暫し黙っていた。
何かを離そうとする様子もなく、ただ喘ぐように呼吸を繰り返しているだけの沈黙。

【人】 寡黙 エミール

>>+4 ファリエ

「……あぁ」

か細い声。
頷いたのを見れば立ち上がり、手を差し出したりしたかもしれない。
そうして案内されるまま二人で歩いてしばらくすると、空き地にたどり着く。

「へぇ……、忘れ去られた場所みたいだな」

ここなら確かに、ゆっくりと落ち着いてものを考えることも可能だろう。
あなたが腰を下ろしたそばに自分も腰を下ろして。
ただ数度、その背を撫でるようにぽんぽんと叩いた。

話す余裕もないならば、まずは呼吸を落ち着けるのが大事だろうから。

しばらくして、ぽつり。

「……怖くなったか、人に囲まれて。
 ……幸せになりたいんだろ。……光ったのは嬉しいことではないのか」

呟くように聞いたのは、先日の食事との違いに不安を覚えたからだ。
(9) 2024/02/06(Tue) 1:31:34
 エミール

手を差し出されれば、初めて人間を見た野生動物のような手つきでおっかなびっくりあなたの手を取った。
寒空に冷えた手。赤切れもいくらか目立つかさついた手。
黙って柔く繋いだまま二人だけの足跡が、時が止まったような静寂を覚ましながら。
目的地に着くとそっと離れていっただろう。

「…………怖い、なのかな。
 ああやって聖女聖女って熱狂する人たちが怖いのはそうなんだけど」

もうあなたに触れられても拒絶されることもなく、されるがまま。
己の記憶と結びつく嫌なものではあった。
ぐるぐると思考が行ったり来たりするうち、別の気がかりに気づいた。

「どうして私なんだろうって。そっちの方が強いかもしれません。
 この痣が祝福のあかしだって未だに信じられなくて」

呟いた言葉にたっぷり時間かけて口を開いた。
零れる言葉は曖昧に遠回り。
殆どが独り言で石畳の隙間に浸み込んでも構わない雰囲気だった。

「……罰なんでしょうかね。
 自分勝手な愚か者への、おしおき」

【人】 寡黙 エミール

>>+5 ファリエ

「……俺には怯えてるように見えた」

握った手は、体格の違いはあれど。
苦労をしてる仕事人の手だった。
握ってたときは血の気が失せて冷たかった手も、今はいくらか暖かくなっているだろうか。
語りだしたのを見れば背を撫でた手を離して、しばらくその声に耳を傾けた。

「疑問か……。
 誰がアンタを選んだのかなんて、俺は知らない。
 けど……聖女に護られるにふさわしいと思われたんだろうな……」

光の灯らない自分の痣に手を添えて小さく息をつく。
光るか光らないか、それが自分たちの人生に大きく関わるということ。

たった痣の一つが、それだけが。
それだけは確かな話しのようだから。

「……信じられないのは俺も同じだ。
 痣による加護のひとつ……、どちらが良いかなんて……俺には」

どうしても判断することが出来ない。
そういう意味ならよっぽど、自分も罰を受けるべき人間だろうに。
(12) 2024/02/06(Tue) 17:28:35
 エミール

「そう見えたのなら、きっとそれも本当なんだと思います。
 誰にも会いたくなかったからここまで逃げてきたんですよ、私」

それもあなたに見つかってしまったのだけれど。
幼い頃から他人に触れられることも本当はあまり得意ではなかった。

かと言って我慢している風には見えない。
宥められて落ち着いたのだろう。
祭り前の時と同じで、あなたにはある程度気を許しているから。

「あなたに言っても仕方ないですよね。ごめんなさい。
 もしかしたら私が思うほどこの痣も特別なのかもしれませんし。
 あーあ。私も街の人達みたいにはしゃげたらなあ」

その訳も分からないたったひとつの痣に翻弄されている事実もまた、心を揺さぶる。
この世界には不思議なことが溢れているのが当たり前で。
冒険者だったら違ったのか。幸せになれたのか。
……分からない。今は考えたくない。

「相応しいかどうかなんて。はあ……聖女様が全部わかってたら教えて欲しいですよ。
 でもエミールはまだなんですよね?
 頑張って──って言うのが正解じゃない気もしますけど、気を付けてください」

【人】 寡黙 エミール

>>+6 ファリエ

「それは……悪かったな、見つけてしまって」

けれど見つけて、放っておける状態にないように見えたのだから仕方ない。
自分とて聖人君子ではないから、誰であっても助けたかというと定かではない。
ただ、あそこに蹲っていたのが、それなりに付き合いが長くなったあなただったから声をかけたのだ。

「俺には……痣が光った人たちと、街の人達にはずいぶん温度差があるように見える。
 アンタだけじゃなくて……全員だ。
 だから……素直に喜べないのは不思議なことじゃない……と、思う」

アンタはどこもおかしくないと。
そううまく言えずに目を伏せる。
何が正解かなんてわからないし、多分、自分は、どちらの結果になっても素直には喜べない。

その理由を少しずつ自覚して、苦い顔をしてしまった。
(14) 2024/02/06(Tue) 20:20:02
 エミール

「……別に」

それ以上どうとも言わないけれど、あなたの謝罪だけ否定しておきたかった様子。
その姿は孤児院で子供の面倒を見るあなたの姿そのもので、それを悪い事とは言いたくなかった。

「どうして、でしょうね。
 おめでたい事のはずなんですけど。
 そう言ってもらえると気が楽ですね。この世界で仲間外れじゃないみたい」

浮かぶ苦笑は煮え切らない自身に対して。
口が達者でないあなたにここまで気を遣わせているのも痛いほど伝わってきたから。

「どうかあなたは私みたいにならないでください」

決して言葉にはしないだろうけれど。
あなたは生きることを悲観していないと思うからこそ。
祝福を祝福として受け取れる結末を迎えてほしかった。

【人】 寡黙 エミール

>>+7 ファリエ

「難しいな。
 アンタ程悲観的にはならないだろうが、……思うところはあると思う」

何かを選んで進んでいけば、選ばれなかったものは捨てられる。
それが自分の意志ではなかったとしても同じことだろう。
痣一つで何がそんなに変わるのかと言われればそうだが、聖女の祝福というのはそれくらい大きなものなのだと……痣を持った人たちを見ていてそんなふうなことを思ってしまったのだ。

「……なぁ」

孤児院の。
ルフトの外に夢を見ているのなら。

「アンタが時間とれるっていうなら、祭りの後何処か行ってみるか。
 ……あんまり危ないところには行けないだろうが……ルフトほどじゃなくても治安の良い街は外にもある」

万全の力があるわけではないが、ある程度の護衛の役目くらいは負えるはずだ。
(17) 2024/02/07(Wed) 19:58:26
 エミール

「あなたでもやっぱり気にするんですね」

そこは同じ痣持ちということだろうか。
女は自分以外の事情は知らないから推測することしかできない。
ただ、あなたから聞いたように同じような反応をする者が居たのだとしたら共通点のひとつやふたつあって然るべきだ。
それが何なのかすぐには思いつかなくて、親近感と諦観の息を吐いた。

「……祭りの後、ですか。
 もしかして私をどこか、此処じゃない場所に連れ出してくれるんですか?
 どうしたんですか急に。買い出しの序でに食事をするのとは訳が違いますよ」

粗方吐き出して多少なりとも胸のつかえがとれてきたと感じて気を抜いていたから、あなたの提案にはっと顔をあげた。
きょとんと瞳をまあるくして、じっと見つめる。
あまりに突拍子が無くて思わず勘繰ってしまうのだ。

「旅行の供には面白みのない女ですが」

【人】 寡黙 エミール

>>+8 ファリエ

「……そりゃそうだろ。
 俺だって、アンタと同じ人間だ」

それとも心のない何かだと思ったか?
等と軽口を言って、肩の力を抜いて表情も緩めた。
元より緊張していたわけではないが、もう大丈夫そうだとほっとして。

「……そりゃそうだ。
 俺だってここへの買い出し以外の場所に行ったことはないからな。
 ただ……まぁ、そういう機会が持てたとしたら……、見ようとしなかった物を見て回るのも良いと思っただけだ」

旅は道連れという言葉がある。
似た者同士、見たことのないものを見てみるというのは悪くない。
驚いた顔つきのあなたをじぃ、と見やって、少しばかり口元に弧を描いた。

「……どうかな。
 外に出てみればはしゃぎだすかもしれないだろ、孤児院の子どもたちみたいに」
(19) 2024/02/07(Wed) 21:42:45
 エミール

「そんなことは……別に思ってませんよ。
 私に比べて随分と落ち着いているから、違うんじゃないかって思っただけです」

口をとがらせてそっぽを向いた。
ばつが悪そうに足元の小石を蹴り飛ばしてみたり。
まるで立場が逆転してしまったみたいでそれ以上強く出ることもできなかった。

ちょっ!
ちょっと!ねえ、揶揄ってますか!?
 さっきまで私、慰められてましたよね?」

意地の悪い顔だとぼやいている内に湿り気はどこかに攫われていったような気がした。

「風向きが変わったってこと?
 今までずっと田舎に引きこもってたくせに……説明不足ですよ。
 心境の変化にしてもやっぱり急ですって。
 ちゃんと教えてください。じゃないと私行きませんからね」

【人】 寡黙 エミール

>>+9 ファリエ

「……元気が出たみたいじゃないか」

ついぞ、ははっと声を出して笑った。
子供の前などでは柔らかな表情を見せることはあるとはいえ、あまり表情の変わらぬ男にとっては珍しいことだ。
弧を描いて飛んでいった小石が跳ねて転がっていくさまを最後まで見届けて。

「別に。
 揶揄われてると思うのならそうかもしれないな」

それで元気が出たなら良いじゃないかとひとつ、呼吸をおいてまた、弧を描く。
自身の心の内を語ることは、まだ出来そうもないが。

「風向き……まぁそういうことかな。
 本当の所どうなるかはこの祭りが終わらないとわからんが……」

自分の痣も光ることがあるとしたら、そういう風にいろんな物を見て固執してみるのも良いかと思ったのだ。
(20) 2024/02/08(Thu) 0:44:43